31.アシッド村
実はこの話から新章です(੭ु˙꒳˙)੭ु⁾⁾
「そろそろ撒いたかな?」
元の姿に戻ったリルの背中に乗って移動しているレフィ。
そっと背後を見ると誰もついてきていないのでホッとしていた。
「なんか妙にしつこかったよね。あと僕は聖女じゃないのに」
「……本当にレフィは男なのか?」
リルが疑惑の言葉を投げかけてくる。
「私は別にどちらでもいいが、確認はしたことがないからな」
「ルルカはお姉ちゃんだと嬉しいな……」
「だから僕は男だよ! それよりもあとどのくらいで着くかな? 日をまたぎそうなら休みやすそうなところで……」
「この近くに小さな村がありそうだな。そこに向かうか?」
リルがちょうどいいタイミングで村を見つけてくれる。
「うん、それじゃあよろしく頼むね」
「ねぇ、お兄ちゃん。この辺り、なんか空気が変だよ。死の匂いを感じるの」
ルルカが眉をひそめている。幽霊の彼女が言うならそれは本当のことなのだろう。
空気が死の匂い、か……何か疫病でも流行ってるのかな?
それなら一応対策はしておこう。
霧吹きに空気浄化ポーションを入れて辺りに噴霧しておいた。
「むっ、何をしてるんだ?」
「気にしないで。一応対策だけしておこうかなと……」
「……? あぁ、なにかわからないが、わかった」
それでいいのかなと思いながらも、それ以上リルが追求してこないので気にしないことにする。
「うん、この辺りから嫌な空気は消えたよ」
ルルカが嬉しそうに教えてくれる。
でも、こんな空気の中過ごしていて大丈夫なのかな?
レフィは一抹の不安を抱きながら近くの村へと向かっていった。
◇
「……ようこそ、アシッド村へ」
村にたどり着くと、近くにいた、腰の曲がった老人がか細い声をかけてくる。
ただ、その顔色は悪く、無理をしているようにしか見えない。
「大丈夫ですか? 体調が悪そうですけど」
「正直あまり良くない。旅の人、悪い事は言わない。この村へ寄るのはやめなさい。今この村には疫病が襲ってて……」
疫病ってルルカが死の気配を感じるって言ってた空気のことかな?
レフィが振り向くとルルカは頷いてみせた。
「大丈夫です。もう空気を綺麗にしてしまったので、疫病の心配はないですよ」
「……えっ!?」
老人が驚いた表情を浮かべる。
「い、今なんと?」
「もうここの空気は浄化しましたので、疫病の心配はないですよ。あと、おじいさんは体調が悪いならこれを飲んでおいてくださいね」
レフィが体調回復用ポーションを老人に渡す。
「あっ、いえ、儂の体調はもうポーションでは……」
「一応飲んでおいてください。少しだけでも効くかもしれませんから……」
渋い顔を見せながらもポーションを飲んでくれる。
すると老人の体調が一瞬で元に戻った。
「う、うぉぉぉぉ……、な、なんじゃこれは!?」
さっきまでは腰が曲がった老人だったが、今では背筋をピンと張り、顔色も良くなっていた。
「えっと、僕が渡したのはただ体調を整えるだけのポーション……だったよね?」
「レフィのポーションなら若返らせてもおかしくないからな」
呆れた表情のリルが口をとがらせて言ってくる。
「これほどのことをしてもらって何もお礼をしないなんてできません! 何かしてほしい事はありますか?」
じりじりとレフィに迫る老人。
「い、いえ、特に大丈夫です!」
逃げるようにレフィは老人から去っていった。
◇
「はぁ……、はぁ……、なんとか逃げられたかな?」
「無理に逃げなくても良かったのじゃない? あの人、お兄ちゃんにお礼をしようとしただけだよね?」
「だ、だって、なんだか怖かったし……。突然笑いながら近づかれるとついつい逃げたくなってしまうでしょ」
ルルカは状況を考えてみて顔を青ざめていた。
「リル、ひどいの! またルルカを浄化しようとして……」
「ちょっと待て! 私はそんなことをしてないぞ!」
リルが怖い顔をルルカに向ける。
「だ、だって、初めてルルカにあった時、すごい形相で浄化しようとしたでしょ!」
「勿論だ! あの時はそういう依頼を受けていたからな」
「むーっ、それならルルカもリルを浄化するんだから!」
「やれるものならやってみるといい!」
自信たっぷりに言い放つリル。
頬を膨らませたルルカがレフィに近づいてくる。
「お兄ちゃん、あのね。体の汚れを落とすポーションを作ってくれる?」
「別にいいけど、何に使うの?」
「体を洗うと言ったら使い道は一つしかないよ」
ルルカが嬉しそうに笑みを見せてくる。
◇◇◇◇◇
老人はレフィが走っていった先を最後まで眺めていた。
(きっとあのお方こそ神様から遣わされたお方に違いない。そうでなければもう余命幾ばくもない儂の体がこれほど元気になるわけがない)
目を輝かせ、村の住人に御使いの来訪を話して回った。
話だけでは半信半疑だった村人も、老人がすっかり元気になり、全力疾走どころか前方宙返りすら容易にこなすその姿をみて驚きに体を震わせる。
「こ、こんなことをしている場合じゃない! お、俺もその神の御使い様にお会いしないと!」
「み、貢ぎ物を準備するんだ!」
「そ、そのお方の性別は!? なんだったらうちの娘を……」
バタバタとレフィを探して村人たちが駆け回る。
「そういえば疫病もすっかり良くなったな。……っ、まさか!?」
「あぁ、これも御使い様のお力じゃ」
得意げに話す老人。もうこの村中全てがレフィを神の御使いと信じてしまい、疑う者は誰もいなかった。




