30.聖教国へ
ライバルドの一件が片付くとレフィたちは家に帰ってくる。
そこまではよかったのだけど、自室に戻った瞬間にレフィはスイッチが切れたようにベッドに倒れ込んでしまう。
「うぅ……、やっぱり慣れないことをすると筋肉痛……、魔力痛かな? になるね。えっと、魔力痛に効くポーションは……」
すでに魔法が使える効果は切れている。
ただ、その反動は魔法を使えないレフィには大きかった。
魔力痛用のポーションは作り出せたもののそれを飲むところまで体を動かせなかった。
「もう、お兄ちゃん、眠ったままポーションの飲むのはお行儀が悪いよ!」
ルルカが的外れな注意をしてくる。ただ、ちょうどいいタイミングかもしれない。
「ごめん、ルルカ。そのポーションを飲ませてくれないかな?」
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「ちょっと体が痛くて動けなくて……」
「わかったよ。ルルカに任せて!」
頼られたことが嬉しかったルルカは笑顔でポーションを拾うと、それをレフィに飲ませてくる。
するとあっという間にレフィを襲っていた魔力痛が治ってしまう。
「ありがとう、おかげで助かったよ」
ベッドから体を起こすとルルカにお礼を言う。
すると彼女は嬉しそうに頬を染めていた。
「それよりもお兄ちゃん、もう体調は大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫だよ」
ただ疲れたのでそのまま寝ようとする。
するとテーブルの上に置いていたミクロマルク聖教国からの手紙に目がいく。
「あっ、これは……。っ!?」
手紙に書かれた差出人の名前に目がいく。
ユグニクス・アウランデーゼ。
聖教国の教祖らしい。
そして、ミリサが言っていたユグニ……って人。
もしかするとこの人が操っていた張本人かもしれない。
そのまま放っておくとどう考えても面倒ごとになるよね?
それなら一度聖教国へ行ってこの人と話をすべきかもしれないな。
レフィは深々とため息を吐くと今だけはゆっくり休むことにした。
◇
翌朝、ミクロマルク聖教国に行くことをリルたちに相談してみる。
すると、リルたちはあっさり頷いていた。
「もちろん私もついていくぞ! そもそもレフィには移動手段がいるだろう?」
「ルルカもついていきたいの。聖教国って見たことないから……」
「それなら準備したら早速行こう。あっ、でも、この町に来てる使者の人には内緒だよ」
必要なものを一式買いに出かけようとすると、外にはニコニコの微笑んでいた使者の人がいた。
ちょうど扉をノックしようとしていたらしい。
「お話、聞かせていただきました。我が国に来ていただけるのですね! それならば僭越ながら私が道案内を……」
「いえ、僕たちが勝手に行くので大丈夫です」
「そ、そんなことを言わずに。聖女さまには是非私とともに来てもらいたいんですよ」
なぜか『私と』の部分を強調して言ってくる。
(もしかして、僕と一緒に行くとこの人にメリットが?)
まぁどう考えても面倒ごとにしかならないよね。
「いえ、僕たちは勝手に行かせてもらいます」
それだけ言うとレフィたちは男の横を走り抜けて行った。
◇◇◇◇◇
「な、なんじゃと!? レフィがこの町を出て行ったじゃと!?」
兵士から報告を受けた国王は驚きのあまり声を荒げていた。
「な、なぜじゃ!? わ、儂が何かしたと言うのか? と、とにかくすぐに追いかけるのじゃ!」
「はっ!」
兵士が慌てて出ていくと入れ違いでミリーナが入ってくる。
「お父様、何かあったのですか?」
「ミリーナか……。実はレフィがこの町を出て行ったようなのじゃ……前に話していたのでおそらく行き先はミクロマルク聖教国だと思うが」
「レフィさんが!?」
ミリーナも驚きのあまり口をぽっかり開けていた。
「そ、そんな……、どうして、レフィが? こ、こんなことをしていられないかも。お父様、私もミクロマルク聖教国に行ってきます」
「ちょ、ちょっと待つんじゃ! 今ミクロマルクへ行くのはまずい! 彼の国は今、新教祖を巡ってピリピリした雰囲気を纏っているのじゃ」
「どうしてそんなところに? も、もしかしてレフィさんは誰かからの依頼を受けたのでしょうか?」
「そ、それじゃ! きっと教祖争いを解決してほしいとでも頼まれたんじゃろうな」
「それなら確認のために私が……」
「そ、それじゃとミリーナが危険な目に……」
「いえ、私はレフィさんのためなら大丈夫ですよ」
微笑むミリーナに対して、国王は頭を悩ませる。
「よし、わかった。兵士長と魔法部隊長、あとはいつもの護衛をつけてなら行っていいぞ」
「ありがとうございます!」
ミリーナが抱きつくと国王は頬が緩み、目がだらしなく下がっていた。
すると突然扉がノックされる。
「国王様、失礼いたします」
それに驚き、ミリーナが離れてしまうと国王は少し残念そうな表情をして答える。
「入れ!」
「はっ、」
兵士が部屋に入ってくる。
「して、どうしたのじゃ?」
「あの少年の行き先がわかりましたのでご報告を。あの少年は神狼に乗ってミクロマルク聖教国方面へ向かっていった模様です。ただ、この国に来ていたミクロマルクの使者は放置したまま……」
「ど、どういうことなのじゃ? 依頼として受けたのなら依頼人を放置していくなんてあるはずがない……」
ますますレフィという人物がわからなくなって、国王は困惑していた。




