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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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2.盗賊を発見する

 なぜか仲間になってしまった狼。


「ちょ、ちょっと待って。絶対服従ってなに?」

「風前の灯火の中、命を救っていただいたのです。このくらいして当然です!」


 狼はきっぱりと言い切ってしまう。


「はぁ……、納得はできないけどわかったよ。とりあえずまず自己紹介をしよう。僕はレフィ」

「私は神狼だ。名前は特にない」


 名前がないのか……。


「何だったらそなたがつけてくれたらいい。その方が服従感が出るだろう?」

「……お前、もしかして人に懐柔されたがってるのか?」


「そ、そんなことあるはずない。私は神狼。数ある狼の中で最高の存在だ……」


 必死に首を振ってくる。

 なんだかこうやって一緒にいると楽しいかもしれないな。ただ、この巨体だと町の中には入れないか。


「慕ってくれるのはありがたいけど、僕は次の町を目指してるから……。ほらっ、その体じゃ中に入られないでしょ?」

「むぅ……、それなら町の中では人の姿をすれば良いんだな。魔力が回復したら見せてやろう」


 どうやらこの狼は人化することができるようだった。


「それなら安心かな……」

「だろう。だから私も連れて行くといいぞ」


 なんだかいいように言いくるめられているような気がする。


「……もしかして、次の町の場所とかもわかる?」

「次の町がどこかはわからんが、近くの町なら把握してあるぞ。人の気配がたくさんあるところだろう」

「よし、一緒に行こう!」


 レフィは笑顔で手を差し出した。


「あぁ、よろしく頼む」


 狼はレフィの手に前足を乗せてくる。


「そういえば名前だったな……」

「あぁ、かっこいいのを頼む」


 レフィは首をひねりながら考える。


 神狼だもんね……。

 オオカミ……ウルフ……。


「よし、名前はリル……でどうだ?」

「リル……。少し可愛らしい気もするが、そなたがつけてくれた名前だからな。大切にさせてもらおう」


 口では渋々といった感じを出していたが、尻尾が激しく揺れている。

 すごく喜んでいるのがわかるので、レフィも苦笑を浮かべていた。


「そういえば、魔力がなくて人化できないんだったね。これを飲むと回復するよ」


 魔力回復ポーションをリルに渡す。

 ただ、今の狼の姿では蓋を開けることができないようだ。

 前足を必死に動かしていたが、結局諦めてレフィの方を見てくる。


「今飲ませてあげるよ……」


 仕方ないなと蓋を開けて、ポーションを飲ませてあげる。


「おっ、おっ……、これはすごい。本当に魔力が回復しているぞ」


 驚きの声を上げるリル。


「それで人化を試せる?」

「あぁ、十分だ! 今使ってやる」


 ボンッ!


 小さい破裂音がなり、リルが煙に覆われる。

 いったいどんな姿になるんだろうか……。

 レフィはワクワクしながら煙が晴れるのを待った。


「どうじゃ、この姿は」


 ようやく姿が見えるとそこには真っ白な毛が残ったままだけど、人の大きさになったリルがいた。

 確かに二足歩行してるし、人みたいだけど、どちらかといえば獣人……。


 自信たっぷりのリルに対して、レフィは手で大きくバツを作って見せた。


 ◇


「な、なぜだ、何がダメだったんだ……?」


 結局リルには町へ入る時には小さくなってもらうことになった。

 人化ができるからもしかして小さくもなれるんじゃないかと聞いてみたら、実際に手のひらサイズになってくれた。


 これなら町にいてもおかしくない。

 安心したレフィは早速次の日から近くの町へ向かうことにした。


 リルの背中に乗せてもらって、かなりの速度での移動……。リルがいうには今日中に次の町に着くらしい。

 ただ、レフィが住んでいたデリングの町よりその隣にあるユーフェリアの町の方が近いのは予想外だった。


 道に迷っていたと思ったが、思いのほか正しい道を進んでいたようだ。


「そういえば、出会った時どうしてリルは怪我をしていたんだ?」

「あぁ、あれはな、盗賊に襲われたんだ。恐ろしく強い盗賊であった……」


 リルのその言葉と同時にどこからか女性の悲鳴が聞こえてくる。


「きゃぁぁぁぁ! た、助けてー!」


 その声にリルの足が止まる。


「すぐ近くから声がしたな。どうする、レフィ」

「もちろん、助けに行くよ!」


「だと思ったぞ。私を助けるそなただもんな。よし、しっかり掴まっていろ!」


 リルは更に速度を上げて悲鳴が聞こえた場所へ向かっていく。


 そして、すぐ近くまでたどり着くと念のために木の陰に隠れて様子を窺う。


「ひっひっひっ、こんなところで助けを呼んでも誰も来やしねーよ!」


 おそらく盗賊と思われる集団が少女にナイフを突きつけていた。


「わ、私を襲っても何も持っていませんよ」

「そんなことはない。その美貌があれば高く売り飛ばせるだろうな。ひっひっひっ」


 いやらしい視線を少女に送っている。

 淡金色の長い髪が今は土で汚れているが、それでも高貴な身分の人だろうとは予想できる。

 そんな可憐さを持った少女が「ひぃ……」と小さく悲鳴を上げていた。


「あの盗賊……、私を襲ったやつだ。レフィじゃおそらく太刀打ちできないぞ。どうするんだ?」


 でも、相手は人なんだから無理に倒す必要もないよね。


「大丈夫、僕に任せておいて」


 リルを安心させるように笑みを見せるとレフィは作り出したポーションを飲み込んだ。

 その瞬間にレフィの姿は見えなくなる。


「な、なんだ、ど、どこにいったんだ?」

「透明化の効果のあるポーションだよ。それじゃあちょっと行ってくるね」


 姿を隠したレフィはゆっくり盗賊たちに近づくと口を開けた瞬間に睡眠効果のあるポーションを飲ませていった。


「えっ!?」


 目の前でバタバタと盗賊が眠っていくその光景に少女はただ眺めているしかできなかった。

 そして全員が眠った後、レフィは透明化を消すポーションを飲み、少女の前に姿を現した。


「もう大丈夫だよ」


 怯える少女に対して、安心させるように笑顔を作りながら――。

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