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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.1.ユーフェリアの町編
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1.神狼を助ける

「うーん、町を出てきたのはいいけど、これからどうしよう?」


 今までろくに家を出たことがなかったレフィは町を出てすぐ側にある森で迷っていた。


 とりあえず人に目立たないところへ……とやってきた結果なのだが、次の目的地がまるで浮かばない状態だった。


「まぁ、そのおかげで色々試すことができたんだけどね」


 レフィの足下にはたくさんのポーションの空き瓶が転がっていた。

 いろんな効果を試してみたが、普通に回復するものから、相手に攻撃を加えるもの、自身を守るもの……といった感じにポーションらしからぬものも多数存在した。


「でも、食べ物を作ることはできなかったんだよね」


 出てくるのは決まってポーションのみ。

 あとは大きさは色々変えられるが、決まって透明な瓶の中に入れられていた。


 瓶自体の強度はそれほどなく、落としたら簡単に割れてしまうのでこの瓶自体を使う……というのも難しそうだ。


 ほぼ水の状態まで薄めたポーションを飲みながら食料だけはどうにかしないといけないなと考える。


 でも、幸いなことに今レフィがいるのは森の中だ。


「少し探せば食べ物くらいあるよね」


 レフィは再び森の中を歩き出していった。



 そして、しばらく探し回ると木の実を発見する。

 ただ、それはどう考えてもレフィには届かないほど高い位置にできていた。


 こういうときに木登りが得意だったらよかったんだろうな。


 残念ながらレフィは運動全般はそこまで得意ではなかった。

 でも、こんなときこそポーションだよね。


 生み出したポーションを早速木に向かって放り投げる。

 すると木に触れた瞬間に大爆発を起こしていた。


 はじめ生み出せたときは本当にポーションなの? と言う疑問も浮かんだこの爆薬だが、せっかく使えるんだから使わないともったいないよね。


 威力もかなり大きくおそらく今のレフィの持っている攻撃手段の中では最強に位置するものじゃないだろうか。


 それを受けた木もメキメキ……と激しい音を鳴らしながら倒れていった。


「よし、これなら木の実も採れるね」


 転がっていた木の実をとるとそれにそのまま齧り付く。


「うーん、なんだかしょっぱいな……。水っぽいし……。あまりおいしい木の実じゃないかも……」


 初めて採取した木の実は残念ながら好んで食べるようなものではなかった。

 でも、爆薬で木の実を採取できると知ったレフィは見つけるごとに採っていった。


 すると夜になる頃にはお腹いっぱいで動けなくなるほどだった。


「さて、今日はそろそろ寝ようかな……」


 家のベッドが恋しいけど、ここは我慢するしかないよね。

 適当に草を並べて簡易ベッドを作り上げたが、その寝心地は家のベッドに大きく劣るものだった。


「早く別の町に行って宿屋に泊まろう……」


 そう決意するとレフィはゆっくり目を閉じていった。

 しかし、そのまま熟睡はさせてもらえなかった。


「グルァァァァァァァァ!!」


 目を閉じた瞬間に大きな咆哮のようなものが聞こえてくる。


「な、何!? 何があったの!?」


 慌てて飛び起きるレフィ。

 周りを見渡してみるが、すぐ近くにはたくさんの草木と簡易ベッドがあるだけで、ほかには何もなかった。

 夜と言うこともあり周りは静かで、鳥の声すら聞こえず、光が届かない木々の奥は闇が広がっている。


 そんなときに突然、ガサゴソと草の揺れる音が聞こえる。


「だ、だれっ!?」


 誰が現れても対処できるようにポーションを生み出す準備をすると目を凝らせて先の方を見ようとする。


 いや、こんな時は――。


 視力強化のポーションを生み出して、それを飲むと、もう一度音のした方を見てみるとそこには白銀の毛並みに覆われた大きな狼が倒れていた。

 その自慢の毛並みも自身の血によって今は赤く染まっているが……。


 そして、その狼の目が何かを訴えかけているように見える。


「もしかして、僕に助けを求めてる?」


 ゆっくりと狼に近づいていく。

 近くで見るとますます大きく見える。レフィの体の数倍はあるその体。

 ただ、今は力なくぐったりと倒れていた。


「助けてくれ……」

「うわっ、喋った!?」


 突然声を出されてレフィは驚き一歩後ろに下がる。


「こ、怖がらなくていい。そ、それより助けてくれ……。報酬はいくらでも……」


 すでに息も絶え絶えでこれ以上喋るとまずそうだ。


「いいから喋らないで!」


 すでに瀕死の狼。……ただのポーションじゃ回復が追いつかない。

 瀕死の狼にも効いて、完全に回復する効果を持ったポーション……。


 想像するとその効果を持っていると思われるポーションが生み出された。


「これを飲んでください」


 蓋をあげてその狼の口の中に流し込んでいく。

 瓶ごとでも飲み込めそうなほど大きな口だったが、それにしては薬の量が少しだった。

 本当にこれだけで大丈夫だろうか?


 心配するレフィだったが、その狼の体の傷はみるみるうちに消えていき、気がつくと傷一つない体になっていた。


「ふぅ……。もう大丈夫ですよ」

「あ、あぁ……」


 どうしたのだろうか、狼の反応がやけに鈍い。

 もしかして、もう回復したから用済みだ……とか言われるのだろうか?


 思わず一歩下がるレフィ。

 するとゆっくり狼が口を開く。


「助かった……。本当にありがとう。そなたは命の恩人だ。これから私はそなたには絶対服従を誓わせてもらおう」


 ゆっくり起き上がる狼。そしてレフィの前で頭を垂れていた。


 えっ……?


 何があったのかわからずに首をかしげるレフィ。


 狼にポーションを飲ませたら仲間になっちゃった……?

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