16.家具
タイトル変更しております。
王城から帰ってきたレフィは家に着くと早々に倒れそうになっていた。
ただ、部屋に家財道具が何もないため、仕方なく部屋の壁に腰掛ける。
「しまったなぁ……。家具も買わないといけないんだった……。でも、今日は疲れたし……」
そのまま眠りにつきそうになるレフィ。
すると、リルが少し大きなサイズになってくれる。
それにもたれかかるように眠りにつく。
◇
翌日、目を覚ますと部屋中を何か白くてふわふわした物体が覆っていた。
ろくに身動きも取れない……いや、意外と軽いので泳ぐ要領でなんとか動くことはできた。
「な、なにこれ? ど、どういうこと?」
部屋の中心部へ動いていくと何やら壁のようなところに当たる。
「むにゃむにゃ……、なぁに、レフィ……、まだ朝には早いよぉ〜……」
壁からリルの声が聞こえてくる。
ただ、リルが窓を塞いでいるので暗く見えるが外はすっかり明るくなっている。
「もう朝だよ! 起きてよ!」
無理やりリルを揺らしていく。
「あれっ、いつの間に元の大きさに戻ったんだ?」
「それは僕が聞きたいよ! 苦しいから小さくなってよ!」
「あぁ、すぐに戻る……」
ようやくリルが元の大きさに戻ってくれて事なきを得る。
ただこれから一緒に寝るときはこういうことが起こるかもしれないから注意しないといけないな。
「とりあえず今日は家具を買いに行こうか。ほらっ、リルも肩に乗って」
小さくなったリルを抱え、肩に乗せると町の中心部を目指して歩いて行った。
すると、通りの途中で泣いている少女を見かける。
「どうかしたの?」
その場にうずくまっている少女に声をかける。
まだ五歳くらいの少女で一人でいるところを見ると迷子だろうか?
「ママとはぐれちゃったの……」
少女が顔を上げて言ってくる。
周りを見てみるが少女の母親らしき人物は近くにいなかった。
「うーん、困ったな……」
親の場所がわからないとなると少女が更に大きな声で泣き出してしまう。
こうなるとまるでレフィが泣かせているように見える。
慌てふためくレフィ。
そこでとある方法を思いつく。
手のひらを少女に向けるとポンっと一つのポーションを出した。
「なぁに、これ?」
「とっても美味しい飲み物だよ。飲んでごらん」
少女がポーションの瓶を開けるとゆっくりそれを飲んでいた。
「甘ーい」
「うん、砂糖水だよ」
ようやく泣き止んでくれた少女。
レフィもその隣に座る。すると、母親らしき女性が少女を見つけて声をかけてくる。
「レーテ、よかった。ここにいたのね」
どうやら母親の方もこの少女を探していたようだ。
ポーションを飲み終えた少女は母親の方へと行くと嬉しそうにレフィに向かって手を振ってくる。
すると母親の方もお礼を言ってくる。
「本当にありがとうございました。何かお礼を……」
「いえ、僕はただこの子と遊んでもらってただけですから……」
少女の頭を撫でると彼女は嬉しそうにはにかんでいた。
「そ、そうだ。それならこれをもらってください。さっき買ったものなのですけど……」
母親はカバンの中から真っ赤な果物を取り出した。
せっかくなのでそれを受け取る。
「ありがとうございます」
レフィがお礼を言うと母親も同じように頭を下げてくる。
そして、見えなくなるまで手を振ってくる少女に見送られながら中央部へと向かっていく。
◇
中央部にたどり着くとまずは家具を置いている店を探す。
「どこにあるのだろう?」
「あれじゃないかな?」
リルが指さしたのは干し草が置かれた店だった。
「……あれはただの干し草だよ」
「でも寝るときに使わない?」
確かに動物とかなら干し草をベッド代わりに使っていてもおかしくないか。
「普通の人は使わないよ。そもそも、リルも前の宿で見たでしょ?」
「あぁ、あれか。あれならそこに売ってるよ」
次に指さした場所には本当にベッドなどが置かれた店があった。
ただ、リル的には不満なようで「向こうの方が眠りやすそうなんだけどな……」と呟いていた。あとからリル用に干し草も買いに行こう。
そして、家具の店へとやってくると早速店内を見繕ってみる。
……意外と高いんだな。
下手をすると数泊くらい宿が取れそうなほどの値段がそこには書かれていた。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
店内を見ていると店の中から店員が現れる。
「えっと、とりあえず家具を一式買いたいんですけど……」
それを伝えた瞬間に店員の目が光ったように見えた。
「一式ですね。それは今すぐに必要になるものでしょうか? でしたらこちらの最高級木材、ユーリスの木を使ったベッドはいかがでしょうか。これを使えば最高の睡眠をあなたにお届けします。値段の方は……まぁ少し張ってしまいますがその価値は十分あると思います」
すごく早口で説明をしてくる。
ただ、そのベッドに書かれた値段がとてつもない値段だった。
『金貨五十枚』
買えなくはないけど、流石にベッドだけでこの金額を払う気にもなれなかった。
「もう少し安いものでいいんですよ。他にも色々買わないといけないので……」
「でしたらご予算はいかほどにさせていただきましょうか?」
「全て込みで金貨十枚くらい、でどうでしょうか?」
すると店員は笑顔になりながら見繕ってくれた。
その時に最初に見せられた高級ベッドは相手を金持ちの貴族かどうか調べるのに向いているらしく、意外と人気があるらしかった。
店員がいいように見繕ってくれる。しかも早速運んでくれるらしい。
「よいしょっと……」
軽々とベッドを持ち上げる店員。
さすがにその光景には驚いてレフィは口を開けていた。
「あぁ、最初はみんな同じ顔をしてくるんだ。これが俺のスキル【身体強化魔法】なんだ」
どうやら魔法で持ち上げているらしい。
あれっ、それならポーションでもできるんじゃないかな?
少し気になったが、この場で作るのはやめておこう。
「じゃあ早速家へ案内してくれるか? 順番に運んでいくからな」
店員を家まで案内する。
そして、レフィの寝室へと運んでもらう。
あとは勝手に運んでくれるとのことなので次はリル用の干し草を買いに行く。
「いいのか? 普通は使わないんだろう?」
リルが驚いてくるが、レフィは笑顔で返す。
「いいよ。リルが寝やすいなら……」
◇
「うーん、やっぱりベッドで寝るほうが疲れが取れるねー」
僕は、新しく買ってきたベッドに寝転がって大きく手足を伸ばした。
「どうにも宿のベッドは硬くて合わなかったんだよね。やっぱり実際に買いに行くほうがいいね」
値段はそこそこかかったが、これからしばらく使うことを考えたら必要なお金だと思うことにしよう。
そういえばリルの部屋はどんな感じになったんだろう?
干し草だけは部屋に運んでもらったんだけど、あとはリルに好きなようにしてもらった。
流石に少し気になったので覗きに行ってみることにした。
「リル、入ってもいい?」
ノックをしながら尋ねてみる。
「大丈夫だ」
リルの返事が来たので、扉を開けてみる。ただ、中に入ることはできなかった。
今朝起きた時みたいにリルは大きな体に戻って部屋一杯の大きさになっていた。
「やっぱり干し草は寝心地がいいね」
扉から見える白い毛からリルの顔が出てくる。
「うん、まぁ、気に入ってくれたのなら良かったよ……」
レフィは苦笑を浮かべる。
ただリルの部屋なのだから好きにさせてあげようと、それ以上は何も言わなかった。




