14.家
レフィ達は町外れにある小さな家へとやってきた。
木造の住宅で中に入ると埃とカビっぽい臭いがレフィ達を襲い、少し眉をひそめる。
まずは窓を開けて外を見ると少し町から距離があるためにほとんど人通りもなく、閑静な雰囲気だった。
「やっぱり国王様から家をもらって正解だったね」
「まぁ、初めは大豪邸を渡そうとしてきてたけどな」
なんでもくれるといった国王様にレフィは住むための家を要求した。するとまず案内されたのはレフィの実家よりも大きな豪邸だった。
さすがにそれはダメだと必死に首を振り断ったのだ。
だからなるべく人が来ない小さな家という条件をつけて今の家へ案内してもらった。
「さすがにあなた様をこんなところに住ませるわけには……」
渋い顔を見せていたが、レフィだけで過ごすには十分すぎるほどだった。
「いえ、ちょうどいい家です。ありがとうございます」
レフィが頭を下げると、案内してくれた兵士が本当に良かったのかなと不安げに頭を掻いていた。
◇
「さて、まずは家の掃除が必要だね。ということで――」
レフィはユーフェリアの町で荒稼ぎした汚れ落としのポーションを作り出す。
そして、それを使って家を磨いていく。
「リルも手伝ってね」
「あぁ……」
レフィじゃ手が届かないようなところは全てリルに任せておく。
すると、埃まみれでボロボロだった家は新品同様の綺麗さを取り戻していた。
そこで改めて家の中を見て回った。
生活に必要な部屋は揃っているし、少し小さめのリビングと洋室が二つ。
レフィたちだけで住むには十分そうだ。
「改めて使ったけど、すごい効果だね……」
「今回もそれで金儲けをするのか?」
少しレフィは悩む。
たしかに話題性としてはあの洗剤はいいかもしれないが、以前それでトラブルになったことと、やはり値段は高めなのでずっと売れ続けるとは思えない。
おそらく一過性のものだろうから長期間売り続けるには不向きだった。
「いや、今回は違うものを考えるよ。それにお金自体はすぐに困らないほどあるからね」
「そうか……。それなら片付けが終わったら町でも行くか? 何か売る物のヒントがあるかもしれないぞ」
リルが提案してくれる。たしかにまだ避難した人が全て帰ってきていないが、ポツポツと人手が増えていた。
町を見て回るにはちょうどいいかもしれない。
「よし、それじゃあお昼も兼ねて見に行ってみよう」
◇
まずは町の中心部を目指して歩いてきた。
この町は町の中心部にはお店などが立ち並ぶ商業区画、北側に王城や貴族街、南の門付近には宿屋。
そして、西と東には住宅が立ち並んでいた。
レフィ達の家も東をまっすぐ進んだ先にあった。
町は石畳がひかれ、建物は石造りのものが多かった。
意外とレフィの住んでる木造の家は珍しいみたいだった。
「ここも石畳がひかれてるんだね……。実家の町にはなかったのに……」
ふと感想を告げるとリルが眉をひそめていた。
「もしかして、お前の実家ってあまり金がなかったのか?」
「そんなことないと思うけど……。でも金を使うなら魔法使いに使うべきだ! とはよく言ってたね」
「典型的な魔法バカだったんだな……」
苦言を呈するリル。
神狼にも馬鹿にされるなんてどこまでひどかったんだろう……。
レフィも苦笑いを浮かべる以上はできなかった。
◇
「さて、どこに入ろうかな?」
たくさんの店から美味しそうな匂いがしていたので、レフィはどこに入るか迷っていた。
そして、お店の方ばかりに気を取られていたので、人が歩いてきているのに気づかずにぶつかってしまう。
「きゃっ……」
可愛らしい声が聞こえる。
「だ、大丈夫ですか?」
慌てて少女に手を差し伸べる。
そこで思わず声を漏らす。
「あれっ、君って……?」
手を差し伸べた先にいたのは淡金色の髪の少女だった。たしか以前盗賊に襲われていた時に助けた子だ。
「あ、あなたは……まさかっ!?」
少女は目を大きくしてレフィのことを見る。
そして、目に涙を溜めていくと喜びのあまり飛びついてきた。
「えっと……、あの……?」
「会いたかったです。会って一度お礼を言いたかったです。レフィ様……」
こんな往来のど真ん中で泣きつかれて、周りの人たちから注目を集めてしまう。
「と、とりあえずここではなんだからお店の中に入ろう」
慌てふためくレフィは少女を連れてお店の中に入っていく。
そして、席に着くと少女を落ち着かせる。
「すみません、はしたないところをお見せしました……」
少女が申し訳なさそうに謝ってくる。
「いえ、落ち着いたのなら良かったです」
「だって、ずっと探していたのですよ。お礼がしたくて……」
「そんな、気にする必要はなかったのですよ。あの時は僕が勝手にしたことですから……」
以前と同じことを言ってのけるレフィ。
しかし、少女は首を大きく横に振っていた。
「いえ、そういうわけにはいきません! 命を救っていただいたのですから……」
少女は身を乗り出して言ってくる。
その圧力にレフィは思わず頷く。
「わ、わかりました。で、でも、本当に大したことをしていませんので……」
「はいっ。では一緒に私の家へ来てもらえますか?」
家で何か料理でも作ってもらえるのだろうか?
それならありがたいなと気楽に頷く。
「ところで家ってどこになりますか?」
「あのお城です」
満面の笑みを浮かべて言ってくる少女。




