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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
1.2.王都編
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12.兵士

 ドラゴンが現れた!


 すでに息も絶え絶えの兵士が伝えた情報に王都では激震が走る。

 そして、それは王城にも伝わっていた。


「ミリーナは別の国に避難するんだ! ここは我が国の兵士達で食い止めておく」


 頭に王冠をかぶった初老の男性が淡金色の少女、ミリーナに向けて言い放つ。


「嫌ですわ。国の皆をおいて私だけ逃げるなんて……」

「わがままを言うでない。相手はドラゴンだ。言葉が通じるわけでもなく、一方的に蹂躙されるだけだ! 最上レベルの魔法使い達が集まってようやく倒せるんだぞ? そんな相手を前にお前を置いたままにできるはずがないだろう」

「そ、そうです。以前私を助けてくれた人なら……」

「またその話か……。今から探していても間に合わない。フラッとそんな救世主みたいな人間が来るはずもないだろう?」

「……わかりました。ただ、私は逃げるわけではないですわ。絶対その人を見つけて戻ってきます。ですからお父様もその人を見つけてきた暁には……」

「わかっておる。本当にお前に似合う相手なら婚約の件も考えてやろう。儂としてもそれほどの力の持ち主が味方になるならありがたいからな」

「約束ですよ!」


 ミリーナの表情に笑みが宿る。

 そして、ほかの兵士達と一緒に王城を後にしていった。


「ミリーナ、無事に生き延びてくれ……」


 後に残された初老の男はぽつり呟いていた。


 ◇◇◇◇◇


 ドラゴンの肉を堪能した後、レフィ達は再び町へと向かっていった。


「意外と量があったね」

「あぁ、巨大なドラゴンだったからな」


 ほとんど肉のない尻尾しか残されていなかったが、小柄なレフィとリルの二人だけだったら十分すぎるほどの量があった。

 それをすべて食べてしまった後、二人は次の町を目指していた。


「この先にあるのはどんな町なのかな?」

「かなり人がいるな。今までとは比べものにならないくらいだ」

「えっ!? でも、それならどうしてこんなところにドラゴンがいたの? そんな人がたくさんいる町だと兵士の人が巡回をして平和を保ってたんじゃないの?」

「もちろん町の近くまで行けばそうだろうな。ただここから町までは人の足で歩くと十日はかかるぞ?」


 意外と距離があるんだな。

 さすがにここまでは見て回れなかったのだろう。


 納得するように頷くレフィ。


「それじゃあまだ時間はかかりそう?」

「いや、あと一日ほどで町の近くまではつくぞ?」


 やはりリルに乗っての移動は時間が短縮できて本当にありがたい。


「あっ、ちょっと待って。止まってくれる?」

「どうかしたのか?」


 リルに停止を促すと、レフィは飛び降りてすぐ近くの木陰に向かう。


「まだここは魔物が現れるぞ?」


 リルが注意してくる。ただ、その木陰の先には傷だらけの兵士達が倒れていた。


「だ、大丈夫ですか!?」


 彼らを見た瞬間にレフィは慌てて近づく。


「はぁ……、はぁ……、ど、ドラゴンが……。は、早く逃げないと……」


「喋らないでください。今ポーションを取り出しますから……」

「もうポーションじゃ治らない……。それよりも国王様に……」


 最後の気力を振り絞ってドラゴンのことを教えようとしてくれていた。

 目が血走っており、弱々しく手を伸ばしてくる。


 ただ、レフィはその手を払いのける。


「まだ大丈夫です! しっかりしてください!」


 生きること自体を諦めているように見えてレフィは大声をあげて注意する。

 その上で怪我を一瞬で治療するポーションを作り出すと兵士の人に飲ませる。


「だ、だから、もうポーション程度じゃ……。いや、それで君の気がすむのならいいだろう。代わりにしっかり国王様に伝えてくれよ」


 傷が治り、次第にすらすらと話し出す兵士。

 ただ、本人は気づいていない様子だった。


「国王様に伝えるなら自分で伝えてくださいね」

「だから俺は傷でもう……ってあれっ?」


 ようやく自身の傷が治っていることに気づいた兵士。ゆっくり、信じられないという表情でレフィのことを見てくる。


「一体何を?」

「その前に他の人にもポーションを飲ませていくので手伝ってください!」

「あぁ……」


 言い淀む兵士をよそにレフィは他の人たちにもポーションを飲ませていった。


 ◇


「一体どんな魔法を使ったんだ? ただのポーションが伝説級の回復薬に変わるなんて……」

「特に何もしてないですよ。それよりどうしてみんなリルに乗るのですか?」


 さすがにいくら元の姿のリルが大きいとはいえ、たくさんの兵士達を乗せていたら重たそうだった。


「大丈夫? 走れる?」

「あぁ、このくらいわけない」


 強がってみせるリル。

 そして、町へ向けて走り出すと助けた人の一人が思い出したように言ってくる。


「あなた、もしかして王女様が言っていた薬の神様じゃないですか!?」


 知らないうちに神様扱いされてしまう。

 でも、レフィ自身に王女様の知り合いなんていなかった。


「人違いじゃないですか?」

「いや、その凄まじい効果のポーション、間違いないはずです! ぜひ王女様に会っていってもらえませんか? 凄く会いたがっていましたので」


 出来たらそんな身分の高い人とは会いたくないんだけどなぁ……。

 下手にその人経由で実家に知れ渡って、余計なトラブルになるのは面倒だ。


 ただ、相手が偉い人ということも考えると断るというのもまあトラブルの元になりそうだ。


 まぁ程々に付き合っていくのが一番いいのだろうな。


「わかりました。そこまでいうなら会うだけならいいですよ」

「ありがとうございます! 王女様もきっと喜んでくれると思います」

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