07;異変遭遇2
この時間帯に更新するのも普通のことになってきました。まぁ書き溜めなのでらくちんですけどね。
今回は堅悟メインの回。どのようになるかこうご期待!それではどうぞ
時間は前日の夜に遡る。堅悟は花蓮の親からの電話を受け、急ぎ花蓮の家へと向かった。花蓮の親から話を聞いた限りでは高熱が出て衰弱が激しいとのこと。堅悟たちが集めていた情報の症状と一致する。
「叔母さん、花蓮は?」「今は少し落ち着いているわ。ただ、原因がわからないのよね・・・。よければ上がっていって?きっと花蓮もその方が嬉しいだろうから。」「・・・はい。」花蓮の母親に促され、花蓮の部屋に上がる堅悟。高熱が出ているという花蓮の顔は平時に比べ赤く、呼吸が浅かった。
「堅悟・・・?」「あぁ、叔母さんからお前が倒れたと聞いてな、見舞い来た。」「倒れてからお見舞いに来るのが早すぎるでしょ・・・ゴホッ」「あまり喋るな、体に障る。叔母さんも心配だったのだろう。」「堅悟は・・・私のこと、心配?」「・・・あぁ。心配だ。だから喋っていないで今は寝ていろ。」「ふふっ、わかった。おやすみ。」咳も出るようで会話するのは辛そうだった。早めに切り上げ会話を切り上げ堅固は花蓮の部屋を後にする。「おやすみ、花蓮 姉ぇ・・・」そう言い残して去る堅悟は誰にも見せたことがないような顔をしていた・・・。はたしてその言葉は聞こえていたのかどうか。
花蓮の家を後にし、堅悟は夜の街を歩く。〔堅悟、悠輝たちに知らせなくていいのかのう?学園で調べたそれでだいたいはわかったのだろう?〕「あぁ。恐らくこの先であっているはずだ。」アオが初日に感じた嫌な気配。その時学園に残っていたのは悠輝や翠、部活をしていた生徒たち。堅悟が学園で調べていたのは生徒の出席簿。堅悟たちのクラスから症状が始まったのだと仮定して、一番最初に休んだ人物が感染源ないし関係者ではないかとあたりを付けていた。「やはりか。・・・双川 雄一。」そう、彼は編入初日の正午ごろに学園に居た、翠を呼び出し告白をするために。
地図で確認したところ、この先の山中に廃墟と化した屋敷があるとのこと。恐らく双川の潜伏先はそこだろう。〔同じ学園の生徒とはのう、本当に一人で行くのか?堅悟。〕「悠輝たちに級友と闘えと言うのか?何より、俺は自分自身に一番腹が立っている。ここまで事態が悪化するまで気づかなかった俺自身に!ならば俺一人で片づける!」堅悟は怒っていた。自分の不甲斐なさに、自分たち憑依者ではなく多くの市井に被害が出ていることに。様々な想いを載せて堅悟は屋敷の玄関を蹴破る。「でてこい!双川!ここにいるのはわかっている!」「は~ぁ、何か暑苦しいのが来ちゃったなぁ。まぁ、時間を潰すのにはちょうどいいかぁ!遊んであげるよ・・・」 憑依者と怪異、二つの異能がついに激突する。
「ゲン、やるぞ。」「やるかのう。」堅悟とゲンの周りに青い霊力が出現する。
『限定憑依!!』 声とともに霊獣であるゲンの力が具現化する。主に堅悟の脚部分に。堅悟の脚に戦国時代の甲冑のようなゴツゴツとした茶色の具足が現れる。だがそれはまるで生き物のように脈打っていた。「そんなちっぽけな飾りだけで僕に勝てるとでも思ってんの?しかも限定って言ってたよね?舐め腐りやがって!!」双川は猛禽の羽を展開し風を辺りに纏わせ突撃してきた。
ガキッと金属が擦れるような音がして二人は脚と羽で鍔迫り合いの様相に。「お前こそ、せっかく風を使えるのに遠距離から攻撃しなく良かったのか?あぁ、それを考えることもできない鳥頭なのか。」「その舐めた口すぐにきけないようにしてやるよォ!!」 最初の鍔迫り合いの後はお互いに至近距離での乱打戦に。もちろんお互い身体が変異している部分以外は生身である。堅悟、双川両者とも少しずつ傷を負っていく。
「鳥頭のくせになかなかやるな・・・」「そっちこそ、鈍くさい亀のくせにやるじゃん・・・」堅悟とゲンはどちらかというと防御主体であり攻撃面はそれほど優れていない。双川もスピード重視のため攻撃面はそこまでである。お互いこれといった決め手に欠けており、闘いは膠着状態になっていた。
「二人ともこんな夜中に何熱くなってんの?よい子はとっくに寝る時間だよ~」突然闘いの場にそぐわない明るく軽薄な声が二人にかけられた。「何・・・?どういうことだ!?」困惑する堅悟。それもそのはず、二人に声をかけた相手。それは今まで戦っていた双川と顔も、背中から生える羽も、何もかもが瓜二つの男が宙に浮いていたからだ。「遅いよ、どこほっつき歩いてたんだよ、雄二。」「またまた~兄ちゃんがこいつ攫ってこいっていうから、僕がわざわざ街まで出たんだよ?」「雄二・・・兄ちゃん・・・お前らまさか!?」そう、双川 雄一は双子だったのだ。弟である双川 雄二。二人は違う高校に通っているため堅悟は双川が双子であることに気が付かなかった。そして雄二が気になることを言っていた。「攫ってきた」と。誰を、と考える間もなくまた別の声がする。
「堅悟・・・その脚、何?」考えたくなかった、家で寝ていてここにはいるはずのない人がいた。「間島・・・先輩・・・。」
あろうことか雄二は発症した花蓮を攫ってきたのだった。花蓮は堅悟が霊獣を憑依させていることを何も知らない。「僕から教えてあげようか~?」ニヤニヤした顔で雄二が言う。「やめろ」「間島さんの大事な友達はぁ~、今ここまで君を攫ってきた僕と同じ。人間じゃない、バケモノなんだよぉ!」花蓮の目が驚愕に見開かれる。言われてしまった。正確には堅悟には霊獣、双川たちには怪異のため憑いているものが違うが何も知らない花蓮からしてみれば等しく人外である。それを花蓮には知られたくなかったから、組織に入る時も偽りの言葉で隠したのに。あっけなく真実をばらされてしまった。堅悟は花蓮の顔を直視できない。
「じゃぁ月並みだけど岩島君?間島さんに危害を加えられたくなかったら・・・大人しくしてくれるかな?あぁ、その脚はそのままでもいいよ。その方がきっと効果的だから。」〔堅悟!耳を貸すでない!こいつらをどうにかしてからその女子を助ければよかろう!〕 だが、堅悟の心は揺れていた。花蓮に危害を加えられたくない、花蓮にこの姿を見られたくない、様々な感情が渦巻いて戦うどころではなかった。「よくもさっきまで蹴ってくれたなぁ、ここからはお返しだよぉ!!」動けない堅悟に容赦ない攻撃を加える雄一。その光景を見るしかない花蓮。それは朝方まで続いた。
「何か反応ないと飽きてきたなぁ~。あ、今日は学園に行って雪園さん攫うんだった! 雄二~ここは任せるよ、僕ちょっと行ってくるね」「ま・・・待て・・・」夜中の間攻撃されていた堅悟はそこらじゅうボロボロだった。雄一を止めることもできず見過ごすしかない堅悟は友人たちの安否を祈るのであった。