間章02;続・買い物
本日三話目です。前二つをまだ読んでいない方はそちらもどうぞ。
最初二人が向かうは悠輝の新しいネックレスを見るために男物の装飾品や服等が売っている店へ行くことに。元が簡素なものであったため値段などはさして気にしていなかった悠輝。翠は数々の品を見ながら難しい顔をしてあれでもないこれでもないと唸っている。それが何だか面白く、愛おしく思った悠輝は横から口を出す。「俺は翠が悩んで選んでくれたものなら何でも嬉しいよ。」と。周りに店員もいるのにまるで気にしていない発言に辺りにいた人も若いなぁというような生暖かい視線を送る。
「そ、そう?それじゃ私はこれがいいかなと思うんだけど!」翠が選んだのは今まで悠輝が付けていたものと似た色合いのシルバーを基調としたネックレスに薄緑と白で縁取られた四葉のクローバーが先にあしらわれているものだった。手にした感じでは今までの物とそこまで大きさや重さも変わらないようで悠輝は気に入った。何より翠が選んでくれたものだ。気に入らないなどということがあるだろうか。そのことを翠に伝えると彼女は大層喜んだようで上機嫌で会計に向かっていった。
次に二人は翠の髪留めを見に行くことに。しかし、いざ店に着いてみると品物は膨大である。幼い頃はあまり深く考えていなかったため気楽に贈ったのだろうが、この歳になって異性に贈り物をするというのは中々に気恥ずかしい。しかも悠輝は女性にはどれが似合うのかといったことにあまり詳しくない。様々な品を手に取りながら内心冷や冷やしていた。翠は少し離れたところでニコニコしながらこちらを見ている。
〔悠輝、あれとか翠に似合いそうじゃね?〕「そうか?俺はこっちの方が似合うと思うけどなぁ」などと小声でハクと検討しながらどうにか二つまでは絞った。最終的に自分で決めないと意味がないので悠輝が選んだ方にすることに。
「俺たちはこれがいいと思うんだけど、どうかな?」と悠輝が決めたものは結局前の物とあまり色合いが変わらない鮮やかな空色の髪留めだった。アクセント程度に白い色が見えるのはハクの意見だろうか。悠輝としての精一杯頭を捻った物であり、選ぶところを見ていた翠が断るはずもない。「さっき悠輝君も言ってくれたけど、私だって悠輝君が時間かけて考えて選んでくれたものなら嬉しいよ」と。「そうか、良かった。」悠輝もそそくさと会計を済ます。〔安心したのはわかるが、お前が顔赤くしてどーすんだよ。男が顔赤くしても誰も喜ばないだろ・・・〕「うるさいよ!」
二人とも当初の目的は達成した。せっかくショッピングモールに来たためぶらぶらとそこらへ寄りながら休みを楽しむ。本屋だったり、改めて服屋だったりゲームセンターだったり。いろいろ回っていれば時間はいつの間にか昼過ぎに。さすがに腹も減る時間だ。「時間も時間だしどこかで昼飯食べていこうか。」と悠輝が提案するが翠はふるふると首を横に振る。「せっかくのお出かけだから、軽くお弁当作ってきたの。どう・・かな?」少し顔を赤らめながら手にしたカバンを前に持ってくれば悠輝がNOを言うわけがなかった。
二人は少し離れた場所にある広々とした公園で昼食にすることにした。晴れた午後に木陰にシートを引き、翠と共に座る。悠輝としても人が作ってくれたものを食べるのは久しぶりだ。それだけでも嬉しいのに翠が作ってくれたのだ、天にも昇る気持ちだった。
「あんまり上手じゃないかもしれないけど、はい!どうぞ。」上手ではないと自分では言っていたがそんなことは微塵も気にしていない悠輝であった。数種類のサンドイッチや卵焼き、唐揚げなどメニューは定番のそれだったが幸せそうな顔をしながら頬張る悠輝を見て同じように笑顔になる翠。二人分の弁当はあっという間に空になった。
翠の弁当を食べ終え満足そうな二人。そこで思い出したように悠輝が先ほど買った髪留めの入った包みを取り出す。それを見た翠もネックレスの入った包みを出した、お互い中身は先ほど見ているため既に知っている。どうしても照れ臭いので悠輝はそのまま渡そうとしたのだが・・・
「せっかくだから、悠輝君に着けてもらいたいな」「!?」簡単な髪留めであるため着けることはこと自体は簡単。だが、それこそ肌が触れあうほど距離が近い。「だめ・・・?」そこまで言われてしまったら、意を決して包みを開け翠の髪に着ける。「よく似合ってると思うよ」必死に捻り出した言葉はそれだけだった。
お互いに顔を赤くする二人。「じゃ、じゃあお返しに私が着けてあげるね!!」「うぇっ!!??」こちらは何も言っていないのに顔を真っ赤にした翠がネックレスを手に近づいてくる。〔真っ赤にするくらい恥ずかしいならやらなきゃいいのに。まぁこれも青春かねぇ〕というハクの声も耳に入らない。
翠の手がそっと悠輝の首元に回される。傍から見れば翠が抱き着いているかのようにも見える格好だ。数秒して着け終わった翠が「うん、似合ってるよ!」と一言。お互い恥ずかしくて目も合わせられないくらいだった。 少しして落ち着きを取り戻した悠輝が言う。もう二度と忘れないと。今一度ここで誓うと・・・
だいたい片付けも終わり落ち着いてきたが春の日差しに美味しい昼食を食べたことにより悠輝は少しばかり眠気を感じていた。デートへの緊張のあまり寝付けず、起きたのもいつも以上に早かったからだ。「欠伸を噛み殺していた悠輝を見て翠から「ちょっとお昼寝でもしていく?私もちょっと眠いや・・・」との提案が。翠は翠で気合を入れて弁当を用意するために早起きしたため眠かったのだ。まだ時間はたっぷりある、そう考えた悠輝は承諾。軽く寝ていくことにした。
「・・・普通男女逆じゃないかな!?」「そうか?別にどっちでもいいと思うけど」二人の体勢は膝枕。ただし木陰を作っている木を背に膝を貸しているのは悠輝の方。あまりそういうことに詳しくない悠輝は、長時間翠に座らせるのは疲れるだろうという観点から自分が膝を貸す方を申し出ていた。
「これはこれで恥ずかしいんだけどぉ・・・」横になる翠の気持ちも分からなくもない。それだけ距離が近いのだ、無理もない。加えて時折悠輝が頭を撫でながら語りかけてくる。恥ずかしさと春の日差しも相まってか短い時間で翠は眠りに落ちた。
すぅすぅと寝息をたてる翠を優しい顔をしながら見つめる悠輝。その顔を見ながら改めて悠輝は想いを強くした。「もう絶対に忘れない。二度と悲しい顔をさせない。俺が・・・必ず守ってみせる。」決意の言葉は自然と口から出ていた。それは翠に聞こえていたのかもしれないし、聞こえていなかったかもしれない。ただ、眠る翠の顔は微笑んでいるようだった・・・
自分も眠くなってきた悠輝は軽く寝ることに。「悪いけどちょっと頼むわ、ハク・・・」〔あぁ、たまにはゆっくり休んどけ。何かあったら起こしてやるよ。〕ハクが悠輝から出てきて二人の座る木の枝に丸くなって座る。それを見た悠輝も程なくして眠りに落ちた。
〔まったく、見てるこっちが赤くなりそうだ。たまには霊獣らしく見守るとしますかね。〕ゆっくりとした時間が流れていった。
次回から新章に突入予定です。また時間かかるかもしれませんが気長に、気楽にお待ちください。それではー