表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊獣憑依者の日常生活  作者: リヴェ
17/20

15;帰路

本日二話目です。まだ一話目を見ていない方はそちらを先にどうぞ!

(そもそもこれを読んでいる人がいるかは甚だ疑問ですが・・・)それでは始まります

 しばらくして堅悟と花蓮が戻ってきた。二人とも少し顔が赤いがそこは言わないのがお約束。もっとも悠輝と翠も同じように顔が赤いので人のことを言えない状態なのだが。「堅悟、双川たちの様子どうだった?」「ゲンによれば本当に普通の人と同じになったようだ。変異中の記憶はどうなるかはわからないとのことだが。」「そうか・・・組織に引き渡しか?」「そのように報告するつもりだ、しかしあの力の源はどこに行ったのか」どうも腑に落ちない点も残るが夜も遅い。双川兄弟を拘束し、4人はようやく家に戻ることにした。長かった1日がようやく終わろうとしていた。


 「それよりも悠輝、もっと寝ていなくてよかったのか?雪園の膝に。」「なっ!?」「随分気持ちよさそうに寝ていたようだが。」「あれは意識飛んでたんだから気持ちいいも何も・・・」「悠輝君、膝枕嬉しいって言ってたよね?」「それは・・・言ったけどさ・・・」屋敷からの帰り際、すっかり油断した4人は幾分か明るい会話をしながら歩く。そんな時前方から二人組の男女がこちらに歩いてきた。すわ、敵襲かと身構えるも、それは見知った顔だった。何故か少し疲れた顔をしている蒼夜と美鶴の二人だった。

「転校生の一柳君と緋村さん?どうしてこんなところに?」「早い話が、二人とも俺たちと同じ憑依者。俺たち四人は元々知り合いだったんだよ。」「「えぇ!?」」二人には隠していてもしょうがないため、あっさりと説明する悠輝。堅悟は堅悟で内心、ばれてしまったなら開き直って現地の協力者、ということにでもするかと考えていたりする。

「まったく、二人が独断専行するから私たちにまで余計な苦労がかかりましたわ。生き急ぐなら自分だけでやってくださいまし!!」「こんなこと言ってますけど、さっきまで凄い狼狽えていましたからね。僕に早く二人を探せだなんて命令してきましたし。」〔美鶴は素直じゃないよね~。僕みたいに素直になればいいのに!〕「あなたたち・・・!!」アオのからかいの声も聞こえるがどうやら二人とも悠輝と堅悟を心配していたようだ。

「それにしても二人とも、疲れてるようだがどうした?」堅悟と悠輝が疲れているのはわかる。だがなぜ蒼夜と美鶴が?と考えていた堅悟だったが。「二人の詰めが甘いから私たちがこんなに疲れているんですの!!」「「え?」」突然、美鶴の髪が真っ赤に燃え上がる。本当に燃えているわけではないが、これが美鶴の限定憑依である。「夜中にあんなに光ったり音が鳴ったりしても人が来ないようにするのは苦労したんですよ!?二人とも何も気にしないで闘ってるんですもの・・・」「まぁ、そういうことです。僕が二人を見つけて、美鶴の結界で外界と遮断したってところですね。それと・・・」今度は蒼夜の周りに風が集まる。普段下がっている髪が吹き上げられた風により、一時的に逆巻いていた。「二人が倒した怪異の源はこちらです。」丁寧に何枚もの札で封印されている二つの瓶を取り出す。「まったく、倒した直後に気絶とかもう少し配分を考えて戦闘してくださいよ、逃げようとしていたこれを見つけて封印するの手間だったんですよ?」ジト目の蒼夜にそう言われてしまえば悠輝と堅悟に反論の言葉はない。

 なくなっていた怪異の源も無事に封印したことだし、心配事はなくなった。「とりあえずは一件落着ってことでいいんだよな?」「そうだな、もう夜も遅い。二人を送って早く休もう。」自分たちの形勢が悪い事を悟った二人が急いで話題を変える。堅悟はつい後ろに庇ってしまった二人を振り返り言う。

「ところで二人とも、まだ余力残ってます?」ふと蒼夜が尋ねる。悠輝も堅悟も戦闘後、少しは休んだため多少の余力はある。「多少なら残っているが何故だ?」もう今日は憑依する必要は無いはずだと言わんばかりに堅悟が返す。「いえ、皆疲れて早く寝たいですし、双川兄弟も家まで運ばないとですし。幸いなことに今は夜で誰も見ていない。そうなれば後はわかりますよね?」蒼夜が言いたいのはこういうことだ。

疲れたから憑依して運んでさっさと帰ろう。と。脅威は去ったため、緊急時でもないのに憑依することに不満げな堅悟をおいて蒼夜と美鶴は屋敷の方に歩いていく。「私たちが双川兄弟を運びます。」〔まったく、何で私と美鶴がこんな後始末を・・・〕「まぁ、異変解決の矢面に立った二人に感謝するということで。ですから悠輝と堅悟にはそちらの二人をお願いしますね?大切な人、なのでしょう?」〔そりゃそうだよー、だって二組とも・・・モガッ〕「アオ、それ以上はいけません。」どこかニヤニヤした笑みを浮かべながら二人は見えなくなった。


 「「(何やってたかバレてる!!)」」悠輝と堅悟の二人は内心悶絶ものであるがどうにか声に出さず堪える。〔蒼夜とアオのコンビだからなぁ、探知能力は一級品だ。そりゃあバレるわな。〕〔遅かれ早かれ、というやつじゃないかのう・・・〕霊獣からも冷ややかな眼差しが突き刺さっているような気がする。

翠が嬉しいような困惑したような表情で尋ねる。「双川君たちを運ぶって言ってたけど、緋村さんで運べるの?いくらその・・・憑依したからって女の子だよ?」「あぁ、言ってなかったね。その事は心配しなくていいんだ。寧ろ俺たちより早く着くんじゃないかな。」「それってどういう・・・?」その場に一陣の風が吹く。

「「あいつら、飛べるから。」」透き通るような深緑と燃えるような真紅の羽を宿した蒼夜と美鶴が双川兄弟を抱えて飛んで行った。誰にも邪魔されないのなら空から行く方が早い、風の能力で重さも問題ない。悠輝たちが心配していなかったのはこれが理由だった。

「では俺たちも行くか。」「そうだな、俺たちはただでさえあいつらより遅いんだし。俺たちは飛べないからなぁ・・・」「行くって言ったってどうやって?このまま普通に歩くの?」花蓮の指摘ももっともだ。

「いや、”跳んで”いく。多少は揺れるがそこは勘弁してほしい。」「「え?」」 「「限定憑依!!」」

翠と花蓮が驚く暇もなく二人は今日何回目かになる憑依を発動。ただし二人とも足だけ変化の限定憑依だ。獣じみた足に変化した二人が翠と花蓮に背を向けしゃがむ。呆気にとられて動けない二人に声がかかる。「花蓮姉ぇ何してる?はやく乗ってくれ。」「実際これ恥ずかしいんだよ・・・」((え、おんぶされて移動するってこと!?))突きつけられた現実に困惑する二人。恥ずかしいやら嬉しいやらで戸惑っているが少しの逡巡のうち、背に乗る。「失礼するわ。」「失礼しまーす・・・。」「よし、それじゃ帰るか!」「二人とも落ちないようにしっかり掴まっていてくれ。」憑依した二人が勢いをつけて夜の街を駆ける。十分に加速がついたところで大きく跳ねた。道が邪魔なので家々の屋根を跳んでいくことにしたのだ。街中へと進み、四人は翠の家と花蓮の家へと別れて帰る。悠輝たちは後で下宿先で落ち合うことを決め、その場を後にした。


 「これでようやく二人きりね。」「二人になると唐突に喋りだすのやめろよ・・・」「あら?堅悟は私と二人きりになりたくなかったの?」「それは・・・」〔そこは正直に言うところじゃろう堅固。〕「私は嬉しいわよ?」「うっ・・」花蓮の素直な感情をぶつけられたじろぐ堅悟。背に背負った翠の確かな温もりを感じながら堅悟は跳ぶ。「せっかく誰も見ていないのだしお願いでもしてみようかしら。・・・堅悟、お姫様抱っこで帰りましょうよ。」ズルッ 堅悟がバランスを崩し、あわや二人は転落しそうになった。瞬時に堅悟が反応し事なきを得るがその体勢はというと・・・「あらあら。」「いきなり驚くようなこと言わないでくれ花蓮姉ぇ。」「その割にはちゃんと体勢変えるだけの余裕あったのね。」「・・・。」結局花蓮の家まではお姫様抱っこで跳んで帰った。


 「今日はいろいろあり過ぎたよ!!」「そうだな、翠には怖い思いさせて悪かったと思ってる。」「謝らないでいいって言ったじゃない。ちゃんと来てくれた。それでいいんだって。」「うん・・・。」「そういえば、これ千切れちゃったけどどうするの?」翠が千切れたネックレスを取り出し言う。「そうだなぁ、さすがに着けるのは難しいかな。でもいつも付けていたのがなくなると違和感あるなぁ・・・」悩む悠輝にいいことを思いついたと言うように翠が提案する。「じゃあ今度の休みに一緒に新しいもの買いに行こう!!その時に、私の髪飾りも選んでよ!!」約束の品物は千切れてしまったがその思いを継ぐ新しいものを手に入れるのだ。「そうしようか。」「うん!約束だよ!!」また新しい約束が交わされる。二人がそんな会話をしている最中、〔まーた二人の世界に入っていやがる・・・俺のこと無視しやがってぇ~。そうだ!!〕いきなりポフと悠輝の頭に虎耳が生える。「悠輝君、それ・・・」「何勝手に憑依部分増やしてんだよ、ハク!!疲れるの俺だろ!!」〔お前らが無視するから!!〕「やっぱり悠輝君可愛いね。」「言うなっ!!」顔を赤くしながら悠輝は跳ぶ。二人が別れる最後までハクは悠輝の虎耳を解除しなかった。

翠の家まで着き、一先ずは安心する二人。さすがに二人とも疲れており、今日は別れることに。

「家まで送ってくれてありがとう悠輝君。また明日、学校でね!」「あぁ、また明日!!」短い言葉だったが二人にはそれで十分だった。

 一人になり、跳びながらハクに語り掛ける。「また明日、だってさ。」〔あぁ、それが今日お前が守り抜いた、勝ち取った明日ミライってやつだ。〕満ち足りた顔をしながら悠輝とハクは夜を駆ける。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ