10;覚悟
本日二話目です。前置きは少なめで。早速どうぞ!
「おはよう、ふぁーあよく寝た~。」「おはよう兄ちゃん。もう夜だよ・・・」「疲れてたからしょうがないだろ、街に行ったときそこそこ力使ったからねぇ。憑依者ってやつと連日闘ってるわけだし。」「学園にいた憑依者ってどんなやつだったの?」「爪が生えるだけの大したことないやつだったよ、僕たちが双子だってことにも気づいてないし。僕たちには叶わないね」双川兄弟は余裕な態度だ。時刻は夜、日も落ちてあたりは暗闇。僅かな光は月明かりが照らすのみとなっている。「せっかく攫ってきたんだ、さっそくだけどちょっと味見でもしよっかな~。」「兄ちゃん、二人いるんだから一人くらい僕にくれよ、僕のことこき使ってるんだからさぁ。」などと下卑た笑顔を浮かべながら翠たちのいる部屋へ向かおうとする。「僕は雪園さんがいいから~、雄二は間島さんね。」同じ部屋にはまだ堅悟もいるというのに、すでに眼中にないようだ。扉を開け、その手が翠と花蓮に迫ったその時・・・
「雪園さん!!何処にいる?遅れたけど・・・助けに来たぞっ!!」悠輝の大音量とともに玄関の扉が蹴破られた。
〔悠輝、その先だ。その先から双川たちの気配がする!〕廃墟と化した屋敷をハクの案内に従って駆ける悠輝。一際大きい扉の向こうに一度取り逃がした敵が、思い出した大切な人がいる。万感の思いを乗せて悠輝は扉をぶち破る。今回は初めから限定憑依状態だ。「悠輝君っ・・・!!」「雪園さん、無事?助けに来た!」壁際に翠と、もう一人。あれは堅悟と話をしていた間島先輩・・・?間島先輩は体調崩して家にいるはずじゃ・・・?
「あれだけ痛めつけたのにこりないねぇ、でも体はボロボロのはずだろ?相当無理してるんじゃないの~?」「こいつが兄ちゃんの言ってた学園に居たっていうもう一人の憑依者?」聞き覚えのある軽薄な声が2つ。・・・2つ?驚いてそちらを見れば同じ顔の男が二人、二人の双川がいた。「双川君は双子だったの! それで堅悟君も不意を突かれちゃって・・・」翠が悲しそうに目をやった先には動かない堅悟がいた。意地の問題か、憑依状態は解除していなかった。「堅悟っ!!」双川兄弟が余裕ぶっている間に悠輝は堅悟のもとへ。体中に打撲や切り傷があるが、意識はあるようだった。「随分いいようにやられたみたいじゃないか、堅悟。」「これは俺の独断が招いたことだ。そっちこそ、遅かったな悠輝、昼寝でもしていたのか?」それだけ皮肉が言えれば上出来だろうと二人はゆっくり立ち上がり、ついに双川兄弟と対峙した。
「二人ともやる気なの?二人して僕に負けたくせに、今更本気出してなかったとか言わないでよ?まぁ二人ともボロボロだし?ボロボロにされるのを後ろの女子たちに見てもらったら?」「ここで戦うって自分は僕たちと同じ人外だって認めるってことだよ?仮に僕たちに勝てたとしても後ろの女子には拒絶されるかもしれないよ!大人しく諦めた方がいいんじゃないかな、その二人は僕たちがもらってあげるからさぁ!!」双川兄弟は前に勝っていることもあり、余裕の態度だ。実際悠輝は昼間に翠を庇ってボロボロ、堅悟は昨夜から甚振られていた傷は浅くない。それでも強がって、意地を通そうとするのが男だ。
「どっちがどっちを担当する?」「俺は雄一の方かな、学園に来て雪園さん攫って行ったあいつを許せそうにない。」「では俺は雄二の方だな。雄一にも借りは返したいところだが、実際に花蓮姉ぇを攫ったのは亜雄二の方だ。」「じゃぁ、決まりだな。」軽いやり取りでどちらを担当するか決める二人。
「なぁ~にこそこそ作戦立ててるのさ、そんなの無駄!どうせ二人ともここで僕らに負けるんだからね!」いつまでも優勢を崩そうとしない双川兄弟に向けて悠輝と堅悟は深呼吸して対峙する。
「雪園さん・・・いや翠。全部思い出したよ、絶対忘れないと誓ったのに、今まで忘れていてごめん。怖い思いをさせて、ごめん。これからもう少し怖い思いをさせるかもしれない。出来れば見ないでいてくれっ!」
「花蓮姉ぇ、俺が弱かった。不安にさせて悪い。だがどんな姿になろうが、俺は俺だ!」後ろにいる大切な人たちに背を向けて、覚悟を決める。憑依させる部分が増えるということはさらに人の見た目から外れるということだ。二人は自分の敵を倒すために、大切な人を守るためにそれを辞さない覚悟だった。
「堅悟、私は昔も、今もいつだってあなたを信じてるよ。見た目なんて関係ない。私が一番大切なのはここにいる堅悟だから!!」
「悠輝君・・・私も全部思い出したよ。校庭であなたが倒れた時、不安だった。ここに連れてこられた時・・・怖かったよ。でも助けに来てくれて凄く、凄く嬉しかった!!見ないでくれなんて言わないで、私はずっと前から悠輝君だけを見ていたから!!」 「「だから・・・勝って!!」」
「「応っ!!」」
さぁ、今こそ男を見せる時!次回、悠輝と堅悟が霊獣の本来の力を解放する!? 次回もよろしくお願いします。
話は変わりますが、現在書き貯め部分がだいたいこの戦いの決着あたりまであります。一気に投稿するのがいいのか、それとも日に二話くらい投稿するのがいいのか・・・もしこうしたらいいよ、というような助言などありましたらご意見いただければ幸いです。