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楽士伯の姫君は、歌わずにいられない  作者: 汐の音
十四歳篇 入学前

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80 レガティアの星祭り(4)

 眩しさに未だ目が慣れないエウルナリアは、半ば目を閉じたまま、グランに右手をエスコートされた状態で歩道の端に佇んでいる。

 左側にレイン。彼はグランと同様、周囲に灰色の視線を投げかけ、注意を払っている。


 今日は二人とも動きやすい(ライン)のチャコールグレーのコートを身につけ、隠すことなく帯剣しており、物腰に隙がない。


 とても見目よい少年達だが、二人で真ん中の少女を守っているのは一目瞭然で、周囲の心ある大人達は微笑ましい思いで、かれらを見守った。

 ――勿論、うつくしいものを愛でる気持ちが多分にあるのは、否めない。


 いくらかの衆人が見守るなか、エウルナリアは(ようや)く左手を目許から外し、ゆっくりと顔を上げながら瞳を(あらわ)にする。


 ――レガート湖の青。

 誰かが、そう思った。


 ちいさく整った顔立ちに、くっきりと映える澄んだ青い目。長い睫毛には、うっすらと涙が滲んでいる。艶やかな黒髪は柔らかく波うち、少女の肩と背を飾る。


 衣装は、暖かそうなクリーム色の羊毛のケープと揃いの膝丈のスカート。膝まであるブーツは、なめした革の光沢が上品なキャメルブラウン。襟元と裾にふわふわと雪のような真っ白の毛皮が縁どられ、さながら冬の妖精だ。




 ――混雑のわりに、静かだ。

 エウルナリアは視線をさ迷わせた。……珊瑚色の唇がひらく。それだけでも人目を惹いた。


「えぇと……グランは、この辺りに詳しい?聖教会はどれかな」


 甘く澄んだ声が、ささやかに空気を震わせる。つい耳が拾ってしまう――抑えた声量でありながら、存在感のある響きだ。

 人びとは何となく聴き入ってしまい、彼女の次の一声(いっせい)を待った。


 「あぁ、こっち。ちゃんと教会のある南東区に降ろしてもらったから、主街路(メインストリート)は渡らなくていい」


「そっか、ありがとう。早速行こう?」


 黒髪の少女は、にこっと愛らしく微笑んだ。心が(はや)って仕方ないと言わんばかりに、わくわくとしている。


 少年達はそんな彼女に寄り添うように、す、と洗練された足運びでその場を去った。




 ……雑踏はそのあと直ぐ、おおいに賑わった。


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