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第1話:前触れ

私の暮らすこの小さな島で、私はずっと一人ぼっちだった。

私には、お父さんもお母さんも友達も誰もいない。

その理由は二つある。

一つは、私の頭には角がある小悪魔のような小さく、黒い角が二つある。

これが原因で私は苛められた。

もう一つは、私には変な力がある。

時には枯れた植物を癒やし、時には人を傷つけてしまう。

だから私は、島の穢れとして村人から避けられる。

石を投げられる。

だから私はずっと森の奥で住んでいる。

そんなある日の事。

私の前に、一人の男の子が現れた。

その男の子は私に、普通に接してくれて友達のように遊んでくれた。

私が村人から避けられている事を知っているにも関わらず、だ。

それどころか、私の力を見て驚いてそして誉めてくれた。

それがとても嬉しかった。

そして、幸せだった。

だから私達は毎日のように遊んだ。

日が暮れるまで遊び続けた。

そしていつしか、その男の子は大切な人となっていた。

だけどその幸せは長くは続かない。

それは六月の暑い日、ひぐらしが活発に鳴いている頃。

突然、意味のわからない言葉を話す人達がこの島に現れた。

その人達は、花火の音が出る長い杖で次々と人を殺していった。

そして大切な人も私をかばって殺された。

私は酷く悲しんだ。

涙も、涸れるほど出し続けた。

響き渡る私の声。

悲しみと怒りのこもった声。

そして気づくと、後から来た、私から大切な人を奪った憎い人達は死んでいた。

でも、そんな事はどうでもよかった。

私は抱き寄せていた大切な人の亡骸を見る。

私の腕に掛かっている、彼からもらった紐で結んである腕輪の鈴はチリンッと音を鳴らす。

でも、彼の腕に同じように掛かっている腕輪の鈴は鳴らない。

私が軽く揺らすと、小さく鳴るが、それだけだ。

彼はもう動かない。

もう、私に微笑みかけてくれない。

そのたび、深い悲しみが湧き上がってくる。

そして思った。

こんな悲しみをもう誰にも味わって欲しくない。

だって、私はこの島の人達は嫌いじゃない。

だから守る。

守りたい。

そう願うと叶うような気がしたから。

そして私は眠りについた。

森の奥にある(ほこら)の中で。

島の人達を見守るために・・・・・・









暗く、大きく空を覆っている雲から、積もらない雪が降り続けている。

それは、この東京にとっては少し珍しい物だ。

今の季節は冬。そして町のあちこちには"さようなら二○十四年、ようこそ二○十五年"と書かれた垂れ幕が掛かっている。

その理由は、今日が十二月三十一日のため、町中の人々が年越しを待ち遠しくしているからだ。

そんな中、俺、宮沢 幸平(みやざわ こうへい)は、とある居酒屋で友人を待っていた。

グラスの酒が二杯目になったのと同時、不意に後ろから肩を叩かれたため、振り向くとそこには一人の男が立っていた。

痩せた長身の身体に、居酒屋には合わない白衣を着た銀髪の男は、片手を上げたまま隣の席に座った。

「――マスター、カクテル」

「ねーよっ」

俺はその男の頭にチョップを食らわす。

「イタッ!・・・・相変わらずのツッコミだなぁ」

「お前こそ、相変わらずのボケだな良太」

その男の名は斉藤 良太(さいとう りょうた)

幼い頃からの親友だ。

期間で言うと小学生から高校生まで。

「――それで、まだ研究所設立は諦めてないのか?」

「当たり前だよ。せっかく大学を卒業したんだから、やれるところまでやらなきゃな。

・・・・・あ、そうそう急なんだが俺、結婚する事にしたわ」

何故か笑顔の良太に対して俺は苦笑。

「き、急すぎるにもほどがあるぞ・・・・・・で、どうしてまた急に?」

「それがさ、大学でたまたま知り合ったんだけど、結構気があっちゃってねぇ!んでもって、これがまた優しい人なんだよ」

「へぇ・・・・・今度紹介しろよ」

言うと良太は俺を見下すように顔を傾け、ため息一つ。

「嫌だね、馬鹿が移る」

「俺は何かの病原体かよ・・・・・と言うより、親友に対しての態度が酷い上に、お前の方が事実馬鹿だろ」

言うと良太は首を傾げ、そうか?っととぼけた表情で言った。

「まぁいいや。それよりも、やっと斉藤なんていう一般名から抜け出せるんだよぉ」

「・・・・・・お前、全国の一般名の人に謝れ。最悪、土下座まではしろ」

「大丈夫だ。どうせ謝っても何故謝られたのかわからなければ、何の事かわかをなぁ〜いって言いながらクネクネしだすさ」

どこの民族だよ・・・・・・

「・・・・・んで?その一般名から抜け出せるというほどの相手の名前は?」

そう聞くと、良太は不気味と思える笑みを作って親指を立てて、ぐっと突き出す。

「よくぞ聞いてくれた!俺の最愛の人は霧島 清美って(きりしま きよみ)って言うんだ!!どうだ、いい名前だろ?」

「あ、あぁ、いい名前だな。それで、式はいつなんだ?」

「来年の五月だ」

思わずカウンターに、ゴンッ!と頭をぶつけてしまった。

ついでに顔を引き攣った・・・・・

「結婚は決まっているのになんで半年先なんだよっ!」

「今、共同でやっている研究が順調にいけば五月に終わるんだよ」

「・・・・・それで?清美さんも了承済みか?」

「もちろん!」

俺は、ならいいかっと答えて、手元にあった酒を一口飲む。

「・・・・そういえば、お前は何か予定はあるのか?ほら、野球の何とかっていう球団からスカウトきてたろ?」

その問いに、俺は吐息一つし、答える。

「その前に、プロ野球選手としての試験に受からねぇとな。・・・・・まぁ、その前に考えをまとめたいんだ。ちょっと一人旅でもしてみるよ」

「そうか・・・・・ま、式までには戻ってこいよ?」

「当たり前だ。俺は何ヶ月行方をくらますんだよ」

良太は、それもそうだなっと笑い出したため、俺もつられて笑い出す。

こんなに笑ったのは何年ぶりだろう、と考えながら。

その後、しばらくの間、昔話で馬鹿みたいに笑い合った。

酒が回って、その後の事は覚えていないが。






それから二日後。

年も明け、一月に入った頃だ。

俺は船の上にいた。

自分の気持ちを、考えを固めるために知り合いから船を借りて、大好きな海の上をのんびり航海中だ。

たが、しばらくすると、少しずつ雲行きが怪しくなってきた。

「・・・・嵐がくるな・・・・・」

天気予報では晴れだったんだがな・・・・・

そう思い、引き返そうとした、その時。

「――ッ!?」

突然のスコール。

それは風を纏っており、俺は船から投げ出されてしまった。

一瞬の事だったため気を取り乱したが、急いで船に戻ろうとする。

だが、船はすぐに遠ざかり、俺は溺れるように沈んだ。

「――約束だよ」

気を失う寸前、頭の中でそんな言葉が響いた気がする・・・・・

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