3章14話 変態は変態でも仲間のことは大切な(略)です!
いつもは近くにいないアイリを筆頭に可愛がりながら時間を潰す。結構前に作っていた猫じゃらしを倉庫から取り出してみた。
もちろん、これはアイリをからかうために作ったものじゃない。シロと遊ぶために作ったものだ。シロと頭を使うゲームとかはあまり楽しめなかったからね。頭が悪いとかじゃなくて興味がないって言われたし。
最初こそは僕自身を景品にすることで遊んではくれたけどすぐに飽きられたし。オセロとか将棋とかをやってみたけど、教え始めて三戦目にして手加減している僕と同レベルまで追いついてきた。
怖いよね……オセロとかなんて簡単だからこそ難しいのにさ。それに将棋もシロ自身で穴熊囲いを使い始めてきた。そんな技、僕は教えてないよ……。
「……ここに打ちます」
今は対面に座るアキと一緒にオセロをしていた。その途中で猫じゃらしを取り出していたから置き場に困ってしまう。
初手の初手だからコマをどこに置こうか悩むなぁ。最初の斜めの白黒の状態から先行の黒を持つアキが左上の白の左にコマを置いた。悩んでから打ったってことは戦略を考えて打ったってことだよね。
とりあえず、いつも通り角を取るために左に置かれた黒の上に白を置いた。斜めの角の手前の手前、つまりは今、白を置いた場所さえ自分が保持していれば角を取るのは楽になるからね。
またアキが悩み始めたので隣に連れてきたツンデレのアイリの目の前に猫じゃらしを垂らして、右へ左へと動かし続けてみた。
なにこれ……可愛い……。
右へ猫じゃらしをやれば視線も右に行って、左へ猫じゃらしをやれば視線も左に行ってを繰り返すんだけど……。途中で僕の顔の前で猫じゃらしを隠すと少し僕の顔を見つめてから恥ずかしそうにするし。
うん、可愛い。めっさ、可愛い。
「可愛いね。頭撫でてもいい?」
「いや……えっ……と……」
「嫌か……なら諦めるね……」
「嫌とは……言っていないです……」
本当にからかいがいがあるなぁ。
別に僕だって嫌って意味じゃなくて悩む時に出るいやだって分かっているよ。でもさ、可愛い子をからかうこと以上に楽しいことは無いよね。
「なら、尻尾を撫でるね!」
「さっきと言っていることが違います……」
「……ダメかぁ」
「……仕方ないので触ってもいいですが」
やっぱり許してくれるのね。
いっつも尻尾を隠したり触らせようとしないから久しぶりに楽しめるなぁ。やっぱりアキとかアミとかアイリとか、尻尾とかがトレードマークの三人からすれば尻尾とかは触られるのが嫌いなのかな?
【いえ、人狼も獣人も自分達の尻尾に誇りを持っていて性感帯に近いものでもあります。人で言うところの人前で耳などに息を吹きかけられたり、耳たぶなどを甘噛みされるようなものですね】
どこかの国民的アニメですかね。
ってことは案外、尻尾を触るよりも耳をいじる方が恥ずかしくないのかな。立派な大きな耳もあるしそっちをいじるのでも全然楽しいしなぁ。
それにしてもアイリは三人の中で一番、柔らかさが心地いいなぁ。アキはアイリに比べると少しツルツルしていて、アミは少し固めだから触り心地が全然違う。
本当に食べたくなるほどに気持ちがいい。
「アイリ、恥ずかしい?」
「……主様が相手ですから」
「ああ、恥ずかしいってことね。それなら」
アイリの手を取って僕の耳を触らせる。
汝、右頬を殴られれば左頬を差し出すべし。アイリが恥ずかしいのなら主である僕も恥ずかしさを味わうべきだ。さあ、触りなさい。貴方が僕が寝ている時に触っている耳を、僕が目を開けている時に触りなさい。
「……気持ちいいです」
「福耳だからね。耳たぶは大きめなんだ。だから僕の隣で寝ている時に耳たぶを触るんでしょ?」
「そうですね」
肯定した後にアイリの顔が徐々に赤くなる。
一緒に昼寝している時とか、朝早くにフェンリルの三人が起きた時には僕の耳を好んで触るのは、どこぞの盗撮魔が映像にしているからね。聞いてくれれば触らせるのに。
「アイリだけずるいのだー! アミにも触らせろー!」
「ほら、その代わりアミのも触るからね」
「どうぞどうぞなのだ!」
右耳をアイリに触らせているので左耳を膝上のアミに触らせてみる。くすぐったいなぁ。なんか変な気持ちにさせるところを的確にアミが責めてくる。……天然淫魔の才能でもあるんじゃないかな。アミ……恐ろしい子!
「ひゃっ……」
「ふにゅっ……」
なんとなく二人に負けた気がしたので少しだけ気持ちいいとは違う気持ちになるような触り方をしてみる。耳の上から下に指を滑らせて水魔法で指を濡らす。
「可愛い悲鳴だね」
「……最低ですね。アミもなんか言ってあげてください」
「酷いのだー! もっとやって欲しいのだ!」
「そうです、最低……って! 最後のは余計ですよ!」
「はいはい、やって欲しいのね」
アイリの抗議は無視だ無視。
アミとアイリは一蓮托生。つまりは片方が望むのならば片方も同じようにかわいがるべし。我が耳で遊んだ罪は重いぞ?
「ミッチェルも何か言ってあげてください!」
「今度、私にもしてください」
「いいよー」
「そうじゃないです!」
ふふふ、ミッチェルが仲間内でイチャつくことに怒ると思うか? 答えはノーだ。ミッチェルは許した人達であればイチャつこうと性的なことをしようと怒りはしない。やったこともないしやる気はないけど、アイリと仲がいいから責任さえ取れば別にしていいって言われたしね。
「アキも!」
「私との対戦中に遊ばないでください。……少しだけ仲間外れな気がして寂しいです」
「ごめんごめん、アキにも他のことで返すから許して」
「それならいいですよ」
「よくないです!」
アキも聖母のように優しく包み込むだけ。
さぁ、アイリの恥ずかしさを共感する人とか、僕を止める人なんていないよ。次は誰に助けを求めるのかなぁ。
「こんなのおかしいです」
ついにはブツブツ呟くだけの機械になってしまった。ダメだ、アイリの可愛らしさは機械だからなんてものじゃない。壊れてしまってはダメなのだ。
「ひゃあっ!」
「ほひひお」
「なっ、なにを……しているのですかぁ」
えっ? 耳をハムハムしただけですよ?
いっつも耳の手入れに力を入れているのは知っているからね。それにアイリのだったらこんなことをしても嫌な気はしないし。好きな子の耳をハムハムすると思えば紳士の男子ならば誰でも出来るはず……。
【紳士ですもんね!】
そう! 紳士だからね!
「……美味しいよ?」
「美味しくても! ……そんなことをしていないのにするのはダメですぅ……」
ヤバっ……作られたあざとさとは違う、天然のあざとさと言うべきか、可愛らしさは心にくるものがあるなぁ。文字で見ても可愛い。聞いていても可愛い。要約すればアイリは可愛い。
「それならアイリにするのはやめるね」
「にゃっ! 次はアミなのだ? もっと、やってもいいのだー!」
「お言葉に甘えて」
アミが欲しがるのならしないとね。
アイリの耳は甘い感じがするけどアミのはなんか乳臭い感じがするなぁ。乳臭いっていうのは言いすぎたかな。赤ん坊の香りっていうか、そんな感じのがハムってしてみると鼻を抜けてくる。
「美味しいのだ? 美味しいのだ?」
「うーん、人の好みによるかな。僕は好きだよ」
「ならいいのだ!」
幼い体つきと胸を大きく張る姿は発情というよりもホッコリとしてしまうね。笑顔のアミの耳をまた弄り直してコマをおかしてもらう。
コマを置いては耳を弄って、また置いては弄ってを繰り返している。けど、そんなんで頭がしっかりと回る訳もなくて……。
「勝ちました! 勝ちましたよ!」
「うぇ……負けちゃった……」
本気じゃないにしてもここまで圧倒的だと悲しくなってくるね。狙い通りに四隅は取れたけど取れた頃にはもう遅くて反撃の機会さえなかった。
うーん、戦略負けではないよね。
単にプレミというか、置くのをミスしていることが多すぎた。さすがに待ったとか置き直しはしたくないから負けるのは仕方ないか。
「それじゃあ、願い事かぁ。あんまり難しくないもので、ね?」
「はい! ……とはいっても何も決めていないんですよね。主のことですから性的なことはダメでしょうし……」
うん、そうだね。
やるのは別にいいけど確実に責任を取れるとは言いきれないしなぁ。立場が揺らぎやすかったら子供を作っても困らせるだけだしね。別に男尊女卑とかじゃなくて単純に家族とかには苦労をさせたくないし。
僕はアキの言葉に首を縦に振る。
アキは「やっぱり」と言いながら顎に手を置いて、また考えをまとめ始めた。長くなりそうなので「今度教えてくれればいいよ」とだけ言ってアキに納得してもらった。
「……それで、アイリはなんでアミの耳を弄り始めてからずっと嫌な顔をしていたのかな?」
「そっ、そんなことはしていません!」
はい、ダウトですね!
イフ経由で僕の取らせた写真をアイリの頭に貼り付ける。なんとなく耳をハムハムされて惚けている顔も貼ってみた。イフは優しいからね。アイリの可愛い顔は取りたいって簡単に協力してくれましたよ。
「こっ、これは……」
「嫌な顔じゃないもんね」
「……すいませんでした」
「いや、いいよ。だから、また触るね」
オセロを片付ければ片手がまた空くので弄るのはその手でいい。後退させるための言葉すら塞いで触っているので否定する気も、というかツンデレのツンがないだけでめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
携帯があるなら写メにするね!
「はぁ! 終わったので来まし……って! またイチャついているんですか!」
「あっ、来てくれた。それで話を聞きたいんだけど……いいかな?」
「話はしたいと言っていたので来たからいいですよ! ……って! そうじゃなくて!」
いや、フウって優しいなぁ。
来てからアミのご飯を食べたいって話とか、フウの話を聞きたいって言うだけで早めに来てくれたんだから。目の前のフウには拍手を送りたいね。パチパチパチ!
「まぁまぁ、話は座ってからでも出来るから。どうぞ、ここへ」
「これはこれは。ありがとうございます。……って! 違います! 流されませんよ!」
ノリがいいなぁ。
健気に僕が手を差し出して対面のアキの隣を指すと、お辞儀をしてから座って、その後にツッコミを入れてくれる。すごくからかいやすいなぁ。僕のいた世界ならノリは関西人とかなのかな。
「いや、そんな話をするよりもしたい話は多いからね。別にフウだって暇じゃないんでしょ? なんなら僕達の宿に来るかい?」
「口説いているんですか!? 私のお尻は軽くありません!」
「大きなおし」
「大きくないです! 失礼な!」
顔を赤くして手を上に掲げながら少し大きめの声を出す。最初の時みたいな大声はオジサンに怒られるからしないみたいだ。学んでいるねぇ。
「っと、冗談は置いておいて。なんでフウはここに来ているんだ? SSランクともあるものが理由もなく国境近くに来るわけがない。成り立てならまだしもフウだったら余計に」
「……いきなり真面目になりますね。その差に好かれる人も多いんですかね」
誤魔化しているのかな。
理由を知るのは簡単だけどその手段は最後までやりたくない。仲間の命が危機的ならまだしも今回は聞こうと思えば聞ける。それに嫌な予感がするから聞き出せるのなら聞いておきたい。
「それならフウも僕のことを好きになってくれるのかな。まぁ、それなら余計に話してくれるよね」
「……せっかちですね! 分かりました! 話しますよ!」
冗談を交えて話すとフウは諦めたように目を細めてから小さく呟くように話し始めた。
書きたいことを書かせてもらいました(トリップ中)
いや、店ですることじゃないですね(真顔)
少しずつ進ませていきます。
あっ、後、次回はシリアスな感じになると思います。明確な敵? みたいなものが出るとか出ないとか出ないとか……。お楽しみに!




