3章5話 バレなければ.......です
「また色々とやらかしたようね」
「……すいませんでした」
宿に戻ってすぐに僕は正座をさせられることになった。セイラの顔が強ばっていたので逆らえるわけもなくて……そしたら床に魔法で石を並べられて……膝にはシロが座ってくるし……じっ、地獄だ……。
「……詳しいことはシロから聞いたかしら。別にやり返すのは仕方ないにしても、違った方法は……」
「違った方法をやって皆が襲われたら元も子もないから。特にこの街で一番強いエスを倒しておけば変なことはされないしね」
それにしてもシロめ……チクったな。
そのうちバレることだし報告はするつもりだったけどさ、露骨に目を逸らされるとそれなりにむぅとするよ。別に悪いことはないんだけどね。
「……何日かはここにいるのよ。別に鉄の処女だけでも話は聞けるかしら。明日からは付き合ってもらうのよ」
付き合ってもらうって?
……あの、何でシロさんは嫌な顔をしているんですかね。ねぇ、ツンツンはしないで……ピリピリして、石が足に刺さって……痛い。
「付き合うって……?」
「あーあ、これからこの街の貴族に睨まれるのかしら。その原因の人は変なことを聞いてばかりで返答はしないし」
「すいません! 付き合わせていただきます!」
えっ? なんでこんなに生き生きしているの?
まぁ、この街に少しの時間いなくちゃいけないことには変わらないだろうし……いや、そうじゃないよね。
「本当にすいませんでした」
大きく土下座をしておく。
セイラ達に対しては悪い気持ちはある。相手側には一切ないけど。襲ってきて慰謝料なんて渡すものか。自分の尻拭いくらいは自分でしてください。
「……まぁ、相手の方が悪いのは理解しているかしら。そこは安心していいのよ。明日からの働き次第で許すか許さないか決めるから心してかかるかしら」
「イエス!」
イエスはさすがに通じなかったけど慈悲だけは貰った。何するのかは分からないけど明日からは頑張らないとなぁ。……部屋に案内される時にセイラがミッチェルに何か話していた気がするけど……気のせいかな?
「それで僕は誰と同室になればいいのかな」
セイラのおかげもあってか、僕達の泊まる宿はホテル並みに整備された洋室の部屋だ。キングサイズのベッドが二つあって、その前に机と椅子がある形だね。お風呂はないけどテラスはあるしぼんやりと外の景色を眺めることも出来るみたい。
そこで疑問に思って聞いてみたけど、結構な爆弾発言だよね。言ってすぐに口元を覆ってしまった。
「……逆に誰と同室がいいのですか?」
と思ったらミッチェルの返しで皆が頷く。
うーん、誰とか。まぁ、約束のことはともかくとしてミッチェルは抜けないよね。後はロイスとかシロかな。ロイスは癒しだしシロは入れないと抗議を始めるし。
「何日かいるのなら交代制にすればいいんじゃない?」
「いえ、それはありません。いつまでここにいるかも分かりませんし、離れる時に一緒になれる人は見てられませんから」
我ながら画期的なアイデアだと思う。
でも、却下されてしまった。ミッチェルの反論にミド以外、全員が頭を縦に振っているから共通認識なんだろうね。というか、なんでジルとセイラも頭を振っているのかな?
「うーん、今日は……頑張っているからイルルとウルルも部屋に入れようかな。こんな機会じゃないと話せないこともありそうだし」
「本当なのだ?」
「本当ですか?」
今日まで一度も同じ部屋で寝たことはないからね。特に夜のうちに何をされるかわかったものじゃないし。別に襲うと明言されなければ家でも一緒に寝ることはあったかもしれないけど。
「まぁ、ベッドは二つあるしね。同じベッドっていうのは少し夜が怖いから無理だけど、一緒の部屋に寝ることくらいなら良いかなって。後はいつもの人達、ミッチェルとロイスとシロかな」
「十分な進展なのだ!」
「十分な進展なのです!」
そこまで二人に構わなかったかなぁ。
ああ、確かに会ったとしても軽い話しかしていなかったし、どこか遠ざけていた気もするから好きと公言する二人なら喜ぶのも当たり前か。
「その代わり夜に襲ってくるとかはなしね。眠れないのなら眠ってくれるまで何かしてあげるからさ」
聞きたい話もあるし今日のところはいいだろう。明日からはセイラの護衛だしミッチェル達にも話したいことは山ほどある。うん、どこか修学旅行気分は否めないね。枕投げとかいうリア充のお遊びをしたいなぁ。怒られるから無理だけど。
「そこは……」
「……我慢するのだ」
イルルとウルルから約束もしたし襲ってくることは無いだろう。一日でもお風呂を抜かすのは良い気持ちはしないけどそこは贅沢な悩みだよね。空間魔法で帰ることが出来るだけ十分、いいことじゃないか。
夕食は高級料理みたいな見た目の食事が並んでいたけど味は微妙だった。細かく言うのなら薄味で僕の舌には合わない。これが上流階級の食事ならあまり食べたくないかな。ミッチェルの手料理の方が美味しいです。
食事をする時もジルがセイラの毒味をしていて驚いた。想像だけの話じゃないんだね。普通は護衛が高いものを食べることは無いみたいだけど、セイラの性格上、ジルとミドが食事から離されるなんてこともないし。ただしミドの食べ方は汚かった。習わないのかな。さすがはワイルドと言われて笑われただけはある。うんうん。
部屋割りとしてはフェンリルで一部屋、鉄の処女で一部屋、ミドとエルドで一部屋、セイラとジルとキャロで一部屋だ。その中でも僕達の部屋だけが大きくて、皆の部屋から距離が離れているのはなぜなのだろうか。……色魔か何かと勘違いされていませんか? セイラ様?
家でもないので特にやることがない。
部屋へと戻り誰もいないのを確認してから着替えておく。二日も同じ服装とか小学生ならまだしも高校生ではやらないよね。体臭とか気になるし周囲のことを考えてしまうし。
「……遅かったです……」
帰ってきて早々ミッチェルがそんなことをボヤく。いつも見ているでしょうに。別に一日や二日、僕のことなんて見なくても生きていけるでしょ。……床にへたれこむ程のことかなぁ?
「特等席」
「あー! シロ様、ズルいのだ!」
「いつも座っているのですから譲ってくださいです!」
「断るです!」
椅子に腰掛けているだけで膝に座るシロのくせはどうにかして欲しい。乗っかってくる時に衝撃が膝に伝わるしステータスのこともあってか痛いし。
「はいはい、喧嘩しないでね。後、シロもいきなり座らないで」
「分かりました、お兄ちゃん」
ここぞとばかりにお兄ちゃん呼びかい。
どうせ注意しても治らないんだろうなぁ。雑にシロの頭を撫でて肩に顎を乗せる。それにしても暇だなぁ。鍛治とかしたいや。もしくは錬金とか戦闘とか。エスの言っていた魔物は気になるしね。
「シロばっかりズルいのだよ! 見た目は変わらないはず! 何が悪いというのだ!」
「いや、特には」
「理不尽です!」
「理不尽だよ!」
襲いかかってくるところはシロも双子も変わらないしなぁ。まぁ、ここまで気を許せるのはシロは僕の所有物だからかなぁ。それにシロがいなければ今の僕はないかもしれないし。
そう考えるとミッチェルよりもシロの方が付き合いは長いんだよね。僕の城、それがシロだから。僕以外の物にはならない。なるとすれば僕がシロを放棄した時か、どちらかが死ぬ時だけだ。
「……イルルとウルルはいじりやすいからね。そこで違いがあるだけだよ」
「嘘をついている。目が泳いでいるのだよ」
「まがりなりにも悪魔に嘘なんて効かないですよ」
半分本気だったんだけどな。
まぁ、効かないならそれでもいいけどさ。
「うーん、あれかな。付き合いが長いからとか」
これなら嘘ではない。
イルルとウルルの過去なんて知らないし、ミッチェルでさえも知らない過去がある。無理やり聞くのは無粋だし話したくないなら話さなくていいというスタンスだ。まぁ、何があってもミッチェルを嫌いにはならない自信はあるけどね。
「旦那様が聞いてくれないから話さないだけなのだよ。我らの過去を知りたいのなら早く言えばいいのだ!」
「あっ、じゃあ、いいや。別に過去なんて気にしないし」
「鬼畜です!」
「鬼畜だよ!」
面白い子なんだよね。
イジリが酷ければイジメになる。でも両者が楽しめる関係であればイジリはコミュニケーションの一つだ。傍から見ればイジメでも当人にとってはイジリの時もある。なんだかんだ言って二人も僕と話す時は楽しそうだしね。
膝に居座るシロに「少しだけ離れてね」と囁いて動いてもらう。このままなら動こうにも動けないしね。
「ごめんごめん」
「だっ、抱きしめられても! 騙されないのだよ!」
「同感なのです!」
皆もハグくらいでははぐらかせなくなってきたなぁ。昔はこれで何も無かったことに出来たのに。それだけこの生活に慣れてきたってことだよね。良きかな良きかな。
「でもね、ミッチェルにも言っていたけど僕は過去に興味はないんだ。ミッチェルは僕のことが好き、僕もミッチェルのことが好き。それでいいじゃないか」
もちろん、ミッチェルだけじゃない。
「ロイスもそうだしシロもそう。アキとかアミとかアイリとか、もちろん、イルルもウルルも信用しているから僕の家に置いているんだよ。好きじゃなかったら出てけで終わっているさ」
皆に甘い顔をする人ほど信用出来ない存在はいない。僕は広く浅い交友関係なんて恐ろしくて出来ないんだよね。狭くて深い交友関係、裏切られても許せるほどの仲でなければここまで良い顔はしない。口説くような言葉とかイジリとかはしないね。
「いつもありがとう。イルルとウルルには言う機会なんて珍しいからね。こんなことを言うのは気恥しいし、どうしてもイジって誤魔化してしまうんだ」
「っつ……」
二人が黙り込む。
やっぱり、こういうことは言われなれていないんだろうな。顔を赤くする姿は可愛いし、女性としては見れないけど女の子としてはとっても可愛いと思う。まぁ、ミッチェルには敵いませんけど?
【心の中までツンデレを気取らなくてもいいのに】
ツンデレじゃありません!
恥ずかしいけど伝えないといけないだろ? テンプレ君が働いて死亡フラグにならないことを祈るけどさ!
「今度、一緒に遊ぼうか。というか、仲間と言いながら個人個人で遊ぶ機会なんて少なかったからね。優遇されているミッチェルやロイス、シロ以外の皆とも遊ばせてもらおうかな」
「……ギドさんがやりたいならそれでいいと思います」
ミッチェルは少しだけ複雑そうに笑った。
なんでそんな表情をするのかは分からないけど、ミッチェルが喜んでいるような悲しんでいるような、その狭間で揺らいでいるのだけは見て取れる。何かがミッチェルの心を傷付けたのかな。
「もちろん! ミッチェルとかとも遊ぶよ?」
「……いえ、そうじゃないですよ」
まだ言えないことなのかな。
深くは聞かない。だから言える時に言ってもらおう。頭を撫でて慰めておく。ミッチェルは優しく、シロは少し雑に、ロイスは耳ら辺を撫でれば一番気持ち良いみたいだからね。無論、ミスするわけもない。
「さあ、今日は寝よっか」
雰囲気があまり良くないので無理やり区切る。話の途中だったけど初めての長旅でロイスは意識が朦朧としていたし、割とちょうど良かったかもしれない。ベッドに入る前にイルルとウルルに頭を撫でられることをせがまれて「おやすみ」と言い合う。
ロイスを横たわらせてからベッドに寝転がると、ミッチェルが左を取って反対をロイスが取る。お腹の上にはシロがいるけど慣れて重みが心地よく感じられた。
「……ぐぅ」
おやすみという間もなくロイスは眠りについた。シロもすぐに眠りについていた。隣のミッチェルも直に……。
「……おやすみ」
言った拍子にミッチェルの髪が少し空いた窓から入る風に揺れて僕の顔にかかった。これが返答なんだろうな。明日も早いし久しぶりに早く寝るのも悪くないか。旅道具でトランプとか作るのも悪くないかも。
そんなことを考えてから僕は瞳を閉じた。
あっ、歯を磨くのを忘れていた……。
まっ、まぁ、明日やればバレないよね……?
イルルとウルルの過去はそれなりに進んでから書く予定です。書こうか悩んだんですけどここじゃないかなと思ってやめました。
※3章後半の3話、4話のドン勝の話や誰がどのように話しているか分からないなど、ご意見をいただきましたので書き足しをしました。暇があればもう一度読んでみてください。後、分からない部分などがあれば感想などで教えて貰えるとありがたいです。
最後に明日は投稿出来ないです。すいません。




