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3章2話 シロは可愛いです

久しぶりに長めで書きました。

「うぅ、魔物が出ないなぁ」


 おかしい! 鉄の処女が護衛していた時はすぐに魔物が出たのにさ! なんで僕達の時は三十分経っても現れてくれないの!


「……ここは森から少し離れていますから」

「森って……」


 エミさん……絶対に謀ったな……。

 僕達が交代してもらったのは検問を抜けてすぐだ。検問は橋を渡ってすぐだから森はその後ろ。それも横に大きな木々は見えても割と整備された道で、魔物の気配も多くない。いたとしても少し離れた木々の奥だ。


「……ごめん、少しだけ抜けていい?」

「だっ、ダメだよぉ……ギド兄は皆の大切な存在なんだよ……? セイラ様と対等に話せるのはギド兄だけなんだから、その人がここを離れたりしたら依頼不達成だよ……」


 分かっているさ……。

 それを承知の上で行かせて欲しい。

 なんて言えないよね。さすがに大切な弟に行かないでなんて涙目で言われたらさ。ってか涙目の理由はよく分からないんだけど。一緒にいたいのかな。


「……そういえば幻影騎士はCランク待ったなしって言われているんだっけか。これはザイライも追い越されるかな」


 本当にDランク冒険者にはかわいそうなことをした。まずメイドのキャロが戦った相手は敵の攻撃を盾で受け流して、隙が出来たところをちょくちょく攻撃するタイプだった。だけど圧倒的パワーのキャロには無意味だった。模擬戦用の盾ごと壊されて壁にズドン。イフに映像を見せてもらった時は恐怖したね。


 戦闘執事のエルドは遠距離の弓兵だったかな。なにせ一発撃たれてから弾いて面白くなさそうにエルドが一撃で倒していたから記憶が薄いな。縮地も使う必要性がなかったらしい。


 イルルとウルルは見てわかるとおり難なく魔法を撃ち込んで終わった。というか悪魔らしくなく一瞬の電撃で苦しませずに気絶させて倒していた。この二人はよく分からないな。これでファンがいることが不思議で仕方ない。……ロリコンかな?


 リーダーのロイスはもちろん、圧勝していた……けど……。純粋なのはいいんだけどさ、相手のオジサンが泣いていたよ。そりゃあそうだよね。何年間も戦ってDランクになって、こんなに小さな子に簡単に、幼子のように手玉に取られたんだから。


 切っては盾でいなされ守ろうにも振る速度は早く、挙句にはロイスが指導し始めるというプライドズタズタ行為。幼稚園児に高校の勉強を習うようなものだよね。僕なら泣くわ。


「それはギド様がランク上げに積極的ではないからです。それに皆様よりも凡人である俺やキャロのせいで時間もかかりましたし」


 よく言うよ。

 実際、ロイスや僕とかミッチェルとか、そういう僕の仲間の古参や勇者、悪魔には劣っているかもしれないけどさ。でも悪魔は長年生きていたから、僕やロイスは勇者というチート、普通に強くて才能があるのはミッチェルや人狼っ娘三人だけだよ。


「それは一週間と三日でランクをDまで上げたやつらが言うことじゃないね」


 相手がいたたまれなさすぎるよ。

 幻影騎士の相手は二十五年という長い年月をかけてDランクで安定したのにさ。この子達は短い期間で他の人からも評価はいいし、何よりもフェンリルの名前が効きすぎている。今は女性だけのパーティが増えているけど、その理由がフェンリルのようになりたいらしいし。


「Bになるって言っていたしね」

「ああ、アキ姉達だね。すごいよ、あんなに興味もなさそうに言えるなんて」


 本当にそうだよ。

 伝えてきた時も居間で三人の首元を撫でてモフモフを愛でていた時に、「あっ、ランクがBになります」って言っていたし。そこで聞こうと思って手を止めたらアイリに怒られるし。鉄の処女の一歩手前って普通はもっと時間がかかるからね。鉄の処女よりも早くランクが上がっているし。


「僕もSを目指そうかな」

「……願望がすぐに叶いそうで怖いです」

「本当にそれ。僕って変な面倒ごとに巻き込まれやすいし。……案外、次の街で大きな出来事に巻き込まれたり……?」


 スタンピードとか?

 はは、まさかね……?


「魔法国のスタンピードは鎮圧はされていませんが均衡を保てています。王国でも同じことが起こっていてもおかしくないですね」

「まぁ、それも王国側が魔力溜りとかを作っていなかったら、なんて前提があればだけどね」


 王国の……ムッノーだっけ?

 王様だけど人に厳しくて利にならなければ切り捨てるらしいし、案外街なら自分達の計画のために切り捨てられてもおかしくないんだよなぁ。別に王国が多大な被害を受けようとどうでもいいんだよね。僕の預かり知らぬところで消えてくれればいい。あんな害悪なんて。


 ココもなぁ。可愛いけど面倒くさいし。好きな部分もあるから死んでほしいというよりも僕の知らないところで幸せになって欲しい。アイツは自分が一番じゃなかったら気に食わない性格だからね。ミッチェルとは合わないでしょ……。


「……と、まぁ、話していたけど前方から魔物が来るよ。ロイスとエルドは馬車の警護。シロは僕と一緒に来る」

「了解です」


 シロは……まぁ、おんぶすればいいか。

 出てくるのはビックモスとかいう魔物らしいから早く着いてサッサと倒さないと。馬車が来る前に倒さないとタイムロスになるし。


 走ってビックモスの目の前に着く。

 うん、なんか周囲に花粉が待っているように見えるね。実際は鱗粉という余り心地よくないものなんだけどさ。


「エアー」


 風で僕達の方に鱗粉が来ないようにする。

 目の前が少しずつ晴れ始めてようやく相手の姿を視認出来た。名前の通り大きな蛾なんだけど……なんか、気持ち悪いな。大きな対の羽の中心には目のような気持ち悪い模様がついている。女性陣が嫌がるのもよく分かるなぁ。


「シロは怖くないか?」

「……我慢する」

「よしよし、後でいっぱい愛でてあげるからね。……それじゃあ、即退場してもらうか」


 魔物の姿を見れればそれでいい。

 もう少しファンタジーな感じで可愛かったりカッコよかったりする敵だと思ったんだけどな。これは見ていて良い気はしない。……蛾の女の子とか少し可愛いと思ったんだけどなぁ。さすがに二次元の擬人化でしかないから当然だよね。


「蛾は蛾でも僕は蚕蛾の方が好きだ!」


 あの何も食べないという性質。見た目の可愛さと白一色の美しさ、それでいて指に止まると少し震えて軽い風で落ちてしまうほどの非力さ。あれを可愛いと言わずしてなんというか。僕の理想のタイプと言っても……それはさすがに言いすぎた。撤回撤回っと。


「……カイコガ、にシロがなるよ?」


 あぁ! もう可愛すぎる!

 ミッチェルに蚕蛾のイメージを教えてコスプレ道具でも作ってもらおう! うん! 絶対に似合うし可愛いと思う! サイズ調節を付けてくれればミッチェルでも着れるし! いいこと思いついちゃったよ!


【さすがマスターです! 私も手伝うのでその時はぜひ! 写真の許可をください!】


 さすがは僕の分身だ!

 その時は節度を守ってくれるなら僕の写真も撮っていいからね。なんなら僕も着るよ。ミッチェル達が喜ぶと思うし。


【ああ、実体が欲しいです!】


 うん、それは頑張るよ。

 この見た目ならコスプレも似合うしね。


 僕は頭を貫かれて倒れたビックモスを回収しておいた。よく分からないけど売る時に高額らしいからね。エミさんが回収は必須だって言っていたよ。アキに頼んで回収は任せておいたけどさ。


 イフ、これって何を使うの?


【ビックモスの鱗粉は熱して煮込めば媚薬に、そのまま使えば麻痺毒や麻酔として使えます。ステータスも七百程度で強いので個体数が多くても市場には出回りづらいですね】


 おおぅ、結構使えそうな能力。

 麻痺毒ならアキの弓との相性もいいしたくさん持っていて損は無いね。ポーションとか、後そうだな、睡眠剤としても売れるかも。これはいいアイテムですわ!


「……すごいです」

「うん? 元気ないね?」

「……ワルサーの威力がシロとは全然違う」


 ああ、その事ね。

 となれば割と常識の話だけど得物についての話もしておいた方がいいかな。シロの成長に繋がるかもしれないし。まぁ、僕も詳しいわけじゃないんだけどね。


 あれ? イフに説明を任せておいたはずだけど。


【私がしたのは簡単な銃の説明です。詳しい話は省いていたので威力等には影響がなかったのでしょう】


 ああ、そういうことか。

 となると拳銃というか、銃の常識を話した方がいいかな。ワルサー限定の話じゃなくてさ。ワルサーだけだと少し説明不足な気がするし。


「先に話しておくけど拳銃とかの銃弾っていうのには大きさと威力の比例があるんだ。シロとか僕の使えるワルサーはワルサーP38っていうのを想像して作っているんだ」


 この拳銃は僕が好きなアニメキャラクターの得物であることでも有名なんだよね。幼少ながらに悪というか敵を打ち倒す姿に興奮を覚えてこの拳銃がイメージされたと思うんだよなぁ。その人は大泥棒だったけどさ。


「その中でこれは九ミリの弾丸の大きさで一応は平均的な大きさってことで考えてくれていいよ。僕も詳しくはないんだけど拳銃の括りであるワルサーよりもライフルとかマグナムとかの方が威力が高いんだけどね」


 弾丸が大きいということは威力が高いって考えていたけど、打ち出せるだけの威力の差でライフルが勝つとか調べたら色々と面白いんだよね。某サバイバルゲームでも知識がないとすぐに死んでしまうし。


「じゃあワルサーは弱い……?」

「ええっとね、ここからは勇者とかの世界の話じゃなくてこの世界の話になるんだけど。僕のワルサーは拳銃であって拳銃ではないんだ」


 それこそファンタジーなのだから剣よりも拳が勝つなんてざらにある。それと同様に僕のワルサーはワルサーであってワルサーじゃない。うーん、説明が難しいな。


「要は心器だから、っていうことで考えてくれれば納得出来るかな。僕の心が強ければ強いほど、弾丸に込める魔力が多ければ多いほど威力も高くなるし、撃ち出される速度も全然違うんだ」


 これもゲームの話だけど某ゾンビゲームで言うところの、初期装備のピストルであり充填速度はサブマシンガン、威力はロケットランチャーみたいな感じかな。


 まぁ、そのゲームみたいに当たれば一撃とか、銃一つや弾丸で倉庫内が埋まる訳でもない。ロケットランチャーよりも威力はライフルと言えばいいのかな。でもなぁ、ライフルほどの遠距離スナイプは出来ないや。


「うぅん……難しいです」

「詳しいことはイフから聞きなよ。多分、僕よりも知識量が多いからさ。それで僕が言いたいのはワルサーが必ずしも強いというわけではないこと」


 ワルサーは確かにチート武器だ。

 でもゲーム内なら救援物資とかで落ちてくるようなものだし、自分達が強くなればなるほど同時に強化され、逆に相手との能力差によってはダメージも与えられない雑魚武器になる。


 僕が作る割合回復ポーションみたいなことだよね。武器が装備者の攻撃力アップが定数ならば弱い人にとってはとても効果的だし、熟練者ともなれば割合の方が定数よりも上昇率が大きいかもしれない。


 この武器もそうだ。


「今はさ、シロのステータスが高いから簡単に撃ち殺していられるけど、多分、僕が相手ならダメージは少ないよ」


 少しだけシロはワルサーに頼る癖がある。

 遠距離ならばワルサーを、近距離ならばドレインで打ち倒そうとするけど、それだけでは勝てないこともある。シロは魔法が使えるのに使おうとする気はないからね。


 下手に能力の武器を使うくらいならナナシのような聖剣を作るのも手だからね。案外、そっちの方が強化力が大きくてシロにはちょうどいいかもしれない。


「そのうち僕の心器も進化するかもしれないしね。イフいわく進化は突然起こるらしいし。ライフルとかがあればいいな、とは思っているよ。より遠距離で戦えるしね」


 最悪なのは形状変化でワルサーからトカレフになることかな。いやまぁ、好きだけどさ。拳銃大好きだからって同じような性能、いや、威力が落ちたものは勘弁して欲しい。用途分け出来るものが欲しいわ。


 ロシア産の大量生産トカレフとかなら泣くしかないよね。さすがに心器でそんなことが起こるわけもないけどさ。……でも欲しいから作ることを試してみようかな。暴発とか撃とうとして爆発は防がないと。


「とりあえずはこれからは僕からの武器以外で戦ってみれば?」

「……マスター以外の武器を使いたくない」

「けどさ、それで負けたら元も子もないでしょ? ダメもとでさ、もしかしたら良い戦い方があるかもしれないし。それに拳銃についてはより詳しくイフからされると思うよ」

【……説明が難しいんですよね。とりあえずは頑張らせていただきます】


 本当にごめんね。

 丸投げ感が半端ないし僕も詳しい説明は無理だ。頼りにさせてもらうよ。……後、出来ればビックモスがいそうな場所はピンさしておいてね。暇があれば飛んでいくわ。


【締まらないマスターも好きですよ】


 イフにからかわれながら馬車が来るのを待った。もちろん、鱗粉は風魔法で散らして……いえ、本当はポーション用の空瓶に集めて入れておきました。嘘吐きました、すみません。

蚕蛾シロ……可愛すぎて早く書きたいです。

蚕蛾可愛いですよね? ね?(威圧)


次回をお楽しみに!

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