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3章1話 馬車の車窓から、です

後半と言うことで1話からやり直しです。

「いい加減にシャキッとするかしら。男性が女々しいのよ」

「そうは言ってもさ、今日から出発なんて思わなかったんだけど……」


 僕達は馬車に揺られて見知らぬ街道を走っていた。こうなったのも朝のセイラの訪問のせいだ。初めて名前を貸していると言って強制依頼を受けさせられたんだよ。


「騙されたぁ……」

「仕方ないかしら。そこは今度から騙されないように用心するしかないですわ」

「ギドは気にしすぎだ。Aランクともなればこれ以上に理不尽な依頼なんて多くあるぞ。それにしてもいいのか? オレ達までついてきて」


 馬車の窓から顔を覗かせエミさんが笑いながら僕を見てくる。僕の隣にはセイラがいて反対側にはミッチェルがいる。膝にはシロがいて少しだけ窮屈だ。


「言い方は悪いかもしれないけど手駒は多い方がいいかしら。少しお金を出して安心安全な旅を約束されれば誰でも頼むのは当たり前なのよ」


 鉄の処女の出発前に来たセイラは全員に対して話をした。今、向かっているのは王国らしく立場としては護衛として来て欲しいらしい。僕とミッチェルに関しては前回のウルフの件もあるので絶対に来て欲しかったらしい。


 僕としては頼まれたらやるよね。セイラのことは好きだし何より全員に対して報酬も出すなんて太っ腹加減だ。僕の仲間が強いことは分かっているから全員に来て欲しいことはよく分かるけどさ。


 今回の馬車も空間魔法で広げられた馬車だから全員が安心して乗れる。僕の魔法ならまだ出来ないからこれをやることが出来たであろう、セイラの祖父はとてもすごいな。


「それよりも交代はいつにする?」

「ギドはそこにいればいい。皆の癒しだからね。最悪はミド君に見張らせればいいからあまり考えなくていいさ」

「ギドがいないと寂し……皆が暴れるから気にしないで欲しいかしら。ジャンケンで負けた者はこの部屋から出る、そう決めたはずですわ」

「はいはい、寂しいんだね」

「そんなことないかしら!」


 えっ、怖い……。

 冗談なのにここまで本気で否定してくるなんて嫌だったのかな。……の割には近づいてきてますけど。後、隣を陣取ってジャンケン制度という勇者が伝えたもので自分以外を対象にしたやり方もセイラから言っていたんですけど。えっ? どっちなんですか?


【マスターは最低ですね】


 なんで?

 女性心が分からないとは思うけどそこまでかな? だってさ? 好きならもっと近づいてきてもいいような気がするんだけど……。


【マスターは最低ですね】


 マスターは最低ですねBOTか何かですか?

 うーん、よく分からないよ。まぁ、嫌っていないことは行動から分かるけどね。ぶっちゃけた話、僕も異性の友達にはこんなことしていたし。恋心かどうかは本当に分かりません。ワタシワカリマセーン。


「でもさ、途中で代わるよ。僕もここに座ったままだと護衛している気がしないし」


 家に閉じ込められた犬のように外に出ることを望む。戦闘狂ではないけどもしかしたら見たことない魔物がいるかもしれないからね。王国内では獣人は少し差別的な目で見られるだろうけど、端の街ならそこまで差別は行き届いていない。


 まだ魔法国内だから気にしなくてもいいんだけどね。僕も王国内なら顔を出していいかも分からないし。いつ尻尾を出してしまうか分からない。本当に怖いよ。


「ふぅん、珍しいな。大概の人は休みたがって外に出たがりたくないんだが……」

「私個人としては一番強い人が近くにいてくれるとありがたいかしら」

「いやー、僕って街から出たことないんですよね。他の街ってあまり知らなくて、知らない魔物とかいたら戦ってみたいなって」

「……可愛すぎかよ」


 エミさんが僕の目を見て言ってきた。

 どこに可愛い要素があった? とは思うけどさすがに聞かない。人によって見え方は違うからね。僕にとってはカッコよくなく見えても違う人にはよく見えることもあるし。


「はいはい」

「……女の子扱いするんじゃねえよ」


 頭を撫でるだけで俯くんですけど。

 うんうん、可愛いですねぇ。もっとしちゃおっと。


「あっ、皆には後でするから」


 刺されそうな勢いで睨まれていたので謝っておく。特にミッチェルとシロがものすごい目で見ていた。セイラは僕の顔をじーっと見てきていたし。


「それでここら辺には何がいるの?」

「……あっ、ああ。一応はコボルト系統が多いな。後はビックモスとか虫系の魔物も多いぞ」

【わっ、私の役割が奪われましたわ! これは一大事ですわ!】


 イフ……ふふ、セイラのモノマネうまいね。


「どうかしたのかしら?」

「ひっ、いっ、いえ、ナンデモナイデスヨ」


 怖っ! 目の色彩が黒一色だったんですけど!

 なんで分かったし! 僕に変な点は一個もなかったはずだ! 僕は無実だぁぁぁ!


【思っていたことには代わりません。よってギルティです】


 再審を! 再審を要求する!


【却下です】


 そっ、そんなぁ……。

 ……でもさ、これの元にあるのはイフのモノマネのせいでは……。


【……さぁ? なんのことでしょう】


 露骨に目の前に顔を出して目を背けないでね。あとさ、口笛の前も意味ないよ。なんかバーチャルの女性みたいだから音も出ないし。……いや、これも演技か!


「……虫は嫌いです」

「シロも同感です」

「いいもん! 僕はロイスとエルドと一緒にやるからいいもん! 男同士でしか分からないこともあるもん!」

【……シャッターチャンスで】


 おいおい、それはまだ解禁していないだろ?

 まさか……約束を破るって言うのかい?


「……私を経由すればいい」

【確かに! シロを経由すれば写真を撮るのは私じゃなくてシロ! やっちゃってください!】

「ん! 撮っておきました! 皆で後で見る!」


 まっ、まさか……妹のように可愛がっているシロに裏切られるなんて……。今更だけど皆から「可愛い」とか言われるんですけど。過去のトラウマが……。あっ、でもさ、今気がついたけどシロとイフが繋がれるのなら色んなこと出来そうだね。


【……あっ、確かにその通りですね。寝顔も簡単に】


 撮らせないよ?


【ちっ……まぁ、目を開けばいつでもマスターの寝顔は見れるのでいいです。愛しています】


 ……面と向かってそれはずるいよ。

 イフの顔って僕の好みを集結させたような顔だしさ、ミッチェル以上とは言わないけど同等くらいには大好きだよ。


【マスターは! 最近告白をし過ぎです!】


 告白は付き合う時じゃないの?

 まぁ、好きって言う気持ちくらいは伝えておかないとね。やっぱり人なんていつ死ぬかわからないし。……って、これってフラグっぽいなぁ。テンプレに引っかからないといいんだけど。


「……妹……」


 なんかシロがorzの形で地面に頭を付けているんだけど……なんか可愛いな。無理やり持ち上げて抱きしめておく。うんうん、ふかふかで気持ちいいよ。


「……騙されない」

「可愛いなぁ。でもさ、妹ってことはこれから一生一緒にいれるんだよ? 逆に他の人より安定しているじゃん」

「……確かにそうですね」

「ミッチェルとイフとアキと、その他諸々はいるだろうけどね」

「……許す」


 シロは皆のこと大好きだもんね。

 割と僕だけじゃなくて全員と一緒にいれるならなんでも許してくれる。……ココだったらブチ切れそうだな。さっきから寒気もするし絶対にアイツいるだろ。


 それから一時間は交代の時間は回って来なかったけど検問を出てからは僕にお鉢が回ってきた。もちろん、僕と一緒にいるのは男子勢とシロだ。シロはおんぶして欲しいらしいから仕方ない。……実際、セイラを除いた全員でジャンケンして勝った強者がシロなんだよね。


「交代は昼になるまでだな」

「私は鉄の処女のエミ様とは話したかったのでちょうどいいですわ。ミッチェルもいることですし皆にギドの話でも聞くとしましょう」

「それはいいですね! オレは聞きたいことがたくさんあるんだ!」


 僕はゆっくりと窓を閉めた。

 うん、聞いていいことと聞かない方がいいことってあるよね。今回のは絶対に後者だ。聞いてしまったが最後、僕はまともに皆と目を合わせて話は出来ない。


 僕は久しぶりのワルサーを取り出して構えた。今回はシロにも戦い方を見てもらいたいからこっちの方がいいよね。戦闘面での悪い所はイフから聞いて、うん、いい事づくめだ。


「二人ってビックモスって倒したことある?」

「いえ、魔法国から出たことがないですし検問近くまで来ることもありませんでしたからないです」

「ギド兄から離れたくないから戦ったことないよ?」

「ういうい、何だこの子は……あっ、僕の弟だった」

「仲がよろしいようで。アキ様がお喜びになられますね」


 エルドは少し離れて暖かい目で見てきた。

 何を言っているのだろうか、エルドもどう考えても家族に近いというのに。なんかさ、信者だからか分からないけど少しだけ距離があるんだよね。


「エルドも大切な家族だよ」

「ありがたいお言葉です」


 そのうちこれも緩くなればいいな。

 そんな気持ちで馬車の隣についていたらロイスがエルドに話しかけていた。なんでこしょこしょばなしなのかは、分からないけど周りにバレたくないことでも言いたかったんだろうね。


「……ギド兄様も気を負い過ぎずに。俺が二人の代わりに敵を倒しますから」


 普段通りの言葉だったけど呼び方が違った。

 ロイスが僕が悲しんでいるとでも言っていたのかな。まぁ、硬い性格は元からだ。少しずつ軟化してくれればいいさ。


「そうだな、でもギド兄様はくすぐったいからいつも通りにして。いつも頼りにしているよ」

「はい! 俺に任せてください!」


 僕はエルドの頭を撫でてまた歩き始めた。

 これで今回の旅、もとい護衛依頼の楽しみが増えたな。皆ともっと親密な関係になろう。あっ、括弧で意味深とかはないよ。絶対にイフが変なこと言いそうだし。


【ちっ!】


 僕も成長しているのだよ。

 ワルサーくるくる指で回す。

 早く魔物と戦いたいなぁ。

久しぶりのギド回です。えっ? セイラ登場のシーンと千鶴の話をカットした? あはは、ナンノコトデショウカ?


後、総合評価500と総PV100,000を突破しました。この調子で頑張っていこうと思います。次の目標は……年内で700ですかね。頑張ります!


今回の話はセイラメインにしたいです。

3章のラストは決まっていても途中が決まっていないこの状況……さて、どうしましょうか。続きをお楽しみに!

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