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1章6話 いい方法があるじゃないですか

少し短いです。

 とりあえず眠れないし戦闘訓練でも積むことにする。とは言っても剣を振るだけの見よう見まねの戦闘訓練だ。


 今更だけどさ、剣を振るだけで強くなれるとは思えないなぁ。あっ、それならやる意味ないじゃん。


 いや、振るうことに意味があるはずだ。一振り、二振り、それでは大差ない。でも二振りから四振りへ、四振りから八振りへ、八振りから十六振りへ。体と武器が同一化、なんてことは無理でも手には馴染むはずだ。


 うん、もう少しだけ振っていよう。

 僕は剣、いやこのワルサーなんだ。


 心器、心から現れた武器。僕の分身。


 ……剣術を習う。そんなことをしてみたいな。昔の剣豪達が剣に入れ込んだ理由が分かってきた気がする。


 確かにやればやるほど見えない自分が攻撃を仕掛けてくるような、そんな気がしてくる。


「……氷剣」


 うっわ、すごくMPが減った。


 氷で出来た長剣を八本、目の前の何かにぶつける。……僕が相手ならどうするかな。


「横!」


 いや、後ろの可能性もある。


 ワルサーを後ろに出してガードの構えを取る。後ろと想定したとしても横は空いているよな。


 氷剣を一本地に刺しそれを蹴ることで横に飛ぶ。割と氷剣は脆いようでこれだけで折れてしまった。


【……すごいですね。ですが、これならどうでしょうか】


 えっ? これが僕、かな?


 ちょっとだけ身長が大きくなって丸顔だった顔は細くシャープになっている。少しだけ長い八重歯が光ってて怖い。


 元の原型が一切ない気がするんですけど……。


 って、危ない。


「心器持ち、か。めんどくさい!」


 氷剣を全て飛ばす。多分、イフからの試練みたいなものだ。一人の訓練じゃ意味がないとでも思ったのかな。


 予想通り一回ぶつかり合うだけで壊れてしまう。強度の問題というよりも根元から破壊した感じだね。


 そう言えば、今の間だけはイフからの声が聞こえない。多分通信のようなものを切ったんだ。そうじゃないと意味がないよね。


 だって戦っている最中に【右から攻める】とか分かったら対処法が分かってしまうし逆も然りだよ。それはそれで面白そうだけどさ。


「銃弾は……MPから作られているな」


 三発で割とMPを消費した。

 これは長期戦は無理かなぁ。調子に乗りすぎた。

 向かってくるか。……そんなわけないよな。


「後ろ!」


 やっぱり、ミラージュか。


 ここでミラージュを展開。僕が使えてイフが使えない道理はない。となれば相手のミラージュは僕のMPから作られた存在。使い切らせれば僕の勝ちだ。


 残ったMPの殆どを使う。


「氷神殿」


 数本の花が咲き誇る。

 花の名前は知らない。


 それが僕の今、想像出来て作れる限界の魔法だ。


 分からないよな。イフは僕から作られたとはいえ、イメージ能力まで一緒ではないのだから。


「飛んだからって……躱せると思うな!」


 近くを通ればこの魔法は発動する。

 僕の分身に花が当たり蔦が足から体へと登っていく。細い氷の糸が分身から出ていき、そしてそれが地に落ち水へと変化した。


 少しイメージ不足だったから、後々直していこう。改良の余地はあり、と。


【……お見事です。これはオリジナル魔法ですか?】


 そうそう、周囲二メートル内に入れば発動するフィールド魔法? って言えばいいのかな。相手の体に巻きついて凍らせ糸のように細める。


【ですが、まだです!】


 えっ……、


「チッ……片手が……」


 大丈夫、切断じゃないから。

 氷で傷を塞ぎ出血は抑える。


 本体となるミラージュは魔力で出来ているから足でも切って偽物と交代したか?


 でも、その行動すら遅くなってしまった状態では……いや、やめるわけないか。


 そうだよな、僕ならまだやるよな。死ぬにせよ、足掻いて死ぬさ。ゾンビウルフの時は逃げ切れる自信があったし。どうせ、死ぬならってやつだ。


 ミラージュの応用、自分が死んだと思わせる。少し汚いけどイフの言葉も油断した理由だな。……甘すぎたか。本番ならこんなの汚いに入らないもんな。


 でも相手も倒れる寸前。そこまで追い詰められれば結構。


 一つだけ氷剣を出して相手に向かっていく。


 壊すよな、じゃないと致命傷だ!


 じゃあ、その後ろの攻撃はどうする?


 一発目は躱せても二発目は? 三発目は?


「……追撃の銃弾」


 八発目を撃った時にようやく相手は掻き消えた。今度こそ間違いがない。


【……マスターの勝利です。少し悔しいものですね】


 いやいや、僕もギリギリだったからね!


 もう少し踏ん張られていたら僕の大敗北だったし。ここで倒れてくれてありがたかったよ。


 現に手をどう治すか悩んでいる最中だしね。それに服もなぁ、私服のジャージを着ていたのだけど破けてしまった。これは早急に外へ出る必要が……ないじゃん。


 ルクス君がいたもんね。あの子の体格なら今の僕と同じくらいだし。黒コートなのは厨二病っぽくてちょっと、とは思うけど仕方なし。


 さすがに下着は取らないよ?

 ……女子のなら考えたかもしれないけどさ。




 ◇◇◇




 腰の痛みで目を覚ます。


 昨日の疲れから腰掛けてすぐに寝付いてしまったようだ。……あれ?


「アキ……お前だったのか……」


 膝の上にアキが横になって寝ていた。


 多分、僕との戦いの後に体調面を考慮して暖めてくれたんだろうな。そう、昨日はミラージュである自分との戦いの後にアキと戦った。


 さすがに魔法が使えないのをハンデとしていたけど、これまたキツイ。ステータスが高いからって油断をしていれば貫通力の高い牙にやられてしまう。


 以下にワルサーだけで攻撃を逸らすか、そして痛い頭を我慢するかの問題だった。結果は辛勝だったけど。


【おはようございます。身体の回復と睡眠学習によって妖精魔法以外の魔法を獲得しました。またMPをゼロになったため少しだけ魔力面のステータスが上昇したようです】


 うーん、これはMPをゼロにする理由になるよな。楽してステータスを上げられそうだし。


 それに妖精魔法以外は手に入ったとか……チートにもほどがある。いや、いいんだけどね。風と火で温風を、水と火と土で風呂を作れそうだし。


 いや、待てよ。

 もしかして上級魔法って魔法の組み合わせで手に入る属性か?


【正解です。なので通常属性を先に獲得しました。炎は火、氷は水、木は土と風と水、雷は火と水です。ただし雷は光の適性がなければ手に入りません】


 なるほどね、だからステータスには魔法が書かれていても炎と氷、呪以外の上級魔法が書かれていないのか。


【お言葉ですが手に入るのは確実かと思い……】


 いや、起こっていないよ。

 そうか、それなら魔法を教えることも出来そうだな。原理が分かれば教えることも不可能じゃないし。


 本当にイフがいてくれて良かった。レベルも10になったしね。昨日の戦闘後だから模擬戦でも経験値は入るみたいだ。


【……ありがたきお言葉です】


 そんなに畏まらないでいいよ。

 さぁ、ミッチェルを起こしに行くか。


「……大丈夫ですか?」

「って、うおっ」


 ベストタイミング!

 まさか起こしに行こうとしたら目の前にいるなんて。……少しだけ心臓が縮んだぞ。


 味気ないとはいえ、昨日と同じ調理方法で焼肉を作る。三日目だけど美味しく食べられるのは、素材がいいだけが理由ではないだろう。


「今日は何をするんですか?」

「んー、戦闘かな。ミッチェルが来た道を戻れば入口が分かるでしょ? だから崖下に降りる前に残ったゾンビウルフを潰しておく」


 崖下に降りてしまえばゾンビウルフは上がってこれない。それなら上にいるのは先に潰す、それだけの事だ。


 僕なら上と下を行ったり来たりなんて楽だからね。


「後……これからは……一緒に寝てください。……起きたら傷だらけなんて悲しいですよ?」

「……分かった」


 あっ、しまった。

 語尾だけを聞いて了承してしまった。一緒に寝るだと……童貞の僕には……苦痛だ……!


 まあ、仕方ないよね。

 いつまで続く関係か分からないんだから。手も出さないから未練も何もないだろうし。


「どうしました? 悲しい顔をして」

「何でもないよ」


 ミッチェルの頭を軽く撫でて誤魔化しておく。

 それを見ていたゾンビウルフっ子達にも強請られたのは予想外だったけど。そうして僕達は、また拠点をたった。

もう少しだけ日常編を伸ばします。

早くお外へ……。


後、イフは合理的な考え方をするのでズルとかはあまり考えません。勝てばいい、そういう考え方をします。


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