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3章18話 niceboat.です

タイトル詐欺、二段目

タイトルの理由は後ろ書きで分かります

 何も考えていないと思っていたけどそんなことはない。今回の敵は魔物の中ではずば抜けて頭がいい。こいつらは僕が中に入ってくるのを待っていた。まるで村の入口の対策をするかのように。


 この家だけは木材で出来ていない。

 そんなことには今気がついてしまった。そして一つだけの入口。村の入口ではなだれ込んで敵を押し潰す荒業だったけど今回は奇襲か。この時点で普通のオーク種ではないことは確かだね。


「ブァッ!」

「考えられるならもっと頭を使えよ!」


 力いっぱいドレインで相手の斧を押し返す。

 オークジェネラルとはいっても進化寸前のオークジェネラルだ。油断をしていては死にはしないにしても怪我はしそうだね。そう言いきれてしまう自分の成長に驚いてしまうけど。ゾンビウルフにビビっていたあの頃が懐かしいや。


 あの頃はまだスプラッタとかにも慣れていなかったからね。初見で爛れた肉を持つ狼とか誰でも驚くって。驚かないって言っている人は可愛い子に良い格好を見せたいんだろうね。


「アイシクルバレット」

「グッア!」


 腹に氷の散弾を浴びせる。

 躱しきれるはずがない。僕でさえも一発はもらってしまいそうな速度と範囲を兼ね備えた攻撃だからね。結構な自信作だ。


 追加効果は当たった箇所を凍らせる。

 極端に言えばそれだけだけどよく考えたら、凍ることがいかに恐ろしいことか分かると思う。北海道の最北で真冬にシャボン玉を吹くと凍ってカチカチになる。それが割れる時はどうなるか。割れるというよりも壊れてバラバラになってしまう。脆くなるって言い方の方がいいのかな。それと同じことを意図的に起こせるってことは結構なアドバンテージになるだろうね。


「ハッ!」

「ブォッ……」


 オークジェネラルの腹を殴ると一回転してから壁に激突した。ナイス回転、とは言ってられないか……。


「アイシクルランス」


 氷の槍でオークジェネラルの首を切り裂いて次の敵の攻撃に備える。大振りの斧なら一度攻撃した後のインターバルがかなりあるし周囲からの攻撃であっても避けられる自信がある。目の前に見えているのがオークナイト二体とオークジェネラルが四体なら尚更だね。


 ここからは出し惜しみする気もない。

 ワルサーを左手に具現化させてからドレインを片手に走り出す。大きい割には僕の右手のようにフィットしていて扱いやすい。それにこいつの真骨頂はそこじゃない。


「血液操作!」


 なんということでしょう。

 さっき倒したばかりの鮮度のいいオークジェネラルの口元から血が流れてくるではありませんか。しかもメリットはそこだけではありません。


 なんと! 血抜きも共に出来てしまうのです!

 良い時短ですね。皆様もしてみてはいかがでしょうか。


【阿呆ですね】


 ……すいませんでした。

 やっぱりね、僕にシリアスは似合わないよ。


 自分を嘲笑いながらドレインで横薙ぎにする。余裕を見せていたオークジェネラルが二体、斧で受け止めようとするけど今回は本気だ。さっきのオークジェネラルのようにとめることなんて出来ない。


 二体の胴体が真っ二つになった瞬間に他の四体が青ざめたように躱し始めるけど、さすがに遅すぎる。カップヌードルを十分くらい待ってしまっているくらいに遅すぎるよ。某うどんのカップ麺はそれくらい待っても美味しいって触れ込みしていたなぁ。今となっては懐かしい。作れるなら頑張って再現してみよっと。


 後ろに飛んだものは血の剣の餌食になり、上に飛んだものは制御が利かない上空でワルサーの弾丸の餌になる。


【ワルサーの使用頻度が一定値を超えたので銃弾が追加されます】

「……はい?」


 素っ頓狂な声が出てしまう。

 銃弾の追加? ワルサーからの形状変化じゃなくて? 僕はミッチェルみたいに他の姿になると思っていたんだけど?


【なんとも言えませんね。ただ今の殲滅戦には十分に向いている弾丸で散弾銃の役割を持っています。速度も通常の弾丸と同じMP消費量で威力は二倍ほど違います】


 嘘だー。

 そんなことを思ってトリガーを引いて唖然とした。旗色が悪いと感じた新手のオークジェネラル五体の頭にいくつもの穴ぼこが生まれる。なんかエグいし気持ち悪い。威力が桁違いなのは認めなくてはいけなさそうだね。撃たれた敵が弱ければ一瞬でスプラッタものへと変化してしまいます。


「……何をしたの」

「武器で攻撃したら地獄になった」

「主ならよくあることです」


 アキ達のフォローに見えて心を傷つけてくる言葉……。ラノベの主人公達もこんな気持ちになっていたのか。今ならラノベの主人公に入り込んで小説を読める気がする。


「ブォォ!」

「えっと、ズドン」

「……これは酷すぎる」

「……僕もそう思うよ」

「効果音を変えてみてはいかがですか。少しは見れるものに変わるかもしれません」

「えーと、じゃあキャピ!」


 効果音は可愛くしてもやっていることは変わらないからね。全然違いがないと思うけど。というかなんで鼻を押さえているんだろ。アキなら発作だけどイアまでどうして?


 一応、聞いてみても「大丈夫」と返してくるだけなので流れ弾の心配はないよね。うん、二人揃って発作なだけだ。きっと……。


 一方的な虐殺で奥から出てくるオークナイトとオークジェネラルを数発の弾丸で屠っていく。残った上位種が二割を切ったところで奥から魔物が出てくるのが治まった。ササッと回収を終えてからまた奥へと進んでいく。その間に血抜きも終えているからすぐにでも売りさばける状態になっている。さすが僕だね。


 オークキングがいるであろう部屋の前でワルサーのトリガーを引く。散弾なのでどのような結果になるかは予測出来ないけど、まぁやって見てからのお楽しみということで撃ってみた。


 散弾はすごいね。

 石の壁を通り越して死角から挟撃をしようとしていた二体のオークジェネラルを一撃で倒してしまったんだから。ここまでの成果をあげるとは考えていなかったんだけどなぁ。せめて威嚇ぐらいになればいいか、なんて甘い考えで撃ったから驚きが大きい。帰ったら威力の調査とかもしないといけないね。撃ちどころを間違えると仲間を攻撃することになりそうだ。ちょっと怖いな。


「血液操作」


 オーク達から集めて凝縮させた血の塊を部屋の中に撃ち込む。ここからは速攻だ。今の僕の戦いを見たものは後世に『電光石火の』や『神速の』と僕を褒め称えるだろう。……冗談だけど。


「イアとアキは少し下がっていて。そこからでも見えるはずだから」

「分かった」


 素直に返答してくれた。

 冒険者には戦闘の時に長い時間考えるという概念がない。まぁ考えている間にやられる可能性を考えたら出来ないんだけどね。それもあってかイアの返事は早い。返事よりも早い動きを見せてみせよう。


 駆け出して血の塊を爆発させる。

 僕の考えが間違っていなければ密度の高い逃げられない敵なら効果抜群のはず。どこまでいけるかは分からないけど、この程度の実験ならやる余裕はある。


 爆発の衝撃で僕自身にも血はついてしまった。……ミッチェルに謝らないと。血って簡単には落ちないよね……。


「ブルルゥ」


 ただ黒い塊が破裂しただけのように見えたんだろうね。一番最奥の大きなオークキングが嘲笑にも聞こえる声をあげた。それに釣られて周囲のオークジェネラルやオークナイトも笑い声をあげるけどさ。普通に考えてここまで来た人が無意味な攻撃はしないでしょうに。


「喰らい尽くせ!」


 出来れば御の字、出来なければドレインで各個撃破、面倒なら散弾銃。散弾銃を考慮して二人を中に入れなかったけど……想像通りになってくれている。実験は成功だ!


 血というミクロ単位でついているか、ついていないか分からない小さな存在。その間を針のようなものが突き刺す感覚だったんだけど……少しだけ想像通りではなかったね。


 お腹の方に米粒ほどの血がついていれば、後ろの同じように血がついている部分に向かって一直線に針が通る。そしてそこから血が垂れてくる。血が垂れてしまえば僕の血液操作の効果内に入ってくるからね。その通っている針が段々と太くなっていく。


 多分、ついている血の跡の大きさに比例して中の針の太さも変わってくるんだと思う。繋がっているのが大きな跡と小さな跡なら太い針から徐々に細くなっているんだろうね。魔法の使用者である僕には何となくの感覚でだけどそんな気がするんだ。


 トドメはもちろんドレインで。

 どこかの標語みたいだな。……いや、ドレインって英語だからそんな標語あるわけないか。それにそんな標語がある世界なんて狂っているよ……。


 首を落とす度に血の量が増えていくけどぶっちゃけ捨てるからどうでもいい。吸血鬼で血を欲するとしても吸う吸わないを決める権利はあるよ。好きな子の血ならまだ飲んでもいいと思うけどさ、さすがに豚の血は飲まないと死ぬまで追い込まれなきゃ飲みたくない。


 そのためのドレインでもあるからね。

 血を吸わずとも欲求を減らしてステータスを奪う。これほど吸血鬼特化の武器はないと思う。


 特に苦労することもなくオークキング以外を倒してしまった。一応はジェネラルはキングになる寸前の敵だったし、ナイトはジェネラルの一歩手前しかいなかった。なんだろう、この不完全燃焼は……。ステータス四桁の敵であっても今では苦労しなくなってきているんだよね。


「じゃあ少しだけ行ってくる」


 最後のオークキングの首も楽々と断ち切ってコロニー戦を終えた僕は、一つだけしておきたいことがあった。それは魔力溜りの調査だ。もちろん、耐えられないだろうアキとイアには残ってもらうつもりでいる。


「どこへ行くのですか?」

「魔力溜りの調査だよ。アキなら分かると思うけど見て壊せるものなら壊しておきたい。第三者が行ったことなら証拠もあるかもしれないしね」


 少し考えた素振りを見せてくるけど悩むことかな。……いや、危険なのには変わりないけど自分のことは考えて欲しいよ。即答ですぐ帰ってきてくださいでいいじゃん。


 危ない! この想像がフラグか!

 僕はいつの間にか災難に襲われるフラグを立てていたということか! 早く折らないと!


「今、壊せば被害は少なくなる。でも僕じゃないと出来ないことだ。もしかしたら分かるであって僕でも出来ない可能性がある」

「それならやる必要はないじゃないですか」

「……正論だけどさ、皆への危険が少なくなるのなら僕は行きたいんだけど」


 それに興味もあるからね。

 もしかしたらダンジョンコアのように良い素材が手に入るかもしれないし、イフに分からない何かや目で見てこそ伝えられるものもあるし。僕は僕至上主義であろう。


「二人は外にいてくれればいいよ」

「……我慢してでも行く」

「いやいや今でさえ冷や汗を流しているのに近くになればなるほど魔力濃度が高くなるんだよ。イアにもアキにも耐えられない」

「ですが緩和する魔法ならあるそうですけど」


 緩和する魔法……はて?

 僕自身は知らないからここはイフに頼ろう。プリーズギブミー!


【聖魔法の保護ですね。対象者に対する魔法効果を軽減する魔法です。弱点としてバフ効果も軽減させてしまいますが今の状況にはうってつけだと思います】


 なるほど、イフがアキに教えたね。

 はい、そこ! 口笛吹いてもバレバレです!


 あるなら早く言ってくれればいいのに。変に二人に我慢させる結果になっちゃったじゃん。うん、すぐやろう。言っても聞かないのならついてきてもらうだけだ。長い物には巻かれる方が楽だしね。


「分かった、ちょっと待ってね。えーと、幾重にも重なる敵の攻撃から守れ、保護」


 詠唱自体は初めてやった。

 もちろん、カッコイイからだよ。ぶっちゃけ僕の場合はあってもなくても効果は変わらないし。魔法のイメージの補助のために詠唱をするけど、これは数式みたいに決まっているものだ。それに全部をイメージで補填出来るのならわざわざ隙を見せる詠唱なんてしなくていいからね。


 保護なら敵からの攻撃を守る薄い膜のイメージかな。幾重にも、は外部からの攻撃を軽減する膜を補強するために付け加えてみたけど、うん、悪くはない。


「……早くやって欲しかった」

「足は蹴らないで……僕もアキに教えられるまでは知らなかったんだ」

「……これも私は知らない。教えてくれたら許す」


 許してくれるところに愛らしさを覚える。

 そんなに怒っているなら許すつもりもないだろうしね。わざとじゃあ許さなくていいって言ったらどんな反応をするんだろ。単純に気になってしまう。まぁ、そんなことをするほど人の気持ちを推し量れない人ではないんだけどね。


 保護で二人の表情もやわらいだのでオークキングのいた場所の後ろの部屋に向かう。イフの話でも、僕の魔眼で見た限りでもそこから魔力が溢れているからね。この状況なら二人も文句がないだろうし早く調査して帰ることにしよう。

心器は心を、その本人を写す武器です。

本人に成長が見られれば心器も同様に進化します。



ネタ枠

現在の文章

オークジェネラルの腹を殴ると一回転してから壁に激突した。ナイス回転、とは言ってられないか……。


最初の文章

オークジェネラルの腹を殴ると一回転してから壁に激突した。ナイス回転、とは言ってられないか……。なおさらナイスボートなんて言ってられないしね。あれ? 僕のラストもあんな感じになるのかな……?


最初はこれで投稿しようとしていました。


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