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3章17話 開幕なのです

 片付けは任せて先に村の中に入る。

 立場は違えどオークからすれば僕は盗賊だ。例えここにいるオーク達が人を襲っていないとしてもね。魔物と人が仲を良くするのは多分難しいと思う。人族に近い魔族にさえ差別心で対応する人も多いからね。


 それに魔物には知恵がない。知識もない。溶け込むこと自体ほぼほぼ不可能だし、人族からしたら恨みだってあるだろう。だからこれは仕方のないことだ。水と油が混ざり合わないように人と魔物は相容れることはないだろうね。


 早く終わらせてミッチェルとかアキとかに慰めてもらおう。膝にシロを置いて念入りに頭を撫でよう。……そう考えたらここにいたくないや。これがホームシックというやつか。


「早い」

「これくらいやらないと夜ご飯に間に合わないからね。ほら、乗って」


 最初のうちに七割は倒せたからイアを背中に乗せながらでも戦えるはずだ。何より僕の頭には早く帰ることしかないし。というか今更ながらイアって背中にフィットするな。


「アキ! このオーク達もお願い!」

「分かりました! 早く回収して後を追います!」

「損な役割を任せてごめん! じゃあ、行く!」

「私は、役得」

「……家に帰ったら私にもお願いします」


 そんなの当たり前だ。

 今日はアキがMVP賞だからね。アキに慰めてもらいながらシロを愛でるんだ。取らぬ狸の皮算用にならないように今のうちに算段を整えないとね。


 ……あれ? 僕毒されていないか?

 普通は抱っこするのを当たり前なんて思わないはず。……あれ?


「アイシクルランス」


 戸惑いの心を喉奥に押し込んで魔法名を口にする。


 十数もあれば操作はイフがやってくれるはずだ。僕は展開してイアを庇いながら奥に向かえばいい。……帰る時に面倒だからってアキに回収を任せたのは間違いだったかな。別に帰り道で回収でも時間を食わなさそうだし。


「すごい……」

「こんなことで驚いていたらダメだよ」


 氷の槍がオーク達を突き刺していく。

 中には小さな子供のオークもいたけど関係がない。目の前にいるのは等しく敵だ。小さいとはいっても生後一週間とかで一メートルほどだからすぐに僕だってこしてしまう。そうなってからでは被害が出るのは時間の問題だからね。何より幼いオークは美味しいらしいから金銭的な面でも倒さない選択肢はない。


 この村はオーク達が作ったものだろう。

 少し乱雑さが目立つし家の素材が木材という所に技術の薄さを感じる。近場に建築に使えそうな石はないから仕方ないけどさ、僕が人族ならこんな深部で木材とかいう燃えやすい素材では作らないよ。少しお金がかかるとしても他の村とかから建材は買うはずだ。こうするのは僕だけかもしれないけど、それでも自信がある。


 まぁ戦いにはさほど影響はないか。

 別に木であろうと石であろうと火攻めで戦おうとはしていないから、関係してくるとすれば魔物でもここまで良い村を作れるんだなっていうくらいかな。


【コロニーのオーク数が残り五十を切りました。残りはオークナイトとオークジェネラル、オークキングのみです】


 オークは全滅か。

 いうなら足軽だけを全滅させたような感じだね。足軽の次に倒さなければいけないのは武将だからいい順番だ。……最初っからオークキングを狙ったらもっと早かったかな。


「ふぅ、これでオークは殲滅したから残りは上位種だけだ。アキを待とうか」

「……エミでも無理。ギドは速いね。さすが私のお婿さん」

「決まったわけではないけどね。まぁ速さと一撃に重点を置いているから」

「嘘ばっかり。魔法も強い」

「Aランク冒険者に言われるとは光栄だよ。まだまだだと思うんだけどね」

「……人によっては嫌味にしか聞こえない」

「イアには嫌味で言っているんだよ」

「最低……」


 イアいじりは楽しい。

 好意を持ってくれていることを公言しているだけあって抱きしめても嫌な顔一つしないしね。シロはイアより一回りほど、といえばいいのか分からないけど小さい。逆にイアはシロより少し大きい分だけ抱き心地がいいんだよね。


「冗談だよ」

「このギューに免じて許す」


 素直じゃないやつめ。

 抱きしめる力を強めてアキが来るのを待った。


「イチャイチャは許しません!」


 一瞬だった。

 抱きしめる力を強めたらすぐにアキが来たんですけど。……頼んだことはしているんだよね。いや、キチンと消えてーら。嫉妬かな。それにしたって早すぎる。


「離さなくてもいい」

「奥にもっと強い敵がいるから駄目だよ」

「……残念」

「やはり正義は勝つのです!」


 なんかアキがミッチェルに似てきている気がする。……一番近くにいるし敬語口調なのとかで元から似ている部分が多かったからかな。ゾンビウルフの時もアキとミッチェルでいることが多かったしね。


「はいはい、喧嘩しないの。イアだって今度遊びに来ればいいんだから。お姉ちゃんなんでしょ?」

「……こんな時だけお姉ちゃんは嫌」


 それもそうか。

 確かにね、何とかでしょって言う人がいるけどさ、だからなんなんだよってよく思う。じゃあそう言う人が自分の立場だったら腹が立たないのかなとか色々考えるよね。この世の理不尽だ。


「ごめんごめん。ほら、帰るのが遅くなるよ。魔力溜りに関しては早く話した方がいいでしょ。オークキングに関しては瞬殺してみせるから」


 こういう時は違うことで話を逸らすのが吉だね。オークキングを瞬殺とかはイアでも見たことがないはず。十分な餌だ。


「……早く行く」

「引っ張らなくていいから。服が伸びるよ」

「伸びたらミッチェルが直してくれますよ」


 それもそうなんだけど……。

 日本にいた時からの貧乏性か、服とかが伸びるのはいただけない。大事にすればそれだけ長い間使えるからね。そういや伸びたりしたら知らない間に直っていたな。……絶対に幼馴染だ。確証はないけど。


 その後は雑魚と化したオークナイトを狩りながら奥へと向かう。もはや僕の背中が定位置になっているイアは眠たそうにしているけど、これでもAランクだ。……だよね? 一緒に依頼を受けてからイアは年下にしか感じられない。可愛いんだけどね。


 その間にオークジェネラルは出てこなかった。可能性としてはいくつかあるけど一番可能性が高いのはオークキングが恐怖を感じていることだ。さすがに時間をかけているから僕達がここにいることはバレバレだろう。時間をかけているっていっても普通に数十分だからオークが全滅するにしては早い。そこで自分の近くに集めているって考えだけど。


「ハズレか……」

「あれはただの生まれたてのオークキングのようですね」


 剣がなかった。

 つまりは少し前にオークジェネラルからオークキングになった個体ってことだ。もしくは魔力溜りから発生したオークキングのどっちかだね。普通にオークキングの剣があれば高く売れるから欲しかったのに。


 まぁクヨクヨしていても仕方ないか。

 歳では肉の旨みとかは変わらないし価値が高いということには違いないし……でもなぁ、労力に合わないや。


「これなら本当に瞬殺だよ……」

「なんか……寂しそう……?」

「主は動くことが好きですから」


 戦闘好きではなく運動好き。

 うん、それなら許そうではないか。よく考えついたな。どれ、アキよ。ちこう寄れ。


【普通に腹が立つのでやめてください】


 ……すいませんでした。


【調べごとをしていたのですがマスターのお耳に入れておいたほうがいいと思いまして】


 へぇ、どんな話?


【薬草や魔力草が群生しています。どういうことか分かりますか?】


 まさかのクイズ方式か……。

 えーと、薬草は魔物の魔力を吸って魔力草は植物から溢れる魔力で成長する性質があるんだよね。それが関係しているのかな。


 それなら……群生というくらいだから両方がかなり増えているってことだよね。魔力溜りがあるのなら魔物が多くなるはずだし。植物も増えている……トレントとか?


【そうです。ここにいるはずのないトレントが深部に存在します。魔力草の餌は等しく植物から漏れでる魔力ですのでトレントから吸収していてもおかしくありません】


 いないはずの魔物……余計に第三者の話が濃厚だなぁ。魔物の総数は未だに増え続けているの?


【他種族内での戦闘もありません】


 それはおかしいね。

 他種族間であれば仲良しごっこなんて本能的にしないはずだ。いつ裏切られるか分からないしね。……絶対的な指導者がいるって考えた方が想像しやすいな。


 ……本当に侵略目的じゃないのか。街に攻撃をするためとか、魔法国を潰すため。もしくは……誰かを殺すため。それが一番可能性が高いよね。良くも悪くも狙われそうな人はかなりいるし。僕とかセトさんとか。セイラの目的も分からずじまいだったし。


 いや、必ずしも関係しているわけではないかな。ただオークキングがオークジェネラルを集めていることもよく考えたら変だしね。普通なら考えもなしに迎撃するはずだし。能無しなんて言える敵じゃない。


「早く倒そう。嫌な予感がする」

「……ギド、ここの空気はハーフであってもエルフ族には辛い」

「私でも嫌な気分になります」


 魔力濃度が高まってきている。

 明らかに僕がここで一番大きな家に足を向けてからだよね。


 魔力はMPだから多すぎても駄目だしなくても駄目だ。コップ一杯分に水を満タンまで入れて、そこにさらに注いだら漏れてしまう。それが体の中で起きてしまうからね。


 イメージするとすれば空気の中の酸素みたいなものかな。無かったら生きていけないし多すぎたら人は生きていけない。逆に魔物とか植物とかは多すぎる分は勝手に体から放出される。だから魔の物と書いて魔物なんだろうね。知らないけど。


 これが僕達のいるコロニーだけではなくて他の魔力溜りがあって、そこでも呼応するように魔力濃度が高まっているとすれば。……背筋が凍りそうなくらいに怖いな。森に魔物が溢れてしまう。


「ここからは戦闘になるから一応、アキの近くにいてね」

「……我慢する」

「はい、いい子いい子」

「子供扱いしない。私は立派な女性」

「それなら良かった」


 僕はイアをアキに任せてから最前衛に立って一番大きな家に入っていく。奥にオークキングがいることは分かるけど、突然魔力濃度が高まったってことは何かが起きたってことだ。余裕ぶっていく訳にはいかないよね……。


 頬をバチンと思いっきり引っ張叩いてからオークの巨体に合わせた大きな入口。技術がないからか扉はない。だからこそ奥の雰囲気が普通と違うことは遠目でも分かる。入口に体を通して横から感じた殺気に対してドレインを構えた。


「ブルゥ!」


 剣戟をいなした後で、もう片方からのオークジェネラルの攻撃をドレインで受ける。そのまま鍔迫り合いをしながら次の一手を考えた。

平常運転……書きだめがない。

なぜプロットを作ると書く速度が遅くなるのだろうか。

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