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3章10話 キャロは強キャラです

「……中は結構広そうだな」


 このネタを知っている人がいれば仲良くなれそうな気がする。日本のゲームのネタだけどかなり有名だったしね。仲良くなれるのなら勇者であっても話がしたいや。確かそれだと『中は結構広いんだな』だったかな。


 あーあ、誰か『もう帰ろうぜ』とか言ってくれないかな。……イフ以外だよ?


【……上手く避けられました】


 当たり前だよ。

 結構、付き合いも長くなってきたからね。


 コンゴトモヨロシク、みたいな方がいいのかな。

 って、また話が脱線している。


 今回の敵はオークキングだし油断出来ないからな。キャロに全てをやらせるつもりもないし。まぁオークぐらいなら楽に倒せるだろうけど。


「えーと、今回の戦いではイルルとウルルは周囲の敵を倒してもらう。ただし洞窟から出てくる魔物はそのままでいい。雑魚狩りだけを任せておく」


 これはもとより決めていたことだ。

 まずもってついてくることは計算外だし、やらせることも今は特にない。あるとすればこれが終わってからだから頼むこともこれくらいしか思い浮かばないからね。


「ロイスはエルドとここで見ていて。シロは僕と一緒にキャロの手助けをする。あまり攻撃はしなくていいから危なくなったら手を貸そう」


 方針はこの通りにする。

 キャロに関しては未知数すぎるし戦わせてみて戦闘力を測るしかない。今のところは僕抜きでもオークとオークナイトぐらいには勝ってもらいたいけど……願望だよね。さすがにオークナイトは無理だと思う。


「言い分はあると思うけど邪魔に入られるのは嫌いだし、ロイスとエルドは僕達の戦いをしっかりと見ていて欲しい。オークキングに関しては僕も戦うからね」


 これ以上ないほどのスキルポイントを獲得出来る場面はないだろう。オークキングは弱かろうとかなりの高レベルスキルを持っているからね。さすがは上位種。


 トドメさえキャロに譲ればいいから本当にいい狩り場だ。コロニーだけを狙うのも手かな。


「見るのも戦いを覚える手段だからね。しっかり見て学んでおいて。今回、僕がやるのは時間を稼ぐやり方だからロイスも見たことがないんじゃないかな」


 半ば無理やりな説得をしてキャロを連れて洞窟の前に立つ。ミラージュをかけてから戦うのも手だったけど微妙なんだよね。キャロの戦闘訓練も兼ねているから恐怖というものは覚えてもらいたいし。


「ぶぉ!」

「行くの!」


 まずは一対一だ。

 その間は僕とシロが他のオークを抑え込めばいいだけだから安心して戦わせられる。


 キャロの戦い方は大槌を力いっぱいに振るう戦い方で慣れていない部分がかなり多い。軽く振るだけでも隙が出来るのに大振りなら尚更、攻撃を受ける確率も高くなる。


 要は使い勝手の悪い武器なんだよね。ただただウサ耳少女に大槌とか小説にあったよな、って思ったのもあってこれにしたし。キャロの適正武器は他にも両手剣とかあったけど僕と被るから却下。どちらにせよ、戦いに一癖も二癖もある武器だ。


 でも、さすがは才能がある人物だよね。

 何度か攻撃を受けていれば即死でなければ僕が回復出来る。痛いのが嫌でどうすればいいか体が対応する。キャロはまさにそうだった。


 オークに対して呪魔法でじわじわと削りながら大槌を振るっている。それだけじゃなくて振り下ろす際には大槌で地面を打ってから、その反動でくるりと半回転したりしている。どうすれば相手有利を自分有利に出来るか考えた戦い方だ。……エルドも同じようにした方が良かったかな。


 呪魔法でステータスを削られHPもなくなりかけていたオークはキャロの格好の餌食だ。そこから数分と持たずにキャロはオークを壁に激突させている。


「次だ」

「はいなの!」


 少しも不満そうな感じはしない。

 本当にいい子や……後で愛でねば……。

 僕が対処していたオークは行動力を削ぐ手前、少しだけ傷を与えているのでキャロには物足りなく感じたかもしれない。割と簡単に通常オークは全滅させていた。


 次はオークナイトだけどこっちは少しだけ細工をさせてもらう。悪いけど無職にオークナイトはキツすぎるからね。


「いいか、見て覚えてね。呪魔法の最大の利点は詠唱を抜きで撃ち込めることだから。長々とした呪詛は要らない」

「ぶるぅ!」


 オークより一回り大きいオークナイトを尻目に手を前に出す。部下がやられて腹が立っているのかもしれないけど、魔物と人族は簡単には相いれない。こいつらを野放しにすれば苗床にされる人も増えるからね。だから僕に狙われたことを仕方ないと思うしかない。


「カース」

「ぶるぁっ……」

「半端な戦い方はダメだよ。やるなら殺す気で撃ち込むこと。こいつらはそう簡単には死にはしないから」

「……分かったの」


 多分、何か辛いことがあって呪魔法を手に入れたのかもしれない。それならいちいち呪詛を呟いてから魔法を撃つ理由も分かるからね。


 でもそれは呪魔法や闇魔法の最大の利点を殺すことになる。隙のある武器でこの二つの魔法が使えるのはとてもありがたいことだ。隙をついてきた敵を魔法でやり返せるからね。


「……殺すの」

「ぶぁぁぁぁ!」


 頭に血管を浮かばせるオークナイトと目を血走らせるキャロ。ステータスを削ったと言っても一段階進化したオークナイトの攻撃はかなり強烈だ。一撃でキャロは吹っ飛ばされてしまう。


 キャロは壁に激突する前に大槌で洞窟の壁を撃ち抜いて直撃は回避していた。すぐさま回復をかけてやるとキャロはまた飛んでいく。


 それを繰り返しているうちにキャロはようやく理解したように呪魔法を使った。初歩的なカースボールだけど高密度なオークナイトの命を奪えるほどのものだ。


 小さい代わりに片手に隠せるようなその玉を近付き攻撃を受け止める時に投げる。小さく「喰らうの」と言うとカースボールは早い速度でオークナイトの腹を貫いた。


 四体目のオークナイトを倒した時にキャロのレベルは二十まで上がった。少しだけ辛そうなキャロに「職業はつけておく?」と聞いてみたけど、意外にも「最後のオークナイトは一人で無職のままで倒すの」と決意のこもった眼差しで言い切っている。


 だから最後だけは回復以外の手を貸さずにオークナイトと戦わせようと考えていた。キャロならもしくは……。


「やるの! カース!」


 慣れたようにカースボールと霧状の黒い何かを使い分けている。カースは少しオリジナル性のある魔法だからね。少しでも相手を削りたい時に使える広範囲攻撃だし。


 カースをキャロは一回見ただけで習得したみたいだ。もう呪詛とかは使わずにカースとカースボールだけで戦っている。もしかしたらカースボールとかを使ったことがなかったのかもしれない。


 回復の補助ありとは言ってもキャロはオークナイトを倒し切った。十分な成果だから今日はお赤飯かな。……米がないんだった。


「次に行くの!」

「……少し慢心し過ぎ……」

「シロの言う通りだ。キャロ、ここはまだオークのコロニーで僕が見つけきれていない敵もいるかもしれないからね」

「……はいなの……」


 少し調子に乗るような戦わせ方をしすぎたかな。でもな、確かにこの年で、たった数時間で魔法を使えるようになるのはかなりすごいからね。強くは言えないよ。


 さすがはボスというべきか、オークキングは最奥にいる。なんだろう……ゲーム感覚が抜けきれないな。別にさ、入口付近にいるボスもいいと思うんだ。


『なんで! なんで、こんな場所にオークキングがいるんだよ!』


 か、


『オークキングがここにいるなんてね。……その首、ちょうだいする!』


 みたいなのってかなりカッコイイと思うんだ。あれ? 僕だけか?


 一丁前に付けられた木製の扉を蹴り飛ばして突入する。


「殺すの! カース!」

「って! 馬鹿!」


 魔法のせいで中にいたオークキングは躊躇い無くこっちに向かってきた。そもそもオークキングとの戦いは僕が痛めつけることを話していたし、ましてやここで戦う気もない。ロイスやエルドに見て学んでもらいたいからね。


「シロ! キャロを連れて出ろ!」

「……うん! ごめん!」

「ガッ……」


 失敗した。職業をつける前だからわざわざ前に出ることは無いとタカをくくっていた。駄目だね、相手のことを理解しないとこれからも上手くいくわけがない。


 運ぶのに時間がかかると踏んだのか、シロはキャロの腹を殴って気絶させて大槌ごと担いでいる。あの小さな体のどこにそんな力があるんだろう。でも決断は間違っていない。


「来いよ! デカブツ!」

「ギャアアア!」


 この鳴き声はゴブリンだ。

 まだ人は襲っていないからか、僕と同じ言語は話せていない。本当に助かった。苛立ちで殺してしまっていたかもしれないからね。


 弱い魔法をちょびちょび撃ってヘイトを稼ぐ。僕は外まで出ないといけないから本能で僕を殺す必要性を示さなければ簡単に逃げられてしまう。


 それなら簡単だよね。


「ストーンウォール」


 だんだんと退路を塞いでいけばいい。

 良くも悪くも人質はいないし宝もない。倒したことでの利益は少ないけど気兼ねなく戦える。残念なことにオークキングの成り立てだからオークキングの剣も持っていないし。


 そろそろで洞窟を出る。


「ストーンランス」


 先は尖らせずに丸くする。

 ただ後ろからオークキングを押してくれればそれでいい。呪魔法は使っていないからまだ強いままだけど、僕のステータスに比べれば雲泥の差がある。


 バランスを崩して外へと出るオークキングを躱して洞窟を出る。その後に入口は塞いでおいた。これで戦う準備は完了だ。


 殺す必要はない。

 トドメはキャロに、スキルポイントは僕が得られればそれだけでいい。これが終われば僕は働かなくてもいいかもしれないね。……僕、この戦いが終わったらニートになるんだ。


 働きはするけどね!


「来いよ!」

「キシャシャシャシャ」


 オークキングの攻撃は大振りだから躱しやすい。いや、僕からすればだけどさ。躱して薄く斬って躱してを繰り返すだけでいいなんて……ものすごく簡単!


 殺す手前、よく見極める。

 皮一枚だけを斬り続ける。


 これが結構難しい。動いているし生きている。それだけで狙った部分だけ削るのは難易度が高い。字面から見ても難しく思えるか。


 五十六回、少しだけ気を逸らしたかったから斬った回数を数えていたら、ちょうど五十六回目でオークキングのスキルは全てなくなった。最後に呪魔法をかけてキャロを待つ。


 ……あっ、気絶しているんだった。


「アイシクルケージ!」


 氷の檻でオークキングを捕まえてキャロの所まで行く。キャロは起きていた。というか、シロにものすごく怒られていた。えっ? シロって怒ることあるの?


「……お兄ちゃんを危険に晒した。分かる? 私とお兄ちゃんは……何回も慢心するなと言ったよ……」

「……すみませんなの。……倒せるかもしれない、倒せたら褒めてもらえるかもしれないって勝手に動いてしまったの……」

「今はいい……でも、ロイスのパーティでこんなことをしたら誰が助ける? ……ロイスでさえもオークキングを倒せるとは限らない」


 ロイスは……うん、倒せるか分からないね。

 簡単に倒せるほどオークキングだって弱くはない。ああ見えてもBランク冒険者の昇格試験に使われる時もある魔物だ。ものによってはAランクに届く個体もいるし。


 ゲームとかでいう個体差ってやつだね。

 生きてきた環境で手に入るスキルも違うし。


「お兄ちゃんが好きなら……勝手なことはしてはいけない。……死ぬのならお兄ちゃんを助けるために……無駄死には絶対に許さない。お兄ちゃんを危険に晒すのも……次やったら……お兄ちゃんの弟のロイスを危険に晒すことも……」


 珍しくシロは言葉を詰まらせていた。

 それでも何を言いたいのかは分かる。


 こんな過激派のシロは初めて見るんですけど。……確かに信者かもしれないですわ。


「……もうしないの……罰は甘んじて受けるの」

「気をつければいいだけ。……後は帰ってから戦い方の稽古をつける」

「よろしくなの……」


 うーん、元気がなさすぎる。

 はぁ、元気の無い二人とか見たくないんですけど。


 手をパンパンと二回叩く。


「そこまで! シロの言うことも最もだけどキャロのやってしまったことも理解は出来る。あまり言い過ぎると今後の関係に響くから無しだ」

「……ごめんなさいなの」

「いいから、あっちにオークキングを閉じ込めているからトドメを刺しておいて。次からは気をつけること、ロイスも似たような所があるから釘をさしておかないとな」


 元気の無いキャロは力なく大槌を振り下ろしたけどオークキングは弱っていたからか、簡単に命を落とした。頭を撫でると少しだけ元気が出たようなので、この後も何とかなるだろう。


 ロイスの方にも注意はしておいたからどうか発動しませんように。

個体差とかってポケ〇ンみたいですね。今回のオークキングって何Vだったんだろう……?


早くイベントに持ち込みたい!

その前に時間が飛びそう……これが僕のスタンドか!

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