3章4話 手作りは愛が重いものです
あけましておめでとうございます
家への帰りは顔を合わせるとバレそうなので転移で飛んだ。魔力の無駄というなかれ、これでもサプライズは恥ずかしいんだ。
一回、彼女にサプライズプレゼントっていうものをやった事がある。テレビの女子はサプライズが好きなんですよっていう女子アナの言葉をまにうけて。……結果、その子に愛が重いと言われて別れることになったけどね。
ちょっと嫌な思い出はあるけど皆ならそんなこと言わない自信があるから勇気を出してみたんだけど……顔を合わせたら絶対にバレるよね。ポーカーフェイスを保てる人ってすごいな……。
さて、地下に着いたっと。
それでどうしようかな。
今だけはイフとの繋がりは切ってある。イフに助言を求めていたら僕からのプレゼントとは言えないからね。……とりあえずはミッチェルからにしよう。呪剣なら対になる属性剣があってもいいよね。
聖剣を作りたいけど無理だよね。
効果を発揮させられるのは勇者の称号を持つものだけらしいし、作ったとしてもミッチェルには十全に扱えない。聖剣は作ろうと思えば作れるしロイスに作ればいいか。
それなら……呪剣は氷と呪を司るからその反対にしよう。炎と光かな。名前は……炎光剣でエンコウケン……やばい、響きが卑猥だ!
ミッチェルが炎光剣を振るう……援交権ですか? って絶対になる! ……ツッコミ役のイフがいないから虚しいな……。これがボケの一方通行っていうものなんだね……。
名前をしっかりとつければそんなことはないだろう。まずは作ってみるかな。
炎属性は僕が魔力を注げば何とかなるけど光は得意じゃない。だから光に関してはクリスタルを砕いて素材に入れていれば何とかなるはずだ。やろうと思えば出来るかもしれないけど今回は安全を期したい。
中心部分は銀にする。光との相性がいいからね。ミスリルは魔法を通しやすいし中心の周囲にミスリルをつければいいし。
「内側は……円状にしておけば周りに刃をつけやすい……」
銀も魔力を通しやすいからどうやってインターバルとか無駄をなくして魔剣としての武器を作れるかが問題になる。……そういえばこれも魔剣の分類に入るんだよね。僕が作れるのかな。
いや、呪剣を作れた時点でその考えは無くさないといけない。元から作れることを前提として素材も手に入れたんだからグダグダ言う前に行動あるのみだ。
銀の特性としては魔力をミスリルの次に通しやすい代わりに鋼ほどの強度はない。でも簡単にとはいかないけど手にいれづらい訳では無い。逆にミスリルは魔金属と呼ばれるくらいにハイスペックな金属だ。その分、手に入れづらいんだけどね。強度も魔力の通しやすさも銀、鋼よりもずば抜けている。
ちなみにミスリル鉱石一つで大金貨一枚と交換してもらえるくらいに値が張る。鉱石でさえこうなのに加工するとなればお金持ちでも作れるかどうか……、後、鍛冶師って変な人が多いらしいから作ってもらえるかも分からないしね。僕も作れって命令されても作る気はないし。やっぱりこういうものは気分だよ。
「……はは、絶対に王様とかとは仲良くなりたくないな」
王国の国王とかは絶対に作らせてきそうだ。
セトさんから頼まれたら素材さえもらえれば作るだろうけど、他の貴族はあんまりなぁ。お世話になっているっていう部分も大きいしグリフ家以外には作らないでおこっと。
「おっ、銀の部分は完成っと」
次は持ち手の部分か。
……触り心地を考えてブラッドウルフの皮が一番だよね。中は……オパールで作ろう。そうすれば直線で魔力回路が繋がるはずだし。
無属性は他の属性に触れると変わりやすいらしいからね。銀のところで光の属性に変わればいいし。……あれ? 二属性にするにはどうすればいいんだろう。
よく考えてみれば前回、氷と呪が付いたのは偶然だよね。狙ってやるならどうすればいいかな。……ミスリルに無理やり流し込むとかか。
クリスタルを砕いてみて皿に移す。
そこにいくらか血を流してみて結果を待ってみた。自分の得意な属性をつけるのなら体液が一番いいだろうからね。
結果、簡単にクリスタルは溶けてくれた。
これなら二属性付けも楽になる。
「銀に液体を巻き付けてっと。……軽く凍らせてミスリルを上に付けて……」
刃の部分はどうしようか。
……片方は切る専用で、片方はギザギザを付ける。ダメージの通りとかを考えてミッチェルに使いこなしてもらおう。
「出来た! ……属性は……いけるね。炎を出そうと思えば炎を出せるし、光属性なら光か。……って、氷も使えるし……」
ないよりはマシか。
後……うん、付与した属性は無効化出来るみたいだ。というか、吸収機能かな。上からその属性の魔法を落としたら消えた。振ると発射されたのでしっかりと考えて使わないといけないね。……そのせいで地下室の壁に小さな穴が空いたけど。威力を最小にしてよかった……。
次はゾンビウルフっ娘達の、フェンリルリーダーだと思っているアキの武器だ。弓なので速度重視の矢を抜きで撃てるものにしたいから……風魔法と雷魔法かな。
雷魔法は得意というわけではないけど使えるから、エメラルドを血液で溶かしたものから弓を作ればいいよね。
これは硬さメインで作るから鋼でいいだろう。中心にオパールを入れてエメラルド溶液で包めば……オーケー。
魔力を流すと細い糸が現れて矢がかけられる。……全部が魔力で作られるから消費が激しそうだな。でも消費は少なめに抑えられたと思う。……氷の壁に打ち込んで見たらいくつかの細い穴が空いたから散弾銃みたいな効果があるみたいだ。
氷の壁がちょっとだけ燃えているから雷属性も付与出来たようだしね。これでアキの戦いも楽になるはずだ。
次女のようなアイリの得物は槍だ。
これって持ち手が困るんだよね。……トレントとかがいれば狩りに出かけていたけどいないらしいし。王国周辺とか取らせるつもりないよね。絶対に行きたくない場所だよ?
しなりを考えればトレントの木がいいんだけど今回は鉱石で我慢してもらおう。……魔鉱石を作れば可能性はあるかな。でも作り方を知らないし諦めよう。今度埋め合わせをすればアイリなら許してくれそうだしね。
一番振ればしなる鉄を持ち手の部分にして刃先の片側をミスリルを元にしたいので、ミスリルとゾンビウルフの牙を砕いて、相性のいいガーネットも砕いて入れておく。
ここからがスキル獲得の一番の理由なんだけど、片手をかざしてスキルの錬金術を使う。錬金術の主なスキル効果は分解と合成だ。例えばバラバラにした鉱石なんかを元の状態にしたり、さっきやったように鋭利にさせたりとかが出来る。……形状変化も入ってきそうだね。
それでミスリルと牙、ガーネットの合成した鉱石が出来た。幸か不幸か魔鉱石と出ていたので作り方はこれで間違いないらしい。
鉄の先につけて……うん、完成。
鑑定にも魔力を通すことで呪と闇の効果が出るって書かれているから大丈夫だ。……もう地下室を壊すみたいなことはしない。
末っ子のアミは片手剣だ。
これは魔剣にしよう。純粋そうなのに持つ武器はものすごく邪悪とか面白いよね。体から魔力を放出し続けながら一度考えを捨てる。アミのことだけを考えてアミのためだけに武器を作る。素材も何もかもを僕の本能に任せてみよう。
「……」
気がつくと武器が出来上がっていた。
でもダメだね。MPが足りない。他の武器よりも多くMPを使っている。素材は……ミスリルと鋼の二種類だけか。なのにスキルと属性が付与されているって意味わからん……。
「効果は……分身と必中、呪属性か。よく分からないな。……使ってみるか」
さっきの残っている氷の壁に向かって二つのスキルを使ってみる。呪属性を働かせたわけではないのでMPの消費はないみたいだ。
分身はそのまま刃先だけを分身させて自由に扱えるってことで、必中は狙った場所に撃ち込めるってところかな。確実に当てられるっていう点ならかなり価値があるよね。
次はシロだ。
シロは武器とかがないから特に何かを作るつもりはない。だからネックレスでも作ろうと思っている。オパールを真ん中につけて留め具を鉄にする。オパールを収める部分はミスリルで作ってあるから、かなり綺麗なものになった。……プロポーズに渡すようなものだよね。価値は後でイフに聞いてみよう。
最後は……弟のロイスだ。
これはもう決めてある。
初めてだけど全種類の属性石を砕いて同じ配分で砕いて皿に移す。そこに血を流して後は野となれ山となれ、だ。
気がつくともう朝になっていた。
地下室だから光は届かない。これが本当の吸血鬼だよね。……MPが増えていることから全部使い切って武器を作ったんだろう。防具と魔力回復ポーションを作る予定がパーだ。……時間はイフの脳内メールで知った。見ないように気を使ってくれたみたいで申し訳なさが募る。
でもその分だけ出来上がった武器はかなり良いものだ。最後に作っていたロイスの武器は聖剣と、多分、本能のままに作ってくれたであろう盾までついてある。
見た目はラウンドシールドなのに付いている効果は、全属性耐性と完全に高性能すぎる。僕でさえ欲しいくらいだよ。
聖剣はそのまんまだね。全属性使用が出来るのと魔力で切れ味を上げられる簡単な能力だ。簡単な能力ほど使い勝手はいいし。
最後に全部の武器の取手にブラッドウルフの皮を巻いておく。これで握っても扱いやすいはずだ。全員の手の大きさは繋いだりした時に分かっているからね。大きかったり小さかったりすれば直せばいいし。
「うーん、久々にいいことをした!」
僕はイフに終わったことを伝えて武器をしまう。浮き足立っているのを無理やり抑えながら皆のいるであろう居間まで歩いていった。
手作りのものに血を入れる……手編みマフラーに髪の毛を入れるくらいに重いですよね。作りやすいとは言ってもギドはココの兄だとすごく実感します。
隠れ重いキャラとか書くの楽しいですね。
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