3章2話 生産チート? ノーノーです
「……ふぅ、疲れた」
「貴族様の前でしたからね。お疲れ様です」
そこだけではないんだけどね。
何となくさ、慣れない空間って苦手なんだよね。セイラだっていつもみたいな雰囲気ではなかったし。
玄関から居間へと戻る。
ソファーに寝転んでいるとシロがお腹の上で丸まってきた。少し重く感じるけど別に嫌な気分ではない。シロって普通の人族の見た目なのに行動は猫みたいだ。
「お休みになるのですか?」
「いや、最近忙しかったからね。久しぶりにゆっくりしようかなって」
洞窟を出たら楽しいスローライフだと思っていた。だけど待っていたのは災難に災難って……一週間は休みたいよね。
「そういえば四人はどうしたの?」
「ランクからフェンリルとロイスで合同で依頼を受けるようで、それで模擬戦をしているようです。明日、私とギドさんが追加報酬を貰っている間に依頼を受けるようですね」
「働き者だね。僕は休みたいよ」
「それでいいと思います。誰もギドさんを責めませんから」
そう言って貰えると楽でいいな。
僕達、ザイライは一週間休みでフェンリルには自由に動いてもらおう。その日は宿屋に話をしに行って静かに過ごした。ゆっくりと時間が流れる感覚は悪くないね。
僕は言った通り一週間グータラ生活を送っていた。一週間の初日以外、朝起きてご飯を食べて昼寝して、昼ご飯を食べて昼寝して、夜ご飯を食べてお風呂に入って寝る。何とも言えない楽しい時間が過ぎていく。
大金貨十五枚が追加報酬だった。
それと元から言われていたBランクへの昇格だね。セストアと何回か打ち合っただけで合格のサインが出たよ。
セストアから「殺す気ですか」って怒られたけどね。手を抜いておいたんだけどセストアからすればかなりキツかったらしい。まぁ、縦から横へインターバル無しで打ち込まれたら対処は難しいか。
そのおかげでもう大金持ちですよ。フェンリルとロイスの働きもいいし僕が働かなくてもいいような気がしてきた。だってさ、皆、ダダ甘やかしなんだもん。
グータラ生活の中で外出しようとしただけで「私がやります」って動かしてもらえないし。楽でいいけど僕、絶対に駄目になる……。
「明日からは僕達も働くよ」
「えっ……」
夜ご飯の時に皆に向けて言ったら全員がキョトンとしていた。……何故だ……。普通は逆だよね?
『働きなさい! このニート!』
『嫌だ! 僕は家を守るんだ!』
みたいな感じだと思うんだけど。……あれ? 僕だけ?
「私達が存分に稼ぎますので主は家で休んでいてください。そうでないと万が一にも主が怪我を負った時に私達が出来ることなどなく、やはり安心安全にミッチェルの近くで休んでおいて貰えると戦いにも張りが出ますし、皆の士気が高まります。ここは主の考えも分かりますがーー」
「……いや、僕にも自由はあるよ」
そんな捲し立てるように言われても……。
「ギド兄が強いのは分かるけど働きすぎだと思うよ。僕のところへ来る前にも色々とあったんでしょ?」
「それでもさ、やっぱり女性子供を働かせて僕だけ休んでいたら体裁が悪いし」
「そんな人達は処刑……いえ、私達がなんとかするので安心してください。ギドさんは安心して家で休んでいてもらえればいいのです」
……今、処刑って言わなかった?
気のせい……そう、気のせいだよね! うん、さすがに皆がそこまでするとは思えない! 僕が信じなくてどうするんだ! ……いや、やりそうだ……。
「とりあえず働くの!」
「……主がそこまで言うのであれば」
そう言いながらフォーメーションとか誰が護衛に付くとか話し始めるのはやめてほしいな。……もういいや。
「明日は僕一人で依頼を受けさせてよ」
「それは出来ません!」
「なんで!?」
一人になる時間はあってもいいと思うんですけど……。いや、夜の街にとかじゃなくて普通に一人で戦闘とかしたいじゃん。深部の方の探索とかもしたかったし。
一人の方が動く分には楽だからね。
それに一週間以上経っているからスキルも作れるし。僕が作るものは決まっている。
「僕のお願いというか命令! 今日の夜は自由にさせて! そして明日だけは一人でいたいの!」
「……護衛がいてもいいのでは?」
「だめ! 理由は言えないけどだめです!」
やっぱりバレてもいい事とバレたらダメなことがあると思うんだ。依頼ついでに深部への探索、そして欲しいものを手に入れる。そのためにはフットワークを軽くしてパパっと終わらせないといけないからね。
……サプライズって意味も少しはあるし。
【純粋変態ロリコンマスターですね】
純粋と変態って矛盾していると思うな。
せめてどっちかにして。
【それでは変態で】
変態、強いね! 少しは気を利かせて純粋を残すと思っていたよ!
騒ぐ皆を鎮めるためにかなりの時間を有したけど今日から明後日の朝までの自由は獲得出来た。最後までロイスとシロ以外は付いてくるの一点張りだったけどね。
……その分、失ったものも大きいよ。口に出すのもおぞましいほどの何かを失ってしまったし……。……嘘だけどね。
僕とロイスが先にお風呂に入って寝る準備をしておく。ベッドにロイスを寝かせて添い寝をしておいた。なぜか知らないけどたくさんある部屋の中で最初に皆で寝た部屋が寝室になっている。
広いからって全員分のベッドを持ってくるのはおかしいと思う。ロイスも寝てくれたので静かに地下へと向かう。そう、地下があるんですよね。本当にありがたいよ。これから絶対に使うようになると思うし。
【それじゃあ作り始めますよ】
痛くしないでね……?
【……それではいきます】
今、ニヤッとしたよね!
わざと顔を視界に出したよね!
少しだけピリッと体にくる。なんだろう、電気が流れる感覚かな。それでもビリビリペンとかに比べれば本当に弱い。
【……創造完了です】
えっ? もう終わり?
少し疑念があってステータスを見てみたけどしっかりと『スキル、錬金術』の文字があった。そう、これが欲しかったんだよね。後、貯まった魔力でもう一つスキルを創造してもらった。
あっても困らないものだよ。鍛冶っていう、まぁ、武器作りには必須のスキルだよね。錬金術で武器を作れるとしても持っていて損はないし。
それじゃあ作り方を教えて。
【まずは薬草から体力回復ポーションを作ることから始めますか】
そうだね、多く作ればギルドに売ればいいし。ちょっとだけ薬師ギルドに喧嘩を売ることになるけど。
ギルドで思い出した!
商人ギルドにも早めに行かないとね!
【それは明日からでもいいですよ】
それもそうか。
それじゃあ作り方を教えてくださいな。
【まずは薬草を数本出してください。出来れば使用済みの瓶などがあればいいのですが】
瓶か……あるから安心していいよ。
えーと、それで?
【丸めて両手で魔力で固めるようにしていってください】
えーと、こうか。
イメージを送ってくれるから分かりやすいね。魔力で膜を張って中心に持っていく、って言う方がいいのかな。
【その後は何か皿に移してください】
了解、これでいいかな。
おわ、なんか緑色の液体が出てきた。
【それに一定量で魔力を注いでください多すぎても少なすぎてもダメです】
難しいな……。
まずは一秒間にMPを一ずつ送り込んでみる。……あっ、出来た。けど体力回復ポーション(劣)ってなっているから失敗かな。
【劣にしては回復量は大きいです。売る分には困ることはありません逆に並よりもいい値段で売れるでしょう】
ふーん、これよりも劣って回復量が低いんだね。HPの三パーセントを回復ってかなり弱いと思うんだけど……。
【普通は一定量、決まった数字分だけの回復量ですよ。百なら百しか回復しません。逆にこっちの方が中級以上であれば欲しがるかもしれません】
なるほど、HPが多ければ多いほどいい効果だもんね。HPを百回復させるのと三パーセント分だけ回復させるのだったら、値段が同じなら後者を選ぶか。
僕の場合は聖魔法の回復でだいたい事は済むし考えたことがなかったな。こうなってしまったのは魔力のせい?
【加護も含めてでしょうね。加護の効果は一度切っておきますので、一秒間に二の割合でやってみて下さい】
うん……オーケーオーケー。
今度は良が出来た。これならいっぱい売れるかな?
【……回復量五百……これならかなり良い値段で買い取ってもらえるはずです】
それじゃあ別に一定割合のポーションも作っておこうか。魔力草から作る魔力回復ポーションは明日に回そう。
【加護をオンにします】
体力回復ポーションの良を三十本と並のポーションを五十本、一定割合のポーションを良が二十と並を三十作って薬草が切れたので打ち止めにする。
後は明日の用事を済ませれば明後日の朝までには作りきれるはずだ。……今日はもう寝て明日に備えよう。明日は寝れなさそうだなぁ。リハビリにはぴったりだ。
僕はイフに朝早くに起こすように頼んで地下室の机で突っ伏して寝た。ポーション制作は結構、MPを使うようでぐっすりと眠れました。
3章の最初はあんまり物語が進むわけではないです。ちょっと消化したいイベントの後に本題を入れていきます。そのイベントも面白いものに出来るように頑張ります。
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