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2章29話 初めてのパーティ戦です

ちょっと書き分けに困ってしまったので集団戦から2パーティーでの攻略に変えました。

「……暗い顔してどうかしましたか?」

「いや、イフに虐められただけだよ。……まぁ今はいいや。ほとんど自由に動いていいけど気をつけてね」

「お任せ下さい」

「任せましたっと。それじゃあ行こうか」


 メインはロイスのレベル上げでサブとして僕のステータス上昇。スキルレベルを上げることかな。……利点が多いね、武器はドレインでいいだろう。


 さすがに鋭刀ほどの力はないにせよ、ロイスの片手剣は補助機能として切断能力向上がついている。オークぐらいなら簡単に倒せるはずだ。


「……見っけ」

「五体か……遠距離で二体は潰すから右端の二体はアキとアミに任せるよ。ロイスは少し離れているアイツを頼む」

「任せて」

「じゃあ僕の魔法を合図にして。……アイシクルランス」


 本当はファイアーランスを使いたかったけど森の中だと山火事になるかもしれないし、それにオークの品質を下げることになってしまう。どうせなら高く売れるようにしておきたいしね。


 上手い具合に狙ったオークの頭だけを吹き飛ばした。今回はイフの補助がなかったから僕も成長していると言ってもいいはずだよね。


「しっ!」

「アキ、早すぎなの、だ!」


 すごいね、二人とも素手で首を落としたよ。

 ……いや、素手というか爪というか……どちらにせよ、すごい! 無意識に拍手をしてしまう。


「ギド兄の期待に応えるため……アハッ」


 ロイスもモードに入ったようで剣でオークの右腕を落としていた。剣が光っていることから魔力を流しているんだろうね。……それにしても悪手ばっかりだ。教えておかないと。


 オークとの戦闘はロイスの圧勝で済んだ。

 これは予想していたとおりだったので驚きすらない。ただ倒して戻ってきたロイスの頭に軽くデコピンをしておく。


「うぇっち……」


 あまり強くしていないと思っていたけどロイスはおでこを押さえてうずくまってしまった。……でもなぁ、戦場においては生きるか死ぬかなんだよなぁ……。


「細かく言えばキリがないから二つだけ言っておくよ。まず一つ目、戦い方が単調でステータスを利用しての戦い方の方が多い。二つ目、流す魔力の量が多すぎる。敵を見てどれだけ流せばいいか、よく考えてやらないとすぐに使えなくなるよ」

「いったいよ……」

「別に今はよくてもそのうち自分に返ってくるぞ。……これから教えていくから気をつけてくれ……」

「うん……まだヒリヒリする……」


「対して二人は特に言うことはないね。ただアキとアミは連携をしっかりした方がより強くなれると思うよ」

「アキの悪いくせなのだ……。ギド様に良い格好を見せたいからって……」

「す、すいません! 主のことを考えると体が勝手に動いてしまって……」

「別にロイスとは違って戦い方に悪いところはないから心配はしていないよ。ただアキが僕のことを思って動くのなら、他の人のことも頭に入れて置いてくれればいい。それだけでかなり変わってくるからさ。一応はフェンリルのリーダーだろ?」

「そうですね……いつでも主といれるわけではないでしょうし……。気をつけます」

「出来る限り一緒にいるからさ。悲しそうな顔はしないでくれ。もう置いていかないよ」


 トラウマになっているのか……。申し訳なさすぎる……。あれだって僕のわがままで出来るのに置いていったしね。……弁論の余地がない……。


「だから先に死なれることの方が怖いんだ」

「……分かりました。死にません」


 ここで断定して死なないと言えるのはすごいと思う。でもアキの言葉が心強く感じるのはきっと僕だけじゃなかったはずだ。


「暗い話はここまで。次、行こっか」


 二次会の店に行こう、みたいなノリで言ったけど軽い話ではないよなぁ。僕も異世界に毒され始めてきたみたいだよ……。


 次の戦いはロイスに二体のオークを任せてみたけど、苦戦はしても大怪我を負うこともなく打ち倒していた。やっぱり魔力の循環は回数をこなすしかないからね。辛い時には後退させて回復するのを待てばいいし。魔力がゼロに近くなるとMPの値も増えるからね。いい事づくめでやらない理由がない。


「ほいっと、やりすぎたかー」

「仕方ありません。異変を感じて現れるのは時間の問題でしたから」

「そうなのだ。ロイスは下がっていた方がいいのだぞ」

「そうするよ……さすがにキツイかな」


 初めての圧倒的な格上の存在と対面したらそうなるよね。僕は僕より強い敵と対立したことがないから分からないけど。……意外とぬるま湯に使っているような戦い方だったね。


 ミッチェルを連れてこなかったのは失敗かな。もしものためにロイス周りに結界を張っておきたかった。……通さなければ関係がないか。


「オークジェネラルが七体。計十八体のうちの七体だ。二人で四体、僕は三体を倒す。出し惜しみはしなくていいからね。……行くよ」


 心器であるワルサーを撃ち込んでからドレインを振るう。さすがにジェネラルともなれば速度はある程度早いみたいだね。それならそれでいい、それすらも超えて潰すだけだから。


「アイシクルウォール」

「主! 感謝します!」

「愛しているのだぞ! これで倒しやすいのだ!」

「私も愛しています!」


 ロイスのことも考えて僕、アキとアミ、ロイスの周りに氷の壁を張っておいた。僕の前にいるオークジェネラル三体と、アキとアミのノルマであるオークジェネラル四体を逃がさなくて済むし、なによりある程MPを消費して作っているからロイスに被害がいかなくて済むしね。


 念には念を入れてっていうやつだ。

 近くに他のオークジェネラルや、それ以上のステータスの魔物はいないとは言っても、いつ僕の前に強大な敵が現れるか分からないからね。


「愛しているって言うのは倒してから面と向かって言ってね!」


 変なフラグが立ちそうだから! 無意識でそんなことを言うなんて……アキとアミ、恐ろしい子達……。


「ブヒャヒャ」

「なにかおかしなことでもあったのかな。僕が一人で君達を倒せないとでも? どっちでもいいんだけどね」


 イフ、強化をお願い。

 不必要だと思っていたけど悪いけどここは圧倒的に潰させてもらうよ。オークの視線は毒だ。いつまでも皆に浴びさせるわけにはいかないからね。特に回復に専念しているロイスには教育に悪いし。


【分かっていますよ。ミッチェル達も先程、オークジェネラルを五体、倒したようですので後で褒めてあげてください】


 当然のことだね。

 アキとアミも一緒に褒めてあげよう。


「行くよ! はっ!」

「ブギャ……」


 一撃でオークジェネラルの腹を切断出来たのは僥倖だね。美味しいらしいし絶対に夜ご飯にしよう。そのまま血液を操作して新しく血の剣を五本作る。切れ味は抜群とは言えないけどオークジェネラルを倒すには十分な火力がある。


 ゲームのように綺麗な戦い方は出来ない。出来てステータスに任せた無双だけで、僕にだって小さなミスはたくさんあるからね。だから今はオークジェネラルを倒すだけを頭に入れてやらせてもらう。


「ブラッディ、カースレイン!」


 血の雨を降らしてみせよう。

 呪を込めた生物を殺す雨を。


 絶対にこの声は誰にも聞かせれない……。


「おら!」


 柔らかいな……これは呪魔法のレベルが上がっているのか。それにしても切り裂くことも一刀両断にしてしまうことも簡単すぎる。


 慢心するつもりはないけどこれくらいは圧倒しないとオークキングには勝てないからね。十分圧倒的に戦えたと自画自賛しておこっと。


 空間魔法のレベルも上がったからか、倉庫の中もすごく質量が大きい。三メートルほどはあるオークジェネラルの体を、真っ二つにされた誰かから奪ったのであろう鎧と剣ごとしまう。光り物が好きな習性があるとはいっても金ピカなだけの防御力は大したことのない防具をつけるのは馬鹿にしすぎているよね。


「……つまんないな……」


 あっ、あれ? 僕も戦っていて楽しいとか思っていたのかな……? いや、そんなことはないはず……僕はロイスとは違うからね。……今回もギリギリの戦いだったなぁ。


【よく言えますね。ドレインでトドメを刺す余裕はあるのに】


 いや、だってさ! ドレインで倒さないとスキルレベルを奪えないしさ! 血液も操作したり貯蔵したり出来ないでしょ?


【そういうことを考えて戦えるだけの余裕はあるじゃないですか。それに今回は私の手助けはなしですよね。キングならさすがに手助けをしますけど】


 強化魔法をかけてもらいましたよ?


【強化魔法は自分でもかけられたはずです。時間の制限があるとはいっても考えながら倒していたでしょうし、何よりつまらないって言っていたじゃないですか】


 ……ぐうの音も出ません……。

 いやさ、オークジェネラルってBランク最上位の魔物だからかなり強いのかなって思っていたんだよ。でも油断してばっかりでつまらないなって……。強いのなら最初で笑ったりせずによく観察するのが普通じゃない?


【否定はしませんが……いえ、もういいです】


 ちょっと! 何で僕の写真を貼るの!


【血の雨を降らしてみせよう。呪を込めた生物を殺す雨を、ですもんね】


 黒歴史でいじらないで!


【仕返しです】


 なんの!?


【あっ、アキとアミも戦闘を終えたようです。向かいましょうか】


 またこれですか……せめて、話は聞いてくれ!


 初めてのオークジェネラルはあまり強くありませんでした。僕の号哭はただただイフに流されるだけで、無性に軽く髪を撫でる風にイラついた。

パーティ戦は次回で終わると思います。


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