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2章23話 出来ることはやるのです!

 ……ここに住んでいるの? このちっちゃな子が? ……村人達はあんなにしっかりとした家なのに……。


 ロイス君の案内で着いた家は家と呼んでいいものか、と言うぐらいにみすぼらしいものだった。具体的に言うのなら屋根の半分はどこかに飛び、その半分すら外れないようにか、上に石が置かれている。壁はいたるところに穴が空き風を遮るものもない。


 ロイス君のお父さんは村を助けるために戦いに行ったんだよね? ……なんだ、この仕打ちは……。


 布団と簡単な調理道具しかないね。これでよく生活出来ていたな。……食材だけは配布されていたとかかな?


「狭いけど我慢してくれよ。いきなり来るって言ったのはそっちなんだから」

「ああ、確かにね。……それじゃあ今更だけど自己紹介とでもいこうかな。僕はギド、こう見えてCランク冒険者だよ」

「……え?」


 席というかギリギリ床といってよさそうな場所に座って、挨拶をするとロイス君は小さく驚いた。戦って最低ランクではないと感じたと思ったんだけどな。


「僕と一緒にみんなで戦っていたんだけどね。諸事情でアキ達、ああ、あの胸の大きな人ね。その人達は今日、冒険者登録したんだよ。能力だけならCランク以上なんだけどね」

「えっ? お前ってFランクじゃねえのかよ!」


 ランクがFとかCとか……。

 高校受験を思い出すな。ランクが足りなくて高校のランクも落としたっけ……。その後の大学入試の話とかキツすぎるよ……。センター試験と一般試験の違いすらよく分からなかったくらいだったからね。


「失礼だな。一応はCランクだ。ほら」

「……マジだ……。あれが……Cランクなのか……」

「そんなわけないではないですか。ある……ギド様は指名依頼が面倒という理由でCランク止めをしているだけです」


 ランク止めなんて言葉があるのね……。

 全然知らなかったけど、まあ、間違いはないよな。これから上げるって気持ちもないし、そこまでの向上心もない。出来れば楽に稼いで楽に行きたいからね。……となれば、あの作戦を決行する時かな。


 僕の楽に生きよう大作戦を決行しなくては! ……まだ準備も出来ていないけど……何とかなるでしょ? ……多分……。


 いや、させてみせようホトトギスだ!


「……それなら父ちゃんよりも強かったのかな……」

「ロイス君の」

「ロイスでいいよ。……僕は負けたんだから」

「……じゃあ、ロイスで。ロイスのお父さんの力がどれだけあったのかは分からないよ。ただ僕だけの力があればブラッドウルフの二体や三体はおい払えたとは思うけど」


 ロイスは黙り込んだ。

 この言葉に間違いはないよね? ダンジョンで、とは言ってもブラッドウルフを二体、制限付きで圧倒したし。一応はおい払えたっていう言い方にしたけどさ。


【畑にいるブラッドウルフはそこまで強くはありません。ダンジョンの個体よりは少し強いとは言っても限度がありますので】


 なら全然大丈夫か。

 ……一体じゃなくて森の中にもう一体いるのがキモだよね。性別が違うからおそらく、つがいだと思う。ってことは……子供か。


【正解です】


 何の因果なんだろうね。

 知能のあまりない魔物でさえも子供を、いや、知能があまりないからこそ子供を大事にする。対して人はどうだ。我が子でさえも虐げる人ばかりじゃないか。


 こっちもそうだ。魔物のコロニーであれば孤児でさえ同種であれば手厚く育てるのに……。


 ……いや、今はそれを考えなくていい。


「僕のことはどうでもいい。ロイスのことを聞かせてほしい。さっき言っていたことだよ。お父さんがどうして戦うことになったのか」

「……なんで……そんなことを聞くんだよ」

「さあね、ただ救えるのに救えない小さな子を見るのは嫌なだけだよ。気まぐれだから話したくないのならそれでいい。疑心暗鬼のままでビース達と関わっていけばいいさ」

「……意地悪だな。……負けたヤツが勝ったヤツに従うのは理にかなっている。……話すよ、話すからお前の……ギド、さんの意見を聞かせて欲しい……ください」


 嫌な顔をしながらぽつりぽつりと話し始めた。途中途中で言葉が詰まって泣きそうになるのを、胸のところまで引っ張って抱き寄せながら頭を撫でてやる。


 要約するとビックウルフが現れたと言われ村一番の警備役であったロイスのお父さんが連れていかれたらしい。母親はロイスを産んでからすぐに死んでしまったらしいし。それは医学の進んでいない異世界だから仕方ないよね……。


 お父さんとロイスは約束をしたけど帰ってこなかった。……いや、帰ってきたのは無残に切り裂かれた死体だったらしい。埋葬する時もロイス一人でやったようだから、本当にすごいと思う。僕じゃ絶対に無理だ。


 ロイスは勇気を出した。

 僕と似たような境遇から這い出ようと自分なりの言葉で戦ったんだ。それなら応えられるなら応えたいし、ロイスが望むのなら救ってあげたい。単純な僕のわがままだけど曲げたくはないかな。


 アキ達の初依頼だっていうのに面倒事が多いな……。有名な某RPGゲームでも週単位だぞ……。本当にテンプレっていう能力を有難く思いながら恨むよ。


「……これで全部だよ。ギド兄……」


 いつの間にかギドさんからギド兄にクラスチェンジしているんですけど……。まあ、お兄ちゃんとか呼ばれているわけではないし、まだマシかな。


「そっか、頑張ったな」

「うん! 僕頑張ったんだよ! ご飯だってくれないから自分で兎を狩って皮を野菜とかに変えてもらっていたんだ! そのせいで慢心しちゃっていたけどね……。父ちゃんが見たら怒っていたよ……」

「いや……守りたかったんだろ?」


 ロイスの本心はそれだ。

 お父さんという大切な存在が守ろうとしたものを守りたかった。僕に攻撃を仕掛けてきた時は村人達に疑念はなかったからね。それに守ろうとするだけの力は実際あった。Eランクとならいい勝負をするんじゃないかな。


【いえ、武器を揃えればDにも届きます】


 それなら尚更だね。

 さすが勇者というジョブを貰うだけあって性格も根性もいい。国でいうところの領土侵犯とかされたらそりゃあ怒るわな。


「……あの時はね。でも……ギド兄と話をしてみて……間違っていた行動だったんだって理解したよ……」

「それは違うよ。問題なのは村人達であってロイスではないから。諦めなかったのはすごくいいことだよ。もしかしたら体力が尽きて動けない可能性もあったし」

「そっか……そうだよね。ギド兄! ありがとう!」


 すごく素直になったな。

 頭を差し出すくらいまで僕に気を許したみたいだし。……本当にここに置いて行きたくないな……。下手をすれば勇者として戦争の道具とかにもされかねない。それだけ勇者の力はすごいと言われているからね。


「……ロイスはここを出るつもりはないのか?」

「……ギド兄ごめん。……ここには父ちゃんと母ちゃんの墓があるんだ。僕が手入れしないと誰も助けてくれないから」


 金色の短髪が微かに吹く風で揺れる。

 青色の瞳には光があまり入っていないようでくすんで見えた。……ここまでに悲しそうな子供の表情なんて見たことがない。僕もこんな顔をしていたのかもしれない。だけど……だけど、救えない。


「それなら仕方ないよな。分かった、代わりにこの家を良くしてあげるよ。せめてもの詫びだ」

「ホント? やった! これで風に震えなくて済む!」


 喜び方がすごく悲しいな。

 ……まだ僕の方がマシだったのかもしれない。食事はあったし助けてくれる人もいた。……ダメだ……心が痛い。


「後は少しの間泊まらせてもらうよ。料理とか戦い方とか、そこら辺を覚えればもっと良くなるはずだよ!」

「いいの? 僕、何も返せないよ?」

「僕も貧乏な家系で生まれたからね。やっぱり助けられることは助けたいんだ」

「……そっか」

「だから、まあ、少しだけ外に出ているね。壁とかなんとかしてくるから。それとも近くで見ている?」


 ロイスは「うん!」と大きく頷いたので持ち上げて肩に乗せる。「うわぁ」と可愛らしい声を上げているので嬉しいんだろうね。


「ギド兄! 肩車なんて久しぶりだよ!」

「よかったな。この村にいる間はいつでも構ってあげるから安心していいぞ」

「へへっ、ありがとう」


 こいつ……笑いながら髪をぐちゃぐちゃにしてきたぞ。仕返しだ!


「うわぁー!」

「どうだ! この回しは!」

「ギド兄! これ楽しいーよー!」


 ステータスの高さからなせる技、お腹の周りでロイスをぐるぐると回転させる。本当に構って欲しかったんだな、愛い愛い。


「主が楽しそうでなによりです」

【メモリーに保存しなくては……アキも後で見ますか?】

「……よろしくお願いします」


 不穏な言葉が気にならないくらい楽しんでからロイスを下ろした。さて、この家を他の家と比べ物にならないくらいに、住みやすいものに変えてあげよう。


 馬鹿にしたヤツらを見返せるだけを力を持たせてあげよう。そうすれば僕も安心出来るし。イフ、手伝って? カッコよくないけど僕一人なら難しいからね。


【マスター……お任せ下さい! このイフがマスターの期待に応えてみせます!】


 ほどほどにね?

 僕も頑張ってみせるから。


 僕は腕まくりをしてから構想をイフに伝えた。

ロイスの話はまだまだ続きます。

村での話は後、三〜五話の間続くと思いますのでお楽しみに。


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