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4章119話 経緯

色々と思うところがあると思いますが最後にもう一度だけ再書き直しさせていただきました。それに合わさって前話の内容も少し変わっています。先にそちらを見てから今回の話を読んでいただけると助かります。

 そこからDランクになるまでも早かったっけ。

 最初こそは三人ともがかなりの戦力であるスケイルの、それも探知が得意なミラルが辞めたってことで色々と言われたけどさ。そんなのは所詮、何も知らない人達の勝手な考えでしか無かったんだ。


 俺以上の前衛としての才能を持つ盾役のガル。中衛で敵の探知や魔法での援護、近接も得意な万能型のウルが代わりに入ったわけだしね。パーティが不安定になることなんて一切なかった。二人ともすぐに個々でEランクまで上がっていたし。やっぱり俺の教えが良かったからかもしれない……って、そこまで首を強く横に振らなくても良くないか……?


 ああ、またどうでもいい話をしたね。

 そこからは四人で戦うようになっていったんだ。もちろん、俺やラメも頑張ったからかなり強くなったと思うよ。今まで悪戯して怒られてきた人に今度は感謝されるようになる、それがすごく嬉しかったんだ。だから、もっと頑張ろうと思えた。大切な故郷のために、ね。


 だけど、そんな平和な時間は短かった。

 俺達と領主との確執の始まりは一つの依頼を受けた時からだったんだ。いつも通りに金稼ぎのために冒険者ギルドに行き討伐依頼を受ける。何も変わらない日常だ、十五体のオークを倒してくればいいという簡単な依頼だったからね。


 依頼の紙をギルドの受付に出す時だった。


「今から森に行くのか」


 背後から誰かに話しかけられた。

 誰かは分かりきっている。その声は何度も何度も聞いて耳に馴染んでいたものだったからね。振り向くこともせずに「駄目か」って聞き返した。言わずもがな、話しかけてきたのはミラルだ。商人として冒険者ギルドに何かを卸している最中だったんだろう。


「最近、魔物の様子がおかしいんだ」

「なるほどね」


 たった一言の理由しか言わないんだよ。

 でも、ミラルの立場上、情報はかなり価値のあるものだからね。俺達だけに伝えるわけにもいかないから詳しく説明することは出来なかったんだろう。ミラルが他の冒険者に伝える気は無かったのか、とか、ギドからすれば疑問はあるかもしれない。でも、どちらにせよ、受付の前でどこまで話をしていいのかさえ分からない。最悪は尾ひれが付いて街に広まる可能性もあるんだ。端的に話すのは商人としても、冒険者としてもおかしなことはない。


「倒してすぐに戻ってくるよ」

「……怪我はしないでくれよ」

「まさか、信じろ」


 その後は何かを言われることは無かった。

 依頼を受けて準備を整えて……そして向かう。朝に依頼を受けたのに全部を整えきれたのは昼前くらい。そのまま歩いて森の中に入ってオークを探した。魔物を見つけるのに関してはウルがいるから特に心配もない。ミラルからの忠告もあったから極力、街に近いところで、少なくとも危険性のある奥部までは行かないようにしていたっけ。


 街の近くは雑魚しかいないからさ。それこそ、街の近くにオークでもいたら楽だったんだろうけど、そんな嬉しいことが起こるわけもないし。いるのは初心者用のゴブリン程度、分かると思うけどDランクにもなればゴブリン何て価値の薄い存在でしかない。


 とはいえ、中部に入るまでの間に出会ったゴブリンは狩っておいたけどね。右耳を取って出すだけで銅貨にはなるし。まぁ、実りはないから小遣い程度にって思ってやったんだけど。


 それが良くなかったんだと思う。

 思えば少しだけおかしかったんだ。まるで並べられたように道中にゴブリンがいたわけだし。それに大きな鳴き声もあげていた。そこら辺を加味しておけば中部に入ることは得策じゃないって分かるはずだったんだけど……俺には気が付けなかったんだよね……。


 中部に足を踏み入れた瞬間に現れたのはゴブリンナイトが五体。わざわざ待ち伏せていましたって感じでウルとラメに下卑た笑みを浮かべていたのを覚えている。冒険者成り立てなら殺されて終わっていただろう。でも、相手は俺らだったし、そこにゴブリンナイトがいることはウルから報告があったからさ。


 その後すぐ二人に近づこうとしてきたから首を落として見せた。一体では止まらなかったみたいだから三体同時に、それで恐ろしいって感情を抱いたんだろうね。変な声をあげて下がろうとしていた。でも、すぐにその声は止まる。片方はガルの突撃でペシャンコに、もう片方はウルの殴打で頭だけ吹っ飛んでいたよ。ウルって本当に怖いんだよね、表に出さないだけで色んなことを考えるから動く時は容赦がないっていうか……うん、また脱線しそうだからやめておこう。というか、話し続けたら後が怖、いえ! なんでもないです!


 ま、まぁ、さすがに待ち伏せとかから危ないなって思ってさ、帰ることを決断したんだけど……遅かったんだよ。そこで現れたのはゴブリンでも、ゴブリンナイトでも、ましてやゴブリンジェネラルでもない。ゴブリンキング、その時の俺達には倒せるわけもないゴブリンの最上位種だった。


 天才のギドには分からないかもしれないけどゴブリンキングってとても強いんだ。それこそ、圧倒的格上で技術もなかったか過去の俺達ではちょっとやそっとの成長じゃ勝てないくらいにね。そして何よりも辛かったのが……。


 って、女性を多く連れているギドならバレバレだよね。そう、ラメやウルの存在だった。邪魔だったとかじゃない、負けた瞬間に生きていることを後悔するような体験をさせてしまうことになる。悪戯をして笑えるラメではなくなってしまうことが怖かったんだ。でも、勝てない。それは明白だった。


 だから、最初は二人を逃がそうとしたんだ。

 小声で「殿を務める」ってカッコつけて、ね。


 まぁ、それはラメとウルに止められたせいで出来なかったんだけど。「二人に死んで欲しくない」とか言ってさ。それに関しては未だに根に持っているからな。逃がし切れたら選択肢が増えたのにそれを許さなかったんだから。


 なら、どうするか。

 答えは一つだろう。


 俺がゴブリンキングの首を取る、それしか全員が生き残る術はない。無謀な選択だったと思うよ。さっきも言ったけど『圧倒的格上で技術もなかったか過去の俺達ではちょっとやそっとの成長じゃ勝てないくらい』強かったからね。でも、弱い自分が出来ることはそれくらいしかない。


 普通なら飛びかかった瞬間に首を跳ねられて終わるんだ。ただ圧倒的格上のゴブリンキングに一つだけ勝っていたものがあったのが幸いした。それは模擬戦の時も見せた俺の速度。そこに関しては天才であるラメやミラルにも負けない、いわば、二人に引き離されずに戦えた唯一の武器だった。


 ゴブリンキングの得物が斧だったのも簡単にやられずに済んだ理由になるかもしれない。今の俺の胸辺りまではあるかってくらいの大斧であったからこそ、振った後の隙は馬鹿に出来ないものだったし。そもそも大斧が何であったとしても一撃当たれば生死をさ迷うのは分かっていた。なら、隙が大きい方が俺にとっては相性がいい。


 逆にガルからすれば相性は最悪だったけどね。

 ガルは今も昔も流して隙を伺う戦い方だ。それに当時はまだローフさんからの師事も受けていないからさ。技術面でも、能力面でも易々とゴブリンキングの攻撃を受けるって判断は出来なかったんだ。いつもとは違う戦い方を瞬時に見極めて実行する、口にするのは簡単だけどやるとなると本当に難しい話だったよ。


 俺は一回切っては下がり一回切っては下がりを繰り返すだけで、ガルは大声と騒音でゴブリンキングや配下達の注意を引く。雑魚はウルが遠くから撃ち抜いて、後はラメ次第って考えていた。切っても切っても厚い脂肪の薄皮一枚を剥ぐことしか出来なかったんだ。それでも絶望しなかったのはラメがいたからだろうね。どこか、ラメならば何とかしてくれるかもしれないって思えていた節があったからさ。でも、その考えはとても愚かだった。


 数分はそんな同じ行動を取っていた。

 もう一度、薄皮一枚剥ごう。そんな小さな目標のために足を踏み込んだ時に悲鳴が聞こえたんだ。前へと出てしまった手前、思いっきり後ろを見ることは出来なかったがチラリと見えたものはあった。見たくもない光景、ラメの真っ白いワンピースが赤く染まる姿。


 助けに行きたい気持ちが頭を過ぎる。

 それでも攻撃をしなければいけないと心を殺してゴブリンキングの顔を見た。アイツは笑っていたんだ。まるで気が付かないのかって、せせら笑っているように。何かがヤバい、そう思ったのも束の間、横から強い衝撃が来る。


 腹に何かを受けたのはさすがに分かった。

 飛ばされてすぐに手で確認したが血は出ていない。その代わりに鎖帷子の腹の一部を触った時に指を怪我しちゃったけど。鎖帷子のおかげで刃物を通さずに済んだけど壊れかけていたってところだろう。鎖帷子の一部が切られて尖った刃のように剥き出しになっていたわけだし。


 体の状態を確認した後に咄嗟に前を向く。

 隙をついて姿を現した存在を知らなければいけなかったからね。その時に見えた姿は真っ黒いコートのようなものを着、ナイフを持つ小さな鬼。その姿に一つの存在が頭に浮かんだ。


 ゴブリンアサシン、名前は聞いていたが実物を見たのはその時が初めてだった。というのも、ゴブリン系統の正統進化はリーダー、ナイト、ジェネラル、キングだからね。魔法を使う派生はあってもアサシンはその中に含まれない。存在は知っていても変異種ってそれだけ希少価値の高い、いわば、伝説だったからね。対策方法も教えられていなかったから頭が一瞬、固まってしまったんだ。


 その思考が再度、隙を産んだんだろう。

 ゴブリンキングが突撃してきた。その間にゴブリンアサシンは消えてしまって姿は追えない。本当に辛い状況だった。躱すのは難しくないだろう、だが、その後が問題だ。ゴブリンアサシンから攻撃を受けてしまえば次は動けなくなるかもしれない。


 なぜか、ウルやガルの声も聞こえなかったし。

 なぜか、それを考えると最悪な理由しか思い付かなかったからね。そのせいもあってか、体が言うことを聞いてくれなかったんだ。確実に背中を冷たい何かが通っていた。紛うことなき圧倒的な恐怖を抱いてしまったんだ。


 足が竦むってこういう時に使うのかって思ったよ。本当に体が動かなかったんだ。それまで死ぬかもしれないって思った戦いは無かったからさ、どこか自分は死なないって思っていたのかもしれないね。躱さなければゴブリンキングの突撃をモロに受けて死んでしまうのに何も出来ない。どこか死ぬことすら享受してしまっている自分がいるようにも感じられてしまった。


 時間が見えるって言っても分からないよね。

 本当にそう感じるほどにゆっくりと近付いてくる死を、その時に見たんだ。ドガドガって重たい気持ちの悪い足音と共に聞こえる死の音色。目の前に来る時まで頭が上手く回らない。ようやく体に思考という人間にとって無くてはならないモノが帰ってくる時には何もかもがもう遅かった。


 あっ、死んだ。

 そんな愚かで呆気ない考えが浮かんでしまった。


 死神の鎌が下ろされる如く斧が近付いてくる。


 手を伸ばせば届きそうな距離。


 その時に大きな声が聞こえたんだ。


「避けろ、シード」ってね。

再投稿して申し訳ありません。実は十二月に入ってからスランプに陥り何度、書き直しをしても自分の納得のできる話が書けないでいました。特にシードの話の中でメインが領主との話なのにゴブリンキングの話で四、五話も消費することがどうしても許せませんでした。話自体はかなり重要性を秘めているつもりでしたが、せめて二、三話で終わるようにしたかったんです。

そのため二週間ほど悩んだ末にスランプ脱却の意味合いも込めて、プロットの書き直しをして考えのリセットを図ることにしましあ。その中で絶対に必要な要素と無くても話は進められる要素を選び、それに合うようにして話の流れを練り直ししました。シードの話に関しての練り直しは済んだので消して書き直しは今回で終わりにします。

またスランプのため書けるかどうかが分からないため、次回の投稿日時の設定を一時だけ止めさせていただきます。誠に身勝手ながらご了承の程よろしくお願いします。




もし良ければブックマークや評価など宜しくお願いします。評価が伸びているのを見ると書く励みになり、より良い話を作って書こうというやる気に繋がります。

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