4章84話 外道と言われても……です
何とか調子が戻ってきました。
ご心配をかけて大変、申し訳ありませんでした。
テーブル上の皿は空になっていた。
食事を楽しんでいたと思われるほとんどが思い思いの修練をしていて、自分の中で感じていた一時間がどれだけ長かったのかを実感させられる。庭に出たばかりだと言うのに全員の視線がすぐにこっちに向いたので内心ドキッとした。
「イチャイチャはもういいのか?」
「うん、というか、寝過ぎただけだよ。勝手に時間があればイチャイチャするみたいな言い方は心外だなぁ」
開口一番にエミさんから言われてしまって軽口を叩く。そうでもしなければ待たせてしまったことによる申し訳なさで押し潰されそうになるからね。僕からすればエミさんのためになる道具を作ったと思っていても、それをバラさないようにしていたのは僕の方だ。僕がエミさんを変に思うのは道理に合わない。
「……悪いな、疲れさせてしまってよ」
「いいや、そういう意味じゃないって。日頃の疲れが出てきただけだよ。なんなら、今度はエミさんが膝枕とかして癒してくれる?」
「オ、オレがか……?」
首を縦に振って笑ってみる。
それなのにエミさんは自分の世界にトリップしたみたいで反応がない。目を合わせようとしてもあっちこっちに動かしているだけで逸らしてくる。本当に少しだけ悲しくなってしまうよ。まぁ、そうさせたのは僕自身だから何も言えないんだけど。
「嘘だよ」
「そ、そうだよな! オレなんかの太い足よりももっと良いのがたくさん」
「抱きしめながら寝た方が疲れとれそうだしね。膝枕だけなんてもったいないや」
実際、筋肉質な体は体で抱き心地が良さそうなんだよなぁ。細くてガリガリの体とは違ってエミさんの場合は肉付きも、良く筋肉もあってって感じだから固いみたいな感想にはならないと思う。太い足って言われれば確かにミッチェルとかに比べれば否定はしないよ。だけど、バレー部とかの女の子と同じくらいだから気にする必要は無いね。むしろこの位の太さの方が。
「と、言ったように足を気にする必要は無いからそのままでいてくれだそうです」
「……そうか……えっと、ありがとな」
「ふぇ?」
イフの声で目が覚めていく。
目の前で視線を逸らしていたエミさんは僕の目を見ながら嬉しそうな顔をしているし……まぁ、可愛いから良いんだけどさ。となると……また考えを口に出していたのか。こういう時の癖を何とかしないとまた恥ずかしい目に合いそうだな。気をつけないといけなさそうだ。
「いえ、私が考えていることを一言一句、逃さずに教えていただけですよ」
「なるほどね、それならエミさんが僕の考えを知っていてもおかしくは……って、ふざけんなー!」
言っていいことと悪いことがあるだろうに。
もし自分が口に出していたのならまだしも、そうやってバラすのはいただけないな。仕方ない、イフには罰として何か与えよう。鉄の処女強化中に一緒の班にならないとか、一緒に寝ないとかもありだよなぁ。とりあえず何も無しだけは無い。
「あ、あの……それだけは勘弁して貰えませんか」
「嫌です、僕の心を傷付けた罰を受けてください」
それ以外に僕の心を癒す方法はない。
そんな可愛い顔をしたり、胸を押し付けて上目遣いをされても曲げる気なんてないからね。そう、これっぽっちもない……ない……と思う。こんなことで揺らいでいたらどうするんだ。デコピンでもしてイフから目を逸らせ。……くっ、この目にはどれだけ僕の視線を引きつける魔力を秘めていると言うんだ。
「終わったら一緒に寝てくれるんですね。それなら許してあげますよ。最初からそう言っていれば私も怒らなかったものを」
「……何の話?」
「あらら、今、自分でおっしゃっていたことを覚えていないのですか? エミさんも、他の皆様も聞いていましたよね?」
「今回は口に出していたぞ。この強化期間だけにするから我慢してくれ、僕も我慢するからって」
なっ……そんなことを言っていたのか……。
いや……まぁ、それならいいか。最初から強化期間だけ一緒にいないって話にしようと思っていたからね。もっと変なことを口走っていたのかと思ってしまったけど、その程度なら良かった。……ただ、許すのは僕の方であってイフの方ではない。よって他にも罰は与えないといけなさそうだ。
「ふふ、覚えておいてねイフ」
「ええ、放置と敬遠以外なら何でもいいです。どんな罰を与えてくるんでしょうね。とっても、とっても楽しみです」
この……絶対に二つ以外でイフをギャフンと言わせられるような罰を考えてやる。……まぁ、それは後回しでいいとして、今は先にやらなきゃいけないことをやっておこうか。倉庫の中を確認して仕舞われているはずのベルトを探す。きっちり三個あるからイフが付けていたのは外されているみたいだ。
イフの脱ぎ立て……は僕が使いたいとか少し思ってしまったけど、すぐに考えを改めてエミさんに手渡しておく。エミさんに渡したものが一番に縦に大きなベルトだからね。身長の高い人に渡した方が腹巻に近い見た目なのだから良いだろう。
「これは?」
「これはね、エミさんの戦いの癖を治してくれるかもしれない道具だよ。能力をバラしたら効果が薄れそうだし今は教えないけどさ」
「そうか……少し怖いが……ギドの渡してくれたものなのだから悪いものじゃないんだろう。ちなみに……どうやって付けるんだ?」
ふふ……チョロいヤツめ。
って、そっか。日本にいた時のベルトと何ら変わらない見た目だけど知らない人からしたら付け方が分かるわけもないよね。そこは完全に頭から抜けていたよ。まぁ、そこはイフに頼んでつけさせればいいから問題は無いか。
「後でマスターにつけてもらってください」
「そうだな、よろしく頼む」
「……分かったよ」
先手を打たれた……否定しようかとは思ったけど言いくるめられるのがオチだ。別にエミさんも嫌がっている様子はないし……ここは早く話を終わらせるために認めておいた方が良さそう。色んなことを考えたけど要はエミさんのお腹を生で見て、触れる権利を得たってことだからね。表情には出さないように喜んでおく。
「一度、エミさんで試してみて効果があったらリリとイアにも渡すよ。それじゃあ、もう少しだけ修練をしようか。班はそのまま、終わる時間は僕が決めるから集中してやってね」
全員から返事がくる。
エミさんとキャロ以外は先に箱庭の中に入っていったから残るは着衣させるだけだ。その後に教える中で使ってみればいい。先にエミさんのお腹を楽しませてもらうけどね。……そう言えば二人とも言っていた通り着替えているね。キャロも露出の低いメイド服から貴族の給仕係が着そうなメイド服へと変わっていた。ただし動きやすさを考えてか、スカートの長さは膝までしか無かったけど。まぁ、それを楽しむ前にエミさんのお腹を……ぐふふ……。
「エミさんにこれをつけるから二人とも一度、部屋に行こうか」
「おう!」
「分かったの」
エミさんのお腹はどんなものなのか、それだけを考えて家の中へと入る。例え庭で着替えさせても誰にも見られないとは思うけどもしもがあるからね。それに僕でも小さな独占欲ってものがある。僕がお腹を楽しんでいる顔を仲間以外に見られることもすごく嫌だし。
「まずはどうすればいい?」
「えっと、上を脱いで欲しいかな。下着は取らなくていいけどお腹は出して欲しい。服の上からつけても効果はあると思うけど直の方が効果は高いだろうからね」
「……エミ様のお腹を楽しみたいだけのように感じるの……」
「キャロ、何を言っているんだい? これは例えエルドが相手であろうと同じようにしていたさ」
そう、これは仕方の無いことなんだよ。
エミさんが恥ずかしそうにしているけど事実なのだから曲げようが無い。ニコニコ笑いながらエミさんのお腹を見つめる。ただ僕がベルトの付け方を教えようとしているだけでおかしなことは一切ない。楽しもうと思っているけど、それはイフからつけることを任された褒美だよ。
「や……優しくしてくれ……」
「うん、先っちょだけだから安心して」
ミッチェルが作ったブラジャー、とは言ってもスポブラに近いもの以外は上に着ていない。お腹はよくあるシックスパックに近くて確かに女性ならば、コンプレックスに思っていてもおかしくは無いほどに筋肉質だ。腕の筋肉も僕よりもあって男性の腕並みに太い。……だが、それがいい!
先にお腹を軽く触る。
エミさんが「ひゃっ」とか可愛い声を上げているけど知ったことか。いい、本当にこのお腹はいい。確かに少し固めだが若干の柔らかさが残っている。揉めば揉むほどにもっと触りたいと思わせてくるほどに魅力的な代物だ。本当は頬擦りしたいほどだけどキャロがいる手前、それは我慢する。
「……後でもっと撫でていい?」
「お、おう……オレので良かったら……」
「ごめん、最高以外の言葉が思いつかなかったよ」
感想を言ってなかったから手を離す前に言ったら一気に顔を赤くして俯いた。このギャップがやっぱりエミさんを弄る利点だよね。体は男の人並に筋肉があるのに中身は女の子、そして触れば触るほどに小さな女の子らしさを感じさせられる。
「付けるね……力を抜いて……」
「ひっ……冷たい……」
「初めての体験だったかな……」
わざと発言する時は俯かせた頭の耳元付近で囁くように言ってあげる。それだけでエミさんはエミさんだけの世界に入ってくれる……って、それはどうでもいいか。今はこうやってエミさんの表情や反応で楽しませてもらおう。
「やっぱり……主様は変態なの……」
「今更だよ」
キャロに笑い返してからソファに腰かける。
紙を丸めて煙草のように口につけてから、話した後に吐く息を氷魔法で水蒸気に変えた。やはりと言うべきか、初めてを奪うのはいいものだ。……童貞の僕の言葉だと背伸びしているだけにしか感じられないけどね。
エミさんが服を着終わるまではキャロにそんな外道な姿を見せ続けて反応を見ていた。時折、頬を赤らめながら隣に来ようか、理性からやめようか悩んでいる姿が見られて楽しませてくれる。……さて、これで準備は万端だ。二人を連れて庭へ出てから箱庭へと転移した。
この後めちゃくちゃ……何もしていないです。
スランプ中に色々と話の整理をしていたのですが少しだけ伸びそうです。必要か不必要かは分かりませんが話は話で楽しめるものだと思ったので書きます。ちなみに未だに主人公との接点が少ない、あの人との話です。
次回は土曜日の予定です。もし良かったら評価やブックマークなど、よろしくお願いします。