4章79話 疲れている時は下ネタに走るのです
少し下ネタがあるので苦手な方は飛ばしてください。
大きく深呼吸をする。
十時のおやつで軽い食事をしたから重い運動はしたくはないな。あの日本にいた時のマラソン大会後の横腹への激痛を味わうことになるからね。……まぁ、そこまで気負って構える必要は無いんだけど。動くことよりも目で見極めることの方が今は重要だ。
「甘い」
横から振られた薙を黒百合で受け止める。
すぐに大槌による一撃が迫ってきたが先の両手剣での横薙よりも明らかに遅い。見えてからすぐに結界を張って流す。そのまま左手と右肩で止めたままの両手剣を弾いて片手に氷の刃を作り出した。飛んでいく氷が何かにぶつかって砂埃を起こしたせいで視界が悪くなるが気を抜かない。もう一度、氷の刃を作り出して構えた。
「うん、それはやっちゃダメだね」
「……そうみたいだな」
砂埃に紛れて距離を縮めてきたのはエミさんだった。煙幕の代わりに縮めてきたようだけど僕にはあまり効かない。というか、距離感は魔力の波長みたいな、少しだけ探知に近いものができるから詰めてきたら分かるしね。エミさんが止まったからキャロも止まってくれた。うん、言ったことを忠実に守ってくれている。
「横薙ぎを何度も使うのはダメだよ。ましてや一対一なら確実にエミさんに部があるのに距離を詰めがちだし。まずは後衛や中衛にいるであろうキャロを意識した方がいいかな。結界とかの準備をすればキャロも詰めようとはしないと思う」
「わ、悪い……癖が抜けなくて……」
癖は……まぁ、仕方ないかな。
それを正すためにも模擬戦とかは必要だったと思うし今のうちに弱点を知れるのはデカい。それこそ目の前に見えているキャロの胸並みに……って、ナチュラルに変なことを思い浮かべていた。やっぱり、このメイド服は禁止しよう。少しだけ目に毒だ。
「えっと、一旦、休もうか」
「まだいけるぜ!」
「そういうのはいいから。ダラダラ汗を流しながらやったら気分よく修練出来ないでしょ。僕が休むって言ったら休むの」
「そ、そうか。まぁ、分かった」
本心だけは隠しておかないといけないな。
鎧を脱いで薄着のエミさんと、戦闘用と称されて着替えたキャロのメイド服が少し露出が多いなんて言えるわけもない。というか、それのせいで邪念が混じってしまうんだよなぁ……。それもこれもどこぞのイフとかいう存在のせいだ。何で休憩後に戦闘用としてこんな服を渡したんだか……はぁ、ため息が出るよ。
地面に腰をつけて座り込む。
太陽が真上に進んでいるから結構な時間、こうやって教えたんだって分かる。キャロは何も言わずに僕の隣に座ってくれたけど、エミさんは動き足りないみたいで剣の素振りをしていた。分かっていないんだろうなぁ、汗をかいたって言って肌着になったせいで胸が上下に揺れているって。ましてや、横を向けばもっと大きなアレがあるから視線を動かせられないし……うーん、天国と書いて地獄と読む状況だなぁ……。
「倒れないように気をつけてね」
「倒れたらギドに介抱されるんだろ? 最高じゃねぇか」
「なるほど、その手があったの」
「いや! やめてね!?」
そんなことを狙わないで欲しいよ……。
ってか、今の状態で倒れられたら僕が背負ってベットに運ばなきゃいけないじゃん。そうなったら大きな球の感触が直に背中に当たるわけで……あれれ、最高じゃないか。……って、本心が漏れた。まあまあ、役得なのは置いておいて辛いことを体験して欲しくないからやめて欲しいな。念を入れて言っただけだし危なければエミさんも勝手に休むだろうけど……まぁ、心配はしちゃうよなぁ。
「……危なければ休んでね。そんなことしなくても頑張っているようなら少しくらいは願い事を聞くからさ」
「な、何でもか?」
「……やれることならって付け足しておくよ」
そんな目をキラキラさせなくても……。
僕の言葉はそれだけ甘美だったのか、二人がブツブツ呟き始めた。エミさんだけじゃなくてキャロも何かを言っているからしたいこととかがあるみたい。別に言ってくれれば良いんだけどメイドとして言えないんだと思う。こういう機会を与えるのはありかもね。
えっと……エミさんは「デート……」とか言っているしキャロは「お世継ぎを……」とか言っていて個性が出ている。まぁ、キャロの独り言に関しては絶対に却下だけど。確かにそれなら確かに僕が良いって言わないから言えるわけがないや。
あー、そう言えばデートとか最近してないなぁ。
一緒に回るとか言って何もしないままでいる人とかもいるし。エミさんとかともしてみたいな。パトロの街でのデートとか何をすればいいのか分からないけど、歓楽街の近くとか通ったらどんな反応をするのかとか気になる。……いや、よくよく考えたらかなりゲス野郎な考えだね。やめておこう。
「まぁ、それは後回しにしよっか。別に後で話して決めることも出来るからね」
「お、おう! 回る場所を考えておくな!」
あ……デートをすることは確定なのね……。
それは別にいいか、キャロはまだ自分の世界にトリップ中みたいで目が遠くに行っている。つまりセクハラし放題ってことだ。あー、こんな時にイフがいなくて本当によかった。変なことを考える度に絶対に虐めてきただろうし。……ただ変なことは絶対にしない。ツゲグチコワイモン……。あ、でも、耳を触るくらいなら自由だよね!
「ひゃ!?」
「お世継ぎはまだ後だよ」
「あう……聞かれていたの……」
無意識下で呟いていたんだろう。
僕も時々、考えているつもりで言葉にしちゃうこともあるし。でもさ、割と怖いよね。慕われているのは嬉しいことなんだけど僕がワガママでしたくないって言っているだけで、実際は皆の本心なんて一部分しか僕は知らない。もしキャロが呟いてしまった言葉が本心ならいつ僕が襲われるとも限らないからなぁ。キャロに限ってそんなことをするとは思いたくないけど。
「キャロから見てエミさんは動きを合わせやすかった?」
「うーん……微妙なの」
キャロにはエミさんに動きを合わせるように言ってあった。キャロは忘れられがちだけど、大槌を扱えるだけの力持ちであることだけが長所なわけじゃない。力と速さをレベルの割には高く兼ね備えながら、稀有な呪魔法を扱えることが本当の長所だ。それにエルドと戦っている分だけ周りに合わせた戦い方を担えることがすごく強い。
幻影騎士ならロイスがタゲ取り、まぁ、相手の注意を引いてくれるし、中衛からのサポートはエルドがやってくれる。遠距離なら変態双子がやってくれるからキャロのいる意味は薄いように思われそうだけど実際はそうじゃない。役回りがない分だけ自分で考えて自由に立回る必要があるんだ。前衛が危険ならば前に行き、後衛が危険なら後ろへ行く。エルドよりもデバフ効果の高い呪を使える分だけ必要性が高いしね。
ただその分だけ、常人よりは高く育ちやすいステータスだけど幻影騎士の中では伸び悩んでいるように見えるなぁ。裏を返せばレベル上昇でロイスやエルドのステータスが上がりすぎているって言うのもある。まぁ、そこで培った考えがあるわけだからエミさんの動きに合わせてもらった。
「ロイスはステータスの高さを押し付けて勝つ癖があるけど、エミさんは勝手に前に行きすぎているように感じたの。魔法とかに長けているのならやってもよかったと思うけどエミさんはそこまで魔法が得意なわけじゃないの」
「だってさ」
「……痛いところを突かれたな」
キャロを教育したのは他でもないミッチェルだ。
ミッチェルはミッチェルでいくらか奴隷としての教育を施されていたようだし、イフから独学で学ぶことも多くある。というか、あの子は本当に天才の部類なんだと思う。自分がしたいとか欲しいと思ったことを本気で頑張って技術として得てしまうからね。裁縫だって調理だってそうだ。家に欠けているものを全て得てしまっている。
そんな天才超人から学んでいて、ついていけているエルドもキャロも非凡なわけが無い。まぁ、キャロは裁縫とかは苦手みたいだけどね。何回も針を折って直しに僕のところまで来ていたし。エルドからの告げ口でエルドの作品を自分のものとして提出してきたこともあったっけな。……それでも僕が渡した特製の針を使えば、キャロ一人で小さな服屋を作れるくらいには裁縫技術はあるけれど……いかんせん、その点で言えばエルドに才能があり過ぎた。もっと言えばアイリとかも何気に上手かったりする。
「簡単な魔法を覚えるのもありなのか……?」
「いや、それは後回しだよ。今は自分より格上の人に対する立ち回りを覚えてもらいたいし。それが早く済んだならイフから教えてもらうのはアリだと思うけど」
「……そうだな、焦っても意味がないか……」
一個のことを覚えるのに他のことに手を出しても意味が無い。それに関連性があるのなら覚えやすいけど全くの別物ならば常人には覚えられない。テスト前に社会の歴史科目と理科の実験道具を覚えようとしてもゴチャゴチャになるのが目に見えているからね。それなら先に最大の欠点である詰めてしまう癖を無くすのが先だ。
「どうすれば癖を無くせるかな……」
「……なんか悪いな……」
「別に? 好きな人のために考えるのは嫌じゃないよ。それに三人を強くさせるって、強くさせたいって決めたのは僕だから。頑張ってくれれば僕からしたらそれでいいし」
……聞いていなさそうだけどいいや。
どうせ、最初の好きな人とかって場所で頭がトリップしてしまったんだろうし。その時にちょうどエミさんの顔が赤くなり始めていたから間違いなくそれのせいだと思う。
「キャロは戦闘とか雑事とかでの悪い癖とかはどうやって直したの?」
こういう時は僕以外の意見を聞く。
僕の場合は人のふり見て我がふり直せって感じで自分がされたくないことはしない、幼馴染に直した方がいいって言われたら意識するって感じだった。ただそれって長年の命を守るために得た癖ではないからエミさんとは勝手が違うと思う。そう言ってしまえばキャロの意見を聞いても直せるとは言えないけど……ただ要素として聞いておきたい。逆に聞くことで直せる可能性もあるわけだからね。
「戦っている時なら失敗すれば痛くて直っていくの。雑事ならミッチェルに……口には出せないようなことをされるから怖くて直すの……」
「へー、ちなみに何をされたの?」
「……意地悪なの! イフ様に言いつけてやるの!」
「ごめんなさい! それだけは勘弁して!?」
気になったから聞いてみたけど、そうなるのなら絶対に聞きたくない。いや、恥ずかしそうにしていたからもっと恥ずかしい顔を見たくて聞いたのに、その返しは辛い。イフにバレたらどうなるかなんて少し目を閉じれば容易く想像出来る。……おー、怖い怖い。
「……それなら多少の衝撃だったり痛みが加わるようにすればいいのか」
そう例えば僕が遠隔で操作出来る機会とか。
ピンク色の丸い……いや、ダメだ。思いついてしまった道具は童貞の僕には余ってしまうものだから考え直さないと。……さすがに回転するとか震えるだけだったら意味ないしなぁ。あっ、でも、作って損はなさそうだね。表向きはマッサージ機として、紳士諸君には裏でこういうことにも使えますよって言えば売れそう。僕は絶対に使わないけど。
あー、腹巻き型のとかはありかもしれない。
中に魔石を組み込んで空間魔法でボタンと腹巻きを繋げておけば押すだけで何かは出来る。さて、その何かを何にするかってところが重要そうだね。普通に雷の力を込めてビリビリペン並みの電撃が走るのもアリだし、氷の力でいきなりお腹が冷えるとかもアリだと思う。何も言わずに使わせたらエミさんの可愛らしい悲鳴とかも聞けそうだしアリよりのアリよりのアリだと思う。……でも、お腹が冷えそうだからやめておこう。通常通り雷が流れるとかにしようかな。もし量産した時の売り文句は『綺麗なシックスパックを作れる画期的な道具、使い方は簡単! ただ腹に巻くだけ!』かな?
「次に休憩する時にエミさんに道具を渡すよ。つけて訓練をしたら直る画期的な道具を思いついたから楽しみにしていてね」
「お、おう……なんか邪悪な笑みだけど……」
邪悪な笑み……確かにそうかもしれない。
今、僕はすごく楽しみだからね。商人として職人として、ものすごく高く売れそうで、そして作るのが困難そうな地球にもありそうな道具を自力で作ろうとしているんだから。そして何も知らない異世界人がどんな反応をするのかがすごく気になる。
まぁ、それはいいとして……。
「エミさんもキャロも汗をかいただろ。もう少しだけ鍛錬をしてから全員で休憩をするから、その時に着替えてきな」
「おう、着替えは借りるな」
「分かったの!」
今の天国をしっかりと終わらせないとね。
着替えならいくつもあるから大丈夫だろう。最悪は僕の服とかでもエミさんなら入るだろうし。いやー、こういう配慮が出来る男こそモテると思うんだよね。最後の数十分間は目の前の大きな玉を楽しみながら鍛錬をするけど。本当にイフがいなくて良かったよ。
すいません、シリアスの後はどうしても日常系の思春期ならではの変態的な話を書きたくなるんです。決して作者が変態なのではなく、ギドというキャラが変態なだけなので勘違いはしないでください!
時間が増えたので出せそうならば明日にでも出します。
……一文字も書いていないので多分、明日は出来ないと思いますが。そこはやる気次第ということでお願いします。もし面白いと思っていただいたり、興味を持っていただけたならブックマークや評価よろしくお願いします!