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4章73話 見えてきた光です

書き上がったので投稿します。

最後だけしっくり来ないので加筆or書き直しするかもしれないです。

「無茶し過ぎですよ」

「傷ついて喜ぶ人はいないよ」


 箱庭が壊れてすぐにシロに抱きつかれた。

 本気で抱きしめてきているようで少しだけ痛い。それでもこれが外から見ていた人の反応なんだと思って甘んじて受け止めようと思う。痛いだのなんだの言ってもまた無理をしたことには無理はない。躱そうと思えば……いや、ほぼほぼ不可能に近いかな。僕がアクセラレータを並行して使えれば話は別だけど。


「悪かったとは思っているよ」

「ええ、死なないと踏んでの行動でしたから文句を言っただけです。これでスっとしました」

「……シロは許していないよ」


 イフは本当に言葉通りのようで笑顔を浮かべてくるだけだけど、シロは心配していたようでかなり怒っているような顔をしている。「ごめんごめん」と謝りながら頭を撫でると「こんな……」とか「騙されたりなんか……」とか言って複雑な表情を浮かべてくれるから可愛いとしか思えない。不思議と申し訳ない気持ちが一切、湧いてこないね!


 あの一撃を躱さなかった、もしも躱せていたとしても僕は受け止めていただろう。躱すことでエルドの覚悟の一撃を無視するような意味合いとして捉えられてしまうし。これに関しては僕の身勝手な考えでしかないかもしれないけど、結果的に僕は躱せなかったし躱さなかった。


「それにしてもエルドはよく頭が回りますね。あのような行動を取るなんて馬鹿としか思えませんよ」

「……すいません、ギド様なら前から攻めてくれると思ってそうさせてもらいました」

「いいんですよ、現に前から強行突破を図ろうとした馬鹿がもう一人いるんですから」

「おーい、馬鹿って僕のこと?」


 うん! 笑うだけじゃ分からないね!

 誤魔化そうとしているんだろうけど状況証拠的に僕とエルドとの戦いだ。絶対に僕だろう。遂に僕は僕のスキルにまで馬鹿だと言われるようになってしまったのか。……ドMじゃないから少しも嬉しくないね!


「あー、そう言えば聞きたかったんだけどさ。反響ってことは反射とは違うんでしょ?」

「そうです。頭の中に入ってきた心器の情報は反響、簡単に言うと刃と柄の間で攻撃を反射し合うという能力でした。そのために刃は二つあり、短い離れない刃が一つ付いているのだと俺は考えて使っています」


 反射し合う……ってことは一回だけの反射ではないってことか。それなら反響って言う理由も分からなくは無いけど反射し合うだけならあそこまでの威力はないだろう。仮に最後の一撃をエルドが作り上げたのなら誰の攻撃だ? 僕の斬撃でもあそこまでは追い詰められたりしないだろうからそれだけで済む話じゃないよね。


「反射する時に威力が上がるの?」

「ええ、その通りです。もっと言ってしまえば魔力を消費することで倍まで引き上げることが出来ます。反射し合うと言いましたが刃と刃の間だったり、刃と柄の間であったりする必要性はないので扱いやすいです」


 えっと……ってことは、普通に攻撃した一撃を反射させるって言うことも出来るのか。ただし反響自体は刃と刃の間だったり、刃と柄との間でなければならないとかかな。それなら……強すぎる心器だ。刃を投げる時の威力でさえもワルサーの一撃と体感だけど変わりないと思う。そこにこんな初見狩りのような能力……。


「ちなみに反射させる時に角度を変えたりとかって出来るの?」


 これは興味で聞いてみた。

 そしたら思いの外、顎に手を当てて考え始めた。イフにも何度か話を聞いているから試したりしていたわけではないみたい。そこまで悩ませるために聞いたわけではなかったから少しだけ申し訳ない気持ちになってしまう。


「……さすがはギド様です。そんな戦い方が出来ればもう少しだけ楽に傷を付けられたかもしれませんでした。やはり頭の回転はギド様の方が早いようですね」

「いやいや、それをエルドに言われると嫌味にしか聞こえないからね?」

「ふふ、第三者の見方というのはそれだけ重要だということですよ、マスター」


 うーん……そんなもんなのかな。

 よく分からないけど方向まで変えられればより戦い方に幅が利くとか思って聞いたんだけど。まぁ、それで新しい気付きに繋がってくれたのならそれでいいかな。……ここまでの話をまとめるとエルドの僕を倒そうとしたやり方に目星がついてきたかな。


 おそらく最初の僕の一撃、もしくは振った際に後ろにも斬撃を飛ばしたかでダメージを増加させ続けていたんだろう。だから一直線上から離れることはしなかったし攻撃の際にヘイトを溜めながら目の前から消えることもしなかった。分かりやすい戦い方なだけにバレたとしても他の作戦に転じやすそうなものだ。


「ここまでマスターを追い詰めたのですから今度は私を苦しめる存在になれるかもしれませんね」

「いや、それは無理だと思うよ」

「同感です」


 イフは本気でそう言っているのかもしれないけど悪いがエルドじゃ役足らずだ。エルドが弱いんじゃなくてスキルであるイフならいくつもの行動を一つの頭で行えるからね。よくあるスキルとかで言うところの並行思考みたいな。アクセラレータを使いながら自己強化でもされた日には……僕でもトラウマを植え付けられそうだよ。


 エルドも人の姿で騙されたりはしないか。

 冷や汗をかきながら、笑ってはいるけれど少しも余裕そうな顔はしていない。僕に傷を付けられることは出来た、殺す一歩手前までは持っていけたってだけではイフを倒せるだけの力を持っているとは言えない。……って、僕はそう思っている。


 根拠が無いとか言う人がいるだろうけど僕のスキルだからこそ、一緒に暮らすからこそイフのチートっぷりは理解しているつもりだ。イフが負けているのはミッチェルの料理や裁縫の技術くらいかな。魔法を使って何かをすることに関しては右に出るものはいないと思う。手先の器用さとかでミッチェルに勝てる人もいないし。


「非力な乙女に対して……」

「非力じゃないよね……」

「失礼ですね、骨折りますよ?」


 ぷんぷんと頬を膨らませて抗議してくる。

 だけど、笑顔で言うには怖すぎる一言だ。それに本当にやられそうだから笑えない。もっと言えばぷーっと頬を膨らませている本当の乙女がいるわけなのだから、そっちの方が可愛い。作られた可愛さとは違う天然物だ、頭を撫でたくなる。


「……本当に骨を折られたいようで」

「ジョウダンダヨ、イヤー、イフハカワイイナ」

「えっと……ありがとうございます」


 あの……照れるのは反則では……。

 こういうのが本当に素ならめちゃくちゃ可愛いんだけどさ。……まさかね、狙ってやっているんだって思いたい。すごい負けた気持ちになるから可愛いって思ってしまった自分を本気で殴りたいと思っているところだ。殴ったら不自然すぎてやれるわけが無いんだけど。


「……今回の戦闘はとても楽しませてもらいました。ですが、慣れていないことはするものではありませんよ。エルドが求めていることはあくまでも自分の力を認めてもらうことであって、その中でいつものマスターと戦いたいという願望があったに過ぎません」

「うん、それは分かっているよ。力を引き出させるつもりでやったんだけどね……」


 それで自分の首を絞めたら元も子もない。

 それに関しては反省している。やっぱり僕には悪役は向いていないのかもしれない。だからといって主人公にも向いていないと思うけど。僕の立ち位置的に主人公とは全く持って無縁の、勝手に幸せになる第三者だ。面倒そうだから回避させてもらいたい。


「だから馬鹿なんです」

「悪かったね」

「ええ、反省してください。じゃないとミッチェルに言いつけますからね」


 ミッチェルに言いつけるか……。

 少しだけ怖いな。何をされるのかが一番に分からない人だろうし……衣食住の内の衣食を握る人だから敵に回したくない。ってか、反省しているから関係ないけど。……こんなことを考えている時点で反省しているようには思えないんだけどね。


「エルド、今回は一緒に戦ってもらいたいんだ。その時に先走るのだけは無しだ。おそらくだけどロイスやキャロ達も一緒に向かわせるつもりだけど、エルドは僕と一緒にいること。それだけは守って欲しい」

「なぜ、とは聞きませんよ」


 うん、分かってくれたようで嬉しい。

 強くなったと言っても安心して送り出せるほどでは決してない。それに心器も僕やイフのような回復役がいなければ扱いが難しいからね。強い分だけ扱いが難しいのはおかしくは無いけれど、それにしても顕著過ぎるな。縮地とのコンボも考えると凡庸性が利く分だけ……。


 一緒に最前線に行くのだから言っていることに間違いはないし、他の面々も一緒に動いてもらうから危険なことは少ないだろう。戦うことを決めた以上、冒険者ギルドとの戦いに負けることは想定しないし自信を持たないなんてことはしない。心が負けていたら勝てるわけもないからね。


「僕もエルドも暴走する癖があるだろ。それを止めてくれるのは僕達より強い人だけだ」


 すなわちイフという存在だけだ。

 最悪は力技で止めてもらう。心まで失うほど暴走したことは無いけど、した時に起こりうる可能性を考慮したら僕とエルド、イフとシロとミッチェルだろうね。ユウは強いだろうけど僕達と一緒にいるのは教育上よくない。まだ見ぬ親御さんに怒られる行為だけは出来ないし。


「さてと明日からはエルドも拘束させてもらおうか。鉄の処女強化の時にエルドがいればもっとやりやすいだろう。キャロとかに言えば時間を与えてくれるだろうしね」

「……それが望みとあらば」

「うん、望みだよ。強い人がいるだけで教えられることが増えるからね。やり方も多くなるんだから当然だけど」


 シロは……まぁ、いてもいなくても。

 多分だけど付いてきてって言わなくても来るだろうし一緒にやるかな。殺し合いというより組手みたいなものをして教え込む。どこまで戦って対応出来るかって言うのを覚えてもらう。その点で言えば天才であるエルドを連れ込めるのは強過ぎるな。


「それじゃあ、帰ろう。エルドだって腹が減っているだろ?」

「長い眠りから覚めたというのに本当に荒々しい戦いでした」

「自業自得だよ」


 その後のエルドの顔は見ていない。

 最後に笑っていたのは見えていたから冗談で言っていたんだろう。シロを抱き上げて三人を連れて飛んだ。撫でられているだけで喜ぶシロを見ると本当に幸せな気分にされる。自然と溢れる笑みを皆が温かい目で見てきて……やっぱり皆といられる空間が僕には大切みたい。それを自分から破壊するのなんて無理みたいだ。

書き直しした部分なのですが前話の最後らへんでギドが「エルド! 僕と一緒にディーニを倒そう! 僕と一緒に戦ってもらう。いいかい、命を大事にして戦うこと。そしてディーニの死に様をしっかり見ること。それが主としてエルドに示せる事だ」と話していましたが「エルド! 僕と一緒にディーニを倒そう!」に書き直ししました。長ったらしく説明的な部分だったので73話の中に組み込めばいいと考えた結果、このようにさせてもらいました。


次回は一週間以内に投稿します。もちろん、早く書ければ投稿するのでお楽しみに! 多分ですが鉄の処女関連の話を書こうかなと勝手に思っています!

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