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4章44話 要は可愛いということです

少し短めです

「久しぶりな気がしますね」

「ポーション作りのことかな。いや、前回は無理するなって止めたのはイフでしょ」

「当然です。マスターが病気になられて困るのは私達なんですから。べ、別に心配しているわけじゃないんだからね!」

「そうですね」


 おざなりに返す。少しだけドキッとしたのは言わないでおこう。その顔でテンプレ型のツンデレセリフは割と効く。やめろ、その攻撃は僕に効く。


「あ、でも、倒れてしまったマスターの世話をするのも悪くないですね。……小さくなれませんか?」

「もうあの身長には戻りたくないかな!」


 身長が低いってかなり嫌なことなんだ。

 女子には馬鹿にされるし……嫌味とかではないんだけど「可愛い」とか「撫でやすくていいな」とかふざけるなって思ってしまう。その点で言えば高過ぎず低過ぎずの今の身長がベストだね。どうせ、イフの頭にあるのは幼児になった僕を世話したいみたいな考えなんだろうけど。


「それに縮んだら撫でられなくなるよ?」

「えっ……それは……悩ましいですね」


 イフからすれば撫でられても撫でてもどちらでも良いんだろう。それなら今まで撫でられ続けてきた僕が逆に回ってもいいじゃないか。割と憧れだったんだよ。背伸びされてキスされるとかさ。


 左手で薬草の下準備を、右手で猫を愛でるようなやり方でイフを撫でたりして遊ぶ。イフはイフで左手で僕をいじってくるけど右手で鍋の準備とかをしている。本当に共同作業って言っても差し支えなさそうだ。


 慣れもあるからか、作成までに時間はそうかからない。濃いものを薄めているから大量生産も可能だしね。何なら僕じゃなくてイフがやっても同じように成功してしまうだろう。そう考えるとイフに任せるのも手ではあるかな。ただ僕がいないとやりたがらなそうだし自主的に言わない限りは任せないでおこう。


「そう言えばミッチェルが頼まれていたことを終えたと喜んでいましたよ」

「頼んでいたこと……多過ぎて予想がつかないな」

「それなら詳しいことは後でお聞きくださいな。私は準備でもしておきますよ」


 準備が必要なこと……あー、数個だけ思い付いたけど聞くのはやめよう。驚かせようとミッチェルがしているかもしれないし。となるとイフもポロッと言った感じなのかな。いや、イフは割とそう言うことを気にしなさそうだし楽しみにして欲しいって純粋に思っているだけかな。ええ、楽しみにしますとも。


「と、出来たかな」

「ええ……やはり二人でやると早く終わってしまいますね」


 数分、二人で混ぜたりしているだけで販売用のポーションは完成した。数量三十本はあるからかなり売れそうだと思う。この時間ならグリフの商人ギルドでもやっているだろうから、薄める前の効力の高い物を軽く売ろう。数本は関係のためにミラルに売るつもりだけど。


 だからと言って無理やり奪いそうな領主に繋がりがありそうな商人ギルドには売れないか。さすがにグリフまで力を伸ばすことは出来ていないしね。少し気がかりがあるとすればルール家とかも王国の貴族だ。領主に繋がりがあるのは確定だろう。バレることは無さそうだけど会いたいとは思えないな。


「……外に出ないか?」

「いいですよ。はい!」


 手を取り座る僕を起こさせるイフは小さく笑う。

 固く恋人繋ぎのままでニコニコしながら片付けをしていくんだ。本当に器用だと思う。散らばる出来たてのポーションをしまって軽く抱きしめてみた。


「へ……?」

「イフでもそんな顔するんだね」

「どういう意味ですか!?」


 意識せずに行動すればイフもそこらの乙女と変わりない反応をしてくれるんだ。割と有益な情報を得られたと思う。いちいち出すのも面倒なので背中に黒百合を差して外へと出る。まだまだ暗くて街灯もない場所も多いから目が慣れるまで少し時間がかかった。吸血鬼が夜目を持っていようと少しくすんで見えて見えづらく思えた。ただの明かりの強さのせいか、もしくは……。


 所々で飲み潰れたりナンパをしている人も多くいる。中には逆ナン……いや、大人の店に連れ込もうとする客引きの女の子とかもいるけど僕達に絡むことは出来なさそうだ。良い意味でも悪い意味でも名前が知れ渡っているしね。


「美味しそうですね」

「時間があれば食べて行ってもよかったんだけどね。……朝も早すぎるし帰れば皆とご飯の時間だ。今は我慢しようか」

「そうですね……次のデートの時ということで」


 そっと人差し指を僕の口元に付けて微笑む。

 どこでそんなことを学んだんだか。いや、僕の知識から引っ張ってきたのかもしれない。そうだとすれば男なのにラブコメの女性が読むような漫画を読まなければよかった。


「今度も二人で、だね」

「……ええ、分かっていますね」


 多少、恨みを買われたみたいだけど、いつものことだ。「なんであんな子と」なんて羨む人ほど自分から動いていない。動きもしないのに成果が回ってくるとは思えない。後、やり方が悪いと思うんだけど……言えば喧嘩沙汰だしやめておこう。


「お久しぶりですね」

「ええ、ポーションを卸に来ました」

「助かります。今、チコ様とルーク様を呼びますので少し時間を」

「いえ、あまり時間もないのでお金を貰い次第、帰宅しようと考えていました。もし伝えて貰えるのであれば今度は時間を作るので話でもしましょう、とお伝えください」

「そうですか……特にルーク様が残念がりそうですね」


 作り笑いではなく普通に笑ってくる。

 受付嬢であってもルークが本当のギルドマスターというのはバレていないのか。純粋に僕みたいな存在が多くはないってことなのかな。もしくは知らないフリをしているとか。どちらにせよ、僕には関係がないか。


 適当な作り笑いで返して受付嬢の頬を少し緩ませてから現金を貰う。ルークの支持で僕のポーションは高品質、高値で買うというのが決まっているからね。納得させられる質のものを売りきっておいた。薬師ギルドでも作れるかどうかのね。金額から税も抜かれているから今月の商人ギルドへの税は考えなくていいかな。


 受付嬢が愛想良くしてくれているせいか、イフがいちいち小突いてくるんだからウザったい。と思いたかったけど純粋に可愛いと感じてしまう僕は末期なのかもしれない。イフや仲間達に怒られるのも面倒だから礼をして家へと戻った。


 帰る頃には四時半頃でカーテンから少しだけ日が当たり始めてきた。もうそろそろでミッチェルも起きるという時間帯だったので少しだけ休んだ後で宿まで飛ぶ。


「おはようございます。お疲れ様でした」

「おはよう」


 飛んで目の前にミッチェルがいたけど何とか平常心を保てた。まぁ、ミッチェルなら何をしていても不思議じゃないからね。ミッチェルにならたいていのことは何をされても文句はないし。


「イフ様も楽しかったですか?」

「ええ、ミッチェルが楽しんでいたことを私も楽しませて頂きましたよ」

「それはよかったです」


 さすがはミッチェル。特に文句を言うわけでもなく嬉しそうに笑っている。本当に仲間であれば独り占めじゃなくてもいいらしい。いや、それだと語弊はあるか。信用しているから僕を任せられるって感覚なんだろうな。


「そうだ。イフから僕の頼み事を終えたって聞いたんだけど何の話?」

「あっ、衣装のことですね。頼まれていたシロの洋服と私の洋服、後はユウさんの洋服も作ってみました」


 えっと……それは苦労しただろうな。

 洋服ってことは蚕のコスプレと他の物も作ったって感じか。あれ? 蚕の洋服はもう出来たみたいな話を一回聞いていたから他の洋服を作っていたから報告が遅れたとかかな。それにしてもユウにも作ったのか……。


「どんな衣装かって言うのは」

「今日はお暇を取ると聞きました。なので後でのお楽しみですね」

「……うん、そうするよ」


 後の楽しみか……早起きは三文の徳、これも早起きしてしまったから得られた楽しみってことにしよう。早起きしていなければ情報を得る前に衣装を見ることになっていたし。


 それにしてもどんな衣装なのかな。

 ユウの服とかも楽しみだ。僕が考えていた衣装は蚕くらいだし他はミッチェルが考えたか、イフとかがアドバイスをしたんだろうしね。その後はまだ早いということでシロの寝顔を見て時間を潰した。起きてすぐに顔が近いからか赤くしてキスしてこようとしたのには驚いたけど、普通に躱せたし怒るのはやめておいた。したとしてもキスと言うよりはチューだしね。これが認識の違いか……。

11月までにタイトル回収を目標にしていましたが申し訳ありませんが全然そこまでいける気配がありません。ゆっくりと待っていて貰えると助かります。……どうして全然、話が進まないのだろう……。


次回は土曜、日曜日当たりに投稿する予定です。体調が少し悪いので、もしかしたら遅れるかもしれませんが頑張ります。気長にお待ちください。

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