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4章39話 怒りをぶつけろ、です

久しぶりにかなり短いです。

書き足しをするかもしれないですが今回は区切りのせいで短くなった感じです。多分、大きな書き足しとかはないと思います。

「それにしても君が助けを呼ぶなんて珍しいね。なにかな? 後輩君を気に入ったとかかな?」

「.......気に入ったかと聞かれれば気に入りましたね。ただそれは上からものを言わせてもらえるのならばです」


 暗い雰囲気を変えたかったのか、シードは僕達にでは無くミラルへ話しかけた。口振りからするに元々、何か関係があったんだろうね。年齢も近いし幼馴染とかでも不思議じゃないし。距離も心無しか近い気がする。


「.......気に入られるために動くのは当然のことではないですか? シードもそうしたのでしょう?」

「その悪い口は治らないね。それが治らない限りは店なんて持てないんじゃないか?」

「いや、商人には嫌味を言う、理解する語彙力が必要ですよ。その点で言えば商人としては優秀だと思います」

「そんなもんか……?」


 シードが悩むのも仕方が無い。

 簡単に言えば畑が違うからね。わざわざやらなければいけない仕事、まぁ、部活の手伝いとかでもいいんだけどさ、それを体験しない限りは何をするかも考えたり理解したりは出来ないだろうし。


「まぁ、才能があるみたいでよかったわ。お金の無心をされても困るしな」

「例え飢えたとしてもシードには頼みませんよ。それに他のことで稼げますし」

「……ミラルが強いのは私も重々承知だよ。だからこそ……」

「ええ、冒険者を馬鹿にするわけではないですが性にあわないんです。申し訳ないとは思いますが」

「いや、仕方ないさ」


 やっぱりミラルは強いんだろう。

 いや、才能値とかはシードとどっこいどっこいだけどね。それでもSがあるところを見ると冒険者としてもやっていけるっていうのは嘘じゃなさそうだ。


「私が戦いの心得を学んでいたのは商人として自分の身を守れるようにです。シードは違いますが素行の悪い冒険者は少なくないですし……上が押さえつけようとしても外す馬鹿達がいますから」

「違いないね」

「……詳しく教えて貰えますか? 僕達は少し前に来ただけでそこら辺は詳しく知りませんし」


 イフに聞くのが一番早いと思うけど……それよりも二人に聞くって言うことが重要に思えた。正確性は高くても噂として流れている曖昧な部分はイフからだと聞けない。それに仲を深めるためにもね。


「あー、そうだね。後輩君にも聞いてもらった方がいいかな。とは言っても」

「貴族や豪商が冒険者を配下にしてギルドマスターの命令を無視出来るようにしているというだけですよ。それは騎士も似たようなものです」


 なるほどね……って、想像はついていた。

 ダンジョンを出る時も本当に危なかったのかもしれない。出るのが遅かったりすれば仲間の騎士や冒険者と共に襲われたりとか。多分だけど倒したところで貴族が何らかの面倒事を運んでくるだろうしなぁ。僕のことを助ける証言は確実にしない。


「その目だとディーニがこの街で初めて、という感じではなさそうだね。ああ、安心していいよ。少なくとも私達はそういう人達とは違うんだ」

「私は商人ギルドマスターの直属の配下に近いです。同様にシードも冒険者ギルドマスターの直属の配下です。わざわざ面倒事を押し付けてくる貴族の元に行く必要性がないんですよ」

「……それは目を見たら分かる。やはり街によって貴族の程度も知れたものだな」

「エミさん!」


 先までの事があってかエミさんが小さく毒づいた。僕が制したけど二人は反論する気はないようで頬をかいている。少し悩んだ後に目付きをスッと変えてシードは口を開いた。


「後輩君、いや、ギド君が制してくれるのは嬉しいよ。でも、怒るのも事実だ。セイラ様だったかな。彼女は貴族としては異端であって、そして……」

「優し過ぎる。知っていますよ。でも、だから僕は彼女の傍に立つって決めたんです」


 シードの言いたいこともわかる。

 でも、それの何が悪いのか。セイラが街に出る度に住民は優しく話しかける。もちろん、嫌な奴もいるけど僕の、僕達の噂がある手前、下手なことをする奴はいない。鉄の処女の睨みもあるしね。


「そしてギドも優し過ぎるんだ。貴方達が何を思おうと勝手だ。別にオレ達を蔑んでもいい。所詮、田舎から来た奴らだとな。それでも惚れたもんは仕方ねぇよ。その惚れた人が大切な人なら尚更、な」

「別に馬鹿にはしないさ。それを言うのなら私達のローフも優し過ぎるのさ。君達も苦労するよね。馬鹿なことをしでかしそうでヒヤヒヤして……それでいて……」

「楽しいですね」

「そう! 分かっているね!」


 シードは嬉しそうに笑う。

 子供のように笑って共感をしてくれたミッチェルに視線を送っている。邪なものではなくて師匠を褒められたような、本当に嬉しさから来るものだ。どこぞの歌ウマナンパ女さんとは違うね。


「っと、お互い苦労しているのは置いておいても必要なのは、この街で生きていくための身の振り方さ。さっきの領主もそうだけどパトロの街の貴族は商人の成り上がりが多い。意味は分かるよね?」

「黒い部分が大きいんですよね。商人は冒険者よりも顔が利きますから」


 要はパトロの街にも闇ギルドみたいなものがあるってことだ。ちなみにグリフの街では見たことがない。あったとしても小さ過ぎて感知できないだけかもしれないけど。まぁ、見つかった瞬間にセトさんが排除するし置くメリットも薄いか。


「そこまで分かっているのなら言うことはないかなー。それにその武器……しっかりと戦う準備が出来てきたみたいだ。よくそんなに高品質なものを作れるものだ」

「え!? 作った? はっ?」


 ミラルがブツブツと俯いて呟き始める。その反応からシードは気づいてしまったようで小さく「やっば、失敗した」とか「知らなかったのか」と落胆している。ミラルが友人なら情報の価値も理解しているだろうしね。


「ということは……シードが言っていた万能な新人って……」

「彼だよ」

「……なるほど、それならば言いたくないですよね。まさか自分が作ったなんて言えば狂った人なら何をするか……」


 自分の想像で肝が冷えたようでミラルは軽く身震いしている。うん、僕も想像したくないね。そうならないように抵抗するつもりだけど。僕がそうなったら困るのは仲間達だ。下手に強い仲間達なら共に……ふざけるな。


「まぁ、だからこそ言わないでくれよ。私が口を滑らせたせいではあるんだけど」

「それはないですね。分かるでしょう。こんなに有能な存在がいるのなら売るよりも信頼を得た方が得ですから」

「違いないな」

「……それを僕の前で言うのはどうかと思いますけどね」


 二人はキョトンとしたように顔を見合わせて大きな笑い声をあげた。はぁ、やることがまた出来てしまったな。それに借りも出来てしまったし。借りってとても高く付くんだよなぁ。売り捌きたい……。


「……戦うのを楽しみにしているよ。その剣の能力は分からないが弱いとは一切、思えないからね。そして後ろの皆は覚えた怒りを私達との戦いの時に晴らしてくれ」

「潰しにかかるよ。私達も貴方達の後輩だろうが負ける気はない」

「となると……君達で確定か。うん、いいね。本気で来て欲しいよ」


 軽く親指を舐めて俯く。

 その目に映るのはどんな景色なのか。皆目見当もつかないけど一つだけ言えることがある。リリが啖呵をきったんだ。僕も手を抜けないね。


「あまり良い雰囲気ではありませんね。ここでの戦闘は避けてもらいたいです。あっ、ギド様はこれを購入しますか?」

「あっ、買います」

「金貨三枚でいいですよ。迷惑料としてシードから残りは頂きますから」

「はっ?」

「お願いします」

「いやいや」


 シードが何かを言う度に僕とミラルで言葉を遮る。迷惑料……シードの扱いに炊けているからこそ、そんな言葉が浮かぶんだろうね。行動だけで迷惑だと言われるシード。うん、それはそれで可哀想だ。


 後……忘れていた件もやっておかないと。

 あれ? 今日って眠れるのかな?




 いや、さすがに眠れますけど……。そんなイフからのツッコミが無いままにセルフツッコミを入れて全員で店を出た。少しだけ楽しみが大きくなった。あの時にやったシードの移動の速さをエミさん達が攻略するんだ。負けるなんて思ってないしね。


 大きく背伸びをしてから宿に戻った。

 いつも以上に青空が綺麗に見えた。

祝・総合評価千二百越えです! 二百話も近くなりゆっくりですが楽しんで貰えるような作品にするつもりです! 宜しければこれからも応援よろしくお願いします!


次回、長らく放ったらかしていたイベントを消費します。もしかしたら忘れている人も多いかもしれません。今更ながら「あの時に書いておけば……」という機会を逃した気持ちでいっぱいです。尚、次回は水、木曜日当たりに投稿予定です。

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