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4章35話 エミの目論見です

夜にニマニマしながら人のイチャイチャ話を書く自分って……三人称で絶対に見たくないですね(笑)。

「武器無しは厳しかった?」

「いや……そうじゃないんだが……」

「ギド、エミは私達と依頼をした時に武器無しで敵を倒しているんだよ」

「……なら、大丈夫じゃない?」


 何でここまで悩んでいるんだろう。

 普通に武器無しで戦うのが怖いのならこんなことを言われないだろうし……あっ、あれかな? アフターケアとかがあるかどうかみたいな。いや、アフターケアって言い方は少し違うか。もしも強い敵が現れたらどうしようかみたいな不安感的なところから首を縦に振れないんだと思う。


「安心して! 異変があれば僕が守るから!」

「……そうか」


 何かを決心したのか、首を縦に振る。

 やっぱり僕が守るかどうかの仮定の話で了承出来なかったのか。どちらにせよ、僕が守らなくても皆が助けに入ると思うんだけどね。それでも戦うことに執着しないところがAランクのリーダーとしての器を感じるよ。


「怖かったら頼ってくれていいよ。頼られてばかりだと耐えられないだろうしね」

「そ、そうだな!」

「少し能天気に動いてもいいと思うよ」

「……鈍感……?」

「ギド様にしては珍しいですね」


 声は聞こえるからイアとミッチェルの会話を頭の中で反芻させる。はて、鈍感。自分で自分を鈍感だとは思わないから本当に見当がつかない。あるとすればエミさんが僕に好意がある的なことはさすがに気がついているし……そこかな。甘い言葉をかけたのが悪いとか?


 いや、鉄の処女も僕の仲間達もそうだけど完全なホワイト企業だ。休みたいなら休むし用事があるのならそれをやる。そうじゃなければ僕も雇う側として楽しくない。皆、笑顔。日本の時のように資本主義に傾倒する必要性はないからね。何なら強ければ稼げる世界だし皆それなりには強い。それなりって言うのは生きていく分には強さで楽に稼げるってことね。わざわざ儲けだけを目的で動く必要がないって楽でいいよね。


「とりあえず、行こうか」

「お、おう! 任せてくれ!」


 ちょっと胸を強く叩いたようで大きな咳をしていた。軽く背中をさすってあげると鎧のせいで柔らかい感触がしない。それでもエミさんは顔を赤くしてくれるので僕としては嬉しい。恥ずかしがる子ってめちゃくちゃに可愛いと僕は思うんですよ。


「……」

「イア、自分でやっても何もしないよ?」

「……バレたか」


 さすがにバレるよ。いきなり杖を構え始めて胸の方に近づけようとし始めたらさすがにね。それにエミさんの方を見て何か思いついたような顔もしていたしね。可愛くても自傷行為は許されんのですよ。……僕もやろうとしたけど後に響きそうでやめたんだよなぁ……。


「……何か嫌なことでも思い出しましたか?」

「あー……まぁね。ただ大したことがないから安心していいよ。古い、昔の話だから」


 今はそんなことが起こるわけがない。

 だって、あの屑な親達はこの世界にはいないんだから。それこそ名実ともにね。例え現れたとしても逃げられるだろうし潰せるだけの力がある。あるとすればロイスに変な影響や、僕の仲間の女性陣に変な視線を送りそうで嫌だな。まぁ、その程度でしかないしホイホイ付いていくような考え方はしていない。


 扉を押して中へ入る。最前線にいるのは扉を開けた僕と戦うエミさんだ。他の三人は後ろで特に構えた様子もなく見守っている。煙が現れ始めたところで僕も後ろへ下がった。煙が収縮して現れたのは見たことのある存在だった。というか、僕も仲間も……食料以外なら大ッ嫌いな奴だと思う。


「……オークナイトかよ……」

「これは……武器無しは危険だったかな」


 確かに攻撃特化に近いオークナイトは危険だったかもしれない。それでもステータスで言えばエミさんの方が圧倒的に高いわけだけど……触れたくないとかはありそうだな。生理的に無理って人も少なくないらしいし。


「ブオォォォ!」

「うえ! 汚ねぇ!」


 ヨダレを垂らしながら走っていく姿はまさに気持ちが悪いの一言に限る。経験値が美味しくなかったら誰も倒さないだろうし。それにレベルを最高まで上げるとかも滅多にやれないしね。レベルが上がるほどにオークナイトの経験値じゃたりなくなる。一つだけいいことがあるとすればオークナイトなのに武器を持っていないことくらいかな。


「ブルウァァァ!」

「近寄んな! バカァ!」


 上手い具合に抱きしめ攻撃を飛んだりして躱している。それも触れないでっていうところがすごいと思うよ。一回や二回じゃなくてピョンピョンピョンピョン飛んで後退して、飛んで前進してみたいな感じだね。それを三十秒ほど続けていた。


「た、たたかいたくないなー。たすけてほしいなぁー」

「……何で棒読み……?」


 あからさま過ぎると流石に分かった。

 何となく皆が言いたいことはわかってきたけど助けに行くべきかな。……確かに鈍感だと思うわ。そこの考えは思いつかなかった。助けに行くのは別にいいんだけど……味をしめるって言うか、やってしまっていいのか分からないけど……。


 あっ、それなら……。


「倒せたらもっといいことしてあげるよ」

「倒れろ!」


 ……あの……顔面パンチで一発で光に変わったんですけど……あの名演技は一体どこに……。当然だけど一撃で倒せたんだね。何か……下心とか無さそうなエミさんのこういう、あざとい姿を初めて見た気がする。……もっとください!


「そ、それで……いいことをくれ!」


 は、早い……目で追うのがやっとな速度で距離を詰めてきたんですけど……。ってか、褒美のことを考えていなかったな。何かいいのあるかな。エミさんの好みそうなことで今の僕でも出来そうなことだから……。


「……これでいい?」

「へ……」

「近くに来てくれたら抱きしめてあげるよ」


 思い返せばエミさんを抱きしめるとかはしたことがない気がする。だから十分な報酬になると思うし自分の価値を見誤ったりしない。変な意味じゃなくて純粋に喜んでくれるって分かっているしね。


「ほら」

「いや……待ってくれ……」

「来ないの?」


 知っている。ただ単に褒美を与えるのは僕の主義に合わない。どうせやるのなら仲間の可愛いところを見て癒されたい。ホワイト企業であっても癒しは必要だと思うんですよ。ほら、郵便とかで受付の人が若くて綺麗な人なら得した気分になる感じ。もしくは老年なら早めに終わってちょっと良い気になるみたいな。


 僕はエミさんの恥ずかしがる姿を見たい。

 そして最後は諦める姿を見たい。逆に乗り越えて近付いてくるエミさんでもいい。単純に今、見ることの出来ている姿が見られればそれでいい。さて、どうでるのかな?


「よ……」

「よ?」

「よろしくお願いしまーすゥゥゥ!」

「うげっ……」


 なんとか踏ん張った……。思いっきり飛びついてくるなんて想定の範囲外だ。……シロは体重が軽いからいいんだけど……。いや、エミさんが特別重いとかではないよ。純粋にシロはロリ体型だからステータスの割に乗っかかる負荷は大したことがないってだけで。それに慣れている分だけ本気で飛びついてこないからね。


 言葉自体はどこかで聞いたようなものだけど本当に言う人っているんだね。抱きしめても固い鎧の感触しかしなくてあまりいい気分になれないんだけど……。失敗したな、これなら鎧を脱いでもらうように言っておくべきだった。


「……ちょっとだけ離してくれないか……?」

「あ、うん」


 拘束を外すと「ふん」と鎧を憎々しげに地面に叩きつけていた。多分、自分でハグされて気がついてしまったんだろうね。恥ずかしそうに手を横に広げているのを見ると渋々……自分から抱きしめてしまうよ。嘘です、飛びつきはしなくても嬉々としていきました!


 一分間、抱きしめた後でゆっくり離すと顔を真っ赤にして俯きながら離れていく。イジりたい、イジってより恥ずかしそうな顔を見せて欲しい。そんな虐めたいSの気持ちを喉の奥に押し込んで全員で六階に下りた。


「……さすがに少しだけ暗いか」

「後は人の気配が薄いですね」

「強さが変わるって言うところの、まぁ、第一関門がここだと考えて間違いはなさそうだね」


 六階に降りて本当に人の気配が減った。

 平日のスーパーくらいには人がいたのに、近くにデパートの出来た商店街並みに人の気配がない。あっても一、二グループくらいだ。もっと下の階層があるようだし下に行けば人はより少なくなるのかもしれない。


 とりあえずはここで一時帰宅でいいと思う。

 今日中にクリアする気もないし下の階層で連携を測るために来たに過ぎない。それにローフも今となっては急いで僕達と戦おうとは考えていないみたいだ。好きな人、ウルさんに散々、言われたのが心に残っているんだろう。確かに僕も仲間達に言われたらしょげるよなぁ。


「予定としてはゆっくり攻略するつもりだ。それにローフ達との戦いもダンジョン攻略を終えてからにしよう。こんな算段をたててみたけど……どうかな?」

「つまり、帰ろうということかな?」


 リリの返答に首を縦に振る。


「特別、急ぐ理由もないしね。あるとすれば兵士の態度が面倒臭そうな感じがしたけど」


 階層を飛ぶ魔道具を使うには六階の魔道具の情報をギルドカードに入れる必要がある。簡単に言えば一度、それで地上に戻る必要があるってことね。ピンを立てた冒険者は未だに上階で戦っているみたいだけど、兵士は帰宅していない。あの時の顔も僕的には大嫌いな顔だった。上手く扱ってやろうみたいな。さすがに手を出してくるほど頭が軽くはないと思うけど……。


「だから僕が一人で地上に降りて六階に戻ってこようと思っているんだ」

「……無駄……?」

「いや、空間魔法で飛べばいい。ホテル内に飛べばいいだけだから苦労はしないと思う」


 ただこれで兵士からは変な考えを持たれるかもしれないかな。それでも面倒事は避けたい。冒険者イコール善ではないし何より土地柄とか関係なく悪人はいる。グリフの街にもいたからね。雑魚みたいな名前の馬鹿が。


「ところでオレはそれでも構わないが腹時計からして時間は早いだろ?」

「うーん、昼過ぎくらいかな」

「……この後って用事でもあるのか?」

「それは私も聞きたいね」


 今日の予定……ないと言えば嘘になるけど今日中である理由はないかな。いつも見たく薬草を取りたいとか、ポーションを作りたいとかその程度だしね。無理やりに作るとすれば……商人ギルドへの挨拶くらいかな。グリフの街のワインとかね。さすがにお手製のポーションは売れないけど。質と言うよりも数が少ないし。


「特にないかな」

「それならどっか遊びに行かねぇか? せっかく一緒にいられる機会だしな」

「……ミッチェルとも話したい」

「私は……構いませんが……」

「あ、それならいいよ。夜までには帰るって言うことでいいのなら」


 僕の付け足しに全員が首を縦に振る。

 そうなると本格的なデートになりそうだけど、やることって他にあるのかな。全員が冒険者だからデートスポットとして良い場所は……分からんなぁ。そっとイフに良い場所を見繕ってもらって地上に戻った。六階に下がる頃には皆がニマニマして楽しみにしているのがよく分かる。……すごくプレッシャーになっていることだけは口が裂けても言えないね、これは……。

イベントを消費しなければ……先が見えないって怖すぎますね。イベントを減らそうか悩んでいます。ただ無いと先が進まないイベントも結構あるんですよね……。


少し忙しいので水、土の二回投稿が守られるか分かりません。出来る限り週二は守るのと最低限、週一で投稿は守ります。次回は水、木辺りに投稿するように頑張ります。

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