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1章15話 やっと来たぞー!

少し短いですが1章の終わりなので区切りのいい所で止めました。本音を言えばもうちょっと書き込める予定でした! 時間があれば書き足します! それを承知の上で、どうぞ!

「やあやあ、遅れて申し訳なかったね。こう見えても宰相の地位を得ているからね。少しは勘弁してもらいたいなぁ」

「いえ、急な訪問誠に申し訳ございません」


 滑らかな礼は見た目とはうって変わり綺麗なものだった。所々見せる所作は優雅そのものでセトさんが貴族であることを理解させられる。


 すごく緊張するな。

 僕は敬語とかそこら辺で注意を受けたことはない。だけど相手はどう出るのかすら分からない。言葉の一つで自身や、ミッチェルの首が簡単にとぶんだ。


「……それで君はなんでここに来たのかな。セイラのことだ。男を連れてきたのような変なことで人を連れてくるわけがない」

「僕達はセイラ様がこちらの街に向かっている最中に襲われているのを発見しました。そこで加勢は必要か聞いたところ必要としたために助けただけです。その際に褒美を渡すと言われここまで付いてきました」

「……嘘はなさそうだねぇ。いいよ、軽くしても。それで? ジルやミドはこのことに何か言うことはあるかな?」

「なにもないです。不測の事態とはいえ日頃の怠慢が招いた危機でした。最悪、二人が来なければセイラ様が今、生きていたかも不明です」

「少しだけ話をするとすればこの件は不自然すぎます。相手がなにか策を練ってきたと考えるのが普通でしょう」


 ミドが敬語を使っている。

 ……なんか気持ち悪いな。全然似合っていない。


「ちなみに敵は?」

「ビックウルフとウルフが数十体です」


 イフ? 聞きたいことがあるのだけど、今回のことは作為的なことなのか? 話を聞く限りこの数って少し不自然なんだけど。


【いえ、特にはそのようなことはありませんね。確かに人によっては今回のことは不自然に不幸が重なっているためにそう思うのも仕方ないでしょう】


 そっか、関係ないのか。

 もし関係があれば僕も行動しなきゃいけないかな、とか思っていたけど。ぶっちゃけ貴族にはあまり関わりたくないしなぁ。まあ、セイラが助けを求めてきたら別だけど。


 でも、それはなさそうだね。今の状況を仕方なくでも認めているわけだし、これ以上の変化を求めようとはしない気がする。そこを僕が突っついても悪手なだけだ。


 だから停滞する。そのまま動かずに状況が変化していくのを見ているしかない。当たり前のことだけどこれほど怖いことは滅多にないと思う。


 それに、これが一番理由としては強いけどさ。僕一人が陣営に入ったとして何が出来る。


 僕は主人公でもなんでもない。テンプレの補正として主人公みたいな力はあっても、主人公最強系の小説のように動けやしないし頭も回らない。


 自分を省みることが出来ない奴に誰かを守る力なんてあるわけがない。


 僕の大好きだった漫画の主人公を教える講師が放った言葉だ。自分を見据える、力量を測る、そんなことが出来ないままで行動すれば無駄死にするのが普通だからね。


 その中で僕は強くない。精神においては元の世界の常識に縛られているし見捨てるなんてことを出来なかった甘さもある。本当はミッチェルだって助ける理由がなかったし、あの後にミッチェルに正体がバレて殺されるなんて危険性もあったのに助けた。甘い以外になんて表現すればいいのだろうか。


「……とりあえずは理解したよ。それじゃあ、セイラから物を受け取ったらここを出てくれ。二人のことは調べさせてもらうし呼ぶことがあるかもしれない。その時は来てほしいかな」

「……本音は言わなくてもいいのではないですか?」

「いやー、僕って嘘が苦手なんだよね。それに腹を割って話そうとしないで相手を測るなんて、僕は神か何かかな? この世界の小国においては地位があるかもしれない。でも星から見れば小さな虫けらも同然なんだよ」


 謙虚……ではないよね。多分、この人も自分の力を測った上でそんなことを言っているんだ。……それだけで好感が持てる。


「確かにその通りですね。地位なんて流れる時代の小さな常識の轍にすぎませんし」

「おー、よく分かっているね。僕もそう思うんだよ。だってさ、王族だって国が滅んだら打ち首か奴隷落ち。いつ僕だって死ぬか分からないしね」


 握手された……。そこまで喜ぶことかな。

 まあ、地位のある人と面識があるのはいいことだよね。何か融通が利いたりとか手助けして貰えるかもしれないし。


「ただそういうことは不敬罪になるから僕の前以外ではあんまり言わない方がいいよ。同じ考えを持つ人は嬉しいけどねぇ。世知辛い世の中だ」


 悪戯っぽく笑うセトさんに笑い「そうですね」と返す。


「次に呼ぶ時はジルを使わせるよ。だから、これからもよろしくね。二人が来てくれるとセイラが喜んでくれるみたいだし」

「お父様! そんなことはありませんわ!」


 おっ、この反応は図星かな。

 それなら来ない理由はない! さあ、また呼ぶがいい!


「いいねぇ、さすがは僕達の子供だ! 可愛らしさが尋常じゃない!」


 そんなことを言うセトさんとミド、ジルを後にして僕達はセイラに連れ出された。時間がないのに僕達に時間を潰させるわけにはいかないらしい。


 そして違う部屋に通されてからセイラに報酬を渡される。主にお金の入った皮袋と小さなカードを手渡されたのだけれど。


 いや、皮袋重すぎないかな? セイラの命の重さと考えれば妥当だけどさ。


「そのカードは門前で言っていた身分証明書ですわ。そこには侯爵であるグリフ家の紋章、グリフォンが描かれていますわ。並大抵の人達ならば何か手助けをしてくれるかしら。ただし多用は厳禁、宿の方もそのカードに記録を入れたから、そこに行くかしら」

「分かった。なんか、ありがとうな」

「……あなたがそんなことを言うかしら。こう見えても私は純粋な少女なのよ。カッコいい人には、仲がいい友達を助けるのは当たり前かしら。……でも、感謝しているなら、また来てほしいかしら。いつ会えなくなるか分からない……いえ、なんでもないですわ。さあ、あっちから出た出たですわ!」


 少しだけ憂いだセイラに屋敷を追い出される。外で待っていたミドやジルにも挨拶をして宿屋へ向かった。


 小さく少しボロボロの宿。


 だがセイラからすればとてもオススメらしい。……中はとても綺麗だ。ホテルのロビーとまでは行かないけれどある程度、清掃のなされた広めの空間。受付が広ければ部屋は狭いのでは? そんなことを疑問に思う。


「あら、いらっしゃいませ」

「えっと、宿に泊まりたいのですけど……」


 受付の女性が声をかけてきた。

 ……少しだけ緊張するな。セイラやミッチェルにない大人の色気がムンムンとする。えっ、ジル? ジルはクールビューティだけど胸の方は……お察しかな?


 そう目の前の女性の胸は大きいのだ。小さな胸も大きな胸も大好きな僕にとっては眼福だよ。ジロジロ見ないようにチラチラ見る!


「いてっ」

「どうかしましたか?」


 いえ、と返しておいたけどミッチェルめ。僕が胸を見ていたのがそんなに気に食わないか。部屋に着いたら覚えておけよ。


「それで一人部屋ですか? 二人部屋ですか?」

「えーと」

「二人部屋です! ベッドがあるならダブルがいいです!」


 おおぅ……ここぞという感じに元気がいいな。……少しだけ受付の目が冷やかしのものへと変わった気がするぞ。


「ございますよ。それで当宿の説明は必要ですか?」

「えーと、宿泊費と体を拭う水とかの値段、後は食事ですかね」

「宿泊費は二人部屋のダブルベッドですので一日で銅貨二枚です。二食付きなら銅貨三枚です。布や桶は無料です。ただ水は銅貨一枚がかかります。食事は六時から十時、四時から八時までです」

「分かりました。今のところは特にないです」

「分からないことがあれば聞いて貰えると答えられます。それではこちらが鍵です」


 鍵を手渡され早く行きたそうなミッチェルに鍵を渡す。元気だなぁ。やっぱりこういう店は久しぶりなのかな。


「私はヒヨといいます。どうぞ、よろしくお願いします」

「お願いします。それでは一週間お願いしたいのでこちらを」


 皮袋から大銅貨三枚を取り出して手渡す。

 イフから聞いた話だけど、まずこの世界では円やドルのような通貨の名前がないらしい。ただ国によっては通貨制度の単位を取り入れる場所はあるみたいだけど。


 そして銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、ミスリル貨で十枚で次の貨幣と交換出来る。銅貨十枚と大銅貨一枚が同価値と考えれば良い。


 ミスリル貨というものがあるようだが市場には出回っていないようで、実質は国と国との交渉などで使われることが多いようだ。持っているだけで国からの重要人物として扱われ、もちろん、金貨十枚分の価値として使うことが出来る。まあ、要らないかな。


 その際に聖魔法の話も聞いなんだけどさ。これが僕にとっては好都合なものだったんだよね。僕以外に聖魔法を使えるものなんて教会に仕える者くらいらしくて、普通は使えないものみたいなんだ。要はチート、やったね。


 それに聖魔法を治療のために使わせる金額はお金は僕が考えているほど安くはない。イフいわく大金貨三百らしいから、うわー大金持ちになれるじゃないですか、やだぁ。


 まあ、やらないけどね。絶対に教会とか奴隷商から目をつけられるだろうし、デメリットが大きすぎる。防衛出来るまでは露見させたくないなぁ。……フラグじゃないからね!


【……そうならないといいですね】


 本当にそうだよ。


 その後は痺れを切らしたミッチェルに部屋まで連れていかれ、服も変えないままでベッドに横になった。心地よい疲れを感じながらミッチェルを抱きしめて瞳を閉じる。


 まだ夕方なのに僕は朝まで起きなかった。そうして長く、それでいて色々とあった街までの旅を終えたのだった。

次は2章。メインはやはりセイラです!

どのような話にするか、細かいところは未定ですが楽しい、そしてハッピーエンドにするつもりです。


後は新規のヒロインが出るかも?

ただヒヨさんはヒロインじゃないです。


興味があればブックマークや評価よろしくお願いします。

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