4章26話 理由とはです!
前話の書き足しをしました。
この話も少しだけ書き直しをすると思います。
「宿も綺麗なんだね」
「前の街と比べてはいけないかしら」
進む馬車の窓から外を眺める。
僕の見ている宿は日本の一等地でホテルをやっていたとしても別におかしくない、それだけの綺麗な外見をしていた。白をベースにした佇まいからして旅館に近いホテルだ。少しだけ故郷のことを思い出す。まぁ、良い話は特に思いつかないけどね。あるとすれば幼馴染や学校での数少ない楽しかったこと程度かな。
例えばアレだよ、あの……そう、アレね!
修学旅行とかで女子と……幼馴染に隣を奪われていた記憶しかないだと……。それなら休み時間とかに……クラスの女子で話していた子がいたな! うん! それなら青春になるはず……って、仲介してくれていたのは幼馴染だった……。
自分の力で得た思い出は……アレ? ない?
いや、いやいや、アミや後輩と仲良くなったのは自分の力ですし! ……って、僕は誰に言い訳をしたり自慢をしようとしているんだ。悲しくなってきたな……うん、やめよう。
まぁ、その宿の前で止まったってことはここが宿泊地で確定だろうし。やっぱりセイラはこの護衛依頼にかけているお金が尋常じゃないよね。前の街の宿も前の街の中では最高クラスの宿だったし。
「ごめんね、前の街があんなにも最低だったから王国自体がそんなものだと勘違いしていたみたいだよ」
「勘違いじゃないかしら。王国は最低な国なのは確実よ」
あらら、そこの否定はないのね。
セイラの目はどこか苦々しく恨みの詰まったものに見える。これはセイラの護衛依頼に何か関わっているのかな。一騎士の一人でしかない僕には考えても分からないことだけど。馬車の中で話をしているからこそ出た本音かぁ。僕も王国は白い空間で得た知識で大っ嫌いだけど。好んで一人で来たいとは思えないね。
それなら海とかに行きたいな。皆の水着姿とか見たいし。日本にいた時に海とか行かなかったからなぁ。泳げないとかじゃなくて何か煩くてナンパする人ばかりで嫌いだし。彼氏が目の前にいるのに気にしなくていいじゃんとか言える神経が分からない。
王国なら海に強い魔物がいて遊び場とはならないからね。結界さえ張ればいくらでも遊び場になるよ。それだけの労力が金で返ってこないから誰も整備しないだけだしね。宣言しよう。僕は皆の水着姿のために海に行くと。それが僕のマニフェストってことで。
「まぁ、我慢するかしら。少なくとも今だけはギド達がいてくれるのだから」
「別に帰ってからも一緒だよ」
「……そうね、ええ、そうだったかしら」
セイラにしては歯切れの悪い返しだ。
もしかしたら今回の護衛依頼の目的は……いや、邪推はよそう。きっとそうだったとしてもセイラは覚悟しているんだ。……ないとすれば僕らが、僕が覚悟をしていないだけか。これが僕の想像で済むことを願うしかない。
いや、そんなことしなくてもいいか。言っても二択に絞られただけで片方は僕が本当に認めたくない事実だ。ぶっちゃけてしまえばセトさんの言っていたことが全て繋がる。どっちに転んでも繋がってしまう。だから分からないんだ。
「僕がセイラを守るから」
「……たかが騎士の癖に言うかしら」
「まぁ、僕が望んでいないだけだし」
「あら、別に悪いことは起きないのよ。私がどれだけ回避出来るかという問題があるかってだけで」
「僕の好意くらい素直に受け取ってよ」
そこで話をやめておいた。
これ以上は僕の嫌いなネタバレだ。ネタバレなんて本当に嫌いだ。漫画とかならまだ許せるにしても三次元間のネタバレなんて不確定要素が高すぎる。あの子が万引きしたとか噂だけが漂うことでネタバレになる。それにハッピーエンドなんかもないと思っているし。あったなら誰も泣くことなんてない。それは今でも心の奥底にある。
イフが本当に先のこと知っていたとしても確定だと決め付ける証拠に欠けている。ましてやセイラの口から出た言葉も本当にそうだとは限らないだろう。言葉は少しのニュアンスの違いで曲解した中身に変わるのだから。
変な噂が人を殺すことってあるんだ。たかだか嫌いな人の評判を下げるための言葉が死ぬ理由になることはある。小さなこと、大きなこと関係無しに生きる理由が消える可能性もある。隠すつもりなんてない。僕が生きているのはいくつもの奇跡があったからだ。それはセイラもそう。だから、不確定でどう転ぶかも分からない、ましてや運命の歯車が最初からあるようなネタバレは大嫌いだ。それなら在り来りであっても予想で済むテンプレの方がいい。その点で言えば僕がテンプレを持っている理由も何となく理解出来る。納得はしたくないけどね!
部屋分けは順調に進んだ。
僕が振り分けられた部屋はロイスとエルドが先に向かっている。僕が早く行けない理由は単純に荷物を僕の倉庫内にしまっているからなんだけどね。童貞男子からしたら生唾ものの女性陣の下着とかも……ヤバい、気持ち悪すぎるからやめておこう。良かった、イフがいなくて。
うん、少し背筋がゾワっとしたけど気のせい気のせい。気にしなーい、気にしなーいっとね。
「ごめんね、遅れた」
「いえ、大丈夫ですよ」
「わーい! ギド兄と一緒だー!」
「うん、久しぶりかもね」
思えば夜はいつもミッチェルやシロと寝るばかりで……はい、意味深とかはないです。純粋に寝るだけ……悲しくなってきたよ。逆に最近は童貞であることに自信を持つようにしているけど。つまりアレだ! 童貞ってことは病気がないってことだしね!
思い切り飛びついてきたロイスを抱き上げてクルクルと回す。目が回らなくなってきたのはステータスの増加かな。ロイスも普通に楽しんでいるようだし。そのままの流れでロイスをベットに投げてみた。ボフッといい音がしてロイスがベットの上で泳ぎ出す。
それを僕とエルドで眺めていた。
「エルドもやりたい?」
「いっ、いえ……もうそのような年齢ではないので……」
「確かにそうか」
まぁ、ロイスは十歳前半、エルドは十歳後半だからね。羞恥って言葉を覚えてくる年齢だろうし。僕も、もし、そんな父親がいたならば恥ずかしくて頼めないかな。あいにくと僕にそんなことを言ってくれたのは血の繋がりのない幼馴染の父だったし。
「まぁ、甘えてもいいんだよ。今は休みだって思えばいいし。執事としての仕事も一旦、中止だ。頼みたいこともあるしね」
「頼みたいこと……」
「ああ……って、今は話せないかな。夜にでも話すよ。ミッチェルから夜ご飯に行くって連絡も来たしね」
「……よく分かりませんがギド様が望むように扱いください」
「うん、僕のやりたいように使わせてもらうよ」
もちろん、大事にするって意味でね。
僕がエルドを大事にしたいのは才能どうこうの前にエルドが好きだから。ロイスも、キャロも、仲間だって認めている全員が好きだからだしね。その人達が虐められるのであれば、過去に囚われるのならば僕が助けられるようになりたい。僕が昔、助けてもらったように。
「良かったね、エルド」
「ええ、良い主に拾われたと思います」
「そうかそうか、嬉しいね……って、なんでシロがいるの……?」
後ろを振り返ってようやくシロを視認した。
確かに僕はシロを置いて部屋を出たはず。シロの少ない荷物も部屋に置いた。シロ用のシャンプーハットとかね。後は香料とかその他もろもろ……。いや、その荷物は空いているベットに置かれているし。
「ミッチェルに頼まれたの。ギド様のことを信用していても二人は情に弱いからって」
「モノマネ上手いね」
それしか感想が出ない。
つまり僕達の男部屋に一人の女の子が入ってくると。実際はムサイとかそういうのはない部屋だけど。オタサーの姫みたいな状態ではないけど。僕の妹みたいなシロだけど。そこまで考えたら膝を思いっきり蹴られた。普通に痛い。
「襲われたら……」
「見捨てればいいんだね、分かった」
また蹴られた。ジョークなのに……。
ジョークをジョークで返してこれかぁ。やっぱり幼いにしてもシロは乙女なんだね。セイラの時のように守ってって言われている状態なんだろうから。
「二人は襲わない。だから外に出る時は守ってあげるよ。もちろん、僕達の部屋に入ってきた不届き者もね」
「……うん!」
「その代わり夜這いとかは無しで」
「……仕方ないの」
シロはこう言えば納得してくれる。
シロの場合はダンジョンとしても未成熟なんだ。夜に寝ている時とかにくっついて僕の魔力を貰っているみたいだけど、それでも人で言うところの九歳ほど。逆に聞くけど小学生の中学年くらいの女性に欲情しますか? 僕は貧乳が好きでも幼い子には欲情しないかな。巨乳も好きだけどね。
「それじゃあ、降りようか」
「背後はお任せ下さい」
「さすがに宿で襲う人はいないって」
エルドが執事すぎて困ってしまう。
忠誠が高いのは良いけど信者レベルはやはりキツイなぁ。今回の相部屋の時に少しずつ和らげておかないと。外じゃない時は敬語抜きで話せるくらいにはね。
そして長ったらしくエレベーターのないことを恨む階段を少しずつ降りた。そんな僕達の目の前に映ったのは借りられた一室で一喜一憂している皆だった。
ネタバレとテンプレの違いのようなものは後々、意味合い的なことで書いていきます。また前話も書き足ししたいのですが頭が回らないので少しお待ちください。こんな時に語彙力が低いことを恨んでしまいます……。語彙力よ! 我に力を!
次回は二日か三日以内に出せればいいなぁと考えています。ただ違う作品の方にも手を付けたいので、もしかしたら少しだけ遅くなるかもしれません。