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4章24話 テンプレブレイクです!

「綺麗な街だな……」

「当然かしら。パトロの街は途中で通った街とは格が違うのよ。一応は王国の商人ギルドの総本山がある場所かしら」


 パトロの街……初めて聞いた。

 僕達が住んでいる街が宰相であるグリフ家の名前を取ってグリフって言うのは知っていたけどさ。その時点で商人としてアウトかもしれないね。商人は情報が命だってよく言われているし。


 ユウの親の話も聞けるかもしれないし少しいても悪くはなさそうだ。それに久しぶりに依頼を受けることも必要になりそうだしね。冒険者としてではなくて商人として。王国が好きじゃないから本当に要らないポーションとかを売るのでもいいし。もしくは……って、あるかどうか分からないし後でイフに探ってもらうか。取らぬ狸の皮算用とかになるのはゴメンだし。


「ここって長居する予定はあるの?」

「ある……かしら……? ここの領主次第というのも関係してくるのよ。一概に長居するとは決めつけられないかしら」


 そうは言っても前の街で長居することになったしね。少しは時間に余裕があるって考えてもいいかな。とりあえずは商人ギルドに行くための売り物を得ないと。シロを連れて鉱石が取れる場所に行くのも手かな。シロが吸収すればダンジョンで吸収した魔物を出せるようになるし。シロがその魔物に擬態することも出来るからね。


 まぁ、それならワイバーンとか吸収させればいいって思われそうだけど、実際はそう簡単にはいかないんだよ。吸収する量は魔物の魔力が詰まったものだけでいい、例えばワイバーンの爪一つだけとかね。それでも擬態するにはかなりの魔力が必要だしダンジョンで量産するとなればレベルが違い過ぎる。鉱石系の魔物は弱いからそこまで考えなくていいけどワイバーンは今のところ無理そうかな。


 簡単にレベル上げする場所とはいかなそうだ。

 それにしてもさすがはセイラってところか。今は護衛としてミッチェルとイフ、鉄の処女が外にいるから説明してもらえなかったし。代わりにアキやシロ、ユウとかがいるけど、あいにくとそこまでの知識は持っていないしね。貴族としての知識はかなりあるようだ。


「長居したいのかしら?」

「うーん、したいと言えばしたいかもしれない」


 ぶっちゃけ遠距離用の銃しか得物がないわけですし。ドレインが壊れたから作るための時間も欲しいからね。家に帰る必要はあるけど半日もあれば出来るから許可は簡単に取れるだろう。何せ、実体化したイフもいるわけだから作る時間も短縮出来そうだ。


 後は情報を得る必要もある。

 ロイスとエルド、キャロの表情が複雑そうなのは何か理由があるのかな。聞こうとは思わないけどすごく長い時間を、この街で過ごそうという気持ちではなくて、やらなきゃいけないことをやるだけの時間は欲しいって感じかな。複雑そうってことは長居したいわけじゃないってことだしね。


「長居というよりもやることをやるだけの時間が欲しいってことだよ。ロイス達も別に街にいたくないのなら街にいる間だけは拠点に帰ってもいいし。なんならシロのダンジョンで戦闘訓練していてもいいよ」

「……いえ、お気持ちは嬉しいですが大丈夫ですよ。そのように言われて少しだけ気持ちが軽くなりました」

「そっか……まぁ、無理はしないでね」


 返事をしたのはエルドか。

 となるとエルドの何かがパトロの街と何か関係があるってことだよね。エルドの心遣いも嬉しいけどエルドを重視して動かないといけないかな。とりあえずはイフにメールで事情は説明しておいた。僕が言うよりもイフが言う方がミッチェルは納得してくれるし。


 内容は街にいる間にエルドを連れて家に帰るかもしれないこと。エルドが気を使うから僕がシロのダンジョンで力試しをする理由をつけて、ついでに武器を作るために家に戻るかもしれないってことだね。一度でも帰れれば家の掃除を頼むことが出来るし。今回はワガママを言うつもりは無い。あー、でも、ワガママと言われればワガママかもね。ただいつものワガママとは少しニュアンスが違うってだけか。


 後はミッチェルに頼んでロイスとエルドと同じ部屋に僕を入れたりとか。トラウマとかなら僕がいた方が動きやすいし。回復魔法は心的な症状を和らげる力もあるんだよ。元の世界にあればもっと僕も……って、そんな考えに至るのはネガティブ過ぎるか。うん、やめておこう。


 あっ、返信が来た。早いなって思ったけどイフからの返事は普通にいいってことだった。まぁ、ミッチェルの弟子だしね。弟子のことも考えたら駄目とは言わないと思ったけど。その時にはロイスとキャロもいた方が良さそうだね。エルドが本音で話せるのはその二人だし。僕であってもどこか壁のある話し方の時があるからなぁ。……信者並の忠誠心がある分だけ僕への面倒事になりそうな自分のことを話すのは嫌って感じかな。一目惚れした子に自分の闇を話せないような感じに近いのかな……? 例え方が分からないけど。


「まずは冒険者ギルドで話をするかしら。前の街と違ってこの街では何度も領主と話をしなければならないでしょうし……」


 ハァと大きくため息をついてセイラが軽く髪を撫でた。確かに面倒くさそうだ。前の街でも領主と会ったらしいけど変にプライドの高い相手で気を使ったらしいしね。夜とかにめちゃくちゃ愚痴られたよ。


「嫌なことがあったら話してくれればいいよ。ただし他の人に当たったら駄目だからね」

「しないかしら……でも、ありがとうなのよ」


 セイラの表情が柔らかくなる。

 何でも心持ち次第だ。頑張って今だけは乗り切ろうと思えば楽だしね。それに僕からしても頼られていて特別感に浸れるからメリットしかないし。ほら、肩に首を置いて休み始めたし。これは役得と言ってもいいのではないでしょうか!


「……着いたみたいね」

「なんだ、起きていたんだ」


 数分の後に馬車が止まってセイラが独り言を漏らす。セイラに配慮して全員が口を噤んでいたのに意味がなかったみたいだ。まぁ、静かにするのも甘い空気感を味わえて良いものだけど。僕の仲間は大抵、暖かい目で見守ってくれるしね。シロとユウは膝の上で休んでいるし。


「……出来ればザイライと鉄の処女に護衛を頼みたいかしら」

「うん、大人数だと邪魔だろうね。それに良くも悪くも僕の仲間は男女関係なく綺麗な人が多いし。後は馬車を守るためかな」

「その通りなのよ」


 よく分かっていると言いたげに僕の頬を軽く突っつかれた。絶対にセイラは疲れているなぁ。こういうボディータッチが激しめの行為は不安な時が多いし。それに昨夜も書類作成で遅くまで起きていたようだし。


「ロイスやアキはそれで大丈夫?」


 二人が首を縦に振る。

 普通は全員に聞くことだけどこういう時はリーダーの同意が必要なんだ。まぁ、一人一人聞いていたら面倒ってのもあるけど。それにうんって言わざるを得ないよね……。


 まぁ、それは抜きにしてセイラを連れて外へ出た。シロは肩車、ユウは手を繋いで守りを固めながらね。この街に入る時は書類を提出するだけで良かったらしいし、この街での出来事全てが書類で終わることなら楽でいいんだよなぁ。


 外へ出てセイラがミッチェル達、それと鉄の処女に話をしたら喜んでいた。主に鉄の処女が。よく分からないけど嬉しいらしい。ここまでされたら鉄の処女も守らないといけないよなぁ。


 ちなみに鑑定眼で鑑定したけど冒険者ギルド内の強い人は一人だけだ。強さを隠していたとしても魔眼の前では通用しないし。テンさんのように強すぎるが故に魔眼が効かないって人もいないしね。多分だけど強い人はギルドマスターだと思う。


「はぁ……億劫だけど行くかしら……」


 セイラの言葉も分かる気がする。

 まぁ、冒険者ギルドが異様に綺麗だったら普通はね。少し考えれば商人の街ということもあって商人と渡り合うために綺麗なんだろうけど。でも、ということは……ここのギルドマスターは商人と渡り合えるだけの力があるってことだろうしね。考察すればするだけ面倒そうなのは分かる。うん、イフの力を借りる必要性もありそうだなぁ。


「頑張ろうか」

「……後で時間を貰うかしら」


 セイラが外行きの顔をした瞬間に僕は自分よりも大きな白塗りの扉を開いた。開いた瞬間に鼻腔を香水の香りが通り抜ける。僕の感覚から言えば臭い。アレだ、使ったことがなくて無理して使い始めた学生のように香水の匂いが強すぎる。現にシロも鼻呼吸をやめて口で呼吸している。それが分かる僕も気持ち悪いと思うけど。


 当然のように僕達が入った瞬間に品定めするかのような視線を向けられた。腹が立ったので魔眼で返しておいたけど。隠れてミラージュを使って普通の目のように見せながら使ったしね。当たり前だけど酒を飲んでいる品定めしてきた冒険者達は麻痺して表情を歪めていた。


「……やりすぎかしら」

「ごめん、でも、面倒ごとは嫌なんだ」


 しっかりとイヤらしい視線を向けてきた人にしか麻痺は使っていない。誰であろうと僕の仲間に対してそういう目線は向けてはいけないんだ。麻痺した中に女性冒険者もいるからそっち系の人なのかもしれない。まさか僕のことをそういう目で見るわけもないし。


「ありがとうなのよ……」

「どういたしまして」

「ッツ!」


 セイラが声にならない声を上げる。

 まぁ、僕に聞こえないように本心を言ったんだろうけど、あいにくと聞こえているんですよね。だから返事をしたんだけどセイラの表情が赤く惚けるだけだし……いや、写真なんて撮っていませんよ?


 セイラを先に行かせる。もちろん、麻痺している人達に蔑んだ目を向けておいた。これは反抗させないためだ。中には酷い犯罪を犯している人もいる。主にそういう人に向けてだね。事実、そういう人ほどステータスは高いし。それでも鉄の処女とステータスがどっこいって感じかな。心器持ちの分だけ鉄の処女の方が上手だし仲間補正じゃないけど頭の回転も早いからね。負けないと思う。


 受付についてすぐに僕達は奥へと通された。

 ここからは僕達の腕の見せどころでもある。明らかに鉄の処女よりもステータスが高い人が三人いるしね。真ん中で守られている人のステータスは僕よりも高い。手荒い歓迎をされそうだ。

4章の本編開始です。パトロの街でどのようなことが起こるのか。ちなみにここで書かなければいけない展開がいくつもあるので書ききれるか心配ですね。頑張りますが……。その中にはエルドやキャロのような謎に包まれているキャラについても追記する予定です。


後、本当に個人的なことなのですが話の中で矛盾や街の名前を先に書いているみたいなミスがあるとコメント等で指摘して貰えると嬉しいです。矛盾がないように書いているつもりですが読み直しを何度も出来るほどの時間が無くなってきたので教えてもらえると直しやすいので嬉しいです。

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