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4章22話 食事には人を笑顔にさせる力があるのです!

「……美味しかった……」

「お腹は一杯になった?」

「……これだけ食べてお腹が一杯にならない方がおかしいです」


 少し言葉にトゲがある言い方だけど表情は惚けて未だに食べていたものの味を思い出しているように見える。ユウの言う通りかなりの量を食べていたしね。肉じゃがを食べたことで歯止めが外れたみたい。


 量にして大盛りの米を五杯、野菜炒めを二度もお代わりして足りないから僕の分を渡してあげた。そこでようやく満足したようで自分の食べて残った皿とかを見て恥ずかしそうにしていたけど。この小さな体にどうしてこれだけ入るのかって思ったけど、シロも大概だったのでこの世界の子供の必要な摂取エネルギー量は多いのかもしれない。


 後はセイラに食事を運ぶだけなので僕だけでいいだろう。そう考えていた時が僕にもありました。楽観的に捉えて説明さえすれば許してくれると、そう考えていたんです。


「……やっぱり信用がないのかぁ」

「今まで自由に過ごしてきたからでしょうね」

「ギド兄が逃げ出さないか監視するだけだから安心して!」

「別にセイラにスープを渡すだけなんだけどさ、なんかごめんね」


 ついてこられることに対しての不快感は一切ない。今までのツケがここでも回ってきただけだしね。それにロイスとエルドは女性陣に比べて説得しやすいし。僕からすれば時間を奪ってごめんって感じなんだよ。まさかミッチェルが首を縦に振らないとは……。


「大丈夫です。それに邪魔をするつもりもございませんから御安心を」

「うん、変なことはしないね!」

「知っていますがギド様の知られたくない話をされるかもしれません。私からすればその懸念を払うためにそう考えているだけです」


 うっ……イフ達と同じようなことを考えているって思ってしまったけど……なんていい子なんだ……。まさか本当に僕のためにそうしようとするなんて……反論をしてしまった自分を殴りたい……。


「ごめん、イフみたいなことを考えているって思ってしまったよ」

「左様ですか。あの……別に頭を撫でる必要はありませんよ? 従者として当然のことなのですから」

「いやいや、いい子の頭を撫でずにいつ撫でるというのかね?」

「そのようなものでしょうか? 嫌な気持ちはしませんし主に認めていただけている気がしてありがたいのですが」


 思いの外、エルドも頭を撫でられて嬉しいようだ。まぁ、男が男の頭を撫でるのは傍から見てそっち系で思われるだろうしね。ここら辺でやめておこう。エルドも外見は青年だしね。


「ロイスも少しだけ待ちましょう。その後にでもギド様に構っていただければ良いだけの話です」

「僕は別にどっちでもいいよー。エルド兄もいるしね。ギド兄もセイラ姉に変なことしないように! よくギド兄は口からポロッと言っちゃいけないことを言っちゃうんだから」

「うっ……善処します……」


 まさか弟にそんなことを言われるんて……。

 まぁ、それだけ僕のしてきたことがロイスの目から見てもヤバいってことか。うん、セイラと話す時も気をつけよう。せいぜい頭を撫でる程度で済ませておこう。


 そのまま部屋の前で二人に待ってもらってセイラの部屋に入る。しっかりとノックは三回してトイレのノックとは別にしておく。かなり面接の練習で言われたしなぁ。ノック二回はトイレのヤツだから絶対にするなって。それを教えていた教師自体が好きじゃないから忘れられなくなってきているけど。


「どうぞ」

「失礼しますっと」

「あまりジロジロと見ないで欲しいかしら。それで? なんの御用?」


 訝しげな目を向けながら僕に聞いてくる。

 酷いなぁ、僕だって変なことばかりするわけじゃないのに……ってセイラに話しかける時はいつも僕の都合をぶつけていたか。まぁ、訝しげな目をしながら少し頬を赤くしているし嫌ではないということで……本題にでも入ろうか。


「これを渡したかったんだよ」

「……これは……夜食かしら?」

「そうそう」

「それで……食事……って、これは?」


 セイラが指さすのは僕が作った肉じゃがだ。僕もこの世界に来て肉じゃがを見たことがなかったから予想通り、この世界には肉じゃがという料理はないみたいだね。米自体は僕の家で食べたことがあるし。料理を全部、仕事をする用の机ではなく、休むためのソファー前の机に置いておいた。


「肉じゃが、異世界の食事だよ」

「ニクジャガ……これもチキュウの料理ってことね」

「そうそう、師匠が料理好きでね。イフの助言もありながら何とか作ったんだ。肉はワイバーンの肉だからお口に合えばって思っているよ」

「……別にギドの作る料理なら何でもいいかしら」

「うん?」


 僕の聞き返しにセイラは俯きながら「なんでもないかしら!」と強く返してきた。まぁ、聞こえてましたけど。僕の作る料理なら何でもいいなんて本当に可愛いんですけど……。


「他のはエルドが教えたミドの作ったものだよ」

「あの大味のミドの料理……とりあえず食べてみるかしら」


 ようやくペンを机に置いてセイラはソファーに座った。対面が空いているので僕も座ってササッと並べていく。箸は僕の家に来ているせいで使えるようになったし、一応だけど食べるために必要そうなものは置いておかないとね。


「……これって何か仕事の癒しになることはしてくれるのかしら?」

「というと……?」


 ジーッと料理を見つめるばかりで口にしようとしないセイラが聞いてくる。僕も聞き返したけど何となくの想像はつく。あっ、こういう時って気が付かない方がいいんだっけ。僕は何も知りませんよっと。


「その……アーンとか」


 うん、そっちか。

 セイラの場合はいくつかのパターンがあってアーンをせがまれたのは珍しいかな。そういう時って大概は他の人がされているのを便乗してって感じだし。てっきり頭を撫でるとかかと思っていた。……それは僕がしたいだけか。


「……手間のかかるお嬢様ですね」

「執事のつもりかしら? それならギド、このニクジャガなるものを食したいのだけど?」

「かしこまりました」


 普通にやってもつまらないしね。

 というか、アーンってさっきまで皆にしていたせいで普通にやっていても幸福感を感じられないし。恵まれていることのはずなんだけどなぁ……こんなに可愛い子にやれるなんてさ。


 箸で野菜をつまんでセイラの口に運んだ。小さな口の中に入った後はセイラが口を手で隠してしまうせいで口の動きは分からない。それが妙に色っぽく見えてしまう。


「次はご飯がいいかしら」

「分かりました」


 その調子でセイラの要望に応えながら食事をセイラに食べさせ続けた。さながら気分はツバメみたいだったね。それだけセイラが可愛かった。……色気に関してはグッと堪えて考えないようにしていたし。


「……あー、美味しかったのよ」

「良かった。満足した?」

「あのミドの割には美味しかったかしら。エルドという執事をウチにも欲しいくらいね」

「それはダメだね。一応、僕を慕ってくれている大事な仲間だ」

「ええ、奪う気はないかしら。それに私にはギドがいるのよ。他には要らないわ」


 堂々と言われて少しだけ焦ってしまう。

 こういう時にそれらしい言葉を返せない僕は本当に童貞だ。もっといい感じに返しがあっただろうに、それなのに僕の口から出た言葉は「光栄かな」だけだった。まぁ、セイラは嬉しそうにしていたからミスではなかったと思いたいけど……。


「さて、早く外へ出るかしら。このまま部屋にいられると話が弾んでしまって仕事が進まないのよ」

「うん、今度は仕事のない時にでも遊びに来るよ」

「そうね……夜中なら空いているかしら。暇があれば対応するのよ」

「対応か……うん、その時は先に行くって言っておくね」


 きっと業務連絡のように言われたのはセイラの照れ隠しだ。部屋を追い出す時のセイラの頬の動きだけは見逃さなかったし。それにしても……スープの説明しなかったけど大丈夫かなぁ……?


 まぁ、瓶に入っているし飲み物だと思って飲んでくれると思うよ。今度はジュース系とか作ってみてもいいかもね。今日中にやりたいことも終えたし後は男三人で話をするってもの悪くないかもしれない。あっ、その前にキャロに会いにいかなきゃ。


「ごめん、待たせた」

「大丈夫ですよ」

「うんうん、仲良さそうで何よりだね!」

「セイラと仲悪くなるわけないだろ」

「いたいよー!」


 何となくだけどロイスのほっぺを軽くつまんでやる。まぁ、一種のスキンシップだね。ロイスも痛いって言っているけど笑顔だし。ロイス自体がこういうことに憧れていることも知っているからなぁ。家族との近い関係みたいなものにね。


「他にやりたいことはあるのですか?」

「うん、ちょっとキャロと話をしたいなって。キャロが一緒でロイスとエルドもいればどっかに行くとは思わないでしょ?」

「……なるほど、確かにキャロと会話をするのは名案だと思います」

「すごく寂しがっていたもんねー」


 やっぱりかー、キャロの仕草でそこまで分かるのは些か気持ち悪いって思ってしまうけどさ。それでも従者ってか、メイドの気持ちすら分からないなら主として失格だし。


「キャロは寂しがり屋です。表に出さないだけで私にいつも当たり散らしてくるんですから」

「それも含めて解消させてあげようと思ってね。あの子の過去自体は詳しくは知らないけどそれでも嫌なことがあったのは分かる。あんまりキャロに厳しくしたらダメだよ?」

「いつも助かっていますよ。冗談抜きでの話です。ただ……」

「ただ?」


 僕も気になって聞き返した。


「……いえ、すいません。私の口から話すべきではないと考えました。お気を悪くしたのなら謝らせてください」

「そっか、そうなるとキャロの過去をポロッと話そうになったってことかな。まぁ、話さなくていいよ。あの子が僕に対して話せるようになるまで待つつもりだし」

「……見抜かれていましたか。そうですね、主として信用はしているようですが少しだけ問題があるだけです。きっとギド様に話せるようになるのも近いはずですよ」


 エルドとそんな会話をして僕達はキャロの元へと向かった。今はアキやミッチェル、ミドが皿洗いをしている中でキャロも手伝いをしているはずだしね。セイラの食事をした後の食器を片付ける意味も込めて早く行かないと。キャロの反応が素直に気になってきたなぁ。

キャロとの会話イベントですね。実際は何の話を入れようか考えてないことは秘密です。と言いますか、させたい会話が多すぎて困っている節もあります。健全な中身にしながら楽しく読める作品にしなければいけませんね!


八月の終わり……特に何もない夏だったなと思います。九月はもう少しだけ小説を書く時間が欲しいですね。また忙しくなりそうな気がしますが……。

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