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4章21話 男の手料理でも繊細さは必要なのです

 まずはユウへの料理だね。

 普通に食べられるような料理はさすがに渡したくないしなぁ。そうだとすれば日本料理とかが一番いいんだよね。ただし醤油とかはかなりの希少品だからあまり使えないんだよね。とはいえ、使えるのと使えないのとではかなりの差がある。


 大豆自体は……まぁ、大豆に近い豆なんだけどそこから醤油は作れた。よく分からないけどイフの力を借りてミッチェルが作ってくれたんだよね。僕へのサプライズとして作ってくれたし。


「まずはっと」


 日本酒が欲しいところだけど当然ない。誰か通信販売みたいなスキルがあるといいんだけどね。よくあるチートスキルみたいなので。まぁ、あいにくと持っている人も知り合いでいないし。だから味の近い酒を出しておく。


 焼酎はどちらかというと癖が強いから使えないし、日本酒特有の甘みとか辛みがある酒がいいからね。ぶっちゃけ同じとは言えないけど似た味の酒はあるし。高いけど……。


 火に鍋を置いて酒を入れる。酔う訳にもいかないから風で森の方へと流しておいた。このお酒……アルコール度数が三十五もあるんだよなぁ……。沖縄かよってくらいに度数が高い。えっ? この世界なら未成年とかの区切りはないからお酒は飲めるんです!


 ちなみにこの世界でお酒を飲んだのはセイラが遊びに来た時だね。セトさんが来たとしても飲むなんてことは出来ないし。セイラは下戸だから多くは飲まないけど。まぁ、初めて飲んだ時は僕でも酔ったし。ただその分だけ味は飲みやすいかもね。


 そこにこれまた高級品である砂糖を入れてゆっくりとかき混ぜる。見て分かるとおり僕が作ろうとしているのは味醂の代用品になるものだね。よく某調理サイトであるようなやつだけど。


 この二つで作った味醂の上に酒を少しだけ追加する。そこまで来たらアルコールが飛ぶまで弱火で放置しておいて……他の調理道具で水を入れて鍋を煮込んでおく。この時に強火にしてはいけなくて……そして昆布を入れておくっと。あっ、昆布は普通に昆布として売ってあった。乾燥させてってことで持ち運びに便利らしくて安かったしね。


 味醂の方はそこで沸騰し始めたので火を消して、昆布の方に川魚を二匹入れる。川魚は小さくてもいいんだ。おやっさんに聞いたところでは入れた川魚は出汁を取るのに丁度いいらしいし。逆に単体としての食材には不向きってよく分からない扱いらしいけど。何でも味だけで言えば臭みが強いらしい。生姜とかも割とお高いし仕方なし。


 弱火でゆっくり煮込んで沸騰直前に魚と昆布を取り出しておく。昆布は使えるので別に分けておいて、魚は違う用途で使うからこれも皿に置いておく。


「ふっふっふ」


 地球にいた時は幼馴染にグチグチ言われながら作ったなぁ。その時は妹もよくいたし。なんだかんだ言いながら美味いって褒めてくれていたし。はぁ、あんなことさえなければなぁ。幼馴染とは別に何も変わらなかったけど妹とは仲違いしたし……って、今はそんなこと考える必要性ないか! 作る料理も塩辛くなってしまいそうだ!


 出汁と味醂を混ぜて醤油を入れる。この時に味見をしっかりしなければ美味しくなくなってしまうから注意っと。……少し砂糖が少なめかな。甘さが薄いとそれはそれで美味しくないし。ちょっと濃いめで作っておいて水を入れて薄める。


「やっぱり味は変わるなぁ……」


 不味くはないけど劣化版になるかもしれないなぁ。いや、食材がその分だけ良いからどっこいどっこい、変わらないくらいのグレードかもしれないけど。ただ作ったタレは明らかに何か抜けている気がする。


 そのまま弱火で煮込んだままで野菜と肉を切っていく。肉は奮発してワイバーンの肉を切った。分からないけど噂では豚と牛の間くらいの味らしい。らしいで作るのはどうかと思うけど。味は格別らしいしね。奮発奮発、僕からすれば三大欲求を適当で済ませようとは思えないし。


 野菜は玉ねぎと人参、じゃがいもね。これはフライパンでワイバーンを焼いた後に残った油で炒めておいた。この時に塩コショウで軽く味を付けておく。濃くしたらクドくなるからダメだよっと。


 それを煮込んだタレに入れて……うん、これで蓋をしてゆっくり煮込み続けるだけ。これで肉じゃがもどきの完成。食べてみないと分からないけど僕なりに故郷の味を再現したつもりだ。……やっぱり味醂は欲しいなぁ。日本酒も飲んでみたいし……。


 忘れるところだった。出汁を取った川魚をすり潰してすり潰した生姜と混ぜて団子にしておいて、それを中へと入れた。昆布も一口大に切っておいて一緒に煮込んでおく。これで本当に完成だ。


 割と多く作ったので全員分にはなると思う。一杯いくらかかるかってくらいにお金がかかった料理だけどね。それでこれで終わりとはならないんだよなぁ。そのためにミドにも聞いておいたことがあるし。


 今日はスープ系を作らないらしい。これは毎日スープがあってもって感じらしいけど、単純に作るのが簡単でミドに教える必要も無いから最近は作っていないっていう背景もあるんだよね。


 それで僕は冷めても美味しいスープを作ろうと思う。まぁ、いつものスープと変わりないんだけどね。元が同じってだけで味の探求はするつもりですけど。いつもは塩コショウベースだったけど醤油ベースにするとかね。ただそれだけでいつもの動きをするだけだから椅子に座りながらゆっくりと作る。


 出来たものを氷魔法で冷やしておいて瓶に詰めておいた。味見はもちろんしたけど不味い訳もなく売ったとしても悪い結果にはならなさそうだ。このスープは頑張ってくれているセイラを励ますために作ったしね。美味しいって言ってくれたら嬉しいな。


 同時に肉じゃがも出来たので両方ともしまっておいた。置いたままだと冷めるだけだしね。そしてミド達の方へと向かった。他にやりたいこともないし森に行ったら怒られてしまうしね。


「おっ、料理は済んだのか?」

「ああ、終わったよ。割と上手くいったと思うから楽しみにしていてね」

「ギド様の料理は美味しいですからね。そうです! これを作ってみたのですが味見を頼んでもよろしいですか?」


 小皿に盛り付けられた肉と野菜の炒め物。

 簡素だけどエルドが味見を頼むくらいだし工夫無しとは思えないけど。断る理由もないから首肯して小皿を受け取ってから箸で口に運んでみた。肉はオークかな。野菜は普通の葉物だけど。その割には……。


「甘いね」

「不味かったでしょうか……?」

「いや、違うよ。しょっぱさと甘みが上手く噛み合って美味しいと思う。これは砂糖でも入れてみたいの?」

「そうだぜ!」


 僕の質問にミドが胸を張って返してくる。

 この感じだと提案したのはエルドではなくミドって感じかな。後は作ったのもエルドじゃなさそうだし。エルドにしては葉物の切り方が少しだけ大きめだし。


「ミドの提案で、ミドが作ったってことね」

「ご名答です。ミド様に全てを託しておいて作っていただきました。及第点をいただけたようで師として何よりです」


 本当にエルドは嬉しそうだ。

 後でもっと褒めておいてやろうか。このクール系のイケメンの顔が照れる顔を見てみたいしね。僕よりもポーカーフェイスが得意なエルドのギャップも見てみたい。特にアキが喜びそうな企画だけど。


 まぁ、それは置いておいて。


 料理も終えたので僕とミドで全員を呼んで食事を始めた。米も炊いていたのでユウの驚く顔とかも見たい欲求が僕を襲ってくる。ちなみに席は膝上にシロが乗るのを前提として、もう片方は小さめの椅子にした。ユウが隣に来て欲しいしね。これは隣の方がもてなしやすいし。


 って、思っていたらセイラは後で食事をするらしいので考える必要性もなかったみたいだけど。本当に忙しいんだね……他人事みたいな感想が浮かんできて、すぐさま首を横に振ってかき消す。


「……ここに……?」

「そうそう」


 ユウがジルと来た時に隣に座らせてシロを無理やり膝上に座らせた。隣を取られることに嫌な顔をしていたけど「それなら膝をユウが座るようにする?」って聞いたら黙った。小さく「特等席が取られる」って言っていたので不覚にもドキってしてしまったよ。


「……ここってユウが座ってもいいの……?」

「いつもは無理かもね。さっきのセイラって言う人が座るし。でも、あまり気を遣わなくてもいいんだよ。別にここはそういうことで怒る人なんていないし」

「そうですね、セイラの席は無理でも私の席ならお譲りしますし」


 おー、さすがはミッチェル。

 まぁ、ミッチェルの場合は隣の席に固執する必要も無いんだろうね。イフはアキの隣に座っているし。隣に来たそうにしているけど今はダメだ。


「……気を使っていません……」

「うーん……それならそれでいいけどさ。ほい、これ」

「……これは……?」

「肉じゃが」


 全員で大きなテーブルを囲んでいるのでユウには肉多めで肉じゃがの皿を渡しておいた。逆にシロには野菜多めでね。シロは好き嫌いが多すぎるし。かなーり嫌な顔をしているけど無視無視。負けちゃダメだ……。


「食べたくない……?」

「……いえ……」


 全員に渡しておいたのに勘で高い食材が多いことを理解したのか、ユウが口に運ぼうとはしない。対して皆は関係なく口にしてくれているみたいだけど。皆が美味しいって言ってくれていて嬉しい限りだ。


 それを視覚と聴覚、嗅覚で理解しているからユウも食べたそうにしているけど。これを見て本当に気を使っていないって誰が思えるんだか。代わりに野菜炒めとか米は食べているみたいで美味しいって言っているけど。


「ユウ?」

「……はい、はぅ!」


 こっちを振り向いた瞬間にユウの口にワイバーンの肉を入れてみた。一瞬でユウの頬が緩んでいく。めちゃくちゃ可愛い。あのさ、漫画とかでよくあるけど現実では滅多に見ない頬を押さえて口がふにゃあってなっているのよ。すごく癒されるんですけど!


「美味しい?」

「……美味しいです……」


 言葉では普段通りを演出しているけど口や頬は演技が出来ていない。とても綻んでいて直そうとしても直ってくれないユウの心境が目に映る。僕も一口食べてみてユウの気持ちが分かった。これは美味い。


「この皿はユウの分なんだ。僕がユウに食べて欲しいのに食べてくれないの?」

「……た、食べます……本当に不思議な人達ですね……」


 おっしゃあ! ユウの照れ顔ゲット!

 もちろん、写真に撮ってフォルダに保存しておいた。これはこれで可愛いから本当にユウの本質がいい子なんだって理解出来る。頭を撫でたら小さく抗議してきたけど拒否はしないしね。


「シロも!」

「いいよ、ごめんね」

「許すよ!」


 膝の上で楽しそうにするシロも可愛いのぉ。作って正解だったわ。その後は仲間全員にアーンすることになったけど、それは別の話だよね。特にエミさんにアーンする時だけはエミさんが女の子らしさ全開だったから焦ったけど。

手料理を美味しそうに食べてくれる異性とか、手料理を作ってくれる異性ってめちゃくちゃ良いですよね。個人的にはすごく好きなのでそのような人と知り合いたいものです(笑)。


もう少し日常のような話を書いて4章の序盤に繋がるのでお楽しみに! 次は三日か四日以内に出す予定です!

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