4章20話 ラスボス戦?です
先に言っておきます。タイトル詐欺です。
「ということで連れてきました」
「……連れていかれました……」
「えっと……はい」
ミッチェルに正座しながら説明をするとそう返された。イフも含めて今、僕達の前には鉄の処女以外の全員がいる。セイラはまたかと言いたげに頭を抱えて、イフはどこかにこやかに、ミッチェルは対応に困ったように僕たちの顔を見ている。
ちなみにお仕置きとばかりに正座した膝の上にはシロが座っている。軽いはずなのに正座だからか、かなり重く感じてしまう。その空気感に従ってユウも僕の隣で正座してくれている。
「まぁ……いつもの事なのでユウさんを拒否したりはしませんが……」
「ミッチェルよく分かっているねー!」
「ですが、ギドさんは別です」
……えっ?
「そうね、ユウが一人で親とはぐれているのに捨てる、そんな人として外れていることは出来ないかしら。ただし話もせずに連れてきたギドにはそれなりのバツが必要なのよ」
えっ? えっ?
「……すいません……」
「悪いのは貴方の親かしら。ジル、ユウを部屋に連れて行ってあげてくださる?」
「了解しました」
えっと……マジですか……。
言葉通りユウはジルによってマップで空き部屋に連れて行かれたのは確認出来た。となると本当に二人のお仕置が待っているだけみたいだね。いや、怒られる理由は……全然ありますわ。さすがに勝手すぎたか。
若干、二人から困惑した目で見られているのは気にかかるけど……。まぁ、ラスボス戦と中ボス戦をクリアするだけだ。頑張らせてもらわなければ……。
「まず勝手な行動は仕方ないと思うかしら。ましてや、あの子は可愛い。助けたいという気持ちも分かるのよ」
「えっと……はい」
「でも、でもなのよ……あの歳の子に手を出そうとするのはどうなのかしら……?」
「えっと……はい……?」
怒られる原因は僕の行動のせいだよね。
いや、でも、セイラが呟いているのは年のことばかりで連れてきたことではない。まさかね、まさかとは思うけど……。
「手を出すってそういうこと?」
「そういうことってどういうことなのかしら?」
「私もそのように捉えています。ギドさんがその……幼い子が好きで……」
「確かに貴族の中には五歳の女児を妾にする人もいるかしら。それでも……ギドはそういう趣味があるとは思っていなかったのよ」
「いえ、誤解です」
そっと胸を撫で下ろす。
連れてくることに対して怒っているんじゃなくて……いや、怒らない方もどうかと思うけど何も悪く考えていなかったのか。どちらかと言うとロリコンだって思われていただけだね。確かにユウの見た目は幼稚園児って言われても驚かないし。
「シロの独壇場」
「いや、シロは好きだけどそういう目で見れないかな」
「負けた……だと……!」
シロがソファの上でorzの形になる。
そのネタはイフ直伝だよね。イフがドヤ顔しているし。
シロのことは可愛いとは思うけどそういう目では見れないかな。あのあれみたいな感じ。親戚の姪っ子が家に来て可愛がるみたいな。まぁ、姪っ子なんていないし、いたとしても僕に紹介されるわけがないんですけど。
あっ、でも、幼馴染の親戚の子とは話とか良くしていたな。あの子に対する感情に近いかもしれない。妹よりも妹だって思えたし。愛みたいな重い感情を考えなくてもよかった関係だしね。
「普通に過去に共感しただけだよ。何となく自分の過去に重ねて助けてあげたいって思えただけ」
違う意味でだったけどユウを他に連れて行ってくれたのはよかったかもしれない。ユウのことを考えずに本音で話せるからね。多分だけどユウの話がなければ助けようとも考えなかったし。それだけ仲間が危険にさらされたりユウという存在のひととなり、素直さが敵になるとは思えなかったって感じかな。
素直なこと、共感。
ぶっちゃけて言えばプレゼンみたいなものだと思う。人を動かすには感情が第一だし本音でぶつかれるような相手でなければ助けたいって気持ちも湧かないしね。……あー、高校で習ったのに使う場面のなかった知識だけが役立っていく……。一回も使えなかったな。僕の高校生活の中で……。
ちょっと高校生活が悲しく思えてきた中で二人の顔を見る。当然のごとく優しげな目で見られているだけだ。ものすごく勘違いされていそうな気がする。
「勘違いされていそうだから言うけど僕の好みはミッチェルだよ。ミッチェルは……確かに幼さが残るけど可愛いのと綺麗なのが混ざっているでしょ?」
「あの……」
「セイラも好みだね。優しくて素直になれないけど行動に現れるところとか。後は時々、素っ気なくするとあたふたする所とか可愛くて好きだよ」
「それは……」
「幼いから好きって言われるのは納得出来ないかな。それを言うならシロの良さだって僕を第一に考えてくれることだし、イフも悪いところは悪いって言うけど良いところはダダ甘やかししてくれるところとかね。アキは」
確かにね、僕は八方美人なところがあると思う。イルルとウルルも可愛くて魅力的だと思うしアミも子供が産めるって聞いてギルドに行かせたくない気持ちも湧いた。それはアミの名前の元となる人が……いや、ナンデモナイデス……。でもね、これだけは言える。
僕はロリコンじゃない!
「と、とりあえず!」
「とりあえずじゃないよ! 僕の話は」
「それを続けていたら日が暮れてしまうかしら! ギドが……私も含めて好きなのは分かったのよ。見ていないようで見ていてくれるのは分かったのよ……。戦闘訓練の話もされたら何も言えないかしら……」
セイラの言葉で窓の外を見た。
確かに日が暮れかけている。時計を見たら一時間は経っていた。……すごいね、熱中するとこんなに早く時間が経っているように感じてしまうのか……。
確かロイスとかもいたから男性面の良さも語っておいたような気がする。女性陣がものすごく恥ずかしそうにしていたのを見ると、少しだけやりすぎちゃったと思わなくもないかな……。また今度やってみよう。耳元とかでやってみるのも面白そうだ。
男性陣は当然って顔だけど。
「見ているよ。夜な夜な僕に隠れてミッチェルから戦闘訓練を受けていることもね。強くなったじゃん」
「だから! ……それが恥ずかしいのよ……」
口を尖らせてセイラは部屋を出て行った。
まぁ、最後に小声で「ありがとう」と「ご飯の準備をするかしら」を続けて早口で言っていたのには、ちょっとだけ胸がキュンってなったけど。いえ、嘘です。結構、キュンどころがドキってなりました。可愛いって罪ですね。
ありがとうは「見ていてくれてありがとう」かな。続けてこれからも見ていて欲しいとか言われたら紳士の皮を脱ぎ捨てていたかもしれない。……いや、皆がいる時点で無理か。何となくだけどセイラに対してなら皆も怒らなさそうなんだよね。恋人とかにしたとしても。
ヤバいな、考え方が浮気を正当化するクソ野郎に近くなってきている。後でエルドに喝を入れてもらおうか。キャロに怒っている時のように怒ってもらわなければ。
その後は皆に許してもらったのを確認してから、ミッチェルに一言だけ聞いておく。普通に否定されるようなことでもなかったので良いって確認も取れた。……時間があるので蚕蛾のコスプレを作るって言っていて嬉しかったけどポーカーフェイスで隠しておく。
「エルドとキャロも行こうか」
そのまま二人を引き連れて向かったのはミドの場所だ。セイラはまだ部屋で残った書類と睨めっこだしね。この三人には共通点があるし。
「おっ、何で来たんだ?」
「今日ってミドとエルド、キャロが料理の当番だよね?」
「そうだな、なんだ? 何を作るのか聞きたかったとかか?」
料理当番、ただそれだけの関係性なんだけどね。まぁ、ミドの得意料理が男の食事って感じがして料理を覚えるためにエルドに弟子入りしたって背景もあるけど。教えながら作るって言うのでエルドはミドと一緒に料理当番をすることが多いんだ。
「まぁ、それも聞きたいかな」
「それもってことは他にもあるってことか。なんだ? あのユウって子に良い格好を見せたくて料理を作るとかか?」
うっ……鋭いな……。
こんな時に限ってミドが鋭いとは嫌な予感がするぜ。別にミドの勘が鈍いってわけではないけどさ。ただこういう無粋な質問に関しては鋭いことが多いし。
「沈黙ってことは当たりか」
「良い格好というか、初めての仲間紹介の時にあんな格好を見せてしまったからね。威厳のある格好をしたくてさ」
「あれはな、ただの嫉妬だ。セイラ様にも可愛いところがあるんだな」
「ミドが言うとセイラが怖がるからやめて欲しいです」
「何でだよ! 後、敬語になっているんじゃねぇ!」
ミドをからかうのはここら辺でやめておこうと思う。まぁ、人をからかうのは楽しいからね。機嫌が悪い時にはミドをからかって遊ぼう。クソ野郎ですね。仲がいいから出来ることなんだけど。
「冗談だよ。セイラが聞いていたらむず痒そうにするからね。ミドは男らしさをそのままにした方がモテるよ」
「……色男は男の扱いも上手いってか……。まぁ、ギドの助言は有難く使わせてもらうよ」
「彼女、出来るといいな」
「余計なお世話だ。ほら、しっしっ。俺もエルドから教えてもらわなきゃいけないしな」
「仲良きことはいい事ですがミド様には料理を上手くなってもらわなければいけません。執事としての責任ですから。何なら兵士としての職務を離れた際には私と共に執事をして頂いてもいいのですよ」
エルドが素直に褒めるってことは筋はいいってことか。エルドは仲間以外のことを滅多に褒めないしなぁ。何ならキャロのこと以外、悪口というか悪い所を指摘しない。あったとしても誰かの話に対して賛同するくらいかな。
「そっ、そこまでじゃねぇよ……」
「いや、エルドが褒めるってことは大したことだよ。頑張ってセイラに美味しいものを食べさせられるようになってくれ」
僕からミッチェルへ料理の指南が、これは日本食のってことだけどね。そこからエルドとキャロへと、エルドからミドへと教えられていくのか。いい事だと思う。それに料理が上手くなればセイラもジルも喜ぶしね。嘘はついていない。少し恥ずかしさはあるけど。
「もう消えてくれ」
「はいはい、恥ずかしいんだろ」
ミドのことはそこそこにして場を後にする。
キャロが付いてきさそうにしていたけど今日はやめてもらった。代わりに後でめいいっぱいに撫でてあげるつもりだ。丸いしっぽと耳がピンと立っていたので寂しさを感じていたんだろうし。
帰ってきてからキャロと話す場面も少なかったからね。キャロの寂しい時の特徴が出ている時に解決しなければ……イルルとウルルみたいな暴挙をしかねない……。
次回は二日か三日以内には出せるようにしたいと思っています。現状が書けそうな環境ならば出せそうですが待っていて貰えると幸いです。個人的にはカクヨムの話も書きたいので時間が欲しいですね。研修の報告文を書かなければいけないなんて面倒です。
早く終わらせて小説にシフトしなければ……。
早めに4章の始めの部分を書きたい……。