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4章19話 僕は悪い大人じゃないよです

ようやく研修が終わりましたー!

さて、書ける時間が増えたので書いていこうと思いますー!

 一斬りだった。それだけで目の前のオークの一体が紙切れの如く半分にされ、そして切れたと同時に爆発して血の霧を舞わせたのだ。すぐには脳が追いつかない。代わりに体が動いていた。


「……人……ですか?」

「ああ、そうだよ」


 ドラグノフで受け切ったのは小さな短剣だった。その割には威力が高く少しだけ後ずさりすることになってしまう。油断していたんだろうね、そこがなければ普通に弾き返せるくらいの力だ。ただ耐え切ることが出来たので良かったことにしよう。


「……何でここに?」

「護衛の途中なんだ。護衛なら前にいる魔物を倒してしまうんじゃないかな。だから、これを下ろしてもらってもいいかな?」

「……許します」


 小さな少女。いや、明らかに幼い。

 目で見る限りではシロよりも幼く見える。イルルとウルルが冗談でやった巨乳幼女よりも幼く見えるから……五、六歳くらいか。そんな子供にここまでの力があるとは……。


 魔眼で見てみる。ダメだ、弾かれた。


「……見るのはやめてください。恥ずかしいんです……」

「ご、ごめん……君が僕のことを信用出来ないように、僕も君のことが信用出来ないんだ」

「……それなら見せます。攻撃してしまいましたが敵意はないんです……」


 幼い割には言葉遣いが大人びている。ましてや、ゆっくりと考えて話しているようで見た目よりも歳をとっているのかもしれない。そんな中で魔眼から少女のステータスを見ることが出来た。……この年で僕の魔眼を看破するのか。すごいな。


 案外と素直だ。いや、幼いから見せてくれたのかもしれない。普通ならこんなことをされて見せてもいいなんて思えないよね。つまり敵意は完全にないって言えると思う。僕の心自体が許しているわけではないけど。


「……ユウ、か。その年で全ステータスが二千越えってすごいよ」


 これだけあればあの一撃も納得出来た。

 年は十二歳で見た目とはかけ離れて幼いけどステータスは大人以上だ。強化系のスキルもあるので一撃の重さはそれを駆使してだろう。ユウって名前も異世界人らしくなくて親近感が湧く。


 顔は全然、日本人らしくはないけどね。鼻も高くて目も大きい。髪は肩までいかないショートヘアー、ショートボブなのかな……。耳まで出ているけど何とも言えない。普通にショートヘアーってことにしておく。完璧な特徴としては片目が前髪で隠れていることかな。


 そこまで来て僕はドラグノフを下ろした。

 ここまでされて攻撃をされるなら僕の判断ミスだ。この子は頭が良い。僕と戦ってもいいことが無い、その前に人と戦う気がないんだろう。だから、この子の行動に敬意を評して僕も動くだけだ。


「……ここまで強くなるのには苦労しましたよ……」

「……そうだろうね。ほら、シロも出てきて」


 ユウのことを見るだけで何も話さないシロを表に出させる。話さない理由は分からないけど警戒はしているんだろう。攻撃しないのはシロから見てもユウに攻撃の意思がないことを確認しているからかな。それはいいけど僕を盾にしようとするのはやめてほしい。


「……初めまして……」

「……初めまして……」


 似たもの同士なのか、返答も同じだった。違うとすれば背丈と声くらいか。シロは小学生並みの声の高さだけどユウは本当に幼い子の声の高さだ。平常時で音域で言うところのhiら辺はあるんじゃないかな。


「シロ、緊張しなくていいよ。カマイタチがゆっくりしているから敵ではない」

「敵ではないだけだよ」

「……そうですね……それはお互い様ではないでしょうか……」

「確かにそうですね」


 ダンジョンから身体を作り出した時の話し方だ。僕がどんなことをするのか、そんなことを探っている時の、あまり心を許してくれていなかった時のシロの話し方だ。


「そんなに恥ずかしかったらまた背負われるか?」

「うん!」


 いきなり元気になったんですけど……。

 ただ単に僕から離れたくなかっただけとかかな。杞憂だといいんだけど、まぁ、もし僕から離れたくなかっただけなら可愛いよね。後で愛でておこう。


 シロを背負ってからユウの方を向き直る。


「ところでなんでここにいるの?」


 純粋な疑問をユウに聞く。

 ユウはあっけらかんとして一言だけ呟いた。


「……保護者とはぐれました……」

「それって結構、大変なことじゃない?」


 何とか平静を装っているけど心の中はこの子大丈夫なのかなとか、送り狼になるしかないかとか、そんなことばかり浮かぶ。後者に関してはイフがここぞとばかりにメールで送ってきたせいで頭に浮かんでしまっただけだけど。だから僕のせいじゃないです。ロリコンではありません。ええ、決してね!


 イフがシロ経由で会話を聞いているのが悪い。なにか対策を取らなければ……夜の街に遊びに行けない……。


「……割と……」

「そっか、強くてよかったね」


 見た感じ服に血は付いている。だけどHPは減っていないし傷がついているわけでもない。見た目だけだから服の下とかには傷があるのかもしれないけど。こう考えるだけでイフから不潔だなんでって来るんだから、絶対にイフの方が変態だと思う。


「怪我はない?」

「ありません、あったなら怒られてしまいますから……」


 特に気にした様子でもないけど突っ込まない方がいいところだったか。人によっては怪我の一つや二つで親に怒られることもあるだろう。俗に言う毒親って感じかな。……僕みたいな体験でもしていたのかねぇ……。確証はないけど。


「ごめんね、そういう気持ちは一切なかったんだ」

「……いえ、ユウのことを気にしてくれるだけありがたいです」

「うん、本当にごめん」


 謝っても気にしていないと返されるばかりだ。本当に幼いのによく出来ている子だこと。そんな近所のおばあさんみたいな感想が湧いてくるな。だからと言ってこの子に何か出来ることは無いんだけど。


「その保護者とはどこではぐれたの?」

「……一個前の街……魔物が攻めてきたせいではぐれちゃって……」


 うっわ……嫌な予感がするなぁ……。

 指さしている方向は僕達が来た方向だ。ましてや、スタンピードのように魔物が街中に攻めてくるなんて滅多にないだろうし。そう考えれば……僕達がいた街ではぐれた子供ってことだよね……。それならいっその事、街に返すこともありかな……?


「それなら街まで送る?」

「……ううん、どっちにしてもいないと思います。目的は王都に行くことでユウがいなくても先に進むと思いますし……」


 子供がいなくても先に進むか……。

 それだけ重要な依頼でもあるのか、もしくはただ単にユウのことが嫌いか。どちらにせよ送るだけでは解決しなさそうなんだよね。少なくとも面倒事には変わりない。だけどな、救いたいって気持ちがあるんだよなぁ……。


 ぶっちゃけ、エゴだって思う。

 ミッチェルの時もそうだったけど助ければ助けた恩を返されるわけではない。場合によっては恩を仇で返されることもざらにあるだろう。それでも……こんな頭がいい子であっても幼い子の涙は見たくないかな。


 とりあえず一人で進める距離ではないよ。

 道中でユウよりも強い敵は普通にいるだろうし。それなら僕達がいた方が生きていられる確率がさらに高まる。僕からしてもエゴを満足させられるから悪いことではない。


 一応、文章で説明文をイフに送って返事を待ってみた。返事が来てからユウを説得すればいい。イフからオーケーさえ貰えればセイラを説得するのは簡単だしね。返ってきた言葉は当然のようにお任せしますだった。


 イフにしては珍しい、不確定的な、結論を相手に委ねる言葉だ。それを僕に対する信頼と考えていいのか否か。まぁ、これはオーケーの返事だと捉えてもいいよね……? 僕とユウの会話を聞いていてこの返事なんだから。


「それなら一緒に来る? こっちも王都まで向かう途中だったんだ」

「……いえ、迷惑だと思うのでやめさせていただきます……。それに……まだここら辺にいないとは限りませんから……」

「でも、可能性は低いんでしょ? それに変な敵がいないとも限らないし」


 そう言ってみたらユウも黙った。

 ユウが拒否するのは何も僕が嫌いとか信用出来ないとかではないみたい。まぁ、信用云々は出来ないなら銃も下ろしたりしないしね。ユウも重々承知だったから悩んでいるんだと思う。……逆に酷く甘美な言葉に聞こえているから拒んでいるか、もしくは日本人みたく申し訳なさが先立っているからか。


 どちらにせよ、もう一言で済みそうだ。


「幼い子が気を遣わなくていいんだよ」

「……ユウを幼い子扱いしないでください。ユウはしっかり出来ます!」

「ご、ごめん……」


 これは虎の尾を踏んだ感じかな。

 とりあえずユウに幼い子扱いをしてはいけなさそうだ。それならどうやって持っていくか。というか、この怒ったユウをどうすれば元通りに出来るのか。えっと……シロに効果的なことをしてみるか……。


「……あの……やめてください……」

「ごめんね、本当にごめん」

「あ、謝りながら頭を撫でるなんて……見ず知らずの人に言うのは悪いのですが馬鹿なのですか!?」

「うん、馬鹿だよ」

「あっ、あう……」


 若干、背中を刺されそうな感覚に襲われるけど今だけは我慢だ。幼い子扱いは嫌でも頭を撫でられることには耐性がないみたいで、言葉とは裏腹に嬉しそうにしているし。こっちの顔の方が子供らしくて可愛い。うちのシロと同格って言ってもいいかな。


「ゆ、許すので……今はやめてください……」

「僕達が送ってもいいって言うのなら許してあげてもいいかな」

「あう……」


 意味が分からないだろうね。僕も他人から言われたらなんだコイツァ(十八歳)とかになりそうな気がする。年齢は適当だ。何となく浮かんだことを言ってみた。すいません。


 それにしても今は、か。本当に可愛いところがあるじゃないか。今じゃなければ頭を撫でて欲しいなんて……普通に可愛い。もっと撫でてやりたいから、もっと拒否をしてくれ。


「……連れていってください……」

「そっかそっか、僕達についてきて僕に頭を撫でられる気になってくれたかー」

「何か余計なものが付いていませんか!?」


 ユウに「えー、気の所為だよ」ととぼけてみた。何も気の所為じゃない。これでどう動くのか。今じゃなければなら撫でられてもいいんだろ。さあ、僕の望む回答をくれ。


「……付いていきます。撫でることは……許した時ならいいです……」

「分かった、これからよろしくね」


 ユウが小声で「変な人に好かれてしまいました」とか言っているけど、その頬が赤く染っていて目が左右に行ったり来たりしているのは見逃さない。というか小声でも聞こえているんだぜ。絶対に聞かれていないって思っているだろうけど。


 さて、後はシロの機嫌と皆への説明かな。

 ミッチェルは「また女性を落としたのか」って感じで言ってきそうだけど……仕方ない。この子が可愛かろうが何だろうが助けたいと思えた。それだけで連れていくには十分だ。


 とりあえずユウの手を引いて来た道を戻る。かなり近付いてきていたのでユウが頑固にしていた分だけ時間がかかっていたことを知った。まぁ、その分だけ良い拾いものをしたと思……いや、ユウはものじゃないね。良い子と知り合えたと思う。


 さぁ、後はラスボス戦だけだ。

 いざ尋常に勝負だ……ミッチェル……。

新キャラ、ユウ登場です。幼い子扱いが嫌いな幼女系な謎の女の子。果たして4章でどのような役割を担うのか。また正体はなんなのか。お楽しみに!

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