表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/273

4章18話 嫌なことです

かなり短いです

 予想通りと言うべきか、ダンジョン攻略から帰って数日間は外出禁止を食らってしまった。まぁ、長い間、自由にしすぎたって話なんだけどね。そりゃあ、誰かさんが来て戦力増強も出来たしカブトの話も聞かれた。こうならない方がおかしいんだ。


「不服そうですね」

「まぁね……」

「ギドさんは本当に活動的なんですから」


 活動的……というか、この世界ならば自由があるってだけなんだけどね。幼馴染の所に行かなければ自由なんてなかったしバイトをしたってお金を奪われるだけ。それならば自由って言えるんだろうか。


 何かをするにも資金はいるし今の僕なら全てをクリアしている。活動的というべきか、やりたいことをやれる世界だから、誰にも文句を言われない世界だから動きたいんだよね。そこまで動くことを好んではいなかったし。


「……言ってもそこまでだよ」

「そうかもしれませんね」


 少し見上げればミッチェルがいる。

 ミッチェルの膝枕でゆっくりしている状態でお腹にはシロがいる。少しの間、忘れていた感覚だ。これを感じれば我が家に帰ってきた感が強い。我が家じゃないんだけどね。


 いつもと少し違うのはセイラが仕事の書類製作でいないことくらいかな。時間が経てば来るけど大概は僕の膝で少し寝てからまた仕事に戻っている。これが貴族の仕事かって思えばブラック企業に近いかもしれないね。


「それにしてもイフ様はあんなに美しい方だったとは」

「あれが本当の姿かどうかは分からないけどね。ミッチェルも知っているように元はイフって僕のスキルだし」

「確かにそうかもしれませんがギドさんに見合うために、あのような姿になっただけではありませんか?」


 僕に見合うためか……そう考えれば少しだけ誇らしいね。僕も昔の顔は捨てて新しい顔として生まれ変わっているし。この顔は自分で言うのもなんだけど可愛い系のイケメンだ。元の顔の名残はない。


「まぁ、ブサイクだとしてもイフはイフなんだけどね」

「その言葉が本音であることを願います」

「うーん、これを言ったら評価を上げるためでしょとか言われるんだけどさ。何よりも僕は正確が合うかどうかが重要だと思うんだ。一緒にいて楽しいとかね」

「……それは分かります」


 僕はミッチェルに「ね」と言いながら少し伸びをした。だらける日がもう少しだけ続いてもいいかもしれない。そう考えていた、そんな時だった。


「でも、確かにそうですよね。ギドさんもお年頃なんですから色んなことをしたいですよね」

「何で暖かい目をしているのか分からないけど、確かにそうかもね。興味は尽きないよ」


 人の夢は終わらねぇみたいな感じかな。

 いや、そこまで大きな野望とかがあるわけじゃないんだけどね。ひとつなぎの大秘宝を探す旅に出たいわけじゃないし。でも、あの戦い方は参考になるなぁ。少しだけ真似とかしてみようかな。


「ですから、一緒に外で護衛をするのはどうですか? もちろん、単独行動はさせませんけど」

「いいの?」

「特に大量の魔物が出る場ではありませんから。それに虫系の魔物がでるわけではありませんし」


 そう言えばミッチェルも虫が得意なわけではないからなぁ。そういうところは女性的って言えばいいのかな。そこが可愛いって思ったけど、よく考えてみれば普通にしているだけでミッチェルは可愛いし。それなのに蚕蛾のコスプレ衣装を書いて渡したら作るって言っていたしね。いつ作っているのかは不明だけどさ。寝る暇惜しんでやっているのならさすがに止めるけど、そういう訳ではないそうだし。


「それにイフ様が戦っているというのに休んでもいられませんから」

「そっか」


 ミッチェルの様子はそこから変わることなく昼食を始めるまで休んだままでいた。昼食を終えた後にセイラ達にミッチェルが話を伝えた。少しだけ中身に変化があったとすれば。


「ミッチェルの横を歩くのは初めてですね」

「もったいない限りです」


 イフが一緒にいることだ。

 休ませるために出ると言ったのでミッチェルも少しだけ気を使っている。まぁ、イフいわくスキルだから気を使われなくとも疲れないみたいだ。寝ている僕から魔力を奪うだけで活動していられるらしいし。いつもより魔力を奪うだけって言っているけど、それって僕からしたらえっ……って気分なんだけどね。


「シロもお兄ちゃんの魔力を食べたい」

「後でね」


 首に手をかけておんぶされているシロが耳元でそう言ってきた。声も小さめだからお眠なんだろう。まさか……これで僕を誘うために囁くように話しているわけないよね?


「……今がいいです」

「……ダメです」


 敬語を使って無理やり通そうとしたみたいだけど僕には効かない。いいよって微塵も思ってはいない。一切、心を動かされていない。そう思わなければ首元を差し出してどうぞって言ってしまいそうだ。ってか、普通に心を読んできたし。イフが教えたな……?


「シロはマスターが大好きですね」

「嫌いだったらくっついていないです。ラブです。イフ様の言っていたマスターのためなら死ねるです」

「いい心がけです」

「いや! 全然、良くないね!」


 ちょっと感動しかけたけど死んでもらいたいわけがない。嘘でも僕のために死ねるなんて言われたくはない。ただでさえ死んでもいいなんて昔の僕を見てしまいそうなんだ。誰かのために死ねることを美徳として欲しくはない。


 少しだけ思ったことがある。


「転移か転生か分からないけど、ここに来る前は死んでもいいって、僕が死んでも誰の影響にもならないって思えていた」

「ギドさんが死んだら」

「悲しむんでしょ? 死にたくなるんでしょ? それを僕も理解したんだ。冗談でも僕のために死ねるって言わないで欲しい。少なくとも仲間が死んで一番に辛いのは僕だ。例え僕のためであろうと、例え僕よりも悲しむ気持ちが強いと言われようとも僕は考えを曲げない。僕のために死ねるなら僕のために生きて欲しい」


 ぶっちゃけて言えば漫画とかでこういう言葉はよく見た。あの時は分からなかったし分かろうともしなかったけど、今なら分かる。誰かが死ぬことを悲しまない人はいない。例え昔の僕が死のうとも悲しむ人はいたと思う。それは誰でも同じだ。気がついていないだけで。


 無理に気がつけとは言わない。内心、それを拒もうとする気持ちも僕の中にはあるんだ。本当にワガママだとは思う。僕は死んでも良くて仲間には死ぬことを許さない。クズすぎるね。


「確かにその通りですね」

「ギドさんのために生きますよ。子供を産まなければいけませんから」

「シロをより成長させてもらう為にも死なない。それにお兄ちゃんがいる限りシロは不滅だよ」

「キュイ!」


 三種三様の返答と、いきなり腹に巻きついてきたカマイタチが大きな声で鳴く。僕もカマイタチを返答の代わりに優しく撫でてやった。コロコロと喉を鳴らしてカマイタチはまた眠りについたみたいだけど。


「それならいいよ」


 死んでから生き返って、地獄から天国を味わったからこそ見えた景色もある。少なくとも地球では「この世界は綺麗だった」って言えて死ぬ場ではなかった。だけど今ならば「この世界は綺麗だった」って言って死ねそうだ。死ぬつもりなんてサラサラないけどね。


「と、少し先にオークの群れがいるみたいだね」

「恥ずかしがっていますね」

「恥ずかしがっているマスターを激写です」

「シロも撮る!」


 僕はそう言って少しだけ歩く速度を速めた。

 後ろで喜びながら話すミッチェルとシロが新鮮でくすぐったい。……って、思っていたら直接的にシロが首に髪を擦り付けていた。これがくすぐったい原因か……。


 そんな調子で歩いていたら久しぶりにオークの群れを見つけた。かなり距離を開けて歩いていたから馬車が着く前に殲滅も可能だ。一緒にシロもカマイタチもいるから安心していい。そう思っていた時だった……。


 目の前で数体のオークが爆ぜた。

今週は少し忙しいままなので今週の最後、もしくは土日のどちらかに更新すると思います。本当に申し訳ないです。少しずつですが書いていき4章の中身に触れていければと思います。


新キャラ……次の話で出るか出ないか微妙なところです……。後、主人公の死生観については何も考えなくてもいいと思います。作者の考えからすれば主人公の死生観とは合わない部分も多いので、このような生活をしていればこんな考えを持つのか、というような想像の考えとして見て貰えると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ