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1章14話 街に来た、あたーらしーい街ーにー

 街の外観は大きな壁がそり立っている要塞のようなイメージだった。数カ所に扉がついておりそこにミドやジルとは明らかに雰囲気の違う甲冑の人達がいる。少しだけ怖いように見えるな。それに腰に差すものは剣ではなくレイピアや杖だ。切るよりも刺すことを重視している武器だね。


 なんとなく理解はしやすい。あのレイピアや杖は魔法威力を高める能力を付与されている。つまりは近接重視のミドやジルと違うのは当たり前のことだ。


 武器なぁ、サブとして片手剣は絶対に欲しい。アイシクルソードはそもそも剣に付与する目的で作成したから、僕個人の見解としては折れやすい。セイラに頼んだらいい感じの武器をくれないかな。……女性に貢いでもらうヒモか何かかな。


「どうかしましたか?」

「……なんでもないよ」


 やっぱり、男が養わないと。

 差別がどうとかで改正されてきたとはいえ世間体的にもよろしくないし、この世界なら差別とか全然あるだろうしね。


 差別があるから僕は魔法国付近に飛んだくらいだから。


 冒険するのもいいけど安定したお金が手に入るまでは違うことにも手を出してみるか? テンプレを持っているとはいってもサクサク冒険者ランクが上がるとは思えないし。


 ……そこは要相談っていうことで。別に僕の頭が限界を迎えたわけではないんだからね! 頭の容量がBIT単位なわけではないからね!


 門番の視線がミドやジルに突き刺さるのは理由があるんだろうな。……いや、魔法国少数騎士というのが関係しているのか。あまり良い目では見られないらしいし。


 次いで視線が集まるのは僕達だ。

 おかしいな? セイラがいるのになんでだろう。普通は貴族であるセイラの方に視線が集中しやすいと思うんだが。


 違う! 逆だ!

「貴族の近くにいる見たことないこいつらはなんだ?」っていう目だ!


 あまりいい気持ちはしないなぁ。なんか値踏みされている気分だし。


「……あまり気にしないでください。魔法国の魔法騎士になれたものは自尊心が強いものが多いので」


 小声でジルにそう言われた。

 確かにイフからも魔法騎士の難易度の高さとかも聞いたしなぁ。すごく納得出来る。


 分かりやすく考えるならば中国の科挙という制度があったが、それより少しだけ楽っていうレベルだ。元の世界の日本での公務員試験とかとは比べ物にならないらしい。


 そりゃ驕るもの少なからずですわ。

 にしても、魔法騎士というレベルの高い職業に就いたのに門兵って……。あまり位は高くない、もしくは入りたてなのかな。


「……そんなにあの視線が嫌いなら馬車に入っていてもいいかしら。私もそんなに好きではないから分からなくはないですわ」

「……ありがとうございます。すいませんがそうさせてもらいます」


 体裁上、敬語を使った。

 本当に力を測るとかの値踏みじゃなくて、どのように利用出来るかみたいな値踏みは嫌だな。思い出したくもない親を思い出すし。


 ミドやジルは最初、値踏みをしてくるような目をしていたけど、それは力を測ってセイラに手を出さないか考えていただけだろう。話せば簡単な人格くらいは理解するさ。


 でも、あいつらは他人を犠牲にして自分の立場を上にしようとするタイプだ。下手をすれば僕を手駒や奴隷にすることすら厭わないかもね。


 これは経験上のことだ。

 何度か脅し文句で「お前みたいな価値のないやつは臓器でも売って金を稼げ」とか小学生の身の前で言われたしね。その時の父親に似た目をしていた。

 後から知ったけど冗談ではなかったらしいよ。あいつの職場の良識のある人から逃げることをオススメされるくらいだったし。ちなみにその人は幼稚園からの幼馴染だったりする。そんでさ、本当に臓器売買について調べていたみたい。……日本で出来るわけもないのに。本当に知能は猿と大差ないと思うなぁ。


 あーあ、嫌なことを思い出したなぁ。今となってはもう会わなくてもいい存在だから気分としては楽だし。


 ただ良識のある人、まあオジさんって呼んでいる人には迷惑をかけたな。高校受験だってオジさんがお金を出してくれたし。……幼馴染の父親だからって優しすぎないか?


 あっ、幼馴染が女でイチャコラとかはないです。普通にあいつは男でサッカー部の陽キャです。……リア充爆発しろ……。


 その後は馬車に乗ったままで中へと入っていった。身分証の提示が必要だったみたいだけどそこはセイラが保証人になってくれたみたい。外へ出てもよかったけど身分証の観点から中にいたままの方がありがたいって。……頭が上がらないな。すごく気遣われているよ。


「大丈夫かしら?」


 時折、僕の顔を見てそんなことを聞いてきてくれたが、存外気分は悪くない。多分、家族のことを思い出して嫌な顔の一つでもしていたのだろう。


 だが実際は綺麗な女性二人を隣に侍らせて、心配までしてもらっているというのにどうすれば気分が悪くなるのか。

 ミッチェルもセイラも僕の顔を見て笑いかけてくれるだけでリフレッシュ出来るよ。だからセイラ、そして同じく心配してくれているミッチェルには「大丈夫」とだけ返しておく。


 再度馬車が走り始めて数分後、止まり馬の嘶きが聞こえる。外へは出ていないから少しだけ楽しみだったりする。初めての街とかドキドキするだろ?


 そして外に下ろされてすぐ、感想を述べようとした声が肺に戻っていく。


 なんだ、あの豪邸は……。ハリウッドセレブとかが持つ数百、数千億の別荘なみに大きいぞ。


「……壮観ですね」

「ああ、テレビ以外では……」


 そこまで言って気づく。

 テレビとか言ったら勇者とか勘ぐられてしまう。危ない危ない……。


「どうかしましたか?」

「あー、いや、外から眺めるのは何度もあったけど入るのは初めてだなって」

「そうですよね。……私もドキドキしています」


 ひょっこりと馬車から顔を出しながら笑う。

 ミッチェルの手を取り馬車から降ろしてセイラが降りるのを待った。ジルが大きなポルシェとかの車から降ろすように、上品にセイラを降ろした後、僕達もその後ろを続く。


 大きな家に合った大きな扉がジルによって開けられていく。ギギギと何か価値を感じさせるような音とともに姿を現したものは長い長い廊下だった。


 最近これと似たようなものを見た。

 昨夜、馬車で見せられたセイラの空間魔法の廊下と一緒だ。ただ違うことがあるとすれば魔力の気配すらないことだろう。つまりはこれは魔法でも何でもなく現実に先が見えないほどの廊下があるということ。……どんだけお金持ちなんだよ。


「……あほ面はそこまでにするかしら。お父様と会うということ自体、礼儀作法があるとして見られるから注意して欲しいですわ」


 口では軽口を叩いているが見ていれば分かる。セイラもそれなりに緊張しているのだ。その理由は分からないけど親と会うことが少ないとかではないよね?


 ……会わなきゃいけないだろうし覚悟を決めよう。もうなにがあろうと驚かないぞ。


「やあ、こんにちは」


 後ろから声が聞こえた。

 そして後ろを向いてすぐに顔をしかめる。


「やあやあ、僕の名前はセト・グリフ。君の反応嫌いじゃなかったよ」

「……お父様、何度もお爺様に言われていたはずですわ。お客様を驚かすことは辞めておきなさい、と」

「でもねぇ、こういう時にどのような反応をするのか、それでその人のひととなりを読むことが出来るわけだしねぇ」


 そう茶色の少年のように見える男は言った。

 大人にしては小さすぎる体躯と、高い声質、短く纏まった髪型などから魔法国の重鎮とはどうしても思えない。というか、ミッチェルよりも、セイラよりも小さいんじゃないか?


「少し酷いことを考えられた気がするなぁ。まあ、よくある事か」


 分かるのかよ! 女性の勘ならぬ男性の勘か?

 うわ、なんか俗物っぽい。


「それよりも君は誰かな? まさか……セイラが男性を連れてくるということは……」

「それは今のところありませんわ。お父様が一番理解しているはずかしら」

「確かにね。……本当に申し訳ないな。僕としても不本意極まりないんだけどね。……あの害虫達を止めるにはそうするしかないんだろう」


 一瞬だったがセトの雰囲気が変化した。

 何か黒いものを見つめるような悲しそうな瞳。それのためにセイラは何かをしなければいけないのだろう。二人の嫌なことをしなければいけないことって何なのかは分からないが、あまり喜ばしいことではないんだろうな。


「それで、君は?」

「……僕はギドといいます。こちらは仲間のミッチェルです」


 セイラに渡された長めのスカートの裾を持ち頭を下げるミッチェル。僕はそれに次ぐように頭を下げた。


「ふぅん、まあ、いいや。あそこの部屋に行っておいて。用事を済ませたら詳しく話を聞くから」


 いや、どこを指しているのかよく分からないです。……長い廊下を先ですよね? つまりは行き止まりまで歩いて行けと?


 って、先に行かないで! なんでそんなに適応出来るの?


 ミッチェルに手を取られながら奥へと向かう。さすがに十分とかかるほどの長さはなかったけど、それでも数分はかかるほどの長さで格差社会なんだな、と思うしかなかった。


 途中途中で本物のメイドや執事を見たが品が高い。歩きという一つをとってもランウェイを歩くようにゆっくりと華麗に歩いている。……僕じゃ絶対に出来ないしやりたくないな。


 それと部屋の数も尋常ではない。客間などを含めたとしても二十はあるんじゃないだろうか。


 部屋に入ってすぐに席に座ったのだがそれもとても高価なものなのだろう。一見すれば木製の椅子にクッションが置かれているオーソドックスなものなんだけど。いや、絶対高い。なんだ、このフカフカ感は……。これは僕をダメにする椅子じゃないか。このまま寝れるほどの心地良さだぞ……。


 お金貯めたら絶対に買おう。


「そういえばここの屋敷って広いね」

「……気づいていたのかしら?」


 よく分からないけど「うん」とだけ返してみた。少しだけ眠くなっているからそれが原因だと思う。頭が働かないんだ……。


「ここの家にも空間魔法が付与されているのよ。お爺様の力は健在、だからこそ手を出すことが出来ない輩も多いのが現状かしら」


 そこまで分かっていた訳ではないのだが……まあ、なにか魔法がかかっているんだろうな、とは薄々思っていた。だって外見より廊下が長そうなんだよ? 普通は疑問に思うよね?


「こんな家に住んでいて手を出すやつなんているのか?」

「少なくともいるかしら。そう、同じ貴族相手なら手を出してくることもあるのよ」


 姑と嫁の関係性みたいなものか?

 小競り合いというか、それの規模が大きいバージョンかな。比較対象が現実的すぎてよく分からないかもしれないけど。


 とりあえず貴族同士の抗争はよくあると。そこはやっぱりテンプレなんだなぁ。貴族にはなりたくないや。


 それにこんなに大きな家の貴族に手を出すということは……。


「相手は公爵か何かかな」

「……そこら辺にしておくかしら。あまり他言するべき話ではないのよ」


 そりゃそうか。

 うーん、でもさ、それって悪手だよね。さっきの話といい否定の仕方といい、その相手がセイラにしか対処の出来ない相手ってことだろ? 馬鹿な僕でもさすがに勘づくよ。


 その後は大したことのない話を続けた。屋敷に帰って来る前のセイラとは似ても似つかわしくない憂いげな顔。どうしても思うところがあった。だけど言えない。僕とセイラは友人であり親しい仲ではないのだから。


 その後はたわいもない話をしながらセトさんが来るのを待った。

予備の底がつきました……。

一週間以内の投稿を目安に出して行ければな、と思っています。一応、メインは次回からです。


後、街までが1章と言っていましたが少し長引かせます。セトとの話が終わってから2章に入ろうと思います。


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