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4章16話 ダンジョンは馬鹿です

少し短めです。

 姿を現したのは紫と黒の縞模様が特徴的な大型の蜘蛛だった。ステータスは二万ほど。強いか弱いかで言えば圧倒的にカブトに劣っている。それでも僕のステータスよりも高いんだけどね。


「デッドタランチュラ、Sランクの魔物です」

「行くよ!」


 地面を蹴り距離を詰める。カブトの時のようにダメージを受ける気なんてない。ドラグノフを出して構える。斬撃で攻撃は出来ないけど心器ならではの戦い方はいくらでも可能だ。


「ハウンドハウル!」


 これでデッドタランチュラの注目は僕に集中される。MPに関しては目の前のデッドタランチュラに引けを取らないからね。十分に驚異だと感じるはずだ。そのままの流れで大きく太い足を殴打させる。遠目から見れば大きく見えなかったけど僕の二倍はあるかな。でも、それだけだ。


「これだったらいけるのだー!」

「ピギャァァァ!」


 甲高い悲鳴、虫系の魔物は高い鳴き声をあげるのが普通みたいだ。アミの攻撃も早かったからアクセラレータをかけられたのだろう。何で僕にはかけてくれないのか分からないけど。


 足が二本落とされてなお、デッドタランチュラのヘイトは僕に向いている。まぁ、当たり前と言えば当たり前か。ハウンドハウルの効果もあるしダメージ量は明らかに僕の方が高い。斬撃よりも打撃の方が高いのはどうかと思うけど。それに……。


「さすがに回復は出来るか」


 最悪とは思わない。カブトと戦っていなかったら少しだけ面倒だとは思うかもしれないけどね。だから少しだけやり方を変えて戦おうと思う。


「アクセラレータ」


 ここぞと言う時にアクセラレータをかけてくるイフはさすがだね。……ってか、心が読まれているんだっけか。そりゃあヘイト稼ぎをする人にアクセラレータは要らないよね。


 速度さえ上がればやりたい放題だよ。


『アイシクルウォール!』


 イルルとウルルの氷の壁でデッドタランチュラが逃げ場を失った。これもイフの命令のもとか、はたまた……いや、どうでもいい。どちらにせよ動けるかどうかが一番の問題だ。その点で言えば二人はすごい。


「呪付与……覚悟は出来ているかな?」


 心器は僕の心と言ってもいい。

 僕自体が呪魔法を得意としているのに付与出来ないのもおかしな話だ。魔法の得意不得意もその人の心を移しているらしいから僕の心は闇に染っているのかもしれないね。ただ呪魔法が使えるって言うことはこういうことも可能だってことだ。


 背後に回り銃弾を撃ち込む。これ自体には呪魔法を組み込めていない。火魔法の時は玉に組み込められていたけど難易度が桁違いに難しくて無理だった。代わりに銃弾は火炎弾だし当てた後の怯みを待っているだけだ。


「ここだ!」


 心器ドラグノフに付与された呪魔法が少しずつデッドタランチュラに染み込んでいく。紫色のモヤが少しずつ薄くなっているのを見ればそう捉えてもおかしくはない。事実、付与した呪魔法の効力が薄れているしね。


 十秒ほど殴打後にドラグノフを当てたままにした。火炎弾の効果もあってすぐに動こうとは出来ないみたいだ。僕もここまで効果があるとは思っていなかった。デッドタランチュラに火魔法は効果的みたいだね。


 それならそうといくらでもやり方がある。

 現に呪魔法も効いてきて動けていないみたいだし、火炎弾でのダメージの蓄積もある。一応はイフにも許可を得てアミとアイリを下がらせた。


「アクセラレータ」

「ファイアフィールド!」

『燃やせ! ファイアフィールド!』


 僕の炎が地面の上を走り火力をイルルとウルルの二人が増加させる。ここからは実験でしかない。見たかったって言うこともあるけどラノベとかである攻撃方法が本当に出来るのか、みたいな理由もあるかな。攻撃方法になるのなら全然使えるし。


「ウィンド」

「任せるよ!」


 小麦粉を数十キロはばらまいてイフの風に乗せた。まだアクセラレータで速度は速いから撤退までの時間はあるし。その間に五人の元へ戻ってイルルとウルルの結界の中に入り込んだ。実験ではすごいことになりそうだけど果たしてどうかな……?


 瞬間、大きな爆発が響いた。

 僕も驚くほどの威力で知っている僕ですら驚愕を隠せなかったのに、他の四人が驚かないわけもない。全員が口をあんぐりと開けていてアミに至っては僕に抱きついていた。うん、役得役得。


「……これって何ですか……?」

「あー、これはね粉塵爆発って言うんだけど……詳しくはイフから聞いた方がいいかな」


 アイリから聞かれたのでイフに流した。

 よくよく考えてみれば動画とかでも吹き上げた粉が火で燃えて爆発するだけで、僕自身が詳しい話を知っているわけではない。小麦粉とか粉砂糖とかなら出来ることは知っているけどね。今ばらまいたのは安価な純度の低い小麦粉だから考えずに使えた。砂糖は高いよ。一キロ金貨で買わなきゃいけないし。


「えっと……微細な粉塵は体積に対する表面積の占める割合が大きいらしいです。そのため空気中で周りに十分な酸素が存在すれば、燃焼反応に敏感な状態になり、火気があれば爆発的に燃焼する、というのが某サイトの説明だったのですが引っ張って適当に風魔法で酸素を注いだらそうなりました。案外、簡単なんですよ」

「いや、それは違うと思う」


 多分だけど起こる振り幅っていうのは短いのにイフはそれを簡単にやっただけだと思う。僕だったら出来ないだろうね。ってか、酸素が必要だとか知らなかったんだけど……。某サイトの説明ってことは持っている知識は割と僕達と変わらないんじゃないのか?


「どちらにせよ、成功してよかったです」

「……そうだね。イルルとウルルは気にしない方がいいと思うよ」


 静かに自信をなくしていた二人の頭を撫でて優しく宥めた。イフは少し分からなさそうな顔をしていたのでテンさんを少し思い出してしまう。あの人も強さに関してはイフみたいな反応だったし……。


 そこで視線を変える。

 小さいながらにも甲高い鳴き声が僕の耳に届いたからだ。デッドタランチュラは倒れていると確信しているから新しい敵だ。そう思って見てみたけど目に映ったのは燃えている小さな子蜘蛛達だった。


 数は多い、数百はいそう。それにステータスが四千が基本だから数の暴力で負けていた可能性も高い。……現実は全匹とも燃えていてバタバタ倒れていくだけだし。


「……こんな習性でもあったの?」

「説明を忘れていました……。ま、まぁ、最後は私が火魔法で焼却しようとしていたので必要もなかったんですけどね!」

「……そう……」

「すいませんでした!」


 イキってみせたイフにマジな対応をしてみたら思いの外、効果は抜群だった。怒っていないから別にいいんだけどね。色んなことが起きすぎたから説明を忘れるなんて普通にあるだろうし。


「そう言って貰えると助かります……」

「うん、それで説明をお願い」

「はい、親蜘蛛が死ぬ時に子供を産むのが性質としてあります。共食いも習性としてあるのでもし生きていたとしても食い合いで終わっていたと思います。またデッドタランチュラは火魔法に極端に弱いです。子蜘蛛はもっとで火に触れるだけで致死的ですね。そのために強いながらにして火さえ使えばAランクでも倒せるのでSSランクには届きません」


 なるほど……適当に粉塵爆発をしたいとか思ってやった行いが最良とはね。普通に笑いがこみ上げてしまう。なんでこんな魔物をボスに選んだんだろうね。ダンジョンに意識があるからカブトを作ったろうに、最後のボスがカブト戦前に使った火魔法に極端に弱いなんて。


「アホすぎる……」


 僕のそんな一言と共に子蜘蛛は全滅していた。残ったのは子蜘蛛の素材……ではなく親蜘蛛であったデッドタランチュラの素材のみだった。どうやら子蜘蛛も親蜘蛛の一部ということで素材は落ちないらしい。次はダンジョン外で会いたいものだ。


 ドロップしたのは糸と毒牙、そして八本の足だった。毒牙はかなりの毒性があったみたいだけど僕には毒は効かないし誰も攻撃を受けていない。不幸中の幸いと言ってもいいかもしれないね。まぁ、この程度なら即死に近いと言っても数分はかかるし回復魔法で何とか出来る。意味合い的には苦しむ人がいなくてよかったって感じかな。


 残すところはダンジョンコアを取るだけだしミッチェルの顔を久しぶりに見れそうだ。そっと胸を撫で下ろして小さく伸びをした。どうか、もうテンプレートなことは起こりませんように。例えばダンジョン崩壊とかね。

某サイト(wiki調べ)です。


予定としては次回でダンジョン攻略編は終わりそうな気がします。その後は本編に入りそうですね。その中で新しい武器作成をするかもしれないです。案外、しないで忘れてしまいそうですが(笑)。


明日は私用のため投稿出来ないかもしれないです。申し訳ありません。未だに少しだけ仕事が忙しいもので……(汗)。その代わりですが明後日は確実に投稿出来ると思います。出来そうならば明日にでも投稿をしたいですが……。

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