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1章13話 すごいね(小並感)

 朝日が目に当たり薄らと気持ち悪さを感じさせる。とても久しぶりの朝日だ。本当に夜の方が絶好調だから朝日は来なくてもいいよ。……農家のおじさんが困るから前言撤回で。日光がなければ農家の人が困っちゃうよ。


 ごめんな、どこかの農家さん達。野菜や米は正義だ! だから今まで通り僕に売ってくれよな!


「ギド……さぁん……」


 少し体を起こしただけでそんなことを呟くミッチェル。すごくドキドキはするが昨日の記憶が残っているしなぁ。例えなんと言われようと手を出していないことは理解している。


「そこ……気持ちいいですぅ……」


 ……理解している。

 確か昨夜はセイラに何をしたのかを聞かれて怒られて脱ぎそうになったミッチェルを止めただけだ。うん、手は出していないぞ。


 それで代わりに一緒に寝ることを提案されて……ミッチェルの寝息が聞こえてから僕も寝たから手を出す暇はないはず。


「……いい加減にしないと怒るよ?」


 あっ、少しだけむくれた。

 やっぱり起きてるじゃん。わざと言ったのね、わざと。


「痛いですー」

「そんなことを言う子に育てた覚えはありませんよ!」


 両頬を軽く抓って左右に伸ばす。

 若いっていいね。ほっぺたが二倍くらいに伸びたよ。


「痛っ」

「ギドさん! 仕返しです!」


 なんでだ! なんで僕の頬も抓られるんだ!

 って、おい! 掴んで押し倒そうとするな! 僕はもう起きてミドの手伝いを……


「……朝からお元気ですわね……どうぞ、ごゆっくり」

「へっ?」


 えっ? セイラがいた? 見間違いだよね? マジで?


 勘違いするところは……ミッチェルの衣服がはだけている。……僕が押し倒されている。……ミッチェルの顔がとても赤い。……頬を抓りあってイチャイチャしているように見える。……あれ?


「違うんだ……違うんだ!」

「ふふふ」


 ミッチェルの笑い声だけが響く。

 無性にイラッときたけど我慢だ我慢。全てがミッチェルの思い通りになると思うなよ。僕は心の底でミッチェルに復讐することを誓っておく。


「……って! どうしたんですか!」

「えっ? 何が?」

「は・だ・か! です!」


 ……ああ、今、上を脱いだからかな。


 でもさ、指と指の間から僕の体を見ておいてそんなこと言っても説得力がないと思うなぁ。……ちょっとだけ虐めてみるか。


「僕の体は……見たくないのかな?」


 細いミッチェルの指と僕の指を絡めてそんなことを言ってみる。さあ、どんな反応を示すかな。


 ……いや、顔を赤くしないで。こっちまで恥ずかしくなるからさ。


「見たいです……」


 あー、すいません! 虐めすぎました!


 少しだけ涙目のミッチェルに謝ってから服を急ぎ着替える。昨日セイラから配給された服だけど、持ち主が持ち主なだけにセンスがいい。


 最悪な展開である、貴族の好みは金色の派手派手衣服というテンプレは避けられたしね。まあ、メイド服を手渡す時点でその点は薄かったけどさ。


 元々、女性らしい体つきだった僕の肉体は男らしい筋肉質なものへと変わっていた。つまりはシャツというか、肌着を着た瞬間にピチピチなのだ。……これが萌えなのかな?


 上着は……真っ黒いローブだね。シャツの上に着るものは黒と白のボーダー柄のワイシャツで少しだけ大きい。その上からだから不自然かなと思ったけど、案外悪くないかも。


 ……ただ単に僕の厨二心がくすぐられただけかもね。


「……どう?」

「カッコイイです! さっきみたいな意地悪をしてこなかったら抱きついていました!」

「それは正しい判断をしたんだね、僕は」

「どういうことですか!」


 いや、今、抱きつかれたらめんどくさいでしょ。……役得とか思わないですよ、やだなぁ。


「早く出よう。セイラの誤解も解かないといけないしね」

「ぶー、なんかはぐらかされた気がします。それに! 勘違いさせたままでいいです!」


 はぐらかされた気じゃなくてはぐらかしたんだよ。後、勘違いさせたままだと僕が辛いから誤解は解かないと。


 別に僕とミッチェルは付き合っているわけじゃないんだから。あっ、それなら裸を見せる理由はないか。なんだかんだ言って心を許してるんだろうな。


「……ミッチェルのことは大好きだよ。だから普通に関係を築いていけばいいと思う。誤解を与えて下手に敵を増やすのも考えものだからね」

「……それならいいです。その代わり! 今日からもずっと一緒に寝ますよ!」

「宿で二人部屋があればね」


 首を縦に振る。

 うん、聞き分けがいいのはありがたいな。それに一緒に寝ること自体はやぶさかじゃないんだよ。


 後、イフ。アイリ達に今日も頑張れって送っておいてくれ。


【了解しました。そういえば、もうちょっとで進化出来そうなので待っていてほしいと昨晩来てましたよ】


 あら、早いことで。

 なんで昨日言ってくれなかったの?


【昨晩はお楽しみだったようですね】


 ……そのネタはやらなくていいから。

 まあ、アイリ達の期待や頑張りに添えるよう、僕も頑張らないとね。最後にイフ?


【なんですか?】


 僕ってミッチェルに手を出していないよね?


【分かりませんよ?】


 イフはどうやら悪戯っ子のようです。


 嬉しそうなミッチェルの手を取り外へ出る。手を繋ぐこと自体は洞窟でもやっていたから慣れているけど、恥ずかしいものは恥ずかしいな。


 ちなみにミッチェルは洞窟で暮らしていたせいで夜目を獲得している。夜でも猫とかと一緒で前が見えるってことさ、すごいね!


 僕は種族柄持っているけど人族は取りづらいらしいから、単純にミッチェルの才能は計り知れない。


「……またイチャイチャしてますわ……」

「セイラ、それは勘違いです」

「そうですよ。イチャイチャしたり相思相愛なのは認めますけど、ギドさんとはそういう関係にはなっていません」

「……イチャイチャしていることには変わりないですわ……。しかも正当化されましたわ……」


 正当化、確かにその通りかもね。

 でも、イチャイチャはしたいから応援するぞ! ミッチェル!


「なぜかギドの目も輝いていますわ! 私が敵みたいになっていますわ!」

「敵じゃありませんよ。ギドさんと私の関係を傍から見ている誰かです」

「酷いですわ! 酷いことを言っているのに気づいていませんわ!」


 わかった。セイラっていじられキャラなんだな。なんとなくいじっていてもしっくりくるし、それにそっちの方が可愛い。


「あっ、そうだ。セイラ?」

「どうかしましたか?」

「その穴を掘りそうな髪型よりも下ろした方が可愛いと思いますよ。素がいいのに髪型が似合っていないせいで残念な感じに見えます」

「……違う意味で酷い人ですわ……。でも、嬉しいですわ」


 俯く姿を見る限り本当に可愛い子なんだなと思う。目は少しだけ吊り目だけど可愛らしさを消すほどの効力はないし、逆にそのアンバランスさが可愛らしさを強調している。


 極論、抱きしめたくなるほどの可愛さです。


 セイラはすごく喜んでいるな。可愛いとか言われ慣れていないのかな? それとも下げて上げるというコンボが上手く決まったとか。……フルコンボだドン、みたいな?


 でも、好感度が足りてなさそうだなぁ。なんとなく今までの感覚から言えば百パーセントのうちの五十くらい? 友達と恋人の間くらいかな。


「……早く出る準備をしましょう。街に着いたらやらなければいけないことが沢山ありますよ?」


 ミッチェルが手を取って食事の並ぶ場所に連れていく。


 自分がイチャイチャするのはいいけど他人とされるのは嫌なのかな。……そこもまた可愛いなぁ。


 というか、準備の手伝いとか出来なかったな。後で謝っておこう。


 その後、簡単な食事を終えてセイラとミッチェルを馬車に戻しておいた。気まずい雰囲気はなかったかな。


 そこから馬車を従え三時間ほど歩いただろうか。実際、ステータスが高くなっているからか疲れはない。二日間ぶっ続けで歩くよ、と言われても出来そうな気分だ。


 そんな中でジルに話しかけられた。


「そういえばなんで私にはさんを付けるんですか?」


 そう聞かれたけどさ。大人のお姉さん、もといクール美女には何となく、さん付けしてしまう気がするんだけどな。


 色っぽいとか美しいとかは抜きにしてさ。年上には敬語、当たり前だよね。……心の中では別に敬語とか使わないけど。


「そうだな。確かに心の距離を感じるかもしれない」

「その通りです! 昨日、私に手を取られたままで馬車の中を歩いたじゃないですか!」

「……あー」


 わざとだったのかな。

 どちらにせよ、使わないなら使わないでいいんだけど。


「なっ、まさか……セイラ様のみならずジルにまで手を出したというのか……」


 ほらね、変な勘違いをされる。

 めんどくさいなぁ。というか、僕は働かないでいていいなら休んでいたいしなぁ。週休五日制を所望する僕にとって、セイラとジルを恋人にすれば休んでいられるならそうしますとも。


 すごく不純な動機……そんなことをしたら自分を呪うわ。最低でも愛のある恋をしなくてはいけないしね。


 もう無理、ミッチェルに養ってもらう……。

 と、冗談は置いておいて。


「手は出していないですよ。逆にジルさんから手を出してきましたし」

「……確かにその通りですね」

「このリア充野郎がぁぁぁ」


 ミドの声が森に反響する。

 あーあ、こんなに大きい声を上げたら……。


「グルァァァ」


 出ました、雑魚魔物であるゴブリン。

 数は多いけど弱くてゴキブリみたいな存在。


「うるせぇぇぇ」


 ミドのタックルが出てきたゴブリン達に火を吹く。痛そうですねー。


 結局、街に着くまでの一時間程度。

 ミドの負のオーラに寄ってきたゴブリン達はタックルによって沈んでいた。その間にジルを呼び捨てにすることも決定。もう、どうとでもなれ。

いつから街に入ると錯覚していた?

(いとも容易く流される嘘の情報)


はい、すいませんでした。

次回から本当に街に入ります。


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