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4章2話 遊園地感覚です

 多分、メールもミッチェルに送ったから大丈夫なはずだ。一人だったら怒られてしまいそうだけどジルと一緒だしね。ってか、普通はそっちの方が心配されそうなんだけど。どこかズレてしまいそうだよね。


「今ならどのくらいのランクの魔物を倒せそうなの?」


 一応、強くなった自覚があるのなら自分でこれだけは倒せるっていうレベルがあるはずだしね。最初は相手が倒せると思える相手を探知して戦ってもらうだけ。それを見て余裕があるのなら、それの一段階上の魔物と戦わせてみればいいし。なんなら無理やりレベルを上げさせてもいいかな。


 面と向かっては言えないけどミドとジルは普通の人より少しだけ成長率が高いだけだ。僕達と張り合うのならばせめて鉄の処女ほどの成長率はいる。最低でもBだろうね。それだけCとSの差は大きい。


 その代わりと言えばいいのか、二人ともレベルが極端に上がりやすいみたいだ。僕が大器晩成型なら二人は早熟型……もっと言うのならレベルが最高になっていれば僕も手助けがしやすい。転生みたいなレベルを一に戻す代わりに強くなる方法もあるからね。どちらにせよ戦うことでしか強くはなれない。そういう世界に僕達はいるってことだ。


「ミドくらいなら圧勝出来ますよ!」

「それならミドを連れてくればよさそうだね。オーガとかかな?」

「すいませんでした! それは調子に乗りすぎました! ご勘弁を!」


 ミドの筋肉からオーガを想像したのにジルには倒せないって言われた。いや、ステータスから言えば出来なくはなさそうなんだけど。まぁ、あるとすれば武器の低さかな。普通の冒険者からすれば良質だけど僕からすれば底辺に近いし。一番良いのはジルが心器を解放してくれることだけど……まぁ、無理だね。そう簡単に出せるのなら才能のあるロイスが解放しているはずだ。


 これも研究しないとなぁ。模擬戦で獲得したエミとリリの心器。その……ギドニルとレイピア……だね……。放出理由が分かれば全員が出せるようになるんだよなぁ。それに僕自身が使って気が付いたけど心器は案外、進化する理由も難しくはなさそうだ。そのうちミッチェルのも進化すると思う。


 あまり期待せずに初歩的な、敵を倒すことに専念しよう。オーガが無理なら……その一段階下の魔物だよね。


「オークとかは?」

「それなら普段から倒しているので大丈夫です!」

「まぁ、危なくなれば助けるから安心してね。悪いところは指摘するから適度に直していけばいいし」

「はっ、はい!」


 少し頬が赤くなっていたのは何となく分かる。ジルも乙女心が疼いたみたいなものだろうね。助けるって言う部分で顔を上げていたし。助ける、救う、守るみたいな変換かな。感情に疎くない僕だからこそ分かることだね。


 近場のオークは……さすがにいるよね。この程度もいないのなら魔法国まで転移して戦わなきゃいけなかったし。案外、群れをなしている個体と二、三体のグループに分かれている個体がいるから、これが王国での生き残る術なのかもしれない。


 群れをわざわざ狙う必要も無いよね。それなら二、三体のグループから狩るべきだ。群れの方にはオークだけじゃなくてオークキングがいるところもある。オークキングが多めなのも生き残る術か……。それなのにオーククィーンを見ないのは本当に稀な存在なんだろうなぁ。僕も見た事がないし。まずもってメスのオークすら見かけないからなぁ。


 とりあえず一番の近場にいたグループの元まで向かった。オークだから歩くのも遅かったのですぐに追いついた。僕自身がこの戦いでどうしようか、と考えている最中にいきなりジルが走り出す。


「ふっ!」


 鋼の剣をレイピアのように突き出して一番に気が緩んでいたオークを倒した。脳天を貫くように抜いていたのでジルの正確さが目に見えて分かる。それに勘も鋭いね。その油断していたオークこそ、この三体いた中で一番にステータスの高いオークだった。


 素直に拍手をしていたがジルは顔色一つ変えずに鋼の剣を横に振り、刺さっていたオークの頭を真っ二つにしながら鋼の剣を引き抜いていた。少しだけスプラッタ的で慣れていなかったら吐きそうになる。


 後の二体がジルに気がついて素手で殴りかかるけど意味が無い。


「ウォーターボール」


 小さな水球が片方のオークの顔にかかって足が止まる。その間に殴りかかってきたオークの素手を鋼の剣の刃で受け止めて、オークの素手から出血を起こさせた。さすがに本能からヤバいと感じたのか下がろうとするが、そこが最大の隙になっている。


「ふっ!」


 オークの太い腹ごと何とか真っ二つにして体制を整え直していた。気を抜いた様子もなさそうだね。さすがに貴族の護衛をするだけあって自分の立場をよく理解しているみたいだ。気を抜けば負けることがあることを理解しているんだね。


 ジルが構え直した時には水球が顔にかかったオークは手で水を払っていた時だった。僕やミッチェルの速度があればチャンスとして切りかかるけど、ジルでは出来ないからか攻撃はしない。代わりに先程のウォーターボールとは比べ物にならないほどの魔力を練って詠唱を呟いていた。


「ウィンドカッター!」


 旋風のようなものがいくつも出てオークの体に小さな傷を作る。ただそれだけでもオークからすればかなりの攻撃に見えているはずだ。僕なら勝手に治癒するし服に傷がつくのが嫌としか思えなさそうだけど。


 こういう風魔法を見るとカマイタチを思い出すなぁ。未だに寝ているけど。それに名前も決まらなかったんだよなぁ。個人的にはカマイタチのカとイを取って、後にキャノンとか付けたらカッコよさそうに思えたんだけど。


【まぁ、カマイタチがメスなのでカッコイイ名前よりも可愛い方がいいですもんね】


 そうなんだよねぇ……。まぁ、名付けは僕よりもミッチェルの方がセンスが良さそうだし後で付けよう。……って、その話は別に関係がないか。少し目を逸らしている時間にジルはオークを倒し切っていた。やっぱりオークじゃ弱すぎたよね。今ならカマイタチと一緒に戦えそうだし群れを狩りに行こうかなぁ。


 オークを僕が回収しておいてカマイタチを肩に出させてあげた。寝ていたけど外に出した瞬間に起きたみたい。目を手でゴシゴシしながら「キューン」と鳴いているだけだ。普通に可愛い。顔にスリスリしてくるんだぜ?


「なっ……負けました……」

「いや、ごめん。見ていたから安心して。悪いところはなかったしカッコよかったよ」

「……そうじゃないですよ……」


 あー、ジルが僕を見た時にカマイタチを撫でていたから見ていないって思われたみたい。本当に失敗したなぁ。後で出してあげればよかった……。


「そこまで強かったら一緒にオークの群れを倒せそうだなって思ったんだ。それでカマイタチを出してあげただけだよ」

「……いやいやいや! 無理ですって!」


 少し考えた後で首をブンブンと横に振る。

 そうだろうなぁ。僕も自分がジルの立場なら無理だって思うだろうし。ジルの全ステータスは九百ほど。微妙な所なんだよね。倒そうと思っている群れのオークキングのステータスは三千ほどでキングの割には弱いんだけど。……ジルからすればオークナイトとどっこいどっこいで戦えるかなぁ、ってレベルだ。


「まぁ、僕もこの子もいるから安心していいよ。ジルのことを庇いながらでも倒せるし強い敵を倒さないと急激に強くなるって言うのも無理だよ」

「強くはなりたいですし守られたいですけど命がかかっているので無理です。ギド様なら簡単に倒せるかもしれませんがオークの上位種が現れれば私なんて一撃です」

「でも、守られたいんでしょ? ずっと僕の隣にいるだけでもいいんだから。僕の活躍を近くで見るだけでもいいんだよ?」


 ごめんなさい、本当は僕が戦いたいだけなんです……。カマイタチがどれだけ強いのかも見られるし。傷も完治しているから本気で戦っている姿も見られるしね。こんなチャンスは滅多にない。


 それに明日からはもっと外に出れなくなりそうだから馬車内で武器を作るかもしれないからなぁ。もしくは転移して家で作るっていう手もある。何なら珍しい個体が群れの中にいるから良い道具も手に入るかも……?


 そんな期待感もあるから戦いたいんだよね。だからジルの優しい心を利用してでも行ってみたいんだよ。……うん、最低だね! イフに弄られるのが嫌だから先に言っておこう! 僕は最低だ!


【チッ!】


 遅かったね! 僕の勝ちだ!


【ミッチェルにこれからは外に出させないように言っておきましょう。そうすればマスターも改心するはずです。ミッチェルとシロが一緒ならそんなこともしなくなりそうですし】


 すいませんでした! 調子に乗りました!


【よろしい!】


 ……なんかどっちが主で、どっちがスキルかよく分からなくなってくるなぁ。別に嫌じゃないからいいんだけど。普通に楽しい。まぁ、本当にイフの体を作るのも早くしないとね。今くらいなら出来るんじゃない?


【……ギリギリですよ?】


 それならそれでいい。武器を作る前にイフの体を作るのもいい手だしね。錬金術から作れるのかな? それとも人の死体が必要だったりする?


【……そこまでしなくても空気中にリンなどが含まれています。鉱山採集で鉄鉱石の周囲に付いている土からも取れます。私に体を任せてくれれば作れますよ……?】


 そう言うってことはイフ自身が顔とかを考えて作ってくれるのか。楽しみだね。明日辺りでもやろっか。武器を作る前に仲間を増やすっていうのも悪い手ではなさそうだし。


【……信用してくれていて何よりです】


 それ以上、イフは何も言わなかった。

 まぁ、僕がジルとの会話の途中でイフと話したからって言うのも理由かもしれない。だけどイフなりに何か引っかかることでもあったんだろう。もしかしたら僕がイフを信用していないとでも思っていたとか? それこそ有り得ない話だけどね。深くは聞くつもりもないし言いたくないなら聞かない。


「僕を信じてよ」

「……何でそこまで間が空いたのかは分からないですが理由があるんですよね。……ああ! もう! 信用しますよ! 守ってくださいね……?」

「当然」


 狙っている群れは遠目の場所にいるのでジルを背負った。その時に驚いていたけど自然に腕を首に回してきた。しっかりと抱き締めてきたところで居場所を無くしたカマイタチも額のところで丸まってくる。少し締め付けが強いけど、このままでいいや。


 頭を撫でてカマイタチが「キュウ」と心地良さそうな声を出したところで加速して走り出した。もちろん、ジルの掴む力もさっきより強くなっている。


「はっ、速すぎませんか!?」

「これくらいで速いって言っていたら肩を並べて戦えないぞ」

「無茶苦茶ですね!」


 速い速いと言って速度を落とすように言ってくるけど適当なことを言い返して誤魔化しておく。ぶっちゃけて言えば走る速度は急斜面に突入したジェットコースター並だ。割と苦手な人なら嘔吐するかもしれない。


「離さないでね!」

「離したら大怪我ですから無理です!」


 どこか嬉しそうに聞こえるからジルも楽しんでいるのかもしれない。もしかしたらこういうアトラクションも異世界では商売になりそうだなぁ。地球よりも安全性が高いものが作れそうだから幼い子でも乗れるだろうし。老後は遊園地経営っていうのも悪くはない。バックにセトさんと商人ギルドが付けば誰も手を出せないでしょ。


 当然のように早く目的地へと着いてジルを下ろした。さすがに目を回している。まぁ、緩急とかもなくずっと速いままだしね。逆にこれで喜んでいたら「そっち系の人」って思ってしまうし。……そういうタイプ、嫌いじゃないよ!

案外、特に伏線とかのためでもなくジルとの話を書き出しましたが書きたいと思えることや、こういうのが後に必要になると言ったことが浮き出てきていいですね。予定に無かったので「必要?」と思う人も多いと思いますが楽しんでもらえればありがたいです。


※今更という言葉を使うことが多くなりましたがユニーク数が40,000を越えました。順調に総PV数も増えてきているのを見ると疲れも吹っ飛びます。個人的には腰痛が軽くなったような気がしなくもない気がしますね(笑)。これからも応援よろしくお願いします!

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