3章26話 情報とは、です
短めです。
後、最後だけグロです。
「よっしゃぁ!」
僕は大きく両手を上げた。
いや、でもね! やっぱり狙撃銃は男の夢ですよ! っていうか、ワルサーに次いでドラグノフ狙撃銃と言えばソビエト時代のロシアと銃だ。これも僕の大好きな銃だね。好きな理由はただ単に見た目が好みなだけなんだけど。
これってもう使える感じ?
【ワルサーを出したまま形状の名前を思い浮かべれば変化します】
なるほど、それなら……。
「うおっ……すご……」
割と重い、ワルサーに慣れ切っていたからかなり重みに違和感を感じてしまう。だけど、やっぱりカッコイイなぁ……。特にマガジンの斑のように伸びている線にカッコ良さを感じる。そしてこの漆黒……やっぱりマガジンが僕の好みだ。
そしてこの肩にかける紐も僕の好みだ。
狙撃銃って三脚のように地面につけて撃つタイプが多いからね。逆に映画とかで使われていた肩にかけながら撃つこれは僕的には男のロマンを感じる。……いや、三脚タイプも持ちながら撃つことは出来るんだけどね。
「とりあえず空撃ちっと」
銃弾生成前に適当に狙いを定めて引き金を引いてみる。……やっぱり重さに違和感を感じるせいで照準が合わない。だけどカッコイイから許すとしよう。
【ちなみに弾丸は火炎弾を作れるようになったようです。撃ち込んだところを問答無用で焼き傷が治るのを遅くさせます。威力も通常弾と同じだけのMP消費で作れるくせに倍以上です】
へー、すごいな。
空撃ちの際に言ったのはもしやれば家が燃えるからだろうね。さすがは僕のイフ。本当にありがたい。というわけで通常弾で普通に壁に撃ち込んでみる。
えっ? 器物損害?
この世界にそんな罪はありませーん!
ズドーン、引き金を引くと共にワルサーとは比べられないほどの銃声がした。初見で聞けば魔物の鳴き声と思ってしまうかもしれないほどに大きく鈍い。
元はセミオート、つまり一回一回撃つ時に引き金を引かないといけないけど、僕の心器ということもあってフルオートも可能みたい。つまり一度引き金を指で押したままにすれば玉が切れるまで撃ち続けられるみたいだね。いと強し……。
音はサプレッサーとか、そんなのがあるかもしれないから何とかするしかないか。ここまで音が大きいと狙撃銃として意味をなさない気がするしね。撃った方向が分からないくらいにはしておきたい。
まぁ、これくらいにしておくか。
銃をしまって男の方に視線を変えた。
「さっきの音ってなんですか!?」
「あっ、フウだ」
穴から走ってきたフウが「フウだ、じゃないですよ!」とプンプンしながら僕の顔を見つめてくる。あれ? これって言わないとダメ?
「えっとね、これだよ」
「これは……?」
「分からないけど手に入れた」
「はいぃ?」
ドラグノフを見せてみたけど素っ頓狂な鳴き声を上げるだけなので戻させてもらう。特に詳しい説明をする気は無い。心器なんて言えばどんな目で見られるか分からないし。
「とりあえず、この人をどうするか聞こうと思って」
「無理やり話を変えようなんて……って、この人は!」
「そうだね、エイだね」
そう、僕達を襲ってきたのは冒険者ギルドのマスターであるエイだった。だから驚いたよ。だってエイとエスは仲が良かったし、言い方を悪くすればエスに使い道はいくらでもあったからね。操られていたとしても殺したってことに理由がありそうだった。
まぁ、話されたら困ることでもあったんでしょ。これ見よがしにエスの死体のステータスに角の呪が消えていたし。まぁ、成分は得たのでどうでもいいんですけど。
「……なぜここに?」
「分からないけど何とか倒したんだ。魔法で魅了状態にしたから話も聞けるはずだよ。多分だけどお目当ての人物が聞けるかも?」
「なるほど! 魅了の話は今度聞くとして流石ですね!」
聞くのかぁ……なんて説明するかな?
とりあえず種族とかは関係がなしで。そういう魔法があるとかで誤魔化せるのならそれでいいかな。まぁ、下手に魅了の状態異常を使いこなせる人がいたら怖いか。そこら辺の言い訳は後々考えておこっと。
「魅了って言っても優しいものしか使えないんだけどね。こうやって、動きを止めさせて聞きたいことを聞けるくらいしか出来ないかな」
「……情報を手に入れる立場としてはものすごく欲しいのですが……?」
「まあまあ、副作用がないわけじゃないからね」
実際、ものすごく強いとは思うよ。
だけど相手の力によっては魅了なんて効かないし、エイでさえ、意識が朦朧としていた、操られていたからこそ、こうやって魅了をかけられたって節もある。だから戦闘で使うことは滅多にないかな。
「MP消費の効率と魅了に出来る相手との力量差、ここら辺が上手くいかないと効かないからね。失敗したらバレるし」
「……あっ、今かけようとしましたね? なるほど、よく分かりました。……使い所さえ間違えなければ……ってところですね?」
「そうそう」
ゾンビウルフ自体はステータスが低いからね。魅了にするのは難しい話じゃなかったし、何より今のジョブだってオール戦闘職だから戦力差もそこまで離れていないし。
呪魔法と魔眼の両方があってようやく成り立つような面倒くさいやり方だし。情報を得たい時以外は弱めて倒せばいいだけだし。わざわざMPの無駄遣いは不必要だよね。
「今回は成功したから聞きたいことを聞けばいいと思うよ。聞いて欲しくないことなら外に出るし。聞けないからって僕に困ることは無いからね」
「……そう言って貰えると助かりますね。ですが信用しているので聞いていてもいいですよ!」
おっ、これがフウからの信用か。
そうは言ってみるけどイフに頼んで採取した血液から記憶は取り出しているから聞かなくても、ってところなんだよね。解析に時間がかかるところが玉に瑕だけど、こっちの方が確実性があるしね。多分だけど……。
「……何も返しませんね」
「……はぁ、そうかぁ……」
対策はするよね……。
数は少なくても魅了を扱える人はいるからね。そうなれば操っていた人達の姿がバレていくからなぁ。さすがに対策をしてバレないようにするのは知っていたけど……ここまでか。
「……ッツ!」
フウはそっと目を隠した。
僕も目を逸らしてしまう。
見ていられなかった。例え好きじゃない人とは言えいきなり口から泡を吹いて、すぐにその泡が赤みを帯びていく姿なんて。カニが吹く泡なんて生易しいくらいに悲痛な悲鳴を上げながら何かを引っ掻く音だけが響いてくる。顔は見れなかったけど想像は出来た。それほどに聞くに耐えない、辛そうな悲鳴だった。
治すにも目で見ないように回復魔法をかけてみたけど効かない。逆に呪いのようにエイを傷付けるだけで、苦しめるならばと途中でやめた。わざわざ苦しめたいと思うほど頭はいかれていないからね。
とりあえずフウの目につかないように回収だけさせてもらった。この遺体は後でテンさんに見せるつもりだ。フウよりもテンさんに見せた方が良い気がする。
気分が悪そうなフウに回復をかけてから背中をさすっておいた。途中で「ありがとうございます」って言われたってことは相当、来ていたのかもしれない。
僕も何も感じないわけじゃないし、どちらかと言うとショックで頭が上手く回っていなかった。想像はしていた。下手な事を言われないようにするって、口止めに殺すって可能性も考えていた。けど、その場には僕とフウしかいなかった。誰が遠距離でここまで綺麗に殺せると思うかな。
それに写真とかで見る人の遺体よりも、やっぱり直で見る遺体の方が来るものも多い。それにあの悲鳴は……簡単には耳から離れそうにないかな。ちょっと前の心器の進化で喜んでいた自分が馬鹿に思えてきた。こんな僕でもこうやって簡単に死ぬかもしないんだから。
そのままエスの遺体も回収しておいた。
早めに動いたのは僕の悪い考えを振り払うためだ。動いていれば今のやらなければいけないことの方が頭で重視される。今の惨状を考えなくて済むんだから。
今までの罰なのか、遺体となったエスはオーク達のサンドバッグになっていたけど、まだ焼いていないからこっちからでも何か得られるかもしれない。本当に火葬する前で良かったと思う。
まぁ、倉庫内に遺体を入れるのは好ましくないけど緊急だし……今回は見逃すって形にしてもらおう。
僕はフウが回復するのを待ってから次のポイントへと移動した。
一応、ここで投稿に期間があくと思います。少しやらなければいけないことがあるのでそちらに着手させてもらうためです。一週間以内に、もしくは私事のやる気がなくなれば書いて投稿するかもしれないです。
少なくとも明日の投稿はないです。
次回はスタンピードの時の他の場所での話を書くと思います。多分ですが視点が変わる時にどんな話があったかとか、その人その人の役割とかを書くつもりです。ですが未定なので(定期)。
次回をお楽しみに!