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3章23話 前が見えないなら止まることも大切です

一日遅れ……申し訳ないです。

「……広いお家ですね!」

「まぁね、ランクの割には大きな家だと思うよ」


 シロが誇らしげにしているけど可愛いから別にいいや。まぁ、ランクはフウの下だしね。それでも広い家って言われるくらいなんだから相当なんだろうし。


「洞窟を出て元の話し方に戻ったんだ」

「さすがに緊張感のある場所とない場所とでは行動も変わりますよ! 大きい声は魔物を呼ぶ原因になりますから!」


 その言い方だと僕の家には緊張感はないと。

 もし間違っていないなら僕のことを少しは信頼してくれたのかな。それならいいな。強い仲間は多い方がいい。弱くてもやって貰えることはあるから語弊があったね。仲間、もとい友達が欲しいです!


 遠回しに考えるのは良くないよね。

 もう少し気楽になろっと。


 特に僕の家のことで教えないといけないことはないのですぐに居間へと向かう。ところどころ気になる所はありそうだったけど聞いては来ないから教えなくていいよね。


「それで聞きたいことは何?」


 席に着いてすぐにフウに聞いた。

 カマイタチの方は教えることで少し時間がかかるから他のことをして欲しいって、イフのお達しが来たんだよね。それなら話をした方が効率的だよ。


「……まず冒険者として聞いてはいけないことなのでしょうけど、さっきの魔法は空間魔法ですよね。なんで使えるんですか?」


 まぁ、そこからだよね。

 忘れがちだけど空間魔法が使えるのは賢者と呼ばれる存在や、異世界から来たイレギュラーな存在である勇者陣営だ。僕のようなぽっと出が使えるのはおかしいよね。


「別に疑ってはいませんよ! さっきので優しさから動いているのが分かりましたし!」

「いや、あのね、空間魔法自体は僕も分かっていないんだ」


 実際、その通りだし。

 補正があるだけで覚えたり使えるようになるなんて異世界ならではだ。僕達のいた日本ならそれなりに熟練度を上げなければ、技術として得たとは言えないからね。


 まさかさ、僕は本当は異世界から来た来訪者なんだ、なんて言ったら態度も見る目も変わってしまう。だから言えないし、まして吸血鬼なんて知られたらそのレベルで済まない。言い訳として分からないって言うのが通じやすいんだよね。


「……まぁ、話せませんよね。私もなんで早いのかなんて聞かれても答えられませんし」

「そうだね、異世界の人、まぁ、本当の名前は教えてもらえなかったから師匠にしておくね。その師匠いわくギフトだってさ」

「ギフト……神様からの贈り物ですか。なるほど! それなら納得出来ます!」


 よく分からないけどこれを言えば異世界の人達は納得するってイフから聞いていたから言ってみたら、思いのほか効果は抜群だった。最初っからこれを言っていれば良かったかもね。


「この家もギフトのおかげで手に入れられたものだしね。そのせいで昨日も空間魔法で来ちゃったけど」

「ははは、分かりますよ! 初めて手に入れたものは大切ですからね!」


 ククリナイフを鞘付きで見せて撫でていた。

 そっか、初めて手に入れたものは大切なのか。だからミッチェルも大切なのかな……。いや、それだけが理由ではないと思うけどね。


「それでは次ですが、これは普通に疑問なのです。どうやれば強い魔物を仲間に出来るのですか?」

「えー……分かんない」


 いやいや、そんな不満げな顔をされても。

 だってさ、動物みたく人を選んで近づくかどうかとかが魔物にあるとは思えないんだよね。少なくとも僕は猫とか犬とかには好かれるタイプだったし、そこが魔物にも共通していたとしても僕には説明が出来ないよ。


「優しくするとかかな」

「……魔物に優しくって考えがまずないですね。強い魔物ならそれなりの経験を積んでいますから、一瞬の油断が命取りになってしまいますし」

「確かにね。まぁ、僕でもそういうのが相手だったら仲間にするかどうか悩むかな」


 例えばだけど躾のなっていない飼い主のペットとかはよく噛んでくる。その前に吠えてくることの方が多いかな。そういうのをわざわざ仲間にするんじゃなくて、しっかりと考える力があるかどうかを狙うって考えか。


 まずカマイタチに関しては犯罪を起こしたわけじゃない。それに境遇も境遇で僕の心にくるものがあった。だから仲間にしようってなっただけで他に欲しい相手もいないかな。現に仲間が多すぎて旅をするには楽しいけど、手狭な感じがする。特に今回のような護衛依頼なら依頼者側の出費が馬鹿にならないからね。


 そのうち三つのグループで別々のことをするようになるかも。幻影騎士の五人に関してはそろそろランクアップの件で他への都市で経験を積むことになるらしいし。確か、そんなことを言っていたよね?


【言っていた、と言うよりはジオの考えではマスターを重視しています。仲間でいてくれるうちは出来る限りのことをするようです。それなりの信用がありますから】


 うんうん、それで?


【それでマスターとの約束である調査の一件からロイスへの評価も高くついています。今や有望株の一つですからね。いきなりランクを上げたパーティのリーダーですから。その約束の中にギルドが処遇を決めるというものがあったはずです】


 あー、あったね。結構前のことだって感じるけど数ヶ月内の話だしなぁ。未だに思い出せるよ。ジオさんがギルドマスターとしての才能があることを実感した時だし。


【ええ、その時からジオもマスターを別格視し始めたようです。そしてロイスと話すうちにロイスの人格や才能も見極め、その幼さから多数の経験を必要と考えたようです。そのうちの一つがランクアップでの旅のようです。良くも悪くもマスターを別格視している分だけ頼ってしまう節を断つためですね】


 それは良い考えかもね。

 ロイスに限らずエルドもキャロも、イルルとウルルは見たまんま僕に引っ付くからね。近くにいたら聞いてくるのは別にいいんだけど全部僕任せだと育つものも育たないし。それに僕が5人から聞かれて教えないって選択肢を取るとは思えないから良い手段だと思う。


 とりあえず過保護にならない程度に装備とかは渡しておこう。死んだら元も子もないし誰かがかけるだけで僕の計画は崩れるからね。幸せに楽しく暮らすためにはロイスもエルドもキャロ、ましてやイルルやウルルだって大切だ。


【……それを過保護と言うんです】


 この程度はまだまだだよ?

 何を言っているのかな? 過保護と言うのは後ろからついて行ったり、自分の代わりを連れていかせたりすることだよ。さすがに成長に繋がらないからやらないし、どちらにせよロイスにはプレゼントしたけど、エルドやキャロとかには装備を作ってあげなかったからね。丁度いいでしょ?


【……さすがですね! それなら説得できそうです!】


 いや! 何を!?

 僕は別に誰かを説得するために言った言葉ではないんだけど……。イフには何か誰かを説得するために言った言葉に聞こえたみたいだね。全然、そんな意図はない。


【マスター自身やジオとかへの説得ですよね。私の話を聞いてからずっと足がソワソワしていますよ?】


 あー、これはね……多分、発作だよ……。

 言えない! 他の地方からの素材が提供されると思ったら手足が疼くなんて絶対に言えない!


【心が繋がっているので……分かってしまうんですよ?】


 確かに! 大胆な失敗をした!

 仲のいい友達と話すようにイフと話をしながらフウに従魔にした詳細を話した。話し終える頃にようやくカマイタチの調教、もとい教育が施されたようで少し安堵する。だってこれで言うことを聞いてくれないとかだったら従魔にしてもね。他人を傷つけないのならそれでいいし。


「それじゃあ出してみようか。カマイタチの新しい家とかの説明もしておきたいし」

「ええ……ですが、魔物にそんな話がわかるのですか?」

「一応、知能は高い方だよ。レベルが高ければ魔族として扱われていたかもしれない」


 そう、僕みたいな吸血鬼みたいに。

 もしかしたら一緒に暮らすうちにカマイタチも進化するかもしれない。狼系の進化が人狼だったから、カマイタチは何になるのかな。人型か、もしくは普通に魔物の姿のままなのか。


 うーん、どっちも可愛くていいと思う。


「さっきの話は後でしよう。特にフウに聞きたいことが一つだけあるんだ」

「それなら先に聞いておきます。答えられなさそうなことなら考えてから話したいですし」


 心配性……みたいなものかな?

 まぁ、話を聞いて話せないと考えたらそう言って、話せることなら分かりやすく説明するってところだろうけど。そこら辺が高ランクなら必要になるのかな。分かりやすく、って言うところがキーなのかも。


「あー、じゃあ、遠慮なく。これは教えられる範囲でいいんだけどさ、テンさんについて知りたい。あの人ってかなりの強者だよね」


 その時にフウは何も言わなかった。

 そしてそのままカマイタチを出して中を案内した。カマイタチは表情こそ変わらなかったけど首を縦に振って理解したことを伝えてきた。名前はまだつけない。念話とかで話せるレベルまでいければ付ける予定だ。


 帰り際の時にフウから言われた。


「今日のことは楽しかったです! 依頼の件は私から説明しておきます! うるさく言うようならこちら側からも何かするつもりです! 安心してください!」


 それで終わると思っていた。


「……テンさんのことはあまり聞かないでください。私はギドさんを気に入ってしまったので深く関わっていいことはないと思います」


 小さな子供達がする内緒話のように耳元で囁かれた一言。でも、酷く冷たく悲しげな声に僕は何も返せず、そのまま去っていくフウに手を振るしかなかった。


 だけど、そのせいで僕は余計にテンさんに興味を持ってしまった。

少し不穏な終わり方。この後、ギドとフウ達が手を取り合って戦うのかはお楽しみということにします。と言いますか、テンなどの設定は決めているんですがストーリーは途中までしか決めていないのでどうするかは検討中です。


一言、GWはゆっくり休みます。暇があれば書いて投稿するかもしれないです。ただ週一以上の投稿にはするつもりです。

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