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3章19話 疑心感です

早く書けたので投稿。

モチベーションが少し上がった気がします。

 初撃は僕には効かないし、ミッチェルとシロは結界によって守られている。フウに至っては勘だけで見えない何かの攻撃を弾いていた。だけど見えない手前、フウが追撃をすることは無い。


「どこにいるのか分かりませんね!」


 フウのククリナイフによる一撃は空を切った。いや、僕だから分かる事だけれども当たったとしても感覚はないと思う。名前の欄には風の精となっていて、明らかに魔物とは一線を画すような異端さが目に見えている。


 姿は見えない、これは風が元となっているからだろうし、風を切ることは出来ない、ましてや見ることも出来ない。……これって詰んでいるよね……?


 対策は何かあるのかな。

 ステータスがある時点で敵が倒せない、死ぬことのない存在ではないことが分かっている。それなら対応策は作れそうだけれど……思いつかないなぁ。


 よくさ、風の弱点は雷とかになるけど、それってどうしてか分からないよね。火もそうだし。フウがそっち系の攻撃をしないってことは弱点じゃないのかな……?


「僕には効かないって」


 風の精の攻撃をドレインで受け流して殴りつける。だけど感触はない。やっぱり、風に何をしてもダメージにはならなさそうだ。物理完全無効とかそんな感じだね。イフに聞けば倒し方とか分かりそうだけど聞く気もない。僕が考えて倒す。


「効かないかぁ……」

「そのようですね、この魔物は見たことがないですが……力がないのが幸いみたいです。敵ながらすごいですが攻撃を抑えられる結界も見事です」

「当たり前です、ギドさんの仲間ですから」

「当たり前だよ、僕の仲間だから」


 意図せずミッチェルと同じことを言ってしまった。悪い気はしないね、よくある好きな子と同じことを考えて嬉しいみたいな感じがする。この気持ちのままで倒しきれるようにしないと、ね。


 切れないならどうするか。

 他に切れないものを想像すると……幽霊とか水とかかな。さすがに柳みたいな交わして何とかするや、某バトル漫画の体の一部を飛ばすとかではないからもう少し戦いやすいと思う。


 対策を考えるなら他で置きかえて考える。

 幽霊なら異世界ならば聖魔法が効果を発揮するし、水なら凍らせれば切れるようになる。もしくは蒸発でも良さそうだね。いっその事、火魔法で一気に加熱してやるのも手かな。雷は絶対にない。


 風を使って飛ばすのは扱い方は相手の方が上手だから出来ない。やるだけやってみようかな。まずは聖魔法だ。


「セイントソード」

「へっ?」


 素っ頓狂な声を上げるなぁ。

 フウって以外に間抜けなのかな。


 僕はミッチェルが何も言わずに作ってくれた背後の結界を蹴って近づく。まずは一手目、浄化による高火力の一撃。まぁ、さっきから近づいて殴ってくるだけで威力がないのは相手の攻撃に分かっているから、最悪はミッチェルが結界を張って守りを固めてくれる。不安なことなんて何もない。


「おいっと!」


 少し感触があった。

 プラス初めてダメージが通ったから、まず完全な物理攻撃じゃないならば攻撃として風の精には効くみたいだね。でも、僕の攻撃力や魔力面を持ってしても一パーセント削れなかったから、この攻撃だと倒しきるのに時間がかかりそうだ。


 それなら二手目。


「アイシクルソード」

「二つ目……?」


 僕の十八番、氷魔法だ。

 まず切り上げてみたがダメージとしては薄い。だけど凍った、完全におかしな氷の部分が出来上がったから聖魔法よりは打点がありそうだ。


 その凍った部分にワルサーを突きつけて撃ち込む。

 削れた、ゴリっと二割くらい一気に。


 これが倒し方かなぁ?

 でも三手目もやってみる。


「フレイムソード」

「三種……」


 フウの小さな声が聞こえるけど今はどうでもいい。

 風の精の腹の部分に切り込み燃やしてみた。うん、削れたね。それも他の方法よりも大きく三割は一撃で削れた。ステータスが高いわけではないから戦い方としては物理完全無効の体と不可視の攻撃で翻弄しながら倒す方ってところかな。


 でも、残念。

 僕には鑑定が使える魔眼があるし、物理完全無効ならば魔法で潰せばいい。忘れられがちだけど僕は魔神の加護があるおかげもあって魔法が得意だ。近接よりも遠距離で近づかれる前に倒す方が性に合っている。


「チェックメイト!」


 見えない頭部に向かってドレインを突き刺してから、銃弾を撃ち込む。下手はしない。しっかりと銃口の前に火のサプレッサーを作って火の力を宿すものにしている。僕のワルサーは心器だからか、本物のような火器類特有の火薬は使わない。火の力は一切ないんだ。だから、多分だけどこのままなら効かない。


 ドレインで残り数パーセントまで、ワルサーでHPはなくなった。最初の頃に出てきたとしても苦労はしなかったかなぁ。だけど悩んでいたと思うし圧倒的に倒しきるのはキツかった。


 特に風の精の倒れた時のエフェクトみたいなものが印象的だった。一瞬だけ突風が吹き荒れて止むみたいな……魔物がやられた時に起こる現象にしては不思議なものだ。洞窟がダンジョンとか、そんなテンプレはないからこの風の精特有のものなんだと思う。


 実際、風の精って魔物なのかな。

 名前的にエルフとかと仲のいい精霊のような感じになるけど。でもイフが黙っているってことは僕の嫌いなネタバレに抵触するような存在なんだろうね。見えない魔物なんて話も聞いたことがないし。


「……ギドさんはどこまで秘密があるのですか?」

「それはどういう意味かな?」


 フウが静かに、SSランクと言われても疑わないほどの殺気を向けて僕に聞いてきた。酷く穏やかで声だけならば心臓をギュッと握られるような冷酷さを感じられるほどの底冷えな声。


 左右に持つククリナイフが未だに下げられていないところを見ると戦闘態勢は解いていないみたいだ。多分、僕が左右の武器を動かせば一気に動かしてくる。敵ならば潰す意図が見え見えだ。


「誤魔化さないでください。師匠のように人外ではなく、名前も知られていない存在がここまでのことを出来るとは思いません。例え田舎から出たばかりでも不自然すぎます」

「あー、それかぁ……」


 手で二人は制しておく。

 ガサッと音がしたから攻撃するつもりはあったんだろう。やっておいて正解だった。ここで戦っていたら無駄骨だ。そんなに不自然だったかなぁ。いや、皆が簡単に絆されていただけか。ランクが高いと酸いも甘いも経験しているだろうし。


「でもさ、その口振りならテンさんは名前が知られている存在ってことだよね。僕は一度もテン、なんて名前は聞いたことがないけど」

「それは……」


 イフからランクが高い人の名前は聞いたことがあるけどテンさんは聞いていない。あそこまでの能力があれば英雄なんて呼ばれていてもおかしくないし、ギルドとのいざこざならばテンさんが出れば一発のはずだ。それでも出ないならば他の理由があるはず。


 それこそ……偽名とかね。

 隠居とか表に出ない理由は思いつく。


 この話の流れはフウのプレミだ。


「それに冒険者ならば話せないことはいくつもある。この殺気はおかしいよね?」

「試しているだけです。おかしいじゃないですか、皆さんが私の殺気に耐えられるなんて。まるで全員がSS以上のステータスがあるような、そんな気がしてなりません」


 試すときたか……。

 そんな気はしていたけど本当にそうなんてね。


「それで?」

「……不自然だと言っているんです」

「要領を得ないね。そもそも僕達に殺気を向けた時点で戦う覚悟はあるんだろうね?」

「……それが必要ならば」

「そっか……」


 何を言っても無駄そうだなぁ。

 こういう人って納得しなければいくらでも聞いてくるタイプだ。話したくないで済ませられるとは思わない。いくつも聞きたいことがあるだろうけど全部、僕の話せることだろうか。決定的な種族を聞かれたらどうすればいいのだろうか?


 無理だ。話せない。それなら。


「……何をしているんですか?」

「えっ? 武器をしまったの。そこまで言うのなら切り殺せばいいって思ったからね。このままなら押し問答になりかねないし。スキルの事を聞かれても話したくない。信用出来ないなら殺しなよ」


 両手を左右に伸ばして胸を張る。

 やるのならやればいい。やる覚悟があるって言い切ったんだ。僕も切られる覚悟はある。さすがに命を奪われそうならば転移で逃げるし。時間稼ぎはさせてもらうしね。


「ギドさん! それは!」

「ミッチェル、黙って。僕はフウに真意を問いているんだ。覚悟があるのならばやるだろうし、信用が出来ないのならば武器で攻撃をする。ただそれだけだよ」


 ミッチェルは静かになった。

 ごめんね、今だけは、いや、いつものことだけどワガママを聞いてもらいたいんだ。話したくないことは話したくない。フウの本質を理解していない分だけ尚更ね。敵対はしたくないけど、その時はその時だ。


 フウは未だに黙ったままククリナイフを僕の首元に突きつけてきた。大丈夫だ、平常心を乱してはいけない。僕は腐っても吸血鬼だ。首を切られたくらいなら死なない。やったことはないけど自覚はある。


 僕は人ではないんだ。


「……やけに冷静ですね」

「まぁ、やらないって自信があるからね」


 五分五分、それも少しだけ切られる覚悟の方が大きい。だけど大層な嘘をつく。飲まれたらダメだ。あくまでも僕のペースでフウに淡々と対応するだけ。


 フウのククリナイフを持つ手を取る。

 少しビクリとしたが動かない。そのまま僕の首元にククリナイフを刺していく。痛い、だけどフウは動かない。生暖かい何かが首を滴る感触がある。絶対に血だ。


「自殺願望でも?」

「まさか、後ろのミッチェルとシロを見れば分かるでしょ? 僕はまだ死ねない。だけどこのままだと僕は死ぬ」


 嘘だ、だけど怪我はするだろう。

 フウに人としての矜持を任せるしかない。この手をそのままにしていたら普通の人ならば死ぬ。それこそフウが信用していなければこのまま、ね。


 確かに力を見せるということは不信感を抱かせるきっかけになってしまう。だからこそ、説明で解決するのは違う。話した時に考えて任せる。説明するなんて他人任せではなく自分の気持ちで考える。説明もしたくないから丁度いい。


「試していますね?」

「そうかもね」


 スっと手を解かれククリナイフが下げられる。そのまま迷うことなく鞘に戻して大きくため息をついた。


「馬鹿ですね! 本当にお人好しです!」

「それで殺さないフウに言われたくはないかな」

「こんなことで殺人なんてしたくないですから! ただそれだけです!」


 ツンデレか……いや、本当にそうなんだろう。僕もきっと殺さない。こんなことで殺していれば疑わしきは罰しろ、いくつもの頭蓋骨が並ぶことになってしまう。


「話せることでいいので聞いてもいいですか? 私にも勉強になりそうですし!」

「うーん……まぁ、倒すってなったらいくつか予想がついただけだね。それと運良く魔法が使えたことが効いたかな」


 首に手を添える。外した時には傷が治るってわけだけど、まぁ、さっき聖魔法を見せたからそれで治したって思うだろうね。


「運良く聖魔法が使える人はいませんよ!」

「それは適性の問題だよ。僕がフウみたく早く動けって言われても出来ないし」


 本当にそうだと思う。

 実際、適性に関しては本当にあるし、僕は加護のおかげで魔法の全属性に適性があるからね。普通に覚えようとすれば全部が出来るし。出来ないのは精霊魔法くらいかな。……精霊ってさっきの風の精みたいな感じなのかな。見えない精霊とか嫌だな。可愛い子がいい。


【キモッ……】


 直球……心が痛いっす……。

 まぁ、見えないとコミュニケーションに支障をきたすから見える方がいいかな。イケメンはミッチェルが見蕩れそうだから無しで。となれば女の子か、中性がいいや。

聖魔法が使えない→教会のものや勇者が使え普通の人は適性がないと考えてください。後、フウは疑り深いだけです。悪い子じゃないんです!(弁解)


次回は十七までには投稿します。

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