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3章16話 天と地ほどの差、です

前半シリアス、後半ネタです。

後、これも時間があれば書き足しをします。

 確かにハーべ教という存在が影響してここに来たのは分かった。だけど肝心の依頼の二文字は話していないし、何よりもおやっさんなどの話は一番に僕が聞きたいと知っていたはずだ。まるで重要なことははぐらかそうとしているような気がする。


「……隠しているよね? 誤魔化して誤魔化して、それで人が動いてくれないのは分かりきっているはずだよ」


 フウは軽く口元をモゴモゴと動かした。

 初めて言葉に詰まる人を見た。本当の目的はなんだ。そして何で重要なことは教えてくれない。おやっさんのことは置いておいても助けてほしそうなことを言いながら、確実にその話はしない。理解できない部分が多すぎた。


「僕はフウを助ければいいの? それとも他に言っちゃいけないことでもあるの?」

「……」


 神妙そうな顔をしながらフウは黙る。

 それと同時に僕も黙るしかない。


「はぁ、もう話すしかないんじゃねえか。いっつも自信があるとか言ってドジるんだからな」

「おやっさん……」

「お前の悪い癖だ。引き際を見誤ることと助けを求められないこと。アイツの敵を取りたいのは分かるがテメェ一人で出来ることじゃねぇだろうに」


 フウは苦々しそうに「そうですね」と返答した。

 僕もその返答に胸を撫で下ろす。ぶっちゃけ、ここまで問いつめたのは賭けだった。よくある勘のいいガキは嫌いだよ、みたいな感じでおやっさんに消されることも視野に入れている。最悪は逃げればいい話だし難しいことではない。


 それでも聞かなきゃいけない理由はイフには特定出来なかった話であること、そして単純な興味だ。興味が人を殺す、そんなこともあるかもしれないけど僕には絶対に聞かなきゃいけないと勘が叫んでいた。


「まず助けて欲しいです。それは話の筋からも分かると思います……」

「……話によっては」

「はい……私が隠していた理由は依頼である以前にガットの幹部は……私の姉妹弟子を殺した人かもしれないからです……」

「俺もあの時のことは覚えている。俺でさえ何をされたか分からなかった。……ただ……ただ一言、『動くな』という命令に俺は背けなかった。……動けたのはフウの義理の妹だったライ……そして、殺された」

「はっ?」


 いや、待て待て……。

 ツッコミどころが多いよね。まずおやっさんでさえ動けなくなるほどの強者。そしてその話の前に何かがあってフウ達はガットと接触していることになる……。


「……ああ、ガットと会ったのは偶然だった。普段は山篭りをしていて時折、旅をしていた時に街で出会ってしまったんだ」


 僕の心を見透かしているかのようにおやっさんはゆっくりと話した。もしそうだとすれば今の僕と同じような状況ということになる。僕と重ねるとすれば嘘で塗り固められた話だとは思えない。


「……その話はまた今度にします。それでお二人はどうしてガットと戦うのですか?」

「俺の名を賭けてライへの罪滅ぼしをするためだ。そのために……」


 僕の額から自然と汗が流れ始める。

 辛く苦しそうな、威圧感のある表情。手を握りしめて口元をキツく閉ざしている姿を見て演技だと誰が言えるのだろうか。少なくとも僕にはそんなことは言えない。


 って、そういえば!


「あの、フウさんの名前は分かるんですけど師匠である貴方の名前を知らないです。なんていうんですか?」


 僕が勝手におやっさんと仮称している目の前の今までで一番強いオジサンは、僕の魔眼なんてちゃちなものや、ステータスが低すぎるせいでイフがロックをこじ開けることが出来ていない。


 だから名前も能力も何もかもが分からないからね。仮名であっても呼び方が決まれば話もしやすいし。仲間かどうかは別として協力者になることには変わりがない。今、ここで二人の協力の話を断る理由がないからね。さっきの話を聞く限り加護の力で僕達を逃がさない可能性もあるし。


 最悪はおやっさんに任せよう。

 能力の効果に条件がないわけがないのだからそこまで恐怖することも無い。大丈夫、僕の目の前の二人や仲間達はかなり強い。他力本願でもいいじゃないか。結末さえ変えられればそれでいい。


「テン、それでいい」

「分かりました、テンさん。それではフウとテンさんに聞きます。お二人の本当の目的はなんですか? そして僕達に求めることはなんですか?」


 少しだけ沈黙が続く。

 その間にイフ経由で全員に対して身勝手な行動を謝って許しの言葉を得ている。だからやると決めたからには本気でやろう。


 僕の嫌いなものはいくつかあるけど、その中にメリハリのない人が大っ嫌いだ。別にやりたくないならやらなきゃいい。やる気なら本気でやればいい。それを他人のせいして自分の才能を疑わないのは愚かでしかない。


 目の前のテンさんは復讐に燃えているとは言っても心の底に芯があって、そこから水に何かが落ちて波紋を広げるように活動をしているんだ。そんな人はどちらかといえば好きだし、それに……その気持ちはよく分かる。幸せな人には不幸な人の気持ちなんて分からない。きっと、この気持ちが本当に人の心の痛みを知るという事だ。


「……フウと一緒に森に現れたという魔物について調査して欲しい。話としてはエスとかいう若造の話に乗ったふりをしてでいいからな」

「……あんなに大見得を切ったのに受けるなんて言えないですよ……」

「まぁ、あれだ。この街に恩を貸すのも悪くは無い。そもそも現れた魔物におかしな点が多すぎるからな。十中八九、関係していてもおかしくない」


 なるほどね、確かにエスを倒せる魔物なんて街の近くに現れるわけがない。強い敵だとしても腐ってもSランクをボロカスにしたんだ。異常事態だと言っても間違いないよね。


 と、考えるなら断る理由もないかな?


「……僕はいいですよ」

「うぇぇ……決断が早いですね。まぁ、受けるのなら私もやりますけど……気が進まないです……」


 フウは強制的だよね。

 ただ強い相手だと考えるのなら大人数で向かうべきじゃない。多ければ多いほど察知されてやられやすくなるからね。後で組み分けをして吟味しながら攻略の糸口を掴まないと。


 最悪はフウを超える相手が出ると予想しておかなくちゃ。


「俺達の目的はガットやプロトを消すこと。あんなおかしな連中に殺される人達は少なくしたいからな。お前らは仲間を守りたい。利害の一致があると思うが……どうだ?」


 確かにそうなんだよね。

 他にもいくつか聞きたいことがあるけどテンさんやフウの手を借りられるのは明らかに強い。僕一人なら、僕の仲間達の力を合わせても勝てる相手とは思えない。


 それに一番嬉しいことは皆が強いから僕の強くなる手がかりにもなるかもしれない。誰かを守れるだけの力が今の僕にはないかもしれないのだから、僕はテンさんを目標として強くなろう。今回の協力依頼はその足がかりでしかない。


 僕はテンさんの手を握りしめて思いっきり握手した。少しだけお返しのように手を締め付けてきたけど手加減はしてくれたみたいだ。さて、後で皆に話をしてセイラに謝らないとね。




 ◇◇◇




「……またなのかしら……」

「すいませんでした!」


 Oh、コレガジャパニーズドゲーザーデェス。

 もう勝手に決めたことでプンプンなのは分かるけど許して欲しいです。ほら、あれだよ? ここで動かないとセイラも死ぬかもしれないんだよ? たくさん人が死ぬかもしれないんだよ?


 僕って正義の味方じゃん!

 なーんたらかーめーんー、正義のかーめーんーですよ?


【自分のことを棚に上げるなんて最低ですね】

「……謝ったら許して貰えると思うなんて最低かしら」


 グフッ……今のは効いたぜ……。

 この僕の鋼の精神を貫くなんて……セイラとイフの言葉は回転を施した右ストレート級だぜ……。もう……愛などいらぬ……。


 と、冗談は置いておいて土下座の体勢をやめたりはしない。許してもらうまで謝る。許してもらえないのなら他のことで贖罪をする。ただそれだけのことだよ。


「……まぁ、理由は聞いたから許すかしら。もう少しだけ勝手な行動をやめてもらえればそれでいいのよ……」


 あの……呆れたように見るのはやめてください。分かっているけど一つのチャンスだと思ったんです。……僕だって強くなりたいし仲間が死ぬことだけは絶対に認めたくない。必要な犠牲なんてないんだから。


「……それは無理だよ」

「そう言うと思っていたかしら。それなら思いっきりやることよ。手抜きだけは私、許すことが出来ないかしら」

「もちろん」

「……ふぅ、少し付き合って欲しいのよ。夜は長いかしら、明日から勝手に行動する分だけ夜ぐらいは話し相手になってくださるかしら?」


 愛などいらぬは撤回します! 愛をとりもどせに変えて僕は生まれ変わりましょう! ……性格は変わらないから同じことをすると思うけど。


 僕は首を縦に振って了承してからセイラと話した。赤い月が揺らぐ空は少しだけ僕の心を同様に揺らした。きっと、これは僕の行き先を暗示していたのかもしれない。

百話達成。後、二十話で目標達成ですね!


少し後半は薄い中身でしたが次回からこの街での話が進んでいきます。多分、戦闘回が多くなると思うのでモチベーションが上がってくれることを願うばかりです。


来週中はモチベーションが上がったり、書く話題などが続けば早めに投稿すると思いますが、多分、一週間以内での投稿になると思います。プロトとガットのプロットをまだ作っているなので……間に合うはずです……(多分)


これからも応援よろしくお願いします。

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