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序章 そうだよね。在り来りだよね

 人が死ぬ時の走馬灯とはどのようなものだろうか。

 そんな事を何度も考えた事が僕にだってあった。


 過去の風景?

 何かの憧憬?


 僕が見たものは前者のよくある過去だった。


 不幸か幸福かと聞かれると、死んだ今ならまあまあ幸せだったと思う。小中高と彼女は出来たし、心を許せる友達だって何人かいた。ぼっちになった事だってあったけど友達は助けてくれたし。


 家庭は……その反対、まぁ、察してほしいな。友達運に恵まれたけど家族運には見放されてたし。一応、無神教でも日本に住んでいるという理由で神社に行くことは多かったかな。だって、あの空間は間違い無く僕には心地の良い空間だったんだ。


 何度も神社の境内で礼をして賽銭を投げては家族のいない世界を望んでいたよ。帰ればお小遣いも貰えず、風呂にも入れず、ただ殴られる毎日だったから。そんな世界で誰にも邪魔されずに遊泳出来る時間が僕には必要だった。


 だからこそ、最後は在り来りな展開でトラックに引かれて死ぬ……なんてことはなく、僕の死因は樹齢数百年の御神木が折れたこと。そう、僕に落ちてきてその重みで死んでしまった。


 今、見ている景色が僕の死んだ状態なら特に悲しいとも嬉しいとも思わない。簡単に言えば「あっ、こんな滅多にないことで僕は死んだんだなぁ」って感じかな。むしろ、こんな死に方をした自分に少しばかりワラってしまったくらいだ。


「……」


 声は出ないな。映像も終わったから何か起こると思ったんだけど、まあ、いいか。別にそんな事を求めて喉を振るわせようとした訳では無い。


 何かないかな。流石にこのまま、ここで生きていくのは嫌だな。……あっ、死んでるんだった。ということは、ここは地獄かな。無間地獄乙みたいな。






 ……虚しいな。それを表そうとしてもため息すら出せないし。……って、うん?




 これはパソコンかな。いや、そうだよね。


 ぶっちゃけ僕はパソコンを使ったのって学校と友達の家だけなんだよね。高校二年生で生涯を終えた僕、なんかカッコ良く感じないか!?


 と、そういうのは置いておいて電源をつけてみる。おっと、ついたついた。昔、幼馴染の携帯を弄って壊した記憶があったから安堵感しかないな。てっきり、機械音痴の類だと思っていたよ。






 うん? ステータス設定?


 なるほど、欲しいスキルを選んでくださいか。ポイントとかは……なさそうだな。この個数、三個だけなら好きなスキルを得られるということか。


 どこぞのライトノベルみたいだな。でも、個人的には嫌いじゃない。欲を言えば、生き残る前提ならチーターみたいな化け物じみた力が欲しいけど……圧倒的な力だなんて所詮、使う存在からすれば楽しめるものでは無いだろうから却下だ。


 なになに? 固有スキルとスキルで分かれるのか。一応、固有スキルはスキルの上位版らしいからこっちをメインにした方がいいだろう。となれば、経験値に関するもの、ステータスに補正をかけるもの、スキルレベルをあげやすくするもの、この三つが一番いいな。これで圧倒的な力だなんて揶揄される事も無いだろうし。




 あれ? 固有スキル欄の一番上に僕専用のスキルがある。なになに?


 テンプレ【このスキルはあなた専用のスキルです。このスキルを外して選ぶことは出来ません。このスキルは※※※に干渉されています。干渉が外れなければ※※※※※※※※※※】






 ……いや、バグり過ぎじゃないか?

 それにこれだと三つ得られるって表記もおかしくなってくるよな。……まあ、いいか。名前からして嫌な予感はすれども外せないのなら受け入れるしか手は無い。


 とりあえず、経験値上昇1、ステータス補正1、テンプレ1を獲得したぞ。本当は鑑定とかも欲しかったけど、我慢我慢。全魔法適性とかも厨二心をくすぐってくるなぁ。


 おっ、選んだらステータスが現れたぞ。




 ____________________

 名前 【未定です】

 種族 吸血鬼・真祖(人族)♂

 HP 10/10

 MP 30/30

 スキル

 固有スキル

 経験値上昇

 ステータス補正

 テンプレ

 称号 魔神の加護

 ____________________




 えっ? 魔神の加護ってなんですか?


 それよりも種族が吸血鬼って……嫌な予感しかしないんですけど。というかこの()の中の人族ってなんだろう。今更だけど鑑定を取らなかったことをすごく後悔してしまうよ。


 それに攻撃値とかもないんだな。これは鑑定が必要だった説があるぞ。ステータスの詳細を見るためには鑑定系統のスキルがあるとか……そうなったら流石に大声でノーカンノーカンって叫ぶけどね。


 静かに次の欄に移った。そこで少しだけ安心する。

 その先はステータスの中の能力値に関する事だった。マウスでクリックすると画面がステータスの数値になっており、どこをどれだけの適性にするか書かれている。端にポイントがあるからこれを消費して適性を作るんだろうな。


 でもさ、なんで魔法に関する魔攻と魔防だけS、つまりは最高数値になっているの。それがあるせいでポイント全部使用したらHP、MP、攻撃、防御、魔攻、魔防、幸運、魅力の全てをSに出来るんだよなぁ。ってか、なんでこんなにポイント多いの?


 あれかな、スキルを三つ得られるのも本当はおかしいのかな。考えろ、魔法面で適性が高かった理由は……加護かな。


 うん、きっとそうだ。誰だか知らないですけどありがとうございます。最初から強いのは面白みも無いだろうけど大器晩成型なら幾らでも楽しみは増やせるだろう。




 次は、産まれる場所ですか。


 でも吸血鬼なのに王国か帝国、魔法国、獣国、小国しか選べないんですけど? ねえ、なんでここの魔国には行けないんですか? だからですか? この(人族)というのは。


 分かりましたよ。説明欄を見てよく考えますよ。もうもうもう……それならそれで少しばかり僕優遇があってもいいと思うんですけどね!






 あー、なるほど。纏めるとこんな感じかな。




 ディザスター王国…最近勢力を伸ばす国。帝国よりも帝国らしく恐怖政治を行っている。また秘伝の勇者召喚を行える数少ない国であり、剣聖を抱える国である。魔族を忌み嫌っており、人族至上主義をとっている。


 ウォータ帝国…二代前の皇帝に変わったことにより民を重視する国となった。魔族との国交はよく魔国と貿易を行っている。国力でいえばディザスター王国よりも高い。ただし実力至上主義、弱ければそれなりの生活しか出来ず、働かない者は即刻国外へ追放される。


 魔法国…学園都市を設けている数少ない他種族国家。建設者は元勇者らしく平等を掲げ冒険者ギルドの総本山を抱えている。賢者がいるためにどこの国も戦争を仕掛けることが出来ない。小さくもなく大きくもない国の規模を誇っている。


 イルド獣国…名前の通り獣人が住む国。僕が行くべきではないため説明を省くが、あまり魔族との関係性はよくなさそうだ。何度も魔国と戦争を起こしているようだし。


 小国…多すぎて、それでいてディザスター王国と繋がりがあるために、選べないし行きたくもない。




 色々と書かれてはいたけど纏めれば上記の通りになってしまう。これで考えたら安全性のある場所がいいよな。それならば……やっぱり、魔法国かな。というか、逆にそれ以外の選択肢が無い。




 おっし、座標を魔法国にした。これでいいはず。


 って、あれ? パソコンが光ってきた。壊したのか、いや違うはず。壊してない壊してない壊してない壊してない壊してない壊してない。


 いや、倒れないで。貞子ですか? 怖いですからやめてください!


 そんな馬鹿なことを考えながら俺は意識を手放した。




 ◇◇◇




「イヤァァァァァ! って、あれ?」


 体に貞子が、触覚がまとわりつく夢から覚めた気がする。じゃなくて!


「ここって……本当に魔法国か?」


 真っ暗な洞窟に僕一人だけがいる。


 よく考えたら真っ暗なのにきちんと見えるな。もしかしてこれが吸血鬼の力かな。


 ステータスは……開けない。


 あれれ? ステータス見れないとスキルの使い方も説明も見れなくね?


 って、あれ?


「グルルゥ」

「イヤァァァ! 出たァァァ!」


 僕の目の前に現れたのは皮膚の爛れた狼だった。

新しく書いてみました。興味があればブックマークや評価よろしくお願いします。


追記:2024.10.11

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