第1話 地獄から地獄へ
とある夏の日、俺は学校で授業を受けていた。いつものことだが授業は退屈だ。
教師は黒板に文字を書き込んだり話したり。数人の生徒はこそこそと話して笑いあっている。いつも通りだ。
そしてそれら全てが俺にとって苦痛である。
退屈なことは苦手だし、教師に見られていては寝ることも出来ない。それにあいつらの話し声も耳障りで不快だ。
つまり学校とは俺の苦手なものを詰め込んだ、言わば地獄である。
こんな場所とはさっさとおさらばしたいもんだ。
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やっと一日の授業が全て終わり、ホームルームに入ろうとしていた。
まだ担任が来ていないため、クラスの連中は自由に動き回っていた。
しかし、コイツらは落ち着くと言うことを知らないのか?
一日中、「ねぇねぇこれ見て!」「なにそれかわいい!」とか、「あの子すげぇかわいいよな!」「ほんとそれ!」とか、馬鹿馬鹿しくて見てられんわ。
どうせあんな軽い連中、言ってることも軽いに決まってる。
あいつらの言う友達なんてなんの説得力も感じない。所詮ちょっとしたことで切れるような関係だ。
それなら最初から友達なんて言わず知り合いって言えよ。はぁ、下らない。
そんなことを考えていたら担任が教室に入ってきた。やっとこの地獄から解放してくれるようだ。
「はい、みんな席について~」
その言葉を切っ掛けに連中はゾロゾロと自分の席につき始めた。
「…うん、全員居るね。今日は特に連絡事項は無いのでこのまま解散にします。お疲れさまでした。」
全員が席をたつ。そして誰かが教室の扉を開けた。否、開けようとした。
「あれ?開かない。」
すこし高い声が聞こえた。開けようとしたのは女子らしい。
しかし、扉が開かないとはどう言うことだろうか?
扉が破損しているのか?それとも鍵がしまっているのか?
まぁどっちでもいいが早く帰りたい。
「センセー!扉開かないよ~?」
「え、本当ですか?おかしいですね?」
担任が扉をガチャガチャやっている。やはり開かないようである。
「開きませんね…。それになぜか窓の向こう側が見えません。」
担任の言う通り、扉の窓はマジックミラーのようになっていてなにも見えない。
「外側の窓も見えないよ!?しかも開かない!」
何が起こっているのかさっぱり分からない。
さっきまでは間違いなく扉は開いたし、外も見えていた。
しかし、ホームルームに入った瞬間なにもできなくなった。
「先生!床が!」
誰かが叫んだ。何事かと床を見るとそこには全てを飲み込んでしまいそうな闇が広がっていた。
そして闇は机や椅子を残して、生徒たちを飲み込み始めた。
「きゃあ!」「誰か助けてくれ!」「家に帰りたいよ!!」
叫び声がこだまするなか、俺も闇に飲まれつつ絶望していた。
────何でこんなことになった。俺はまだなにも……。
その思考は最後まで続くことなく闇に飲まれて消え去った。